2023/10/14(土) - 19:07
混沌のスプリントを制す鍵は経験値。エドワード・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)がジャパンカップクリテリウムの集団スプリントを制し、大会3連覇を成し遂げた。詳報をお届けします。
2010年に始まり、2度の中止を挟んで合計12回目の開催となったジャパンカップクリテリウム。宇都宮市市政120周年、そして第25回記念として2016年に延長されたクリテコースは、東武馬車道通り入口と上河原交差点を折り返す1周2.25kmx15周回=合計33.75km。宇都宮随一の目抜き通りを完全封鎖するスピードレースを一目見ようとコース両側を大勢のファンが埋め尽くした。
4周目、8周目、そして12周目のフィニッシュ地点にスプリント賞が懸けられた、レース時間40分強のインターバルレース。スタート直後から積極的にUCIワールドチームが動いたため、終盤まで絶えずアタックが頻発する落ち着かない展開のまま進行することとなった。
宇都宮市役所からパレード走行を始め、宇都宮市の佐藤栄一市長や、地元の子どもたち、宇都宮の競輪選手、そしてガールズ競輪選手を交えた隊列が拍手と歓声に包まれながらコースを2周回。15時40分、号砲と共にプロトンが動き出した。
スロースタートとなった昨年大会とは打って変わって、今年は1周目からビッグネームがアタックを開始した。3連覇を狙うはずのエドワード・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)自ら動き、各海外チームが代わる代わる攻撃を継続。すると3周目、縦に伸びた集団からジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が加速した。
抜群の注目度を誇る元世界王者のペースに追従したのはパスカル・エインコールン(オランダ、ロット・ディステニー)とアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)という名の知れた2人。「素晴らしい雰囲気だったし、アタックでレースを沸かせたいと思っていた」と言うアラフィリップと、「フィーリングも良かったので明日に向けて刺激を入れたかった」と言うピッコロの2人はおよそレースの半分弱、6周回に渡って逃げ続けることとなる。
逃げる3名に対し、メイン集団を引っ張ったのはリドル・トレックのジュリアン・ベルナール(フランス)とバウケ・モレマ(オランダ)の2人。ベルナールが「僕らはそもそも(他より1人少ない)5人だし、チッコーネが落車で不調のままだから2人しか牽けるメンバーがいなくて大変だった」と振り返る中、残り8周回に入るとトゥーンス自らメイン集団を飛び出して追走に回る。トゥーンスは元世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)らと共にアラフィリップたちを捕まえたものの、すぐにこのグループもろともメイン集団に飲み込まれた。
引き続きアラフィリップやギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、津田悠義(キナンレーシングチーム)らがアタックを続けたものの、集団を引き離すには至らない。UCIワールドチーム勢のアタックが止み、集団スプリント色が濃くなる中最終周回突入の鐘を聞くと、再びエインコールンがアタックを繰り出した。
岡本隼を引き連れた愛三工業レーシングチームがエインコールンとの距離を縮め、残り1500m地点からアラフィリップに引き連れられたウルフパックが一気に主導権を奪う。そのまま最終コーナーを回ったものの隊列が乱れ、2番手につけていたアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)が真っ先にスプリント。こうして勝負の幕が切って落とされた。
昨年2位の雪辱を晴らしたいザングルが先行したものの、緩やかな登り勾配でトゥーンスの加速が光った。「このコースを熟知しているから、位置取りや、どこからスプリントを開始すればいいのかが分かっていた」と言うベテランスプリンターの経験が若いザングルを押しのける。トゥーンスが3勝を示す3本指のガッツポーズを突き上げた。
2019年、コロナ禍中止を挟んでの2022年、そして2023年。トゥーンスがジャパンカップ歴史上初めてのクリテリウム3連覇を成し遂げた。しかもリドル・トレックにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続く4連覇という偉業に。「素晴らしい気持ちだ。いつも日本に来ることを楽しみにしていて、難しい全力のクリテリウムを勝つことができた。観客はもちろんチームやトレック・ジャパンの手厚いサポートのおかげ。3連覇を飾ることができて本当に嬉しい」とトゥーンスは話した。
2位は直近のパリ〜トゥールでサプライズ勝利を挙げたライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)で、スタジエ(研修生)ながら大物ぶりを見せつける結果に。ザングルは3位と昨年から一つ順位を下げている。
ワールドチーム勢が積極的に動いた2023年クリテリウムは、平均49.4km/hと直近6年間の中で最速記録をマーク(2016年47.0km/h、2017年47.0km/h、2018年47.5km/h、2019年は落車中断、2022年49.0km/h)。翌日のジャパンカップ本戦も激しい戦いとなりそうだ。
なおフィニッシュ時、10位になったマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)は位置取り争いで揉めたギオルギオス・バグラス(ギリシャ、マトリックスパワータグ)の頭を叩いた「不当な行為」によって50スイスフランの罰金とUCIポイント10点の剥奪が言い渡されている。
2010年に始まり、2度の中止を挟んで合計12回目の開催となったジャパンカップクリテリウム。宇都宮市市政120周年、そして第25回記念として2016年に延長されたクリテコースは、東武馬車道通り入口と上河原交差点を折り返す1周2.25kmx15周回=合計33.75km。宇都宮随一の目抜き通りを完全封鎖するスピードレースを一目見ようとコース両側を大勢のファンが埋め尽くした。
4周目、8周目、そして12周目のフィニッシュ地点にスプリント賞が懸けられた、レース時間40分強のインターバルレース。スタート直後から積極的にUCIワールドチームが動いたため、終盤まで絶えずアタックが頻発する落ち着かない展開のまま進行することとなった。
宇都宮市役所からパレード走行を始め、宇都宮市の佐藤栄一市長や、地元の子どもたち、宇都宮の競輪選手、そしてガールズ競輪選手を交えた隊列が拍手と歓声に包まれながらコースを2周回。15時40分、号砲と共にプロトンが動き出した。
スロースタートとなった昨年大会とは打って変わって、今年は1周目からビッグネームがアタックを開始した。3連覇を狙うはずのエドワード・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)自ら動き、各海外チームが代わる代わる攻撃を継続。すると3周目、縦に伸びた集団からジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が加速した。
抜群の注目度を誇る元世界王者のペースに追従したのはパスカル・エインコールン(オランダ、ロット・ディステニー)とアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)という名の知れた2人。「素晴らしい雰囲気だったし、アタックでレースを沸かせたいと思っていた」と言うアラフィリップと、「フィーリングも良かったので明日に向けて刺激を入れたかった」と言うピッコロの2人はおよそレースの半分弱、6周回に渡って逃げ続けることとなる。
逃げる3名に対し、メイン集団を引っ張ったのはリドル・トレックのジュリアン・ベルナール(フランス)とバウケ・モレマ(オランダ)の2人。ベルナールが「僕らはそもそも(他より1人少ない)5人だし、チッコーネが落車で不調のままだから2人しか牽けるメンバーがいなくて大変だった」と振り返る中、残り8周回に入るとトゥーンス自らメイン集団を飛び出して追走に回る。トゥーンスは元世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)らと共にアラフィリップたちを捕まえたものの、すぐにこのグループもろともメイン集団に飲み込まれた。
引き続きアラフィリップやギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、津田悠義(キナンレーシングチーム)らがアタックを続けたものの、集団を引き離すには至らない。UCIワールドチーム勢のアタックが止み、集団スプリント色が濃くなる中最終周回突入の鐘を聞くと、再びエインコールンがアタックを繰り出した。
岡本隼を引き連れた愛三工業レーシングチームがエインコールンとの距離を縮め、残り1500m地点からアラフィリップに引き連れられたウルフパックが一気に主導権を奪う。そのまま最終コーナーを回ったものの隊列が乱れ、2番手につけていたアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)が真っ先にスプリント。こうして勝負の幕が切って落とされた。
昨年2位の雪辱を晴らしたいザングルが先行したものの、緩やかな登り勾配でトゥーンスの加速が光った。「このコースを熟知しているから、位置取りや、どこからスプリントを開始すればいいのかが分かっていた」と言うベテランスプリンターの経験が若いザングルを押しのける。トゥーンスが3勝を示す3本指のガッツポーズを突き上げた。
2019年、コロナ禍中止を挟んでの2022年、そして2023年。トゥーンスがジャパンカップ歴史上初めてのクリテリウム3連覇を成し遂げた。しかもリドル・トレックにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)に続く4連覇という偉業に。「素晴らしい気持ちだ。いつも日本に来ることを楽しみにしていて、難しい全力のクリテリウムを勝つことができた。観客はもちろんチームやトレック・ジャパンの手厚いサポートのおかげ。3連覇を飾ることができて本当に嬉しい」とトゥーンスは話した。
2位は直近のパリ〜トゥールでサプライズ勝利を挙げたライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)で、スタジエ(研修生)ながら大物ぶりを見せつける結果に。ザングルは3位と昨年から一つ順位を下げている。
ワールドチーム勢が積極的に動いた2023年クリテリウムは、平均49.4km/hと直近6年間の中で最速記録をマーク(2016年47.0km/h、2017年47.0km/h、2018年47.5km/h、2019年は落車中断、2022年49.0km/h)。翌日のジャパンカップ本戦も激しい戦いとなりそうだ。
なおフィニッシュ時、10位になったマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)は位置取り争いで揉めたギオルギオス・バグラス(ギリシャ、マトリックスパワータグ)の頭を叩いた「不当な行為」によって50スイスフランの罰金とUCIポイント10点の剥奪が言い渡されている。
ジャパンカップクリテリウム2023 結果
1位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック) | 40:59 |
2位 | ライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | |
3位 | アクセル・ザングル(フランス、コフィディス) | |
4位 | ハミッシュ・ビードル(ニュージーランド、ノボノルディスク) | |
5位 | ニコロー・ブラッティ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
6位 | 岡篤志(JCLチーム右京) | |
7位 | スタン・ファントリヒト(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
8位 | ギオルギオス・バグラス(ギリシャ、マトリックスパワータグ) | |
9位 | ミラン・パウルス(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
10位 | マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) |
スプリント賞
4周目 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) |
8周目 | パスカル・エインコールン(オランダ、ロット・デスティニー) |
12周目 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) |
text:So Isobe
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