2023/06/30(金) - 12:15
7月1日(土)にスペイン・バスクで開幕する第110回ツール・ド・フランス。山岳が詰め込まれ、個人TTが1つと稀に見るクライマー有利な大会で、総合優勝者の証であるマイヨジョーヌを掴むのは前回覇者ヴィンゲゴーか?ポガチャルか?
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日パリの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば7月1日(土)から7月23日(日)までの3,404kmという距離を、最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合、タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも同順位の場合は最終ステージの順位で決定する。
第13回大会の1919年から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してリヨンに拠点を置くLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
そして2023年大会も引き続きボーナスタイムが導入され、各ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムがボーナスとして総合時間からマイナスされる(個人TTを除く)。また計6つのステージではカテゴリーがついた山岳にもボーナスタイム(1位:8秒、2位:5秒、3位:2秒)が与えられるため、積極的なレース展開を誘発する。
ポガチャル骨折明けでヴィンゲゴー有利の声
今大会は個人タイムトライアルが第16ステージのみ、しかも22.4kmと短く2級山岳ドマンシー(距離2.5km/平均9.4%)を含む登りフィニッシュとなっている。更に56,266m(1ステージ平均2,680m)と近年稀に見る総獲得標高差のため、今年のツールは際立って”クライマー向き”と言える。
そのためオールラウンダーだけでなくピュアクライマーにも総合優勝のチャンスがある…ものの、前年覇者ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)の優位は変わらない。プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)がジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャに注力するため、自身初となる単独エースとして臨むヴィンゲゴー。今年は前哨戦となるクリテリウム・デュ・ドーフィネを含む4つのステージレースに出場し、3つで総合優勝を果たすなど好調そのもの。またここまで9勝と昨年以上に積極的な走りが光っている。
更にログリッチ不在でもチーム力は落ちておらず、平地では前パリ〜ルーベ覇者ディラン・ファンバーレ(オランダ)やクリストフ・ラポルト(フランス)が支え、山岳ではセップ・クス(アメリカ)や新加入のウィルコ・ケルデルマン(オランダ)がアシストを担当。そこにコース問わず牽引できるワウト・ファンアールト(ベルギー)と、文句なしの最強チームで2連覇を目指す。
対して王座奪還を目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は、今年4月のリエージュ~バストーニュ~リエージュで落車し左手首を骨折。例年ツール前の調整レースとして出場するツアー・オブ・スロベニアを回避し、選んだスロベニア選手権ではTTとロードの二冠を達成した。開幕直前の試走ではウィリーをして完治をアピールしたが、3週間の長丁場に耐えうるかは未知数だ。
しかし昨年は山岳で孤立するシーンが目立ったポガチャルにはアダム・イェーツ(イギリス)という心強い味方が加わった。2月のUAEツアーと4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝し、ドーフィネも総合2位と好調のイェーツ。山岳アシストとしてはもちろんポガチャルが総合争いから脱落した場合の代役としても期待される。
前述の通り今年のツールはTTが短く、ジロをも凌駕する山岳が待ち受けるためダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)のようなピュアクライマーに適している。今年アルノー・デマールが外され完全な総合狙いの布陣で臨むなか、昨年総合4位と表彰台に迫ったゴデュは母国の強いプレッシャーを跳ね除けることができるだろか。ちなみにフランス革命記念日(7月14日)である第13ステージは超級山岳グランコロンビエ峠にフィニッシュする山岳ステージ。もちろんフランス国民が願うのはゴデュ、または兄と慕うティボー・ピノの勝利だ。
キャリア最大のチャンスを得たのはミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)も同じ。昨年ジロで自身2度目の総合表彰台に上がったランダは直近のドーフィネこそ振るわなかったものの、開幕地が母国バスクゆえ鼻息は荒い。同郷でエースの役割を分かつペリョ・ビルバオと24歳の新イギリス王者フレッド・ライトと3人で総合上位を目指す。
エクアドル王者ジャージを着るリチャル・カラパスはEFエデュケーション・イージーポストという新チームで総合3位(2021年)の更新を狙い、チームもマグナス・コルト(デンマーク)以外はクライマー脚質の選手で揃える極端な”山岳シフト”を敷く。また同じく元ジロ覇者のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)はツールデビューで総合エースを任された。
ジェイコ・アルウラーからはサイモン・イェーツ(イギリス)が2年振りに出場。しかしチームはディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)でのスプリント勝利に注力しているため、メンバーにクライマーがいない中での戦いを強いられる。
ヴィンゲゴーとポガチャルに並び、ツール総合優勝の経験者エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)も2020年以来の出場を果たす。2022年1月のトレーニング中の事故で大怪我を負ったベルナルは、そこから驚異的な回復を見せて本大会にコンディションを間に合わせた。しかし山岳ステージでライバルたちと争えるかは不明のため、その時は同じコロンビア出身のダニエル・マルティネスに託される。
その他にもエンリク・マス(スペイン、モビスター)やロマン・バルデ(フランス、チームDSM・フィルメニッヒ)、ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)らが虎視眈々と総合上位を狙う。またチーム名をリドル・トレックに改め、ジャージも一新したアメリカンチームはエースのジュリオ・チッコーネ(イタリア)はもちろん、ツール・ド・スイス覇者かつ22歳の若きデンマーク王者マティアス・スケルモースが注目される。
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日パリの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば7月1日(土)から7月23日(日)までの3,404kmという距離を、最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合、タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも同順位の場合は最終ステージの順位で決定する。
第13回大会の1919年から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してリヨンに拠点を置くLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
そして2023年大会も引き続きボーナスタイムが導入され、各ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムがボーナスとして総合時間からマイナスされる(個人TTを除く)。また計6つのステージではカテゴリーがついた山岳にもボーナスタイム(1位:8秒、2位:5秒、3位:2秒)が与えられるため、積極的なレース展開を誘発する。
ポガチャル骨折明けでヴィンゲゴー有利の声
今大会は個人タイムトライアルが第16ステージのみ、しかも22.4kmと短く2級山岳ドマンシー(距離2.5km/平均9.4%)を含む登りフィニッシュとなっている。更に56,266m(1ステージ平均2,680m)と近年稀に見る総獲得標高差のため、今年のツールは際立って”クライマー向き”と言える。
そのためオールラウンダーだけでなくピュアクライマーにも総合優勝のチャンスがある…ものの、前年覇者ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)の優位は変わらない。プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)がジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャに注力するため、自身初となる単独エースとして臨むヴィンゲゴー。今年は前哨戦となるクリテリウム・デュ・ドーフィネを含む4つのステージレースに出場し、3つで総合優勝を果たすなど好調そのもの。またここまで9勝と昨年以上に積極的な走りが光っている。
更にログリッチ不在でもチーム力は落ちておらず、平地では前パリ〜ルーベ覇者ディラン・ファンバーレ(オランダ)やクリストフ・ラポルト(フランス)が支え、山岳ではセップ・クス(アメリカ)や新加入のウィルコ・ケルデルマン(オランダ)がアシストを担当。そこにコース問わず牽引できるワウト・ファンアールト(ベルギー)と、文句なしの最強チームで2連覇を目指す。
対して王座奪還を目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は、今年4月のリエージュ~バストーニュ~リエージュで落車し左手首を骨折。例年ツール前の調整レースとして出場するツアー・オブ・スロベニアを回避し、選んだスロベニア選手権ではTTとロードの二冠を達成した。開幕直前の試走ではウィリーをして完治をアピールしたが、3週間の長丁場に耐えうるかは未知数だ。
しかし昨年は山岳で孤立するシーンが目立ったポガチャルにはアダム・イェーツ(イギリス)という心強い味方が加わった。2月のUAEツアーと4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝し、ドーフィネも総合2位と好調のイェーツ。山岳アシストとしてはもちろんポガチャルが総合争いから脱落した場合の代役としても期待される。
前述の通り今年のツールはTTが短く、ジロをも凌駕する山岳が待ち受けるためダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)のようなピュアクライマーに適している。今年アルノー・デマールが外され完全な総合狙いの布陣で臨むなか、昨年総合4位と表彰台に迫ったゴデュは母国の強いプレッシャーを跳ね除けることができるだろか。ちなみにフランス革命記念日(7月14日)である第13ステージは超級山岳グランコロンビエ峠にフィニッシュする山岳ステージ。もちろんフランス国民が願うのはゴデュ、または兄と慕うティボー・ピノの勝利だ。
キャリア最大のチャンスを得たのはミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)も同じ。昨年ジロで自身2度目の総合表彰台に上がったランダは直近のドーフィネこそ振るわなかったものの、開幕地が母国バスクゆえ鼻息は荒い。同郷でエースの役割を分かつペリョ・ビルバオと24歳の新イギリス王者フレッド・ライトと3人で総合上位を目指す。
エクアドル王者ジャージを着るリチャル・カラパスはEFエデュケーション・イージーポストという新チームで総合3位(2021年)の更新を狙い、チームもマグナス・コルト(デンマーク)以外はクライマー脚質の選手で揃える極端な”山岳シフト”を敷く。また同じく元ジロ覇者のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)はツールデビューで総合エースを任された。
ジェイコ・アルウラーからはサイモン・イェーツ(イギリス)が2年振りに出場。しかしチームはディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)でのスプリント勝利に注力しているため、メンバーにクライマーがいない中での戦いを強いられる。
ヴィンゲゴーとポガチャルに並び、ツール総合優勝の経験者エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)も2020年以来の出場を果たす。2022年1月のトレーニング中の事故で大怪我を負ったベルナルは、そこから驚異的な回復を見せて本大会にコンディションを間に合わせた。しかし山岳ステージでライバルたちと争えるかは不明のため、その時は同じコロンビア出身のダニエル・マルティネスに託される。
その他にもエンリク・マス(スペイン、モビスター)やロマン・バルデ(フランス、チームDSM・フィルメニッヒ)、ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)らが虎視眈々と総合上位を狙う。またチーム名をリドル・トレックに改め、ジャージも一新したアメリカンチームはエースのジュリオ・チッコーネ(イタリア)はもちろん、ツール・ド・スイス覇者かつ22歳の若きデンマーク王者マティアス・スケルモースが注目される。
歴代のツール総合優勝者
2022年 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク) |
2021年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2020年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2019年 | エガン・ベルナル(コロンビア) |
2018年 | ゲラント・トーマス(イギリス) |
2017年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2016年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2015年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2014年 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) |
2013年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2012年 | ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) |
2011年 | カデル・エヴァンス(オーストラリア) |
2010年 | アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ |
2009年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2008年 | カルロス・サストレ(スペイン) |
2007年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2006年 | オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ |
2005年 | |
2004年 | |
2003年 | |
2002年 | |
2001年 | |
2000年 | |
1999年 | |
1998年 | マルコ・パンターニ(イタリア) |
1997年 | ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) |
1996年 | ビャルヌ・リース(デンマーク) |
1995年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1994年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1993年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1992年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1991年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1990年 | グレッグ・レモン(アメリカ) |
text:Sotaro.Arakawa
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