6月11日(日)、ドーフィネと並び”ツール前哨戦”として知られるツール・ド・スイスが開幕した。初日は12.7kmの個人タイムトライアルで争われ、エヴェネプールやファンアールトを破ったシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)が地元勝利を飾った。



ジロ棄権後、実戦復帰となったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップ photo:Tour de Suisse

同日に閉幕したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並び、ツール・ド・フランスの重要な前哨戦として知られるツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)。総合優勝を目指すオールラウンダーの多くがドーフィネを選ぶ一方で、本大会にはパンチャーやスプリンター、8月の世界選手権を目指す選手たちが集結した。

スイス最大の都市チューリッヒにもほど近いアインジーデルンを舞台とする大会初日は12.7kmの個人タイムトライアル。中でも大きな注目を集めたのは、ジロ・デ・イタリアで区間2勝を挙げながらも新型コロナウイルスに感染し、無念のリタイアを強いられたレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)。そしてパリ〜ルーベ以来の復帰レースとして本大会を選んだワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)という2人のベルギー人だ。

他にもツールでステージ優勝を目指すトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、現役最後の出場となるペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)ら、ワールドツアーに相応しい豪華メンバーが顔を揃えた。

好タイムをマークし、区間4位に入ったマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

昨年のジャパンカップを走ったヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス)は区間5位に入る好走を見せた photo:CorVos
欧州王者として地元勝利を目指したシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)は7位 photo:CorVos


ジル湖を横断する橋を渡り、湖畔を沿うように巡るコースで、序盤に最速タイムを叩き出したのはマッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)だった。前イタリアTT王者は平均時速を55km/hに乗せ13分51秒の好タイムをマーク。しかし中間計測ポイント(7km地点)でマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)がソブレロのタイムを7秒上回り、そこから更に1秒を上積みした13分42秒という暫定トップタイムを叩き出した。

このタイムには2021年のU23TT世界王者であるヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス)やカスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)も及ばず、そして地元スイスの大声援を受けたTTスペシャリストのシュテファン・キュング(グルパマFDJ)がスタートを切った。

出走した中で唯一、平均時速56km/hを上回ったシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は10秒遅れの区間3位でフィニッシュ photo:CorVos

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)は6秒及ばず photo:CorVos

ジロの個人TTでは5位&4位だった悔しさを晴らすべく、キュングは中間計測をシェフィールドから1秒遅れで通過。その後も順調に踏み続けたキュングは平均56.375km/hという猛烈なスピードでフィニッシュラインに到達し、13分31秒というトップタイムをマークした。

このタイムにはパリ〜ルーベ以来2ヶ月振りの実戦となったファンアールトは10秒届かず、総合優勝を目指すエヴェネプールも6秒遅れの13分37秒でフィニッシュ。そのためキュングが2021年大会以来となるステージ優勝に輝いた。

母国スイスでの勝利を喜ぶシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos

スイス最大のレースで最高の滑り出しを見せたキュングは「何度も勝利を目前で逃し続けていたので、母国ファンの前で挙げたこの勝利に安堵している。家族や妻、息子の前で勝つことができて素晴らしい気持ちだよ」とコメント。「ジロからスイスまでの間、高地合宿で自分を追い込むトレーニングに励んでいた。水曜日には疲れ果てており、その後は回復に務めた。沿道で応援してくれた友だちや家族の存在が力となったよ」とリーダージャージに袖を通したキュングは喜んだ。

21歳のシェフィールドは4位となり、エヴェネプール以外の総合勢ではフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が25秒遅れの好タイムで初日を終えている。

翌日は序盤に3級山岳が2つ、終盤に2級山岳が1つ登場する丘陵ステージ。しかしいずれもスプリンターを退けるほどではないため、ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)らによるスプリント勝負が予想される。
ツール・ド・スイス2023第1ステージ結果
1位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 13:31
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:06
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +0:10
4位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:11
5位 ヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:17
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) +0:19
7位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:20
8位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
9位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ) +0:23
10位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:25
個人総合成績
1位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 13:31
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:06
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +0:10
4位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:11
5位 ヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:17
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) +0:19
7位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:20
8位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
9位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ) +0:23
10位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:25
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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