2023/05/10(水) - 08:15
2級山岳コッレ・モレッラを駆け上がったジロ・デ・イタリア第4ステージ。逃げ切ったオレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)がマッチスプリントを制し、敗れたアンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)はマリアローザ着用を叶えた。
アドリア海沿岸での3日間を終えたジロはティレニア海を目指し、一路西へ進路を取る。イタリア半島を縦貫するアペニン山脈を越える大会4日目は、獲得標高差3,500mに達する丘陵ステージ。この日設定されたのは3つの2級山岳で、残り12.6km地点から登坂する最終山岳コッレ・モレッラは距離9.6km/平均6.2%と過酷。その頂上から3kmの平坦路を進んだ先にフィニッシュが待っている。
前回コッレ・モレッラがジロに登場したのは2012年大会の第8ステージ。今大会最年長である40歳のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)が自身初となる区間優勝を挙げた場所であり、また逃げ切りに有利な地形となっているため、この日はスタート直後から激しいアタック合戦が勃発した。
総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップは、できれば一度マリアローザを手放したく、また区間優勝にフォーカスしたチームはステージ優勝へのチャンスとなる日。春のクラシックで活躍したベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)や総合から脱落したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)ら強力なクライマーたちが逃げを試みたものの、アタックと吸収を繰り返し、しばらく落ち着くことはなかった。
途中、分裂したメイン集団からエヴェネプール、続いて総合2位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が遅れるシーンがあったものの、共にチームメイトに導かれて集団復帰を果たしている。
そして厚い雨雲が覆った空の下、この日最初の2級山岳をマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がトップ通過。その下りで雨に濡れた路面でディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)らが落車したものの怪我はなく、直後にようやく7名の逃げが形成された。
第4ステージ逃げメンバー
オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)
ニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)
アマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、トレック・セガフレード)
スタートから約80km、約2時間にも及んだアタック合戦から、念願の先頭グループを作ったバルギルやゲブレイグザビエルなど強力なクライマーを含む選手たち。いずれもジロで区間優勝経験のないメンバーがレース先頭でローテーションを回す一方で、ようやく落ち着いたメイン集団はスーダル・クイックステップがコントロールにあたった。
2つ目の2級山岳をゲブレイグザビエルがトップ通過し、プロトンとの差は一気に4分半まで達する。逃げの7名の中で1分40秒遅れと総合タイムが最も良いレックネスンがバーチャルリーダーに立ち、雨が降っては止むを繰り返す不安定な天気のなか順調に距離を消化していく。
最終山岳コッレ・モレッラの麓に設定された中間スプリント(残り15.8km)をレックネスンがトップ通過し、-3秒を獲得した時点で逃げとプロトンの差は4分57秒。逃げ切りがほぼ確定した先頭集団は距離9.6km/平均6.2%の登坂に入り、地元イタリアでの勝利を狙うニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)のアタックからステージ優勝争いが始まった。
このペースアップに優勝候補筆頭であったバルギルが遅れ、スクインシュがコンチを引き戻す。続いてアタック合戦とローテーションで脚を使ったアルバネーゼが遅れ、残り4kmからレックネスンがダンシングで加速する。最初にスクインシュ、次にパレパントルを引き離すことに成功したレックネスンは、苦悶の表情を浮かべながらも霧の立ち込めるコッレ・モレッラを駆け上がった。
ステージ優勝に加え、マリアローザの獲得が現実味を帯びてきたレックネスンだったが、緩斜面を上手く利用したパレパントルが追いつく。レックネスン先頭固定のまま最終ストレートに突入し、残り150mからパレパントルが先にスプリントを開始して先頭へ。力なくうなだれるレックネスンの目の前で、雄叫びをあげたパレパントルがジロ4日目の勝者に輝いた。
チームの次代エースと嘱望される27歳パレパントルが初出場のジロで掴んだ勝利。「今年一番の目標であるジロに向け、たくさんの練習を積んできた。今日は逃げの日と分かっていたからこそ逃げに乗った。彼(レックネスン)よりもスプリントに長けているので、フィニッシュまで協力しながら進んだ。僕は勝利を、彼は狙い通りマリアローザを獲得することができたので、皆ハッピーだと思う」と、パレパントルは喜んだ。
エースナンバーを付けたパレパントルがステージ優勝を挙げる大成功の1日となったAG2Rシトロエン。しかし前日に山岳賞を着用したポール・ラペラ(フランス)が体調不良で途中棄権となり、今大会一人目のリタイアとなっている。
そして惜敗の涙から一転、マリアローザ獲得を伝えられたレックネスンは「ステージ優勝を狙えばピンク(ジャージ)がついてくると思っていた。正直、勝利とマリアローザの両方が欲しかった」と悔しさを語る。しかしノルウェー人として史上2人目のマリアローザ着用について問われると、「特別な気持ちだ。この3日間、チームメイトに”マリアローザはなんて美しいんだ”と話していたからね」とコメントした。
30名程度に縮小したプロトンは約3分半遅れで最終山岳に突入し、麓から牽引したヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)が役割を終えるとエヴェネプールは単独での登坂を強いられることに。それを好機とばかりにゲラント・トーマスやテイオ・ゲイガンハート(共にイギリス)など5名を残すイネオス・グレナディアーズが先頭でペースアップ。しかし総合上位勢による争いは起こることなく、2分1秒遅れでフィニッシュに到着している。
アドリア海沿岸での3日間を終えたジロはティレニア海を目指し、一路西へ進路を取る。イタリア半島を縦貫するアペニン山脈を越える大会4日目は、獲得標高差3,500mに達する丘陵ステージ。この日設定されたのは3つの2級山岳で、残り12.6km地点から登坂する最終山岳コッレ・モレッラは距離9.6km/平均6.2%と過酷。その頂上から3kmの平坦路を進んだ先にフィニッシュが待っている。
前回コッレ・モレッラがジロに登場したのは2012年大会の第8ステージ。今大会最年長である40歳のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)が自身初となる区間優勝を挙げた場所であり、また逃げ切りに有利な地形となっているため、この日はスタート直後から激しいアタック合戦が勃発した。
総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップは、できれば一度マリアローザを手放したく、また区間優勝にフォーカスしたチームはステージ優勝へのチャンスとなる日。春のクラシックで活躍したベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)や総合から脱落したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)ら強力なクライマーたちが逃げを試みたものの、アタックと吸収を繰り返し、しばらく落ち着くことはなかった。
途中、分裂したメイン集団からエヴェネプール、続いて総合2位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が遅れるシーンがあったものの、共にチームメイトに導かれて集団復帰を果たしている。
そして厚い雨雲が覆った空の下、この日最初の2級山岳をマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がトップ通過。その下りで雨に濡れた路面でディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)らが落車したものの怪我はなく、直後にようやく7名の逃げが形成された。
第4ステージ逃げメンバー
オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)
ニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM)
アマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、トレック・セガフレード)
スタートから約80km、約2時間にも及んだアタック合戦から、念願の先頭グループを作ったバルギルやゲブレイグザビエルなど強力なクライマーを含む選手たち。いずれもジロで区間優勝経験のないメンバーがレース先頭でローテーションを回す一方で、ようやく落ち着いたメイン集団はスーダル・クイックステップがコントロールにあたった。
2つ目の2級山岳をゲブレイグザビエルがトップ通過し、プロトンとの差は一気に4分半まで達する。逃げの7名の中で1分40秒遅れと総合タイムが最も良いレックネスンがバーチャルリーダーに立ち、雨が降っては止むを繰り返す不安定な天気のなか順調に距離を消化していく。
最終山岳コッレ・モレッラの麓に設定された中間スプリント(残り15.8km)をレックネスンがトップ通過し、-3秒を獲得した時点で逃げとプロトンの差は4分57秒。逃げ切りがほぼ確定した先頭集団は距離9.6km/平均6.2%の登坂に入り、地元イタリアでの勝利を狙うニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)のアタックからステージ優勝争いが始まった。
このペースアップに優勝候補筆頭であったバルギルが遅れ、スクインシュがコンチを引き戻す。続いてアタック合戦とローテーションで脚を使ったアルバネーゼが遅れ、残り4kmからレックネスンがダンシングで加速する。最初にスクインシュ、次にパレパントルを引き離すことに成功したレックネスンは、苦悶の表情を浮かべながらも霧の立ち込めるコッレ・モレッラを駆け上がった。
ステージ優勝に加え、マリアローザの獲得が現実味を帯びてきたレックネスンだったが、緩斜面を上手く利用したパレパントルが追いつく。レックネスン先頭固定のまま最終ストレートに突入し、残り150mからパレパントルが先にスプリントを開始して先頭へ。力なくうなだれるレックネスンの目の前で、雄叫びをあげたパレパントルがジロ4日目の勝者に輝いた。
チームの次代エースと嘱望される27歳パレパントルが初出場のジロで掴んだ勝利。「今年一番の目標であるジロに向け、たくさんの練習を積んできた。今日は逃げの日と分かっていたからこそ逃げに乗った。彼(レックネスン)よりもスプリントに長けているので、フィニッシュまで協力しながら進んだ。僕は勝利を、彼は狙い通りマリアローザを獲得することができたので、皆ハッピーだと思う」と、パレパントルは喜んだ。
エースナンバーを付けたパレパントルがステージ優勝を挙げる大成功の1日となったAG2Rシトロエン。しかし前日に山岳賞を着用したポール・ラペラ(フランス)が体調不良で途中棄権となり、今大会一人目のリタイアとなっている。
そして惜敗の涙から一転、マリアローザ獲得を伝えられたレックネスンは「ステージ優勝を狙えばピンク(ジャージ)がついてくると思っていた。正直、勝利とマリアローザの両方が欲しかった」と悔しさを語る。しかしノルウェー人として史上2人目のマリアローザ着用について問われると、「特別な気持ちだ。この3日間、チームメイトに”マリアローザはなんて美しいんだ”と話していたからね」とコメントした。
30名程度に縮小したプロトンは約3分半遅れで最終山岳に突入し、麓から牽引したヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)が役割を終えるとエヴェネプールは単独での登坂を強いられることに。それを好機とばかりにゲラント・トーマスやテイオ・ゲイガンハート(共にイギリス)など5名を残すイネオス・グレナディアーズが先頭でペースアップ。しかし総合上位勢による争いは起こることなく、2分1秒遅れでフィニッシュに到着している。
ジロ・デ・イタリア2023第4ステージ結果
1位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | 4:16:04 |
2位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +0:02 |
3位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) | +0:57 |
4位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | |
5位 | ニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | +1:02 |
6位 | アマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、トレック・セガフレード) | +1:07 |
7位 | クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +2:01 |
8位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | |
10位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
19位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
20位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
25位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
26位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
148位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +26:11 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | 14:35:44 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:28 |
3位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | +0:30 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:12 |
6位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:26 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) | +1:29 |
9位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:30 |
10位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | +1:36 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 53pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 39pts |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | 38pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 30pts |
2位 | ポール・ラペラ(フランス、AG2Rシトロエン) | 26pts |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 22pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM), | 14:35:44 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ), | +0:28 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:00 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 43:51:01 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | +1:49 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +2:15 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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