ドイツ最古のワンデーレース「エシュボルン・フランクフルト」が5月1日(月)に開催。距離と登りが追加された第60回大会は、最終登坂で10名の先頭集団が形成され、セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)がスプリントを制した。



2年連続の出場となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

涙のパリ〜ルーベ以来のレースとなったジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チームDSM) photo:CorVos
過去に4連覇を果たしているアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) photo:CorVos


ジロ・デ・イタリアを5日後に控えた5月1日(月)、ドイツ中央西部のヘッセン州にてエシュボルン・フランクフルト(UCIワールドツアー)が開催された。1962年にスタートしたドイツで最も歴史の深いワンデーレースは今年で60回目を迎え、これまで「スプリンターの祭典」と呼ばれるに相応しい名スプリンターたちが勝利を飾ってきた。

コースは2021年に引退したトニー・マルティンの故郷エシュボルンからフランクフルトを目指す203.8km。レース主催者は第60回記念として毎年コース前半に1度登坂するフェルトベルク(距離11km/平均4.8%)を2度に増やし、距離も約18km伸ばした。しかし計3度登る最後のマンモルスハイン(距離2.3km/平均勾配8.3%)の頂上からフィニッシュ地点は約34kmの平坦路が続くため、今年の白熱のスプリントバトルが予想された。

出場したのは10のワールドチームを含む計19チーム。スタート地点には2021年覇者のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)や過去に4連覇(2014〜18年)しているアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)、注目の若手スプリンターであるアルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)などが揃う。また新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も2年連続で出場した。

序盤に6名の逃げグループが形成されるも、早々と吸収された photo:CorVos

メイン集団はアルペシン・ドゥクーニンやボーラ・ハンスグローエがコントロール photo:CorVos

レース序盤に形成された逃げグループは6名。そこには今季最初の欧州レースとなったセルジオ・トゥ(台湾、バーレーン・ヴィクトリアス)やイェンス・レインデルス(ベルギー、イスラエル・プレミアテック)が乗り、一時は9分に迫るリードを奪う。しかしボーラ・ハンスグローエやアルペシン・ドゥクーニンクがメイン集団の先頭で追走に本腰を入れるとその差は一気に縮小。2度目のフェルトベルクの登坂(残り92km)でプロトンは早くも逃げを飲み込んだ。

優勝候補の一人であるナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)が落車で途中棄権したメイン集団では、この日最後のマンモルスハインでマルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)がアタック。これにセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)やパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)などが追従し、9名の強力な集団が形成された。

ヒルシのアタックにより、終盤に形成された10名の先頭グループ photo:CorVos

ヒルシたちは先に飛び出したマルティン・マルチェルージ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)を捉え、10名となった先頭集団が逃げ切りを目指す。一気に30秒差のリードを奪われたプロトンは、マイケル・マシューズ(オーストラリア)のいるジェイコ・アルウラーやロット・デスティニーが中心となり追走。しかし、その差は最後までゼロになることはなかった。

フランクフルトの市街地に達した10名では、残り1km手前で先頭集団に2人いるアンテルマルシェ・サーカス・ワンティのゲオルク・ツィマーマンがアタック。これを単騎のヒルシが潰し、そのカウンターでロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が仕掛けたものの、これも決まらない。

残り800mのコーナーを使いスピードに長けたクラーウアナスンが先頭に立ち、何度も後ろを振り返りながらスプリントを開始する。クラーウアナスンは背後につくコンラッドを引き離す圧巻のスピードでフィニッシュラインを通過。何度も胸を叩き、全身で勝利の喜びを表した。

最終ストレートで先頭に立つセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

3年振りとなる復活勝利を挙げたセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

今年チームDSMからアルペシン・ドゥクーニンクに加入し、ツール・ド・フランスで区間2勝を挙げた2020年以来となる勝利を掴んだクラーウアナスン。「登りの多い厳しいレースだった。特に2度目のフェルトベルクは苦しく、だが諦めず先頭集団に入ることができた。長い間勝利から遠ざかっていたので、この結果が意味するものは大きい。最高の日になったよ」とクラーウアナスンは喜んだ。

2位にはジロ・デ・イタリアのメンバーにも入っているコンラッドが入り、3位はアレッサンドロ・フェデーリ(イタリア、Q36.5プロサイクリングチーム)。逃げ切りのきっかけを作ったヒルシは4位で表彰台を逃し、また新城は6分6秒遅れの67位でレースを終えている。

エシュボルン・フランクフルト2023表彰台:2位コンラッド、1位クラーウアナスン、3位フェデーリ photo:CorVos
エシュボルン・フランクフルト2023結果
1位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク) 4:51:27
2位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 アレッサンドロ・フェデーリ(イタリア、Q36.5プロサイクリングチーム)
4位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)
5位 ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
6位 ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト)
7位 ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
8位 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、イスラエル・プレミアテック)
10位 マルティン・マルチェルージ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ) +0:03
67位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) +6:06
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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