登坂距離20km超の1級山岳ティオン2000を登るツール・ド・ロマンディ第4ステージ。集団から抜け出したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)がティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)を退け、区間優勝と総合首位浮上を果たした。



スタート前に笑顔を見せたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ツール・ド・ロマンディ2023第4ステージ コースプロフィール image:Tour de Romandie

スイス・ロマンディ地方南部のヴァレー州シオンを発着する第4日目が、第76回ツール・ド・ロマンディのクイーンステージ。風光明媚な渓谷を上っては下るコースには5つのカテゴリー山岳(3級、1級、3級、1級、超級)が登場し、最後は名物である1級山岳ティオン2000(距離20.7km/平均7.6%)を上ってフィニッシュを迎える。

スタート直後に24名が集団から飛び出し、30km地点から始まる1級山岳でその人数は10名まで減る。その中には”逃げ屋”トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)やプロローグを制したヨセフ・チェルニー(チェコ、スーダル・クイックステップ)、山岳賞ジャージを着るジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が入った。

トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)ら10名が逃げグループを形成 photo:CorVos

この日はUAEチームエミレーツやグルパマFDJがメイン集団をコントロール photo:CorVos

メイン集団は前日勝者フアン・アユソ(スペイン)を擁するUAEチームエミレーツがコントロールし、レース中盤からグルパマFDJも牽引に加わる。3分差のリードを保つ逃げ集団では、連日のように逃げ、山岳賞ジャージを着るジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が最初から3つのKOMをトップ通過。あと1ステージを残し最終的な山岳賞獲得を手中に収めた。

いよいよレースが1級山岳ティオン2000(距離20.7km/平均7.6%)に突入した時点で、逃げとプロトンのタイム差は1分45秒。その麓ではマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)が雨で濡れた路面にタイヤを滑らせ落車。骨折はなかったものの、2021年大会でティオン2000を制したウッズは争うことなく姿を消すこととなった。

レースの先頭ではデヘントとローソン・クラドック(アメリカ、ジェイコ・アルウラー)、ベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の3人が粘ったものの、ジェイコ・アルウラーが先導するプロトンに吸収される。徐々に上がるペースにリーダージャージを着るフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が遅れる一方で、チームDSMの牽引からロマン・バルデ(フランス)が仕掛けた。

ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がアタック photo:CorVos

抜け出すことは叶わなかったものの、先頭集団は各チームのエースが揃う10名程度に絞られる。その後バルデによる2度目の仕掛けや、サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)の数度に渡るアタックも決まらず、アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)がダンシングを織り交ぜながら加速。後続との差をじわりじわりと拡げていった。

沿道に雪が残る登坂を飛ばすイェーツに対し、来年ユンボ・ヴィスマへの移籍が噂されるマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)の先頭固定で集団が追走する。しかしイェーツのペースは強烈で、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の猛追をも振り切ったイェーツがクイーンステージを制覇。前日のアユソに続き、チームに2連勝をもたらした。

残り4.2kmから加速したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:Tour de Romandie

クイーンステージを制したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

「とても嬉しい。チームとしても良い走りができ、アユソのリーダージャージを守るべくレース序盤から彼のサポートに専念した。そして彼が僕に優勝を託し、その後はフィニッシュまで全力で踏み込むだけだった。(ボルタ・ア・)カタルーニャで落車する不運もあったので、この勝利が意味するものは大きい」とイェーツは今季2勝目を喜び、アユソから引き継いだリーダージャージに袖を通した。

2位には7秒遅れで今季限りで引退するピノが入り、19秒遅れでダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が3位でフィニッシュ。そしてアタック合戦には加わることができなかったものの、ペース走法で粘りを見せたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が54秒で区間8位に入っている。

ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の猛追も届かず photo:Tour de Romandie

アユソからリーダージャージを引き継いだアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
ツアー・オブ・ジ・アルプス2023第4ステージ結果
1位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) 4:40:41
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) +0:07
3位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:19
4位 マックス・プール(イギリス、チームDSM) +0:21
5位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
6位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +0:23
7位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) +0:45
8位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +0:54
9位 エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)
10位 トーマス・グローグ(イギリス、ユンボ・ヴィスマ)
個人総合成績
1位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) 13:14:41
2位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター) +0:19
3位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:27
4位 マックス・プール(イギリス、チームDSM) 0:38
5位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:41
6位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +1:21
7位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) +1:28
8位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +1:53
9位 エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)
10位 ラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツ) +2:07
その他の特別賞
ポイント賞 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
山岳賞 ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ヤングライダー賞 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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