冷たい雨が降り注いだフランス、ジュラ山脈を舞台にしたツール・デュ・ジュラ。最終山岳でアタックしたケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・サムシック)が勝利し、今年引退のティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が2位で表彰台に上がった。



今年限りで現役を退くティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour du Jura Cycliste

ツール・ド・フランスでもお馴染み、フランス東部のジュラ山脈を舞台にしたツール・デュ・ジュラ(UCI1.1)が開催された。2003年にスタートした本大会は、2017年にUCIレースとなり、2021年に1クラス(上から3番目)昇格と着実なステップアップを見せる山岳ワンデーレースだ。

最終山岳プペ山(距離4.1km/平均8.2%)にフィニッシュする165.85kmレースには、4つのフランス籍ワールドチームが出場。昨年大会の覇者ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、今年限りでの引退を発表したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)など強豪クライマーが集結した。

気温6度に雨のバッドコンディションのなか12名がエスケープ。18歳のノア・イシドール(フランス、CIC U・ナント・アトランティック)を含む逃げグループは、コフィディスが中心に牽引するメイン集団に対し、最大3分半のリードを築いた。

レースを通して雨が選手たちに降り注いだ photo:AG2R Citroën Team

プロトンから先んじてアタックしたアレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・サムシック) photo:Team Arkéa Samsic

山岳を越える度に人数が絞られていく逃げ集団では、唯一シャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が先頭で逃げ続ける。しかしアスパレンも残り27km地点で捉えられ、最後から2つ目のコート・ド・メスネ(距離3.3km/平均6.7%)でアレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・サムシック)がアタック。それを追うグルパマFDJのペースアップからメイン集団の人数が一気に縮小した。

17秒のリードを得たヴェッレは最終山岳プペ山(距離4.1km/平均8.2%)に突入。その登り始めからオコーナーの加速によりプロトンの戦いが始まり、続いてナンス・ペテルス(フランス)がアタックしてAG2Rシトロエンが攻勢をかける。一気にペースアップしたピノを含む先鋭集団がヴェッレを捉え、フィニッシュまで残り2.2km地点でケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・サムシック)が飛び出した。

ピノやマルタンらが牽制したことによりこの動きは成功。そして急勾配でも変わらぬハイケイデンスで踏み続けたヴォークランが、霧が覆うフィニッシュラインを先頭で通過した。2位には17秒遅れでピノが入り、マルタンが3位で表彰台に上がっている。

強豪クライマーを振り切って勝利したケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・サムシック) photo:Tour du Jura Cycliste

ツール・デュ・ジュラ2023表彰台:2位ピノ、1位ヴォークラン、3位マルタン photo:Tour du Jura Cycliste

「独走のままフィニッシュするという理想の形で勝つことができた。アレッサンドロ(ヴェッレ)の飛び出しのおかげでもある、チーム皆で掴んだ勝利。皆の走りを勝利に繋げることができて本当に嬉しい」とヴォークランは喜んだ。

ヴォークランは2021年に本格プロデビューを果たした21歳のフレンチクライマー。元U23フランスTT王者でもあるヴォークランは昨年のプロシリーズでシングルリザルトを連発し、今年2月のツール・デ・ザルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァール(UCI2.1)では区間1勝と共に総合優勝に輝いた逸材だ。
ツール・デュ・ジュラ2023結果
1位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・サムシック) 4:22:16
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) +0:17
3位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
4位 ナンス・ペテルス(フランス、AG2Rシトロエン) +0:23
5位 ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) +0:27
6位 クレマン・ベルテ(フランス、AG2Rシトロエン) +0:37
7位 ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) +0:45
8位 イゴール・アリエタ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) +0:56
9位 ミゲル・ハイデマン(ドイツ、レパードTOGTプロサイクリング +1:14
10位 ホセ・ディアス(スペイン、ブルゴスBH)
text:Sotaro.Arakawa