イツリア・バスクカントリー2日目は5kmに渡るテクニカルな下りフィニッシュで争われた。選手からコース設定へ批判が上がったレースでビッグギヤを踏んだイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)がワールドツアー初勝利を飾った。



ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)を擁するユンボ・ヴィスマ photo:CorVos

笑顔を見せる新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
クラシックシーズン真っ只中の欧州ロードレースのなか、ツール・ド・フランスの総合争いに向けた選手たちはイツリア・バスクカントリー(UCIワールドツアー)で登坂を身体に馴染ませる。更に今年のツールはバスクで開幕することもあり、多くのツール出場選手たちが揃う大会となっている。

第2ステージは早速バスクらしい短く勾配の厳しい山岳が登場する。ビアナからレイツァに向かう193.8kmには5つのカテゴリー山岳が設定され、その総獲得標高差は3,200mオーバー。フィニッシュ地点は最終2級山岳アルキスキル(距離11km/平均3.1%)を越えて5km下った先にある。

ヨン・バレネチェア(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)を含む逃げグループは6名 photo:CorVos

逃げ切りも十分に考えられるステージでエスケープしたのは、昨日も逃げに乗ったチョミン・フアリスティ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)や山岳賞ジャージを着るヨン・バレネチェア(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)など6名の選手たち。一方でペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が体調不良で不出走のプロトンは、リーダーチームであるイネオス・グレナディアーズが先導した。

バレネチェアが順調にカテゴリー山岳をトップ通過し、最終的な山岳賞の獲得に邁進する。一方のプロトンは残り距離48km、最後から2つ目の2級山岳でリチャル・カラパス(エクアドル)を擁するEFエデュケーション・イージーポストがプロトンのペースアップを敢行。その速度にリーダージャージを着るイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が早くも遅れていった。

プロトンから飛び出し、逃げ集団に合流したミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

カラパスがライバルたちの脚を確かめるようにアタックし、それにヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)らライバルたちが反応。直後にそのカウンターでミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出す。コースを熟知しているバスク出身のランダは1分先にいる逃げ集団に合流すると、ボーナスタイムつきの中間ポイントをトップ通過し−3秒を獲得した。

その後逃げグループを先導して逃げ切りを目指したランダだったが、最終2級山岳アルキスキルの序盤(残り18km地点)であえなくプロトンに吸収。再びひと塊となったメイン集団からは、レース序盤に落車して左太腿のビブショーツが破れているリリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)やダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)らアタックしたものの、イネオスの牽引によって潰された。

スプリントするイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

ワールドツアーで金星を掴んだイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

集団のまま頂上を越え、距離5kmのダウンヒルは時速70kmにも達する急勾配。いくつものスイッチバックを高速で下っていくプロトンから15名程度の先頭集団が形成される。そして落車のリスクを顧みず下りで攻め、残り500mから先頭を譲らなかったイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)がマッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)らを振り切り勝利した。

「ワールドツアー勝利はもちろん、この上なく誇りに思う。下りで良い位置につくことができ、残り1kmから狙い、そしてフィニッシュ手前500mでスプリントを開始した。複雑なコーナーのおかげで最後まで捉まることなく優勝できた」と25歳にしてキャリアハイとなる勝利を掴んだスヘリングは喜んだ。

しかし、スヘリングは「でもUCI(国際自転車競技連合)がこのような終盤のレイアウトを許可したことに驚きを隠せない。問題なく走り切ることができたものの、とても危険なコースだった」とコース設定に苦言を呈した。そしてその通りマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が終盤の下りで落車。親指の骨を骨折する怪我でレースを去っている。

リーダージャージを着用し、笑顔を見せるイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
イツリア・バスクカントリー2023第2ステージ結果
1位 イーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) 4:53:33
2位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
4位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
5位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)
6位 アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)
8位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
9位 シモン・グリエルミ(フランス、アルケア・サムシック)
10位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、モビスター)
個人総合成績
1位 イーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) 8:54:47
2位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) +0:04
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +0:06
4位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:07
5位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) +0:08
6位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター) +0:10
7位 アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
8位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
9位 マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード)
10位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
その他の特別賞
ポイント賞 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
山岳賞 ヨン・バレネチェア(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ヤングライダー賞 イーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
チーム総合成績 モビスター
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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