2023/03/21(火) - 17:25
自転車と鉄道、二つを愛する「テツ店長」ことバイクプラス多摩センターの河井孝介さんの輪行サイクリング紀行。今回は、昨シーズンで引退を発表した中島康晴選手と共に、山陰地方の廃線を巡ったレポートをお届けしましょう。
みなさまご無沙汰しておりました!ひさびさ登場のテツ店長です!!2022シーズン、これまでたびたびワタシの企画した(鉄分多め)輪行ライドにご一緒してもらってきた、自転車ロードレース界きっての鉄道好き、"なかじ"こと中島康晴選手が惜しまれながら引退しました(涙)。いまや業界内でなかじの鉄道好きもすっかり浸透しておりますが、そんななかじの鉄道キャラを確立させたのが、こちらシクロワイアードの輪行紀行であると、勝手に自負しているのですが……。
そんなこんなで2022シーズン中に『特急なかじ』のラストランイベントをするべし!というワタシからの熱いラブコールに応えるかたちで、引退直前の11月末にとっておきの鉄分濃いめサイクリングに行って参りました!残念ながら、これまで同行していた編集部イソベは、今回どうしてもスケジュールの都合が合わず不参加となりましたが、はたして2人のサイクリングはどのように展開されるのか?読者の皆さんも最後まで楽しんでいってもらえたら幸いです。
ということで、今回の舞台はいまテツ界隈で注目を集める中国地方の鉄道の要衝『岡山』!以前ならここは夜行列車で移動するのが相場でしたが、そんな夜行列車も今や昔……。時代の流れに抗うことは叶わず、今回鉄道での夜間移動はあきらめ、新たな移動手段を開拓することにしたテツ店長。
いろいろ検討してみた結果、白羽の矢が立ったのが"夜行バス輪行"という移動手段なのでありました。調べてみると、輪行を受け入れているバス会社はいくつかあって、思ったよりいろんな方面に向かうことができることが判明!東京起点だと北は新潟や仙台、南は愛媛や広島まで翌朝には到着できてしまうというネットワークの広さにがぜんやる気が湧いてきました!
ならばということで、今回はバスタ新宿から岡山に向かう『WILLER EXPRESS』の高速バスを利用してみることにしました。当日のバス出発は21:55ということで、仕事を終わらせた後でもゆったり準備して間に合う時間というのもうれしい(笑)
旅のはじまりは『バスタ新宿』から!出発の時間が迫りわくわくしながらバスを待っていると、岡山行きのバスがやってきました!乗り場で乗車の受付を終えたら、自分自身で床下の荷物室に自転車を積み込みます。天井スペースの関係上横倒しにして自転車を積み込みますが、自分の手で丁寧に載せることができるので、これなら安心して一夜を過ごせそうです。
ここから一晩のバス旅になりますが、夜行バスは走行中カーテン締め切り、車内消灯となるので、やれることと言えば寝ることだけなので、ここは大人しく眠ることとしましょう。
気になる車内環境ですが、今回利用したWILLER EXPRESSのバスだと、輪行プランで利用できるのが4列シートのみで、正直ゆったり座れるとは言い難いですが、それでもシート間には大きな仕切り板があって、足元も広めでレッグレストも備わっているという仕様なので、ワタシくらい(平均的日本人)のサイズ感であれば、まあまお眠れるとは思います(個人の感想です……)
まあ今後は3列シートまで利用できる範囲を広げてくれると、そう若くないサイクリスト的にはありがたいのですが(笑)
深夜に何回かトイレ休憩をはさみながら西に向かった高速バスは、気づくと朝の7:50前には岡山駅西口に到着していたので、やっぱり夜行移動は効率がよろしい!下車して荷物室から自ら自転車を取り出したら、長かったような短かったようなバス旅はこれにて終了。
ようやく自由に動ける身になって、体を伸ばしながら外の新鮮な空気を思いっきり吸うと、一気に身も心もスッキリして気力がみなぎってきました!ここでなかじと合流の予定ですが、それまでちょっと時間もあったため、ここは岡山の鉄道事情を探りに自然と足はホームに向かっていました…
本来ならゆっくりと洒落たカフェで朝食でもといったところでしょうが、テツ店長が"鉄道の聖地"岡山までやって来て、そんな悠長なことしていられるわけないので、持ち時間すべてを鉄活(マニア活動)に注ぎ込むことをお許しください(汗)
今なぜ岡山がテツに注目されているのかというと、それは国鉄時代に製造された(旧い)車両達がいまだ数多く残っているからなのです!全国的に数を減らしつつある国鉄型車両の最後の楽園がここ岡山地区ということなのですね!
もともと岡山は東西南北を結ぶ鉄道の結節点でもあり、さまざまな車両が乗り入れてくる場所なのですが、その多くが今や見ることの難しくなった国鉄型車両ということで、ホームで列車がやって来るのを待つのが楽しくてしかたがない(笑)
そうこうしているうちに待ち合わせの時間が迫ってきたので新幹線改札口へ!待つこと数分で我らがなかじ登場!!2年ぶりの再会ですが、いつもどおりの笑顔は変わりなく、今日一日ががぜん楽しみになってきました(笑)
挨拶もそこそこにホームを移動して、サイクリングのスタート地『宇野駅』に向かいます!まずは瀬戸大橋線のマリンライナーに乗車、途中の茶屋町駅で宇野線の電車に乗り換える鉄道の旅。
茶屋町では我等の大好物"国鉄型115系電車"が待っていて大歓喜したりと、さっそく鉄道旅を満喫する二人……。
愛する国鉄型車両の車内では、ちょっとしたセレモニーを開催!これまでの選手生活をねぎらいテツ店長からとっておきのプレゼントを贈呈(笑)
それは先日『特急踊り子』での定期運用を終了した、もと国鉄型特急電車185系で使われていたホンモノの帽子掛け!こちらはテツ店長が、頑張って引退記念のスタンプラリーを回り、景品に応募して当てた宝物でしたが、二個もらったうちの一つをその価値をもっとも分かる同志に差し上げた次第(笑)
そうこうしているうちに列車は終点の『宇野駅』に到着!ここにはJR西日本のサイクルトレイン『ラ・マルせとうち』もやってくる駅ということで、駅前広場にも自転車のオブジェが飾ってあったり、かなり自転車推しなことが伺えます。
今やローカル線の終着駅風情ですが、この駅は本州と四国を結ぶ『宇高連絡船』への接続駅として、特急列車や寝台列車が次々とやって来る鉄道の要衝だったのも今は昔、1988年に瀬戸大橋が開通するとその役割を終え、駅舎もコンパクトなものに建て替えられて、当時の栄華を感じさせるものはいまや何ひとつ見当たりません。
そんな駅前で自転車を組み立てたら、さっそく鉄分多めのサイクリングに出発進行!!今回まず1stステージとして我等が向かったのは、『玉野市電』こと玉野市営電鉄の廃線跡を辿るサイクリング。
こちらの鉄道は1953年に開業してわずか19年後の1972年に廃線となった全長4.7kmの短い路線で、あまり知名度も高くはありませんが、線路跡は自転車道に転換されていて、終点には車両も保存されているということで、テツ店長的にはちょっと興味を惹かれたのでした。
ここ玉野市はむかしから造船業で栄えてきた場所で、もともとこの路線も造船所への資材運搬を目的に敷かれた貨物線がルーツなこともあり、線路は市街をぐるっと迂回しながら海沿いにある造船所に向かうルートとなっています。
はたしてどのような遺構に巡り合えるのか期待しながら走り始めたのですが、ゆるやかにカーブする道路やトンネルなどからそれらしい雰囲気が伝わってきて、アタマの中で当時の風景を想像しながら走る廃線巡りの醍醐味を味わいながらすすんでゆきます。
内陸から海に向かって走ってゆくと、行く手を遮るように現れたのが広大な造船所!ここで廃線跡は消えて無くなってしまいましたが、ここからは廃線跡らしいルートをと二人で検証しながら、終着駅の『玉遊園地』があったと思われる場所を探しながらのポタリング。
まもなく玉野市の保健福祉施設「すこやかセンター」の敷地に1両の電車を発見!グラウンドの一角でしっかりと屋根も架けられ大切に保存されていました。
とりあえず近寄ってもよさそうなところまでにじり寄って見学させてもらいましたが、解説によるとこの車両は玉野市電の経営が傾いてきたおり、1964年に経費削減のため電車から気動車(ディーゼルカー)に車両が切り替えられて失業したところ、1965年に高松琴平電鉄(ことでん)に売却されて四国へ渡り、今度は2006年の引退後にふたたび海を渡って里帰りしたという、なかなか波乱の運命をたどってきた車両なのでした。
こういった歴史的背景を知るのも廃線巡りの楽しみで、時代や社会情勢に翻弄された証人ともいえる車両がこうして静かに余生を送れているのも、地元の保存会の方々の熱意があればこそで、本当に頭が下がります。
地域の歴史を知るうえでも大切な資料となると思うので、この地で末永く保存されることを祈ります。
さてこれにて1本目の廃線巡りは終了。ここから瀬戸内海を望みながらひとっ走りして次の目的地へ向かいましょう!
ここ玉野市と倉敷市を結ぶのが国道430号、通称"王子マリンロード430"は、目の前に瀬戸内海をのぞめるシーサイドラインで、とても気持ちの良い快走ルート❤
そう遠くない対岸に見える四国に思いを馳せていると、なぜかうどんのことが頭に浮かんできてしまいますが、それはなかじも同じだったようで、この直後「かわいさん、この辺でうどんでも食べません?」、「ワタシもそれ考えてました!」となって大笑い。
ということで、ちょうど道中にも"うどん"の看板が増えてきたところで、さくっと立ち寄ってお昼休憩としましょう。
ここ倉敷市児島はすぐ対岸がうどん県(香川県)ということもあってかうどん文化の街だそうで、ちゃんと"児島うどん"なるカテゴリーがあることもあとで知りました。
そんな児島うどんにははっきりとした定義はないそうでが、讃岐うどんほど強烈なコシはないけれども、しっかりとした歯ごたえを感じる洗練された食感がとても印象的で、一言でいうと「クセになりそうな美味しさ」でありました。そんなうどんのためだけに児島再訪もぜんぜんアリ!なくらいのインパクトがありましたので、みなさんもぜひ!!
さてここからが後半戦。2ndステージはかつて児島半島にあった『下津井電鉄』というこれまたローカル鉄道の廃線跡サイクリングロードを巡ってゆきます!こちらの鉄道は1991年に廃止された全長21kmの鉄道で、以前"三重県ディープ鉄道スポット"編にも登場したナローゲージという線路幅が狭い"軽便鉄道"規格の路線を、小さな電車がトコトコと走っていたのだそう。
瀬戸大橋が開業した1988年までは合理化しながら頑張って運行を続け、瀬戸大橋効果で観光鉄道への転換をめざすも思ったような成果も無く、逆に頼みの綱だった自社バス路線もあおりで利用者が減少するという状況に陥り、ついに力尽きて廃線となってしまったようです…(涙)
まあそんな歴史を振り返りつつ、今回はサイクリングロードに転換された児島~下津井間6.5kmの廃線跡をじっくり味わってゆきましょう。
ということで、まずやって来たのは下津井電鉄の旧『児島駅』。廃線から30年以上経っているにもかかわらず、意外と立派な駅ビル?がそのまま残されているのに少々驚かされます。線路は建屋を貫くように敷かれていたようで、吹き抜けの広い空間にホームが鎮座していて、ナローゲージのローカル鉄道にしてはちょっと華やかな雰囲気を醸し出していたことでしょう!
ただ立地が国鉄の児島駅から1kmほど離れているというのはちょっと不便で、このあたりも利用者が増えなかった要因のひとつだったのかも知れません。
ここからは通称「風の道」と呼ばれるサイクリングロードを走ってゆきます。走り出すと道に沿って架線柱が並んでいて廃線ムードは上々、途中駅の跡には駅名標のレプリカやホーム直付けベンチが設置されていて、サイクリストをお迎えしてくれます。
ただしこちらのサイクリングロード、序盤は未舗装区間が続くのでロードバイクだとちょっと走りにくく感じるかも知れません。まあ最近のディスクロードならタイヤも太めなので問題ないレベルですが、グラベルロードあたりだとベストかも知れませんね…
瀬戸大橋線に沿って南下してきたサイクリングロードは、鷲羽山に行く手を遮られるように西に向きを変えながら高度を上げてゆきます。
自転車だとそれほどきつくは感じない勾配ではありますが、鉄道での山越えはこれけっこうキツかったんじゃない?などと考えているうちにけっこうな高さまで上ってきました!
道中では世界一怖い自転車というウワサの鷲羽山ハイランドのスカイサイクルを見上げたり、瀬戸大橋ものぞむことができ、景色も楽しみながらゆるーくサイクリングは流れてゆきます。
後半は下り基調で高度を下げて、最後に開けた場所に出たと思ったらそこが終点『下津井駅』でした。
ここだけは線路も残されていて、軌間762mmのナローゲージなので線路幅がやっぱり狭い!ちなみにJRの在来線や多くの私鉄は1067㎜、新幹線や一部私鉄は1435㎜と2倍近い線路幅だったりするので、テツ的にはこの線路幅はけっこう萌えるものがあるのです(笑)
駅構内は2面のホームに車両基地が隣接していてかなり広大!車両の多くも無造作に留置されているので一見現役に見えないこともない風景に、両名しばらく見とれておりました。
露天での保存なので車両の傷みが気になるところですが、どうやら保存会の方々の手によって日々修繕がすすめられているようで、往時の姿をとどめてくれているのはうれしい限り❤
各地の廃線跡で車両の保存を行ってくれているボランティアの方々、本当にありがとうございます!!
さてここからもうひとっ走りして、最終ステージの待つ水島をめざしましょう!そしてここからの先導はなかじに完全丸投げで…(笑)
サイクリングロードと違って、この先のルートは少々複雑で道に迷ってしまいそうなのと、じつは時間も押してきておりまして、ここはツールドフランス解説で鍛えられた?なかじの高いナビゲーションを能力に頼るほかないという状況なのでした(汗)
ということで、約15kmにわたる一般道移動の間に遅延はほぼ解消!さすがプロロードレーサー&解説者、頼りになります❤
次にわれらがやってきたのは"水島臨海鉄道"の終点『三菱自工前駅』!臨海工業地帯だけあっ貨物専用線の廃線跡などもあり、期待を裏切らない鉄分濃度に期待が高まります♪♪なんとか予定の列車には間に合いそうなメドはたったので、ここでぜひ拝んでおきたい『水島貨物ターミナル駅』でちょっと寄り道(笑)
こちらは駅とはいっても特に乗客用ホームがあるわけではなく、貨物列車がやって来る場所と言う意味で貨物駅と呼ばれており、われわれのお目当ては隣接する車両基地にいる車両達なのですね。
水島臨海鉄道では"国鉄水島計画"なるプロジェクトがすすめられており、国鉄→JRと引き継がれて引退となった国鉄型車両を購入して、普段の営業車両として走らせているという奇特な鉄道会社で、今回もそんな国鉄型車両に乗るのを楽しみにしてここまでやって来たワケです!
そんな水島臨海鉄道の車両基地にはキハ20、30、37、38という国鉄時代に普通列車で活躍していた地味な(失礼!)車両が勢ぞろい!!しかも国鉄標準色、国鉄首都圏色、八高線色と、当時の色が再現されて、国鉄リスペクトな姿勢にテツのテンションは爆上がり!!!(なかじの表情からも推察できますね(笑))
離れがたくてフェンス越しにかぶりついていましたが、いよいよ列車の時間が迫ってきたので、断腸の思いでこの地を離れ、三菱自工駅まで戻ったら即行でバイクを畳んで、なんとかお目当ての列車には間に合うことがでました。
まだ帰宅ラッシュ前の車内はガラガラで、輪行袋を固定してようやくホッと一息つくことができました。ここからはお楽しみの乗り鉄旅を満喫してゆくことにしましょう!あいかわらずコンテンツ詰め込みすぎで時間に追われる展開となる癖は治りませんが、それでもなんとか成立しているのは、ホントになかじの協力あってこそだと感謝しております❤
そんなわれわれを乗せたキハ37(水島色)は、2013年まで千葉県の久留里線でながらく働いていた車両。飾り気のない質素な車内装飾は、これぞ国鉄型といった雰囲気でなにやら懐かしい…
終点の倉敷市駅までは約30分、国鉄型ディーゼルカーは水島臨海工業地帯をのんびりと走ってゆきます、一度列車に乗ってさえしまえば、あとは時間を気にすることなく運んでくれるので(遅延さえしなければ…)、やっぱり鉄道旅は安全・確実でリラックスできますね(笑)
そんなわれわれはいったん岡山駅まで戻って、そこから"特急スーパーいなば"に乗り換えて、日本海側の鳥取まで一気に移動してしまいます!2両編成と短いディーゼル特急スーパーいなばのキハ187系は、振り子式というカーブで車体を傾ける機構のおかげもあって、見た目によらず俊足で、岡山~鳥取間を2時間足らずで結んでしまいます。
こちらのキハ187系気動車、カーブの多いローカル線を左右に車体を傾けながらぶっ飛ばしてゆく高速性能の反面、見た目の悪さ(特に顔)からテツの間では評判の悪い車両なのですが、それも大人の事情があってこんなカタチになってしまったとか、いろんなよもやま話のネタにはつきない車両で、そんな鉄道談義をしているうちに、列車はこの日の宿泊地『鳥取駅』に到着したのでした。
ホテルにチェックインしてひと息ついたら、鳥取の街に繰り出して?夕飯タイムとしましょう!この日は全国旅行支援で地域クーポンが出ていたので、美味しく使わせていただきました(笑)
なかじには朝からあわただしい一日に付き合わせてしまいましたが、コンビでの輪行ツアーは初日からなかなかのチームワークではなかったかと思います。
ということで、一日目のリポートはこれにて終了!二日目は輪界鉄コンビがいく、日本一美しい廃線のレポートとなりますので、乞うご期待!!
写真と文:河井孝介(バイクプラス多摩センター店)
みなさまご無沙汰しておりました!ひさびさ登場のテツ店長です!!2022シーズン、これまでたびたびワタシの企画した(鉄分多め)輪行ライドにご一緒してもらってきた、自転車ロードレース界きっての鉄道好き、"なかじ"こと中島康晴選手が惜しまれながら引退しました(涙)。いまや業界内でなかじの鉄道好きもすっかり浸透しておりますが、そんななかじの鉄道キャラを確立させたのが、こちらシクロワイアードの輪行紀行であると、勝手に自負しているのですが……。
そんなこんなで2022シーズン中に『特急なかじ』のラストランイベントをするべし!というワタシからの熱いラブコールに応えるかたちで、引退直前の11月末にとっておきの鉄分濃いめサイクリングに行って参りました!残念ながら、これまで同行していた編集部イソベは、今回どうしてもスケジュールの都合が合わず不参加となりましたが、はたして2人のサイクリングはどのように展開されるのか?読者の皆さんも最後まで楽しんでいってもらえたら幸いです。
ということで、今回の舞台はいまテツ界隈で注目を集める中国地方の鉄道の要衝『岡山』!以前ならここは夜行列車で移動するのが相場でしたが、そんな夜行列車も今や昔……。時代の流れに抗うことは叶わず、今回鉄道での夜間移動はあきらめ、新たな移動手段を開拓することにしたテツ店長。
いろいろ検討してみた結果、白羽の矢が立ったのが"夜行バス輪行"という移動手段なのでありました。調べてみると、輪行を受け入れているバス会社はいくつかあって、思ったよりいろんな方面に向かうことができることが判明!東京起点だと北は新潟や仙台、南は愛媛や広島まで翌朝には到着できてしまうというネットワークの広さにがぜんやる気が湧いてきました!
ならばということで、今回はバスタ新宿から岡山に向かう『WILLER EXPRESS』の高速バスを利用してみることにしました。当日のバス出発は21:55ということで、仕事を終わらせた後でもゆったり準備して間に合う時間というのもうれしい(笑)
旅のはじまりは『バスタ新宿』から!出発の時間が迫りわくわくしながらバスを待っていると、岡山行きのバスがやってきました!乗り場で乗車の受付を終えたら、自分自身で床下の荷物室に自転車を積み込みます。天井スペースの関係上横倒しにして自転車を積み込みますが、自分の手で丁寧に載せることができるので、これなら安心して一夜を過ごせそうです。
ここから一晩のバス旅になりますが、夜行バスは走行中カーテン締め切り、車内消灯となるので、やれることと言えば寝ることだけなので、ここは大人しく眠ることとしましょう。
気になる車内環境ですが、今回利用したWILLER EXPRESSのバスだと、輪行プランで利用できるのが4列シートのみで、正直ゆったり座れるとは言い難いですが、それでもシート間には大きな仕切り板があって、足元も広めでレッグレストも備わっているという仕様なので、ワタシくらい(平均的日本人)のサイズ感であれば、まあまお眠れるとは思います(個人の感想です……)
まあ今後は3列シートまで利用できる範囲を広げてくれると、そう若くないサイクリスト的にはありがたいのですが(笑)
深夜に何回かトイレ休憩をはさみながら西に向かった高速バスは、気づくと朝の7:50前には岡山駅西口に到着していたので、やっぱり夜行移動は効率がよろしい!下車して荷物室から自ら自転車を取り出したら、長かったような短かったようなバス旅はこれにて終了。
ようやく自由に動ける身になって、体を伸ばしながら外の新鮮な空気を思いっきり吸うと、一気に身も心もスッキリして気力がみなぎってきました!ここでなかじと合流の予定ですが、それまでちょっと時間もあったため、ここは岡山の鉄道事情を探りに自然と足はホームに向かっていました…
本来ならゆっくりと洒落たカフェで朝食でもといったところでしょうが、テツ店長が"鉄道の聖地"岡山までやって来て、そんな悠長なことしていられるわけないので、持ち時間すべてを鉄活(マニア活動)に注ぎ込むことをお許しください(汗)
今なぜ岡山がテツに注目されているのかというと、それは国鉄時代に製造された(旧い)車両達がいまだ数多く残っているからなのです!全国的に数を減らしつつある国鉄型車両の最後の楽園がここ岡山地区ということなのですね!
もともと岡山は東西南北を結ぶ鉄道の結節点でもあり、さまざまな車両が乗り入れてくる場所なのですが、その多くが今や見ることの難しくなった国鉄型車両ということで、ホームで列車がやって来るのを待つのが楽しくてしかたがない(笑)
そうこうしているうちに待ち合わせの時間が迫ってきたので新幹線改札口へ!待つこと数分で我らがなかじ登場!!2年ぶりの再会ですが、いつもどおりの笑顔は変わりなく、今日一日ががぜん楽しみになってきました(笑)
挨拶もそこそこにホームを移動して、サイクリングのスタート地『宇野駅』に向かいます!まずは瀬戸大橋線のマリンライナーに乗車、途中の茶屋町駅で宇野線の電車に乗り換える鉄道の旅。
茶屋町では我等の大好物"国鉄型115系電車"が待っていて大歓喜したりと、さっそく鉄道旅を満喫する二人……。
愛する国鉄型車両の車内では、ちょっとしたセレモニーを開催!これまでの選手生活をねぎらいテツ店長からとっておきのプレゼントを贈呈(笑)
それは先日『特急踊り子』での定期運用を終了した、もと国鉄型特急電車185系で使われていたホンモノの帽子掛け!こちらはテツ店長が、頑張って引退記念のスタンプラリーを回り、景品に応募して当てた宝物でしたが、二個もらったうちの一つをその価値をもっとも分かる同志に差し上げた次第(笑)
そうこうしているうちに列車は終点の『宇野駅』に到着!ここにはJR西日本のサイクルトレイン『ラ・マルせとうち』もやってくる駅ということで、駅前広場にも自転車のオブジェが飾ってあったり、かなり自転車推しなことが伺えます。
今やローカル線の終着駅風情ですが、この駅は本州と四国を結ぶ『宇高連絡船』への接続駅として、特急列車や寝台列車が次々とやって来る鉄道の要衝だったのも今は昔、1988年に瀬戸大橋が開通するとその役割を終え、駅舎もコンパクトなものに建て替えられて、当時の栄華を感じさせるものはいまや何ひとつ見当たりません。
そんな駅前で自転車を組み立てたら、さっそく鉄分多めのサイクリングに出発進行!!今回まず1stステージとして我等が向かったのは、『玉野市電』こと玉野市営電鉄の廃線跡を辿るサイクリング。
こちらの鉄道は1953年に開業してわずか19年後の1972年に廃線となった全長4.7kmの短い路線で、あまり知名度も高くはありませんが、線路跡は自転車道に転換されていて、終点には車両も保存されているということで、テツ店長的にはちょっと興味を惹かれたのでした。
ここ玉野市はむかしから造船業で栄えてきた場所で、もともとこの路線も造船所への資材運搬を目的に敷かれた貨物線がルーツなこともあり、線路は市街をぐるっと迂回しながら海沿いにある造船所に向かうルートとなっています。
はたしてどのような遺構に巡り合えるのか期待しながら走り始めたのですが、ゆるやかにカーブする道路やトンネルなどからそれらしい雰囲気が伝わってきて、アタマの中で当時の風景を想像しながら走る廃線巡りの醍醐味を味わいながらすすんでゆきます。
内陸から海に向かって走ってゆくと、行く手を遮るように現れたのが広大な造船所!ここで廃線跡は消えて無くなってしまいましたが、ここからは廃線跡らしいルートをと二人で検証しながら、終着駅の『玉遊園地』があったと思われる場所を探しながらのポタリング。
まもなく玉野市の保健福祉施設「すこやかセンター」の敷地に1両の電車を発見!グラウンドの一角でしっかりと屋根も架けられ大切に保存されていました。
とりあえず近寄ってもよさそうなところまでにじり寄って見学させてもらいましたが、解説によるとこの車両は玉野市電の経営が傾いてきたおり、1964年に経費削減のため電車から気動車(ディーゼルカー)に車両が切り替えられて失業したところ、1965年に高松琴平電鉄(ことでん)に売却されて四国へ渡り、今度は2006年の引退後にふたたび海を渡って里帰りしたという、なかなか波乱の運命をたどってきた車両なのでした。
こういった歴史的背景を知るのも廃線巡りの楽しみで、時代や社会情勢に翻弄された証人ともいえる車両がこうして静かに余生を送れているのも、地元の保存会の方々の熱意があればこそで、本当に頭が下がります。
地域の歴史を知るうえでも大切な資料となると思うので、この地で末永く保存されることを祈ります。
さてこれにて1本目の廃線巡りは終了。ここから瀬戸内海を望みながらひとっ走りして次の目的地へ向かいましょう!
ここ玉野市と倉敷市を結ぶのが国道430号、通称"王子マリンロード430"は、目の前に瀬戸内海をのぞめるシーサイドラインで、とても気持ちの良い快走ルート❤
そう遠くない対岸に見える四国に思いを馳せていると、なぜかうどんのことが頭に浮かんできてしまいますが、それはなかじも同じだったようで、この直後「かわいさん、この辺でうどんでも食べません?」、「ワタシもそれ考えてました!」となって大笑い。
ということで、ちょうど道中にも"うどん"の看板が増えてきたところで、さくっと立ち寄ってお昼休憩としましょう。
ここ倉敷市児島はすぐ対岸がうどん県(香川県)ということもあってかうどん文化の街だそうで、ちゃんと"児島うどん"なるカテゴリーがあることもあとで知りました。
そんな児島うどんにははっきりとした定義はないそうでが、讃岐うどんほど強烈なコシはないけれども、しっかりとした歯ごたえを感じる洗練された食感がとても印象的で、一言でいうと「クセになりそうな美味しさ」でありました。そんなうどんのためだけに児島再訪もぜんぜんアリ!なくらいのインパクトがありましたので、みなさんもぜひ!!
さてここからが後半戦。2ndステージはかつて児島半島にあった『下津井電鉄』というこれまたローカル鉄道の廃線跡サイクリングロードを巡ってゆきます!こちらの鉄道は1991年に廃止された全長21kmの鉄道で、以前"三重県ディープ鉄道スポット"編にも登場したナローゲージという線路幅が狭い"軽便鉄道"規格の路線を、小さな電車がトコトコと走っていたのだそう。
瀬戸大橋が開業した1988年までは合理化しながら頑張って運行を続け、瀬戸大橋効果で観光鉄道への転換をめざすも思ったような成果も無く、逆に頼みの綱だった自社バス路線もあおりで利用者が減少するという状況に陥り、ついに力尽きて廃線となってしまったようです…(涙)
まあそんな歴史を振り返りつつ、今回はサイクリングロードに転換された児島~下津井間6.5kmの廃線跡をじっくり味わってゆきましょう。
ということで、まずやって来たのは下津井電鉄の旧『児島駅』。廃線から30年以上経っているにもかかわらず、意外と立派な駅ビル?がそのまま残されているのに少々驚かされます。線路は建屋を貫くように敷かれていたようで、吹き抜けの広い空間にホームが鎮座していて、ナローゲージのローカル鉄道にしてはちょっと華やかな雰囲気を醸し出していたことでしょう!
ただ立地が国鉄の児島駅から1kmほど離れているというのはちょっと不便で、このあたりも利用者が増えなかった要因のひとつだったのかも知れません。
ここからは通称「風の道」と呼ばれるサイクリングロードを走ってゆきます。走り出すと道に沿って架線柱が並んでいて廃線ムードは上々、途中駅の跡には駅名標のレプリカやホーム直付けベンチが設置されていて、サイクリストをお迎えしてくれます。
ただしこちらのサイクリングロード、序盤は未舗装区間が続くのでロードバイクだとちょっと走りにくく感じるかも知れません。まあ最近のディスクロードならタイヤも太めなので問題ないレベルですが、グラベルロードあたりだとベストかも知れませんね…
瀬戸大橋線に沿って南下してきたサイクリングロードは、鷲羽山に行く手を遮られるように西に向きを変えながら高度を上げてゆきます。
自転車だとそれほどきつくは感じない勾配ではありますが、鉄道での山越えはこれけっこうキツかったんじゃない?などと考えているうちにけっこうな高さまで上ってきました!
道中では世界一怖い自転車というウワサの鷲羽山ハイランドのスカイサイクルを見上げたり、瀬戸大橋ものぞむことができ、景色も楽しみながらゆるーくサイクリングは流れてゆきます。
後半は下り基調で高度を下げて、最後に開けた場所に出たと思ったらそこが終点『下津井駅』でした。
ここだけは線路も残されていて、軌間762mmのナローゲージなので線路幅がやっぱり狭い!ちなみにJRの在来線や多くの私鉄は1067㎜、新幹線や一部私鉄は1435㎜と2倍近い線路幅だったりするので、テツ的にはこの線路幅はけっこう萌えるものがあるのです(笑)
駅構内は2面のホームに車両基地が隣接していてかなり広大!車両の多くも無造作に留置されているので一見現役に見えないこともない風景に、両名しばらく見とれておりました。
露天での保存なので車両の傷みが気になるところですが、どうやら保存会の方々の手によって日々修繕がすすめられているようで、往時の姿をとどめてくれているのはうれしい限り❤
各地の廃線跡で車両の保存を行ってくれているボランティアの方々、本当にありがとうございます!!
さてここからもうひとっ走りして、最終ステージの待つ水島をめざしましょう!そしてここからの先導はなかじに完全丸投げで…(笑)
サイクリングロードと違って、この先のルートは少々複雑で道に迷ってしまいそうなのと、じつは時間も押してきておりまして、ここはツールドフランス解説で鍛えられた?なかじの高いナビゲーションを能力に頼るほかないという状況なのでした(汗)
ということで、約15kmにわたる一般道移動の間に遅延はほぼ解消!さすがプロロードレーサー&解説者、頼りになります❤
次にわれらがやってきたのは"水島臨海鉄道"の終点『三菱自工前駅』!臨海工業地帯だけあっ貨物専用線の廃線跡などもあり、期待を裏切らない鉄分濃度に期待が高まります♪♪なんとか予定の列車には間に合いそうなメドはたったので、ここでぜひ拝んでおきたい『水島貨物ターミナル駅』でちょっと寄り道(笑)
こちらは駅とはいっても特に乗客用ホームがあるわけではなく、貨物列車がやって来る場所と言う意味で貨物駅と呼ばれており、われわれのお目当ては隣接する車両基地にいる車両達なのですね。
水島臨海鉄道では"国鉄水島計画"なるプロジェクトがすすめられており、国鉄→JRと引き継がれて引退となった国鉄型車両を購入して、普段の営業車両として走らせているという奇特な鉄道会社で、今回もそんな国鉄型車両に乗るのを楽しみにしてここまでやって来たワケです!
そんな水島臨海鉄道の車両基地にはキハ20、30、37、38という国鉄時代に普通列車で活躍していた地味な(失礼!)車両が勢ぞろい!!しかも国鉄標準色、国鉄首都圏色、八高線色と、当時の色が再現されて、国鉄リスペクトな姿勢にテツのテンションは爆上がり!!!(なかじの表情からも推察できますね(笑))
離れがたくてフェンス越しにかぶりついていましたが、いよいよ列車の時間が迫ってきたので、断腸の思いでこの地を離れ、三菱自工駅まで戻ったら即行でバイクを畳んで、なんとかお目当ての列車には間に合うことがでました。
まだ帰宅ラッシュ前の車内はガラガラで、輪行袋を固定してようやくホッと一息つくことができました。ここからはお楽しみの乗り鉄旅を満喫してゆくことにしましょう!あいかわらずコンテンツ詰め込みすぎで時間に追われる展開となる癖は治りませんが、それでもなんとか成立しているのは、ホントになかじの協力あってこそだと感謝しております❤
そんなわれわれを乗せたキハ37(水島色)は、2013年まで千葉県の久留里線でながらく働いていた車両。飾り気のない質素な車内装飾は、これぞ国鉄型といった雰囲気でなにやら懐かしい…
終点の倉敷市駅までは約30分、国鉄型ディーゼルカーは水島臨海工業地帯をのんびりと走ってゆきます、一度列車に乗ってさえしまえば、あとは時間を気にすることなく運んでくれるので(遅延さえしなければ…)、やっぱり鉄道旅は安全・確実でリラックスできますね(笑)
そんなわれわれはいったん岡山駅まで戻って、そこから"特急スーパーいなば"に乗り換えて、日本海側の鳥取まで一気に移動してしまいます!2両編成と短いディーゼル特急スーパーいなばのキハ187系は、振り子式というカーブで車体を傾ける機構のおかげもあって、見た目によらず俊足で、岡山~鳥取間を2時間足らずで結んでしまいます。
こちらのキハ187系気動車、カーブの多いローカル線を左右に車体を傾けながらぶっ飛ばしてゆく高速性能の反面、見た目の悪さ(特に顔)からテツの間では評判の悪い車両なのですが、それも大人の事情があってこんなカタチになってしまったとか、いろんなよもやま話のネタにはつきない車両で、そんな鉄道談義をしているうちに、列車はこの日の宿泊地『鳥取駅』に到着したのでした。
ホテルにチェックインしてひと息ついたら、鳥取の街に繰り出して?夕飯タイムとしましょう!この日は全国旅行支援で地域クーポンが出ていたので、美味しく使わせていただきました(笑)
なかじには朝からあわただしい一日に付き合わせてしまいましたが、コンビでの輪行ツアーは初日からなかなかのチームワークではなかったかと思います。
ということで、一日目のリポートはこれにて終了!二日目は輪界鉄コンビがいく、日本一美しい廃線のレポートとなりますので、乞うご期待!!
写真と文:河井孝介(バイクプラス多摩センター店)
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