平均勾配9.8%のマルハオ山にフィニッシュするヴォルタ・アン・アルガルヴェ4日目で、トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が今季ロード初勝利。ピドコックはリーダージャージも獲得し、総合優勝の行方は24.4kmの個人TTが設定された最終日へ。



2日連続区間優勝でリーダージャージを着るマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

並行して開催されているブエルタ・ア・アンダルシアの主役がタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ならば、ポルトガルが舞台のヴォルタ・アン・アルガルヴェはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)が区間2連勝で総合首位を邁進している。

2月18日(土)に行われた大会4日目は、ビーチリゾート地アルブフェイラから北東にある山岳地帯を目指す177.9km。いずれも3km前後の急勾配坂を越え、最後は2級山岳マルハオ山(距離2.5km/平均9.8%)を2度登りフィニッシュする丘陵ステージだ。

相変わらずの晴天のこの日、総合首位コルトから30秒以内に20名がひしめく僅差のなか160名がスタート。僅か3km地点で飛び出したマティアス・ヴァチェク(チェコ、トレック・セガフレード)とルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)らが先行する形でレースは進行した。

ビーチリゾート地であるアルブフェイラがスタート地点のアルガルヴェ4日目 photo:CorVos

レース序盤の落車で左肩を痛め、レースを去ったサム・オーメン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
逃げに乗ったカスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)が山岳賞を獲得した photo:CorVos


メイン集団はEFエデュケーション・イージーポストが牽引してリーダーチームの責務を果たす。その一方でアスグリーンが序盤3つのカテゴリー山岳を全てトップ通過し、翌日が個人TTのためこの時点で山岳賞を確定させた。

最後まで一人粘ったアスグリーンを残り29kmで飲みこんだプロトンは、1度目のマルハオ山に突入。頂上手前で総合26位(38秒遅れ)のレミ・カヴァニャ(フランス、スーダル・クイックステップ)がアタックし、遅れて飛び出したコーブ・ホーセンス(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が合流して2名が頂上をトップ通過した。

2018年大会のこの登りで勝利し、総合優勝に輝いたミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)らが遅れたプロトンはボーラ・ハンスグローエが中心となり追走する。その甲斐もあり残り10kmで先頭2人を捉え、クライマーですら遅れ始める集団をスプリンターのマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)が牽引する。そしてトレンティンが役割を終え、フィニッシュの待つこの日2度目の2級山岳マルハオ山(距離2.5km/平均9.8%)が始まった。

プロトンに吸収されるカスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

最終山岳でほぼ全てのアタックに反応したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ロードレースで今シーズン初勝利を飾ったトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

アタックと吸収を繰り返しペースが乱高下するなかコルトが遅れ、母国勝利を狙うジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)がレース先頭へ。しかしここまでアタックのほぼ全てに反応したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が残り300mで軽やかに飛び出し、ハイスピードのままフィニッシュラインに飛び込んだ。

クラシックシーズンに注力すべく2連覇のかかるシクロクロス世界選手権を回避し、臨んだロードシーズンで初勝利を挙げたピドコック。「今日は調子がとても良かったんだ。ここまで2つのステージで勝利を逃していたので、今日こそは勝ちたかった。予想よりもフィニッシュまでの距離があり、後ろからの追い上げが来ると思っていた。しかし誰の姿も現れることはなかった」と、勝利を振り返った。

コルトが遅れたため総合首位に浮上したピドコックが「明日のTTは全力を尽くすのみだ」と意気込みを語った通り、翌日の最終日はラゴアを発着地点とする24.4kmの平坦個人タイムトライアル。総合9位(31秒遅れ)につけるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)と10位(32秒遅れ)のトビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)という新旧TT世界王者による区間&総合争いが注目される。

リーダージャージを着るトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を含む4賞ジャージが表彰台で並ぶ photo:CorVos
ヴォルタ・アン・アルガルヴェ2023第4ステージ結果
1位 トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4:28:39
2位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:01
3位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:05
4位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
5位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:11
6位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
7位 オスカー・オンレー(イギリス、チームDSM) +0:14
8位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +0:20
9位 トビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)
10位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
個人総合成績
1位 トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 19:30:13
2位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:05
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:07
4位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:17
5位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:21
6位 ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) +0:22
7位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +0:23
8位 マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:27
9位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:31
10位 トビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ) +0:32
その他の特別賞
ポイント賞 マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
山岳賞 カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)
ヤングライダー賞 オスカー・オンレー(イギリス、チームDSM)
チーム総合成績 イネオス・グレナディアーズ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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