2023/01/22(日) - 17:30
2023年シーズンのワールドツアー初戦サントス・ツアー・ダウンアンダーが閉幕。最終山岳ステージをサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)が制し、惜しくも敗れたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)が自身初となるステージレース総合優勝に輝いた。
興行クリテリウム「シュワルベクラシック」を含めると7日間の日程で開催されたサントス・ツアー・ダウンアンダーを締めくくるのは、距離112.5kmに獲得標高差3,131mの登りが詰め込まれた山岳ステージ。市街地アンレーから古い高速道路を抜け、1級山岳マウント・ロフティを含む約28kmのコースを4周する。
大会初登場となるマウント・ロフティは距離1.5km/平均7.3%/最大13.3%とウィロンガヒルには劣るものの、選手たちはフィニッシュを含め合計5回登坂するためその破壊力は抜群。3年振りに戻ってきたオーストラリア最大のレースに湧くファンの前で、大会と熾烈な総合争いはクライマックスを迎えた。
アクチュアルスタートが切られた直後に1回目のマウント・ロフティを越え、一つ目の中間ポイントをマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が先着する。ステージ優勝にこそ届かなかったものの、マシューズはポイント賞ジャージを確定させ、総合2位につけるサイモン・イェーツ(イギリス)のアシストをするべくプロトンに戻っていった。
この日は大会最終日ということもあり、結果を残せていないチームを中心に13名の逃げグループが形成された。最も総合タイムの良いヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)でも5分18秒差と総合の脅威ではなかったものの、総合3位(トップと15秒差)につけるペリョ・ビルバオ(スペイン)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスがプロトンの高速牽引を実行。逃げとメイン集団のタイム差が大きく拡がることはなく、最後から2回目のマウント・ロフティを前に逃げ集団を吸収した。
カレブ・ユアン(オーストラリアナショナルチーム)などスプリンターが脱落し、残り1周回に入ったメイン集団からマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が加速。これにより再び逃げ集団が形成される。なかでもマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)は積極的にアタックを繰り返し、フィニッシュまで17kmを残し単独走に持ち込んだ。
約30秒差をつけられたプロトンでは総合6位(50秒遅れ)のイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメカトラでストップ。オーストラリア王者ルーク・プラップのアシストも虚しくステージ優勝&総合争いから脱落した。
チームに今季初勝利をもたらすべく踏み続けたカッタネオだったが、逃げ集団に捉えられ、その逃げ集団も最後のマウント・ロフティを前に(残り8km)吸収される。そして前日勝者ブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が食らいつく先頭集団から、「マシューズの牽引に力を貰った」と語るサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がマウント・ロフティに入る直前の残り1.8kmで飛び出した。
総合2位(11秒遅れ)のイェーツのアタックには、当然オーカージャージ(濃いオレンジ色のリーダージャージ)を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)に加え、ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)が追従した。オージークライマー2人を引き離すべくイェーツは何度も加速を試みたものの実らず、勝負は第3ステージの再現のごとく、クライマー3名によるスプリント勝負に持ち込まれた。
残り250mから最初に腰を上げたのはヴァイン。その動きに冷静に反応したイェーツが背後につき、タイミングを図り先頭へ。第3ステージで惜しくも届かなかったステージ勝利を、イェーツは同じスプリントバトルの末掴み取った。
「唯一のオージーチームとして志高く臨んだ本大会。総合優勝には届かなかったものの、ステージ優勝ができて本当によかった」と安堵の表情で語ったイェーツ。「不運なメカトラに見舞われたマイケル(マシューズ)は勝利こそなかったものの、中間スプリントでポイントを稼ぎポイント賞に輝いた。僕自身は雨のプロローグでの走り(26秒遅れの区間38位)が悔やまれるが、その後はベストを尽くすことができたよ」と、チームと自身にとっての今季初勝利を喜んだ。
イェーツが「物凄い才能の選手が現れた。オージー選手の勝利に地元ファンはさぞかし喜んでいることだろうよ」と言う通り、総合優勝はヴァインの手に。「最終日ということもあり、逃げを狙う選手が多く混沌とした序盤だった。だからステージを通してつま先立ち(臨戦態勢)でい続けなければならなかった。だからこそ僕を守ってくれたチームメイトへの感謝が溢れる」と喜ぶヴァインは、アルペシン・ドゥクーニンクからUAEチームエミレーツに移籍後、早速結果を残すこととなった。
例年とは違うプロローグの導入や、大会を象徴するウィロンガヒルを廃しコークスクリューや初登場のマウント・ロフティを設定するなど、新しい試みが目白押しだった2023年ツアー・ダウンアンダー。母国のスター選手であるリッチー・ポートが引退した後、新たにヴァインというニュースター誕生など、3年振りの大会は大成功の様相で幕を閉じた。
この後、アデレードで取材したフォトグラファー辻啓氏による現地リポートや、プロバイク紹介などの記事を予定しています。
興行クリテリウム「シュワルベクラシック」を含めると7日間の日程で開催されたサントス・ツアー・ダウンアンダーを締めくくるのは、距離112.5kmに獲得標高差3,131mの登りが詰め込まれた山岳ステージ。市街地アンレーから古い高速道路を抜け、1級山岳マウント・ロフティを含む約28kmのコースを4周する。
大会初登場となるマウント・ロフティは距離1.5km/平均7.3%/最大13.3%とウィロンガヒルには劣るものの、選手たちはフィニッシュを含め合計5回登坂するためその破壊力は抜群。3年振りに戻ってきたオーストラリア最大のレースに湧くファンの前で、大会と熾烈な総合争いはクライマックスを迎えた。
アクチュアルスタートが切られた直後に1回目のマウント・ロフティを越え、一つ目の中間ポイントをマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が先着する。ステージ優勝にこそ届かなかったものの、マシューズはポイント賞ジャージを確定させ、総合2位につけるサイモン・イェーツ(イギリス)のアシストをするべくプロトンに戻っていった。
この日は大会最終日ということもあり、結果を残せていないチームを中心に13名の逃げグループが形成された。最も総合タイムの良いヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)でも5分18秒差と総合の脅威ではなかったものの、総合3位(トップと15秒差)につけるペリョ・ビルバオ(スペイン)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスがプロトンの高速牽引を実行。逃げとメイン集団のタイム差が大きく拡がることはなく、最後から2回目のマウント・ロフティを前に逃げ集団を吸収した。
カレブ・ユアン(オーストラリアナショナルチーム)などスプリンターが脱落し、残り1周回に入ったメイン集団からマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が加速。これにより再び逃げ集団が形成される。なかでもマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)は積極的にアタックを繰り返し、フィニッシュまで17kmを残し単独走に持ち込んだ。
約30秒差をつけられたプロトンでは総合6位(50秒遅れ)のイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメカトラでストップ。オーストラリア王者ルーク・プラップのアシストも虚しくステージ優勝&総合争いから脱落した。
チームに今季初勝利をもたらすべく踏み続けたカッタネオだったが、逃げ集団に捉えられ、その逃げ集団も最後のマウント・ロフティを前に(残り8km)吸収される。そして前日勝者ブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が食らいつく先頭集団から、「マシューズの牽引に力を貰った」と語るサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がマウント・ロフティに入る直前の残り1.8kmで飛び出した。
総合2位(11秒遅れ)のイェーツのアタックには、当然オーカージャージ(濃いオレンジ色のリーダージャージ)を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)に加え、ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)が追従した。オージークライマー2人を引き離すべくイェーツは何度も加速を試みたものの実らず、勝負は第3ステージの再現のごとく、クライマー3名によるスプリント勝負に持ち込まれた。
残り250mから最初に腰を上げたのはヴァイン。その動きに冷静に反応したイェーツが背後につき、タイミングを図り先頭へ。第3ステージで惜しくも届かなかったステージ勝利を、イェーツは同じスプリントバトルの末掴み取った。
「唯一のオージーチームとして志高く臨んだ本大会。総合優勝には届かなかったものの、ステージ優勝ができて本当によかった」と安堵の表情で語ったイェーツ。「不運なメカトラに見舞われたマイケル(マシューズ)は勝利こそなかったものの、中間スプリントでポイントを稼ぎポイント賞に輝いた。僕自身は雨のプロローグでの走り(26秒遅れの区間38位)が悔やまれるが、その後はベストを尽くすことができたよ」と、チームと自身にとっての今季初勝利を喜んだ。
イェーツが「物凄い才能の選手が現れた。オージー選手の勝利に地元ファンはさぞかし喜んでいることだろうよ」と言う通り、総合優勝はヴァインの手に。「最終日ということもあり、逃げを狙う選手が多く混沌とした序盤だった。だからステージを通してつま先立ち(臨戦態勢)でい続けなければならなかった。だからこそ僕を守ってくれたチームメイトへの感謝が溢れる」と喜ぶヴァインは、アルペシン・ドゥクーニンクからUAEチームエミレーツに移籍後、早速結果を残すこととなった。
例年とは違うプロローグの導入や、大会を象徴するウィロンガヒルを廃しコークスクリューや初登場のマウント・ロフティを設定するなど、新しい試みが目白押しだった2023年ツアー・ダウンアンダー。母国のスター選手であるリッチー・ポートが引退した後、新たにヴァインというニュースター誕生など、3年振りの大会は大成功の様相で幕を閉じた。
この後、アデレードで取材したフォトグラファー辻啓氏による現地リポートや、プロバイク紹介などの記事を予定しています。
サントス・ツアー・ダウンアンダー2023第5ステージ結果
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | 2:41:16 |
2位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | +0:02 |
4位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、トレック・セガフレード) | +0:03 |
5位 | スヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +0:06 |
6位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | ジョヴァンニ・アレオッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) | |
10位 | マウロ・シュミット(スイス、スーダル・クイックステップ) |
個人総合成績
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | 16:07:41 |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | +0:11 |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:27 |
4位 | マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) | +0:57 |
5位 | マウロ・シュミット(スイス、スーダル・クイックステップ) | +0:58 |
6位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | +1:04 |
7位 | スヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +1:06 |
8位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、トレック・セガフレード) | +1:07 |
9位 | ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) | +1:13 |
10位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) |
その他の特別賞
ポイント賞 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) |
山岳賞 | ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) |
ヤングライダー賞 | マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) |
チーム総合成績 | UAEチームエミレーツ |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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