シマノがアイウェアのハイエンドモデル"S-PHYREシリーズ"の新型モデル"CE-SPHR2"をリリース。トレンドの大型一眼レンズと、マグネット式のレンズ着脱システムが特徴の一本をテストした。



シマノ S-PHYRE CE-SPHR2(メタリックオレンジ) photo:Michinari TAKAGI

シマノのアイウェアの中で、ハイエンドモデルに位置付けられているS-PHYREシリーズ。第2世代のS-PHYREアイウェアとして新たに登場したのは、最近のトレンドである大きな一眼レンズを搭載したアイウェア"CE-SPHR2"だ。

丈夫で軽量なグリルアミドTR-90を素材とするフレームは、エアロダイナミクスを反映させた直線的なハーフリム仕様。テンプルは顔に沿うようなアールを描き、自然なフィット感を実現していることが特徴だ。TPEのテンプルチップや、4種類の厚みから調整できるリバーシブルノーズパッドによってフィット性を高めているため、ライド中にずれにくくレースに集中することができる。

ソフトテンプルチップを搭載 photo:Michinari TAKAGI

テンプルに”S-PHYRE”のロゴが入る photo:Michinari TAKAGI

このアイウェア最大の特徴は、他に類を見ないマグネット式のレンズ固定方式を採用していること。フレームの左右に備えられた2つの磁石でレンズをホールドしているため、簡単にレンズ交換を行うことができる。

嵌め合いが厳しくレンズ交換時にフレームを壊しそうになるアイウェアが存在する中で、そういった心配がなく簡単に交換できるシステムは非常にありがたい。レンズ交換のハードルが低くなることで、シチュエーションに応じたレンズを使い分けやすくなるはずだ。

シマノのアイウェアでは初となるマグネットレンズシステムを採用 photo:Michinari TAKAGI

大きな一眼レンズを採用 photo:Michinari TAKAGI

RIDESCAPE ORレンズを搭載したシマノ S-PHYRE CE-SPHR2(メタリックブルー) photo:Michinari TAKAGI
クリアのRIDESCAPE CLが同梱 photo:Michinari TAKAGI


アイウェアのレンズ素材はポリカーボネートが一般的だが、シマノは軽量で耐衝撃性に優れるポリアミドを採用している。ポリアミドはポリカーボネートのレンズと比較し約2g軽量に仕上がっており、マージナルゲインを求めるレーサー向けのS-PHYREグレードに相応しいスペックといえよう。

またレンズの寸法やカーブ形状は、欧米だけでなくアジア人なども含まれた世界中のサポート選手やスタッフのデータから算出されているため、様々な頭や顔の形状に合うように作られていることも魅力だ。さらにレンズには撥油・撥水コーティングが施されており、内側まで撥水仕様とされているため、どのようなシチュエーションでもレンズに汚れが付着しにくく、また曇る心配も少なくなっている。

RIDESCAPE RD(使用前) (c)シマノ
RIDESCAPE RD(使用後) (c)シマノ


RIDESCAPE OR(使用前) (c)シマノ
RIDESCAPE OR(使用後) (c)シマノ


メインレンズはRIDESCAPE GRレンズとRIDESCAPE RDレンズ、RIDESCAPE ORレンズの3種類、スペアレンズとしてクリアのRIDESCAPE CLが同梱される。カラーはマットブラック、メタリックブルー、メタリックオレンジ、メタリックレッドの4色展開となっている。付属品として、レンズポーチとトラベルボックス、交換用ノーズパッドが同梱されている。価格は19,800円(税込)。2023年モデルからシマノの公式オンラインストア限定で販売されるという。それでは編集部インプレッションに移っていこう。

遠征に適したトラベルボックスも付属 photo:Michinari TAKAGI
スペアレンズを収納できる photo:Michinari TAKAGI


豊富なカラーラインアップのシマノ S-PHYRE CE-SPHR2 photo:Michinari TAKAGI



―編集部インプレッション

インプレッションを担当するのは鼻が低くて頬骨が高い、いわゆる日本人顔であるCW編集部員の高木。普段は100% S3やオークリー SUTROなど大型一眼レンズのアイウェアを愛用し、それらの多くは付属する中で最も厚いノーズパッドを使用しフィットさせている。今回テストを行ったS-PHYRE CE-SPHR2にはリバーシブルのノーズパッドが付属し、SとM、L、XLの4サイズが用意されており、私は2番目に厚みのあるLサイズがしっくりきた。シマノレーシングの選手たちもLサイズを使用しているため、日本人にはLサイズが良さそう。これでフィットしなくても、M、XLと調整が行えるので、好みのフィット感は見つけられると思う。

フレーム造形面でもフィット感は良く、弧を描くテンプルは顔に沿ってくれるため、アジアンフィットとは謳ってはいないものの、丸型頭にフィットするヘルメットを愛用する筆者でもバッチリの着用感。テンプル部の締め付け具合も適度にあるが、ライド中に頭が痛くなるようなこともなかった。トレンドとなっている大型一眼アイウェアを着用したくてもフィット面で断念していた方はチェックしてもらいたい。

ノーズパッド交換は下方向に引き抜くだけ photo:Michinari TAKAGI

リバーシブルノーズパッドで4種類の厚みから調整可能 photo:Michinari TAKAGI


今回のテストで感心したのはマグネット式のレンズホールドシステム。慣れると約10秒でレンズ交換を完了させられるため、作業の手間を感じない。レース出走前やサイクリングに出かける前の天候変化や、元々装着していたレンズが状況に合わないときにも直ぐに対応できるため、レンズのチョイスを妥協しなくて良いのは嬉しいところ。

今回はRIDESCAPE RDレンズとRIDESCAPE ORレンズ、RIDESCAPE CLの3種類をテストした。RIDESCAPE RDレンズはアスファルトの凹凸を鮮明に見ることができるほどコントラストを高められた視界になり、細かな路面のひびや小石などに気が付きやすい。ロードバイクでサイクリングをする方にお勧めしたいレンズだった。

天候に応じてすぐにレンズを交換できる

横幅のフィット感が丁度良い

続いて、RIDESCAPE OFF-RDレンズは明るめの視界。山間を走るオフロードライドでは岩や木の根などの造形を確認しやすく、ライン取りでアドバンテージとなりそう。オフロードだけではなくロードでも活用でき、木漏れ日で日向と日陰が繰り返されるヒルクライムなどでは安定した視界を得ることが可能。トンネルが続くような山道を走る時はピッタリだ。

最後にクリアレンズのRIDESCAPE CLは言わずもがな曇りや雨のライドシーンに適している。今回のテストでは夜間ライドでその性能を確かめてみたのだが、対向車のヘッドライトで照らされても、レンズの反射防止コーティングによって目へのストレスが少なく、眩しく感じにくかった。

シクロクロス全日本選手権でRIDESCAPE ORレンズを搭載したシマノ S-PHYRE CE-SPHR2を使用する横山航太(シマノレーシング) photo:So Isobe

テンプルに搭載されたグリッパーによりヘルメットに収めやすい photo:Michinari TAKAGI

レンズを支えるフレームは非常に薄く作られているため、ハンドルのドロップ部を握ってスプリントするような前傾姿勢でもフレームが視界を妨げることはなかった。レンズを通した視界は非常に広く、視界の端で起こっていることも何となく把握しやすく、安心してスプリントに臨めそう。また顔を覆う面積が広いため、粉塵や風、虫などが目に当たりにくく、プロテクション性能も申し分ない。風の巻き込みも少なく、強風の中でも快適に過ごせるアイウェアに仕上がっていると言える。

RIDESCAPE ROADレンズはコントラストを高められた視界になるため、路面状況を把握しやすい

風が強い日でも粉塵や虫から目を守ってくれる

大きな一眼レンズを採用しながらも、重量が29.3gと軽量なこと、レンズ交換の手間が圧倒的に少なく、状況に応じたレンズチョイスを行える点、フラッグシップモデルらしい高いフィット感が魅力の"S-PHYRE CE-SPHR2"。今回のテストを通じて多くのサイクリストにフィットするアイウェアに仕上げられていると感じたおすすめの一本だ。



シマノ S-PHYRE CE-SPHR2
カラー:マットブラック、メタリックブルー、メタリックオレンジ、メタリックレッド
重量:29.3g
価格:19,800円(税込)

text:Michinari Takagi

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