地図上に散らばるチェックポイントを制限時間内に回り、稼いだ得点を競うサイクルイベント「松本・安曇野サイクルロゲイニング」のレポート後編。2日目は松本エリアの様子とともに、サイクルロゲイニングの秘められた魅力を紐解いていこう。(※前編はこちらから



松本城をバックに全員集合 心地よい秋晴れに恵まれた松本城をバックに全員集合 心地よい秋晴れに恵まれた


2日目は安曇野市から10kmほど南下し、松本市街に舞台を移す。朝靄に包まれ幻想的な松本城公園広場に、昨日と変わらず多くの「ロゲイナー」が集った。なお、イベントとは別で多くの観光客がここ松本城を訪れ、全国旅行支援の成果もあろうか、観光大国ニッポンのリスタートを予感させる1日であった。

サイクルロゲイニングのルール詳細は、ぜひレポート前編を参照されたし。松本ステージはスタート9時、ゴール14時までの5時間勝負。昨日同様に秋晴れが広がり、暑くも寒くもない絶好のサイクリング日和となった。山脈に囲まれた、松本盆地内の市街はほぼフラット。長野県の主要都市とあり、見どころは昨日にも増して盛りだくさんだ。市街地を抜ければ、サイクリング向きの道が広がるのも安曇野同様。

2日目のスタート / ゴール地点は松本城広場 早朝からサイクリストが集う2日目のスタート / ゴール地点は松本城広場 早朝からサイクリストが集う
四方八方へ走り出していく参加者 園内は押し歩きで四方八方へ走り出していく参加者 園内は押し歩きで 安曇野方面を目指す女子ふたり旅安曇野方面を目指す女子ふたり旅


早速余談だが、決まったルートが存在しない本イベント。取材する側からして、どのCPにいつ参加者が訪れるかは運次第、撮影ポイントのチョイスに頭を悩ませることに。結果、誰もいない田園路を延々走り続ける時間もあった(景色は最高で充実感はあるが)。松本東側を全くチェックできなかったのが悔やまれる。

マップと勘を頼りに、メイン会場から南東に伸びる県道63号「アルプス展望しののめのみち」沿いで、参加者を待ち構えた。このルートは普段から地元サイクリストに人気のようで、絶景を楽しみつつノンストップでライドに集中できる。道沿いのCP数はそこまで多くないが、絶景続きで走りやすく、高得点が狙えるルート。南西周りを選んだ参加者はそこそこいたようだ。

柿と琵琶の木がよく見られる松本エリア柿と琵琶の木がよく見られる松本エリア
レンタサイクルでヒルクライム アシスト付きで多少はラクになる?レンタサイクルでヒルクライム アシスト付きで多少はラクになる? 市街を見下ろしながらのダウンヒル市街を見下ろしながらのダウンヒル


登りの末にたどり着く松川パン商店登りの末にたどり着く松川パン商店 松川パン商店の黄金ラインナップ 全部ください松川パン商店の黄金ラインナップ 全部ください


パン屋の対岸から松本市街を見下ろすパン屋の対岸から松本市街を見下ろす
両日参加グループの中には、2日目はパン屋のみにフォーカスしたり、クーポンを使い切る事を念頭にCPを選んだりと、ポイント稼ぎに留まらない遊び方を見出す方もいたようだ。筆者も昨日余ったクーポンをフル活用し、ライド中の補給は出費0円で済ませることができた(それでもなおクーポンは余った)。なおクーポンは年末まで有効で、イベント後に再訪して利用してもOK。また、松本ステージのみに参加し、より走りやすい安曇野を目指し北上するグループも見られた。

ポイント獲得に注力してサクサク回り、豪華賞品を目指すのもよし。お土産を求めてまったり走り、合間に秋めく景色を楽しむのもよいだろう。ルーティングに正解は無く、制限時間の限り自由に動ける。自らの興味や脚力に合わせて最適解を組み立てるプロセスこそ、サイクルロゲイニングの醍醐味といえよう。付け足すと、指定のCP以外でも魅力的なスポットが自ずと見つかる、そんな自由闊達なイベントだった。また、レンタサイクルで参加OKであり、日頃自転車に乗らない層でも思わず夢中になれるはず。

ポプラCoffee Houseは序盤のカフェタイムにぴったりポプラCoffee Houseは序盤のカフェタイムにぴったり 厚切りトーストのモーニング しかし次のCPはパン屋に決定厚切りトーストのモーニング しかし次のCPはパン屋に決定


中華そばの日暈(ひがさ) マップの南東端で獲得ポイント高めの設定中華そばの日暈(ひがさ) マップの南東端で獲得ポイント高めの設定 日暈の中華そばはシンプルイズベスト ここでランチ休憩の方が多かった日暈の中華そばはシンプルイズベスト ここでランチ休憩の方が多かった


パンダが目印、アガタベーカリー神田 寄り道必須のCPだパンダが目印、アガタベーカリー神田 寄り道必須のCPだ 鈴木雷太氏の手掛けるプロショップ「BIKE RANCH」 松本のサイクリストから支持を集める名店鈴木雷太氏の手掛けるプロショップ「BIKE RANCH」 松本のサイクリストから支持を集める名店


ゴールしたら集計表をもらい、獲得ポイントを手計算するゴールしたら集計表をもらい、獲得ポイントを手計算する
全員クロスバイクの御三方 松本市街を楽しみつくしガッツポーズ全員クロスバイクの御三方 松本市街を楽しみつくしガッツポーズ 2日間の総合上位もしっかり表彰 まるでステージレース2日間の総合上位もしっかり表彰 まるでステージレース


あっという間に14時の鐘を聞き、表彰式へ。松本ステージのトップ3に加えて、2日間の総合優勝も選出された。またしても始まる特別賞、参加賞の贈呈ラッシュに、実行委員会側に利益が残るのかこちらが心配になるほど。そしてイベント後は、その地域の魅力スポットを自らの足で開拓したという思い出が残る。次回開催では未踏のCPを目指したり、今回知り得たスポットを繋いでオリジナルルートを組み立てたりと、イベント後の楽しみ方も開けてくるだろう。

上位入賞バイクはヤマハ製E-MTBのYPJシリーズ アシストパワーと無駄のないルーティングが勝利を呼び寄せた上位入賞バイクはヤマハ製E-MTBのYPJシリーズ アシストパワーと無駄のないルーティングが勝利を呼び寄せた
表彰式の後、トップワンツーを射止めた斎藤さんと勝田さんにインタビューを行った。シーズン中は月1ペースでロゲイニング(自転車なし、自脚で回るほうの)を楽しむ、まさにガチ勢だ。

両名が選んだバイクは、ヤマハ製のE-MTBであるYPJシリーズ。勝田さんがハードテイルのYPJ-XC、斎藤さんがフルサスのYPJ-MT Proを、ほぼノーマル仕様のまま2日間のイベントを走り切った。曰く、ストップアンドゴーが多いためEバイクのアシストがプラスに働いたとのこと。さらに、CP位置を暗記しておりマップを見る必要があまりなかったという、驚きのコメントまで飛び出した。

豊富なロゲイニング経験、バイクを含めた装備セレクト、無駄のないルーティングが勝利の鍵となったようだ。Eバイクが優勝するとは、なんとも興味深い大会であった。

ヤマハ製ユニットがストップアンドゴーをサポートヤマハ製ユニットがストップアンドゴーをサポート
左腕にGPSスマートウォッチ、右腕にコンパスを装備 ロゲイニング経験から得た知恵だ左腕にGPSスマートウォッチ、右腕にコンパスを装備 ロゲイニング経験から得た知恵だ ホルダー類は一切つけない潔い仕様 バックミラーで安全性をプラスホルダー類は一切つけない潔い仕様 バックミラーで安全性をプラス


以下、全国のサイクルツーリズム事業者、地域活性化の担当職員など、イベント開催側の方々に向けて書きたい。

全国各地でサイクリングを絡めた観光誘致が進み、毎週末多くのイベントが開催される昨今。地域振興という文脈において、サイクルロゲイニングは大いに実りをもたらすポテンシャルがあると感じた。参加者側にとってのサイクルロゲイニングは、初めて訪れる街の見どころを、短時間でギュッと楽しみ、理解するきっかけになるだろう。その地の名所を心のままに周遊し、遊び尽くした頃には、自然とその街のファンになっているはず。はじめてのサイクルイベントとしても魅力的であり、普段自転車に乗らない地元住民でも楽しめ(むしろ、ローカルのほうが勝機があるとも言える)、幅広い層を受け入れることにつながる。

そして開催側にとっては当然、地域の魅力を広範にアピールできる絶好のチャンスとなるだろう。加えて大規模な交通規制が必要なく、大会運営本部は小規模な設営で済み、エイドステーションも不要と、比較的低コストで催行可能だと思われる。サイクリストが地元にお金を落としてくれれば、住民の自転車推進への理解も深まるのではないだろうか。松本・安曇野サイクルロゲイニングの成功を、他地域にも展開されることを願う。全国津々浦々、多種多様なサイクルロゲイニングを走ってみたいと、強く感じた次第だ。

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実行委員会の皆様 2日間お疲れ様でした!実行委員会の皆様 2日間お疲れ様でした!


幼い頃、誰もが一度はスタンプラリーに興じた経験があるだろう。指定のポイントを周遊するという意味では、サイクルロゲイニングはそれに近い体験だ。しかし、子供騙しと決して侮ってはいけない、奥深いサイクルイベントであった。超ロングライド完走後の達成感とも、レースを繰り広げる高揚感とも、一味違う。じんわりと染み渡るような、優しい満足感に包まれるはずだ。実行委員会松島氏の閉会挨拶の後、自然と温かな拍手が巻き起こったのが印象的だった。

地図を頼りに目的地を目指す。サイクリングの原初体験とでも言おうか、楽しい上澄みだけを掬い取ったかのような、豊かな時間を過ごせるはず。老いも若いも、どんなサイクリストでも平等に楽しめる。サイクルロゲイニングの懐の深さを、目の当たりにした2日間であった。

text&photo:Ryota Nakatani
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