フィニッシュ直後、そして表彰式で涙を流したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)は「頭や身体でアルカンシエルを味わっていた」とその理由を語った。25kmの独走劇の末、22歳にして世界選手権王者に輝いたエヴェネプールのコメントを紹介します。



自身初のエリート世界選手権制覇を遂げたレムコ・エヴェネプール(ベルギー)	自身初のエリート世界選手権制覇を遂げたレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
レース直後インタビュー

(優勝した)ジュニアとは比べ物にならないほど厳しいレースだった。その時よりもレース時間は2〜3時間長く、強度も遥かに高い。今シーズンは長く、それをこんな形で終えることができるなんて最高に嬉しい。

2人で飛び出すと、各々が限界まで牽引するもの。早い段階で僕の方がアレクセイ(ルツェンコ)よりも強いということがわかった。だからこそ1人になりたかった。このような周回コースでは無駄にする時間はないんだから。最後の丘(マウント・プレサント)はとても辛く、脚の感覚がなくなり爆発する寸前だった。

頂上で彼(ルツェンコ)の脚が限界だと分かり、下りの距離が長くフィニッシュまで5kmの平坦路が続くことも知っていた。また周りからタイム差が拡がっているとも聞かされていた。だからこそ踏み続けた。だってこれは世界選手権で、アルカンシエルを掴み取るためには1秒たりとも失うことはできないんだから。

ルツェンコを置き去りにするレムコ・エヴェネプール(ベルギー)ルツェンコを置き去りにするレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
今日のレースはチームワークそのものと呼べるもの。レースの前から繰り返し言っていたことだが、チームの誰かが勝てばよかった。勝つチャンスはワウト(ファンアールト)か僕にあるだろうと思っており、僕が勝つためには早い段階で飛び出し、ワウトはスプリントに持ち込むことだった。今日は僕のアーリーアタックが上手くいっただけ。この勝利は僕らに相応しい。僕たちは勝利に相応しいレースをすることができた。

ーアルカンシエルは夢の1つだったか?

もちろん。ただ残念なのはもう10月だということ。(来年の世界選手権は7月開催なので)アルカンシエルを着用できる期間が短いということは、とても残念だよね。もちろん世界選手権はずっと夢見てきた目標だ。モニュメントや主要クラシック、グランツールで優勝し、世界選手権まで優勝できるなんて。今年は勝てるレースは全て勝った気がするよ。こんな素晴らしいシーズンは2度とやってこないと思う。

フィニッシュラインを越えた瞬間、手で顔を覆ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)フィニッシュラインを越えた瞬間、手で顔を覆ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
笑顔でアルカンシエルを受け取ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)笑顔でアルカンシエルを受け取ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
表彰式後インタビュー

世界選手権優勝という栄光が頭や身体にもたらす喜びを感じ、涙した。長い間家に帰れず、ブエルタの優勝もまともに祝福できないなか世界選手権のタイムトライアルに頭を切り替えなければならなかった。TTでのコンディションは最良ではなかったが、その後は日を追うごとにコンディションが上がっていった。その末に掴んだ勝利だ。涙を流す理由はたくさんある。

小周回に入った一周目で脚の良さを感じ、そこで僕を導いてくれたイヴ・ランパールトに「まるで(勝利した)リエージュの時のように調子がいい。もしくはそれ以上だ」と伝えた。コンディションの良さはスタートから感じていて、良いレベルの走りができると思っていた。だが他の選手の調子はわからず、世界選手権は常にトリッキーな展開だし…でも勝てて本当に嬉しいよ。

表彰式で涙を流すレムコ・エヴェネプール(ベルギー)表彰式で涙を流すレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
アルカンシエルを獲得できたなんて信じられない。でも僕にできることは、不可能とも思える勝利を目指し、自分を信じて何度も挑戦するだけ。今日のような時のために僕たちは走っているんだ。今日僕たちがチームとして見せた走りは素晴らしく、展開が動く時には必ずチームメイトが反応していた。一度たりとも後手に回ったり、守りに入ることはしなかった。僕はレースの早い段階から積極的に行き、ワウト(ファンアールト)はスプリントに備えていた。事前の予想でも僕たちが最も強いと目されていたが、実際のレースでも僕たちが最強だった。

他の選手たちのコメントは、別記事で紹介します。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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