2022/09/10(土) - 08:55
2級山岳を2度登るブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージでマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が圧勝。登坂をこなし、スプリントで勝てる持ち味を存分に発揮して今大会3勝目をマークした。
9月9日(金)第19ステージ
タラベラ・デ・ラ・レイナ〜タラベラ・デ・ラ・レイナ 138.3km(丘陵)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャも残すところ僅か3日間。いよいよレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)のキャリア初となるグランツール総合優勝が現実味を強く帯びる中、首都マドリードの南部に位置するカスティーリャ=ラ・マンチャ州を舞台に第19ステージが開催された。
「陶器の街」タラベラ・デ・ラ・レイナをスタートし、北にある2級山岳プエルト・デル・ピエラガ(距離9.3km/平均5.6%)を含むコースをぐるっと2周回。グランツールとしては珍しい周回コースであり、2度目の頂上から42.2km先にフィニッシュラインが用意されるコースは、ピュアクライマーには登坂力で劣る「逃げ屋」にとっては(翌日が山岳コースであるため)最後のチャンスだ。
前日の落車で激しく落車した総合5位カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)は、身体のあちこちに包帯を巻いた状態でレースを継続。前日に死去したイギリスのエリザベス女王に哀悼を示すため、イギリス人選手や、イギリス籍のイネオス・グレナディアーズを先頭にユニオンジャックを示して黙祷が捧げられた。
この日はスタートからさほど時間を要さず、前日アシストとして尽力したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)とヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてアンデル・オカミカ(スペイン、ブルゴスBH)という3名がエスケープ。続いてローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が先日の失敗のリベンジのために集団を飛び出した。
さらにはステージ優勝狙いに切り替えたユンボ・ヴィスマ(オーストラリア)などもメイン集団から先行したものの、大きなリードを稼ぐことができず、トレック・セガフレードがコントロールを開始したメイン集団にやがて引き戻される。逃げに追い付かず、メイン集団とも離れた状態で宙ぶらりんのまま走っていたクラドックも、フィニッシュまで100kmを切ったタイミングで自ら吸収されることを選択した。
緑のマイヨプントスが板についたマッズ・ピーダスン(デンマーク)を勝たせるべく、トレック・セガフレードはクイックステップ・アルファヴィニルの出る幕がないほどの強力なペースメイクで逃げグループとの間隔を調整。「マクナルティの入った3人による逃げは強く、差を縮めるためにハードなテンポに持ち込まなめればならなかった」とピーダスンが振り返るように、2度目の2級山岳プエルト・デル・ピエラガ手前でタイム差は1分を割り込んだ。
山岳区間に入るとバーレーン・ヴィクトリアスが主導権を握り、フレッド・ライト(イギリス)のライバルを振り落とすためにハイペースを刻んで逃げる3名を吸収。前日の落車で山岳賞首位のままリタイアしたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)に代わりマイヨモンターニャを着たリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)は山頂手前で加速して首位通過。合計ポイントを45から50点に伸ばして同2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)を引き離している。
パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)もダニー・ファンポッぺル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)も、カーデン・グローブス(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)も脱落し、ピーダスンにとって理想的なシナリオでフィニッシュまで続くダウンヒルと平坦区間を消化する。
登坂によって各チームの平坦系アシストが消耗しているため、集団スプリントフィニッシュ前とは思えないスローペースの牽制状態を挟み、残り10kmを切ってからようやく各チームが本格的なスピードアップを開始。イネオス・グレナディアーズのペースメイクで終盤戦を駆け抜け、タイミングを見計らっていたトレック列車が残り1km地点から主導権を奪い返した。
ペースを上げたジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が離れたタイミングで「このままスプリントしたら勝ち目はないと思った」と言うマイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)がロングスパートで抜け出したものの、ピーダスンは慌てることなくアントニオ・ティベリ(イタリア、トレック・セガフレード)に追走を託し、スコットソンを目前に捉えたタイミングでスプリントを開始する。力強くもがき続けたピーダスンに対し、ライトやジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は為す術が無かった。
絶好調ピーダスンが、マイヨプントスを見せつけるかのように今大会3勝目。ハットトリックを達成した元世界王者は「予想を遥かに超えた結果だ。本当に嬉しいことだけれど、まずは明日を無事に乗り切って最終日に備えたい。でも(勝てなかったとしても)既にスペインでの3週間は素晴らしいものになっている」と、最終日のスプリント勝負で大会4勝目を見据えている。
総合上位勢はトラブルなく最終山岳ステージ前の一日を終了。マイヨロホのエヴェネプールは「今日の登りはかなり厳しかったので、マッズはよくやったと思う。勝利を収めたトレックを祝福したい」と余裕すら漂わせるコメントを残している。
9月9日(金)第19ステージ
タラベラ・デ・ラ・レイナ〜タラベラ・デ・ラ・レイナ 138.3km(丘陵)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャも残すところ僅か3日間。いよいよレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)のキャリア初となるグランツール総合優勝が現実味を強く帯びる中、首都マドリードの南部に位置するカスティーリャ=ラ・マンチャ州を舞台に第19ステージが開催された。
「陶器の街」タラベラ・デ・ラ・レイナをスタートし、北にある2級山岳プエルト・デル・ピエラガ(距離9.3km/平均5.6%)を含むコースをぐるっと2周回。グランツールとしては珍しい周回コースであり、2度目の頂上から42.2km先にフィニッシュラインが用意されるコースは、ピュアクライマーには登坂力で劣る「逃げ屋」にとっては(翌日が山岳コースであるため)最後のチャンスだ。
前日の落車で激しく落車した総合5位カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)は、身体のあちこちに包帯を巻いた状態でレースを継続。前日に死去したイギリスのエリザベス女王に哀悼を示すため、イギリス人選手や、イギリス籍のイネオス・グレナディアーズを先頭にユニオンジャックを示して黙祷が捧げられた。
この日はスタートからさほど時間を要さず、前日アシストとして尽力したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)とヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてアンデル・オカミカ(スペイン、ブルゴスBH)という3名がエスケープ。続いてローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が先日の失敗のリベンジのために集団を飛び出した。
さらにはステージ優勝狙いに切り替えたユンボ・ヴィスマ(オーストラリア)などもメイン集団から先行したものの、大きなリードを稼ぐことができず、トレック・セガフレードがコントロールを開始したメイン集団にやがて引き戻される。逃げに追い付かず、メイン集団とも離れた状態で宙ぶらりんのまま走っていたクラドックも、フィニッシュまで100kmを切ったタイミングで自ら吸収されることを選択した。
緑のマイヨプントスが板についたマッズ・ピーダスン(デンマーク)を勝たせるべく、トレック・セガフレードはクイックステップ・アルファヴィニルの出る幕がないほどの強力なペースメイクで逃げグループとの間隔を調整。「マクナルティの入った3人による逃げは強く、差を縮めるためにハードなテンポに持ち込まなめればならなかった」とピーダスンが振り返るように、2度目の2級山岳プエルト・デル・ピエラガ手前でタイム差は1分を割り込んだ。
山岳区間に入るとバーレーン・ヴィクトリアスが主導権を握り、フレッド・ライト(イギリス)のライバルを振り落とすためにハイペースを刻んで逃げる3名を吸収。前日の落車で山岳賞首位のままリタイアしたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)に代わりマイヨモンターニャを着たリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)は山頂手前で加速して首位通過。合計ポイントを45から50点に伸ばして同2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)を引き離している。
パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)もダニー・ファンポッぺル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)も、カーデン・グローブス(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)も脱落し、ピーダスンにとって理想的なシナリオでフィニッシュまで続くダウンヒルと平坦区間を消化する。
登坂によって各チームの平坦系アシストが消耗しているため、集団スプリントフィニッシュ前とは思えないスローペースの牽制状態を挟み、残り10kmを切ってからようやく各チームが本格的なスピードアップを開始。イネオス・グレナディアーズのペースメイクで終盤戦を駆け抜け、タイミングを見計らっていたトレック列車が残り1km地点から主導権を奪い返した。
ペースを上げたジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が離れたタイミングで「このままスプリントしたら勝ち目はないと思った」と言うマイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)がロングスパートで抜け出したものの、ピーダスンは慌てることなくアントニオ・ティベリ(イタリア、トレック・セガフレード)に追走を託し、スコットソンを目前に捉えたタイミングでスプリントを開始する。力強くもがき続けたピーダスンに対し、ライトやジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は為す術が無かった。
絶好調ピーダスンが、マイヨプントスを見せつけるかのように今大会3勝目。ハットトリックを達成した元世界王者は「予想を遥かに超えた結果だ。本当に嬉しいことだけれど、まずは明日を無事に乗り切って最終日に備えたい。でも(勝てなかったとしても)既にスペインでの3週間は素晴らしいものになっている」と、最終日のスプリント勝負で大会4勝目を見据えている。
総合上位勢はトラブルなく最終山岳ステージ前の一日を終了。マイヨロホのエヴェネプールは「今日の登りはかなり厳しかったので、マッズはよくやったと思う。勝利を収めたトレックを祝福したい」と余裕すら漂わせるコメントを残している。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第19ステージ結果
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 3:19:11 |
2位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
3位 | ジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
4位 | ベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
6位 | ヨナス・コッホ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | オメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・プレミアテック) | |
8位 | ラウル・ガルシア(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | |
9位 | ミゲルアンヘル・ロペス(スペイン、アスタナ・カザフスタン) | |
10位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 73:18:23 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +2:07 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +5:14 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) | +5:56 |
5位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:49 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +7:14 |
7位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +8:09 |
8位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | +9:34 |
9位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) | +9:56 |
10位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +12:03 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 379pts |
2位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 174pts |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 133pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 50pts |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 26pts |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | 23pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 73:18:23 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +5:14 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:49 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 219:08:58 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +48:53 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +1:11:54 |
text:So Isobe
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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