2022/09/09(金) - 06:18
2022年ブエルタ最後の山頂フィニッシュでレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)がダメ押しのステージ優勝。逃げ切り勝利目前のロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を捉え、その強さを今一度アピールした。
9月8日(木)第18ステージ
トルヒーリョ〜アルト・デル・ピオルナル 192km(山岳)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャもいよいよ佳境。鉄壁の走りを披露するレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の総合優勝が着実に近づく中、2022年大会の山岳ステージはこの第18ステージを含めて残り2日、しかも頂上フィニッシュはこの日が最後。
最初の山岳が現れるのはトルヒーリョを出発して106km進んでから。足慣らしには急勾配すぎる2級山岳アルト・デ・ラ・デセスペラ(距離3.7km/平均9.4%)を越え、その後1級山岳アルト・デル・ピオルナル(距離13.5km/平均5%)を2度登る。登り口に11%が登場するものの、それ以外は5〜6%と比較的緩い勾配が続くため難易度は高くない。
ここまで積極的に逃げを打ってきたサムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)が発熱で、ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)が気管支炎でスタートせず。136名まで減ったプロトンにリアルスタートの旗が振られると、残り数少なくなった逃げ切りチャンスを掴むべく次々とアタックが掛かった。
高速アタック合戦を続ける最中、36km地点で発生した落車にジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)や総合4位カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)ら複数名が巻き込まれてしまう。ロドリゲスは激しく擦過傷を負いつつもレース復帰した一方、激しく身体を打ち付けたヴァインはマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着たまま担架で救急車に乗せられてリタイア。今大会でキャリア初勝利を含む2勝を挙げ、マドリードでの山岳賞表彰を目指していた26歳は涙のレース離脱を強いられることに。共に落車し、一度はレース復帰したカンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)も棄権を選んでいる。
そんな混乱を経て、この日は43名というレース全体の1/3に近い人数の逃げグループが形成された。リゴベルト・ウラン(コロンビア)の勝利で波に乗るEFエデュケーション・イージーポストが実に5名を、あと一歩勝利に届かないアルケア・サムシックが4名を、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)のリタイアによってステージ優勝狙いに切り替えたユンボ・ヴィスマが3名を送り込んだ大集団が先行。リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)やティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)といった強豪勢もこの中に入って逃げ切りを目指した。
一方メイン集団からは、この状況をチャンスとみた総合6位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)がアタック。「とても調子が良かったのでフィニッシュから遠い場所でアタックしようと思っていた」と言うアルメイダは、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)に引き連れられて集団を飛び立ち、さらに前から降りてきたマルク・ソレル(スペイン)に引っ張られる形で、積極的にアタックが掛かる逃げグループへの合流を目指した。
1回目の1級山岳アルト・デル・ピオルナル(距離13.5km/平均5%)では先頭グループからセルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)とヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてピノがアタックし、追撃を経てカラパスとエリー・ジェベール(フランス、アルケア・サムシック)とロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が合流。ヴァインのリタイアによって山岳賞ランキング首位に立ったカラパスは1級山頂を先頭通過するなど、ポイント集めに奔走することとなった。
ダウンヒルを経て、2度目のアルト・デル・ピオルナルに突入した時点での先頭グループのリードはアルメイダが合流して引っ張る第2グループに対して1分20秒。クイックステップ・アルファヴィニルやモビスターがペースアップするメイン集団はそこから40秒遅れ。先頭グループのヘーシンクがジェベールのアタックを捕まえて独走に持ち込む一方、メイン集団ではフィニッシュまで10kmを残して総合2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)がアタック。しかしレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)はその背中をガッチリと捉えて離さなかった。
モビスターが積極的にハイペースを刻んでメイン集団を絞り込み、先行グループとの差を縮める中でマスが再度アタックするものの決まらない。逃げ切りでのタイム差挽回を目指していたアルメイダを捉え、残り1km地点を22秒差で駆け抜けたヘーシンクも、三度アタックして抜け出したマスとエヴェネプールに残り400mを切って捉えられてしまった。
捕まってもなお全力でフィニッシュを目指すヘーシンクをリードアウト役に見立て、残り200mを切った緩斜面区間でエヴェネプールがスプリントを開始。持ち前の爆発力を存分に発揮してマスを振り切り、フィニッシュラインをくぐると共にマイヨロホをアピール。第10ステージ(個人TT)に続く今大会2勝目を挙げることとなった。
「僕の人生で1つの達成と言える勝利。逃げ切りを容認するつもりだったけれど、マスについていったら優勝のチャンスが転がってきた」と振り返るエヴェネプールは、ボーナスタイムを得てマスとのタイム差を2分07秒に、3位以降のメンバーに対してさらに拡大。落車のダメージを受けたロドリゲスは遅れ、総合5位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ・カザフスタン)との順位変動が起きている。
各選手のコメントは別記事で紹介します。
9月8日(木)第18ステージ
トルヒーリョ〜アルト・デル・ピオルナル 192km(山岳)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャもいよいよ佳境。鉄壁の走りを披露するレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の総合優勝が着実に近づく中、2022年大会の山岳ステージはこの第18ステージを含めて残り2日、しかも頂上フィニッシュはこの日が最後。
最初の山岳が現れるのはトルヒーリョを出発して106km進んでから。足慣らしには急勾配すぎる2級山岳アルト・デ・ラ・デセスペラ(距離3.7km/平均9.4%)を越え、その後1級山岳アルト・デル・ピオルナル(距離13.5km/平均5%)を2度登る。登り口に11%が登場するものの、それ以外は5〜6%と比較的緩い勾配が続くため難易度は高くない。
ここまで積極的に逃げを打ってきたサムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)が発熱で、ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)が気管支炎でスタートせず。136名まで減ったプロトンにリアルスタートの旗が振られると、残り数少なくなった逃げ切りチャンスを掴むべく次々とアタックが掛かった。
高速アタック合戦を続ける最中、36km地点で発生した落車にジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)や総合4位カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)ら複数名が巻き込まれてしまう。ロドリゲスは激しく擦過傷を負いつつもレース復帰した一方、激しく身体を打ち付けたヴァインはマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着たまま担架で救急車に乗せられてリタイア。今大会でキャリア初勝利を含む2勝を挙げ、マドリードでの山岳賞表彰を目指していた26歳は涙のレース離脱を強いられることに。共に落車し、一度はレース復帰したカンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)も棄権を選んでいる。
そんな混乱を経て、この日は43名というレース全体の1/3に近い人数の逃げグループが形成された。リゴベルト・ウラン(コロンビア)の勝利で波に乗るEFエデュケーション・イージーポストが実に5名を、あと一歩勝利に届かないアルケア・サムシックが4名を、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)のリタイアによってステージ優勝狙いに切り替えたユンボ・ヴィスマが3名を送り込んだ大集団が先行。リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)やティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)といった強豪勢もこの中に入って逃げ切りを目指した。
一方メイン集団からは、この状況をチャンスとみた総合6位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)がアタック。「とても調子が良かったのでフィニッシュから遠い場所でアタックしようと思っていた」と言うアルメイダは、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)に引き連れられて集団を飛び立ち、さらに前から降りてきたマルク・ソレル(スペイン)に引っ張られる形で、積極的にアタックが掛かる逃げグループへの合流を目指した。
1回目の1級山岳アルト・デル・ピオルナル(距離13.5km/平均5%)では先頭グループからセルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)とヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてピノがアタックし、追撃を経てカラパスとエリー・ジェベール(フランス、アルケア・サムシック)とロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が合流。ヴァインのリタイアによって山岳賞ランキング首位に立ったカラパスは1級山頂を先頭通過するなど、ポイント集めに奔走することとなった。
ダウンヒルを経て、2度目のアルト・デル・ピオルナルに突入した時点での先頭グループのリードはアルメイダが合流して引っ張る第2グループに対して1分20秒。クイックステップ・アルファヴィニルやモビスターがペースアップするメイン集団はそこから40秒遅れ。先頭グループのヘーシンクがジェベールのアタックを捕まえて独走に持ち込む一方、メイン集団ではフィニッシュまで10kmを残して総合2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)がアタック。しかしレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)はその背中をガッチリと捉えて離さなかった。
モビスターが積極的にハイペースを刻んでメイン集団を絞り込み、先行グループとの差を縮める中でマスが再度アタックするものの決まらない。逃げ切りでのタイム差挽回を目指していたアルメイダを捉え、残り1km地点を22秒差で駆け抜けたヘーシンクも、三度アタックして抜け出したマスとエヴェネプールに残り400mを切って捉えられてしまった。
捕まってもなお全力でフィニッシュを目指すヘーシンクをリードアウト役に見立て、残り200mを切った緩斜面区間でエヴェネプールがスプリントを開始。持ち前の爆発力を存分に発揮してマスを振り切り、フィニッシュラインをくぐると共にマイヨロホをアピール。第10ステージ(個人TT)に続く今大会2勝目を挙げることとなった。
「僕の人生で1つの達成と言える勝利。逃げ切りを容認するつもりだったけれど、マスについていったら優勝のチャンスが転がってきた」と振り返るエヴェネプールは、ボーナスタイムを得てマスとのタイム差を2分07秒に、3位以降のメンバーに対してさらに拡大。落車のダメージを受けたロドリゲスは遅れ、総合5位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ・カザフスタン)との順位変動が起きている。
各選手のコメントは別記事で紹介します。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第18ステージ結果
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 4:45:17 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:02 |
3位 | ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
4位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:13 |
5位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | |
6位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | |
8位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) | |
10位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
DNF | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 69:59:12 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +2:07 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +5:14 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) | +5:56 |
5位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:49 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +7:14 |
7位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +8:09 |
8位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | +9:34 |
9位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) | +9:56 |
10位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +12:03 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 349pts |
2位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 149pts |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 133pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 45pts |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 25pts |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | 23pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 69:59:12 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +5:14 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:49 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 209:11:25 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +48:53 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +1:11:54 |
text:So Isobe
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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