2022/08/29(月) - 19:19
MTB世界選手権のXCO男子エリートは優勝候補筆頭のトーマス・ピドコック(イギリス)が遅れ、ダビ・バレロ(スペイン)を下したニノ・シューター(スイス)が自身10度目の世界チャンピオンという大記録を打ち立てる。初のエリート挑戦となった北林力は脚攣りに悩まされDNFだった。
積極的にレースを引っ張るニノ・シューター(スイス) photo:Les Gets2022
5日間に渡り、フレンチアルプスのレジェを舞台に開催されたMTB世界選手権の大トリを飾るのはクロスカントリーの男子エリートレース。完全ドライコンディションの1周3.39km、1周あたりの獲得標高140mの特設コースのスタートラインには、北林力(日本)を含む世界から選りすぐられた35ヶ国99名が集結した。
スピードに定評あるヘンリケ・アヴァンチーニ(ブラジル)やヴラッド・ダスカル(ルーマニア)がスタートダッシュを決め、スタートで少し出遅れたニノ・シューター(スイス)は得意の下り区間で先頭を奪う。ロードレース参戦によってMTBのUCIポイント保有数が少ない優勝候補筆頭のトーマス・ピドコック(イギリス)は、1周回で53番手から一気に16番手までポジションアップに成功している。
アラン・ハースリー(南アフリカ)と共に先頭グループにブリッジをかけるトーマス・ピドコック(イギリス) photo:UCI
序盤にシューターと渡りあったアヴァンチーニやティトアン・カロ(フランス)は急激に失速し、ダビ・バレロ(スペイン)とルカ・ブライド(イタリア)のW杯北米ラウンド勝者コンビや、元世界王者ジョーダン・サルー(フランス)、金曜日のXCC覇者サムエル・ゲイズ(ニュージーランド)といった面々がシューターと共にトップグループを形成。
テーブルトップの処理に失敗し、激しくクラッシュしたゲイズがリタイアを強いられる一方、遅れてやってきたピドコックは3周目にアラン・ハースリー(南アフリカ)と共に先頭グループへ合流するや否や、強烈なアタックを放った。
主導権を握って飛ばすピドコックの背後では、ゲレンデを下るハイスピード右コーナーでグリップを失ったシューターが落車したものの、バイクにも身体にもダメージ無くすぐに再乗車して先頭復帰に成功する。先頭グループがピドコックとピンチを凌いだシューター、ブライド、そしてバレロの4名に絞られる中、4周目の登坂でペースを上げたバレロに対し、突如2番手ピドコックは距離を空けてしまった。
その様子を確認したシューターがブライドを連れてペースアップすると、東京五輪金メダリストは完全にリズムを失って先頭グループから脱落。ピドコックは次周回で辛くも3名を捉えたが、6周目の登りで再び脱落。その後もテクニカルセクションで立木に引っかかって落車し、さらにホイール交換でのピットインなど、今季出場したMTBレース全てで勝利した(W杯2勝+欧州選手権優勝/XCCを除く)ピドコックが初めて見せた失速によって、先頭グループに残った3名は一気に活気付いた。
ニノ・シューター(スイス)がフィニッシュ後にバイクを掲げて勝利を喜ぶ photo:UCI
笑顔でフィニッシュするダビ・バレロ(スペイン) photo:RFECiclismo
東京五輪3位銅メダル獲得を筆頭に、ここ一番の大勝負に強いバレロがシューターと共にレースを引っ張り、徐々にリズムを失ったブライドは距離をあけられてしまう。最終周回に入って誰よりも勝ち方を知るシューターが加速してプレッシャーを掛け続けた結果、岩場を越える最後のテクニカルセクションでバレロが痛恨のミス。絶好のチャンスを得たシューターは残る区間を全速力で逃げ切りフィニッシュへ。2年連続、10度目の世界タイトル獲得という前人未到の大記録を打ち立てた。
「再び勝つことができたなんて、フィニッシュラインを切った時は信じられない気持ちだったよ。タフレースで、序盤から主導権を握ってキツいレースにしようと飛ばしていたんだ。最後はバレロとの勝負になって、お互いにミスを誘う作戦だった。彼がミスしてからはフルガス。未だ信じられないよ」とレース後のインタビューでレースを振り返ったシューター。同じレジェで開催された2004年大会でジュニアタイトルを獲り、その18年後には10度目のエリートタイトル獲得。"GOAT(greatest of all time)"と評されるレジェンドが、再び表彰台の頂点でアルカンシエルと共にスイス国歌演奏を聴くことに。
MTB世界選手権2022 XCO男子エリート表彰台:2位バレロ、1位シューター、3位ブライド photo:UCI
前人未到、10度目の世界選手権制覇を遂げたニノ・シューター(スイス) photo:Les Gets2022
金メダル4、銀メダル6、銅メダル3を獲得したスイスナショナルチーム photo:Swiss Cycling
シューターと渡りあったバレロが2位銀メダルで、追走を続けたブライドが3位銅メダル。ホイール交換後に猛チャージしたピドコックは4位とメダルにも手が届かなかった。
また、初のエリートカテゴリー挑戦となった北林力は中盤以降脚の痙攣に悩まされ、ペースを失ってマイナス2ラップと完走には繋がらず。「スタートからの混雑は落ち着いて対応することができ、2周目中盤までは思うような走りができた。だけどそこから足が攣り始め、全くペースを上げられなくなってしまい耐えるだけの走りになってしまった。今週末にはイタリアでワールドカップの最終戦があるので、時間は少ないが出来る限りの準備をして臨みたい」と、悔しい心境を寄せている。
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5日間に渡り、フレンチアルプスのレジェを舞台に開催されたMTB世界選手権の大トリを飾るのはクロスカントリーの男子エリートレース。完全ドライコンディションの1周3.39km、1周あたりの獲得標高140mの特設コースのスタートラインには、北林力(日本)を含む世界から選りすぐられた35ヶ国99名が集結した。
スピードに定評あるヘンリケ・アヴァンチーニ(ブラジル)やヴラッド・ダスカル(ルーマニア)がスタートダッシュを決め、スタートで少し出遅れたニノ・シューター(スイス)は得意の下り区間で先頭を奪う。ロードレース参戦によってMTBのUCIポイント保有数が少ない優勝候補筆頭のトーマス・ピドコック(イギリス)は、1周回で53番手から一気に16番手までポジションアップに成功している。
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序盤にシューターと渡りあったアヴァンチーニやティトアン・カロ(フランス)は急激に失速し、ダビ・バレロ(スペイン)とルカ・ブライド(イタリア)のW杯北米ラウンド勝者コンビや、元世界王者ジョーダン・サルー(フランス)、金曜日のXCC覇者サムエル・ゲイズ(ニュージーランド)といった面々がシューターと共にトップグループを形成。
テーブルトップの処理に失敗し、激しくクラッシュしたゲイズがリタイアを強いられる一方、遅れてやってきたピドコックは3周目にアラン・ハースリー(南アフリカ)と共に先頭グループへ合流するや否や、強烈なアタックを放った。
主導権を握って飛ばすピドコックの背後では、ゲレンデを下るハイスピード右コーナーでグリップを失ったシューターが落車したものの、バイクにも身体にもダメージ無くすぐに再乗車して先頭復帰に成功する。先頭グループがピドコックとピンチを凌いだシューター、ブライド、そしてバレロの4名に絞られる中、4周目の登坂でペースを上げたバレロに対し、突如2番手ピドコックは距離を空けてしまった。
その様子を確認したシューターがブライドを連れてペースアップすると、東京五輪金メダリストは完全にリズムを失って先頭グループから脱落。ピドコックは次周回で辛くも3名を捉えたが、6周目の登りで再び脱落。その後もテクニカルセクションで立木に引っかかって落車し、さらにホイール交換でのピットインなど、今季出場したMTBレース全てで勝利した(W杯2勝+欧州選手権優勝/XCCを除く)ピドコックが初めて見せた失速によって、先頭グループに残った3名は一気に活気付いた。
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東京五輪3位銅メダル獲得を筆頭に、ここ一番の大勝負に強いバレロがシューターと共にレースを引っ張り、徐々にリズムを失ったブライドは距離をあけられてしまう。最終周回に入って誰よりも勝ち方を知るシューターが加速してプレッシャーを掛け続けた結果、岩場を越える最後のテクニカルセクションでバレロが痛恨のミス。絶好のチャンスを得たシューターは残る区間を全速力で逃げ切りフィニッシュへ。2年連続、10度目の世界タイトル獲得という前人未到の大記録を打ち立てた。
「再び勝つことができたなんて、フィニッシュラインを切った時は信じられない気持ちだったよ。タフレースで、序盤から主導権を握ってキツいレースにしようと飛ばしていたんだ。最後はバレロとの勝負になって、お互いにミスを誘う作戦だった。彼がミスしてからはフルガス。未だ信じられないよ」とレース後のインタビューでレースを振り返ったシューター。同じレジェで開催された2004年大会でジュニアタイトルを獲り、その18年後には10度目のエリートタイトル獲得。"GOAT(greatest of all time)"と評されるレジェンドが、再び表彰台の頂点でアルカンシエルと共にスイス国歌演奏を聴くことに。
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シューターと渡りあったバレロが2位銀メダルで、追走を続けたブライドが3位銅メダル。ホイール交換後に猛チャージしたピドコックは4位とメダルにも手が届かなかった。
また、初のエリートカテゴリー挑戦となった北林力は中盤以降脚の痙攣に悩まされ、ペースを失ってマイナス2ラップと完走には繋がらず。「スタートからの混雑は落ち着いて対応することができ、2周目中盤までは思うような走りができた。だけどそこから足が攣り始め、全くペースを上げられなくなってしまい耐えるだけの走りになってしまった。今週末にはイタリアでワールドカップの最終戦があるので、時間は少ないが出来る限りの準備をして臨みたい」と、悔しい心境を寄せている。
MTB世界選手権2022 XCO男子エリート結果
1位 | ニノ・シューター(スイス) | 1:21:13 |
2位 | ダビ・バレロ(スペイン) | +0:09 |
3位 | ルカ・ブライド(イタリア) | +0:29 |
4位 | トーマス・ピドコック(イギリス) | +1:29 |
5位 | マルセル・グエリーニ(スイス) | +1:40 |
6位 | ジョーダン・サルー(フランス) | +2:04 |
7位 | アラン・ハースリー(南アフリカ) | +2:11 |
8位 | ヴィクトール・コレツキー(フランス) | +2:37 |
9位 | フィリッポ・コロンボ(フランス) | +2:49 |
10位 | オンドレイ・シンク(チェコ) | +2:51 |
75位 | 北林力(日本) | -2LAP |
text:So Isobe
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