2022/08/28(日) - 08:03
大会初登場の1級山岳コリャウ・ファンクアヤで繰り広げられたブエルタ8日目の山岳決戦。逃げグループ内の勝負を制したジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が区間2勝目を飾り、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)がマイヨロホ保持に成功した。
8月27日(土)第8ステージ
ラ・ポラ・リャビアナ〜コリャウ・ファンクアヤ 154.5km(山岳)
バスクとカンタブリアでの戦いを終えた選手たちはスペイン北部アストゥリアス州での山岳2連戦へ。その初日であるブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージの舞台はラ・ポラ・リャビアナからコリャウ・ファンクアヤに向かう154.5kmだ。
スタート直後から2級山岳アルト・デ・ラ・コラドナ(距離6.4km/平均7%)を登坂し、その後は2級、3級、3級、3級と急勾配ながらも短い山岳を越えていく。154.5kmという比較的短い距離に平坦はほぼ見当たらず、その獲得標高差は3,700mオーバー。最後はブエルタ初登場の1級山岳コリャウ・ファンクアヤ(距離10.1km/平均8.5%)を駆け上がる。
登坂中腹に最大勾配19%を迎えるこの山岳の肝はラスト2kmで、2ヶ所の17%を含む平均約10%の登りがフィニッシュラインまで続く。ここから程近いアングリル峠にも匹敵するこの険しい山岳で、我慢比べとも言える登坂争いが繰り広げられた。
この日のスタートラインに並んだのは、当日の朝にコロナ陽性が発覚したチームDSMのニキアス・アルント(ドイツ)とマーク・ドノヴァン(イギリス)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)らを除く171名の選手たち。スタート直後の2級山岳アルト・デ・ラ・コラドナの登りは始まると、大会4日目にも逃げたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)がファーストアタックを決めた。
この動きをきっかけに形成されたのは10名の逃げ。グルパマFDJがティボー・ピノ(フランス)含む3名を乗せ、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)やレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)など過去ブエルタで区間勝利を挙げた6名が入る強力な逃げグループが出来上がった。
逃げグループを形成した10名
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)
ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
セバスティアン・レイシェンバック(スイス、グルパマFDJ)
レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
最も総合タイムの良いランダでも6分33秒遅れ(総合32位)のため、クイックステップ・アルファヴィニルはタイム差を4分前後でメイン集団をコントロールした。最終山岳までに登場するカテゴリー山岳でヴァインが全てトップ通過して山岳賞を射止める一方で、マイヨモンターニャを着るヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)は落車に見舞われレースを去った。
またこの日はポイント賞ジャージの着用者も代わることに。グルパマFDJの3名を中心に快調に飛ばす逃げグループが最後から2番目の3級山岳を越えると、ポイント賞争いで2位につけるピーダスンがトップで中間スプリントポイント(残り26km地点)を通過。連続する山岳を耐え切ったピーダスンがサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)からマイヨプントスを奪い取ることに成功している。
3分30秒のアドバンテージで最終1級山岳コリャウ・ファンクアヤ(距離10.1km/平均8.5%)の登坂に入った逃げ集団。この時点で勝負は、目的を果たし遅れていくピーダスンを除く先頭集団に絞られた。そしてこの日逃げのきっかけを作ったルツェンコの加速に追従したヴァインが飛び出し、残り6kmから単独独走モードに持ち込んだ。
「25分程で終わる(得意な距離の)登りだと思い踏み続けた」とレース後に語るズイフトアカデミー出身のヴァインは、ピノとタラマエを引き離し一定のリズムを刻む。そして一度集団から遅れ、ペース走法で迫るソレルの追走も振り払ったヴァイン。霧に覆われた2日前のフィニッシュシーンと同じく信じられないと頭を抱えた26歳が、ブエルタ初登場のコリャウ・ファンクアヤにその名を刻んだ。
「最初は山岳賞を目指し逃げに乗ったものの、その後FDJが3名で合流したので”力を使わずKOMを取ることができれば勝利も可能だ”と思った。最後はルツェンコの加速に付き合い、彼が2度目のアタックを仕掛ける素振りを見せなかったので自分で行ったんだ。勝てたのは1勝目で肩の荷が下り、自然体で走ることができたおかげだろう」とヴァイン。プロ初勝利を挙げたその2日後に2勝目を掴み、一気に名をあげたヴァインは翌日から山岳賞ジャージを着用して走ることとなる。
イネオス・グレナディアーズから再びクイックステップ・アルファヴィニルに牽引が移ったメイン集団では、リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が早々に脱落する。そしてクイックステップのハイペースによりメイン集団は徐々に絞られ、残り4kmでレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が加速した。
エヴェネプールのじわりじわりと速度を上げる独特な登坂に追従できたのは、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とエンリク・マス(スペイン、モビスター)、そして21歳のスペイン王者カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)の3名のみ。フィニッシュ手前でマスが秒差を狙いスプリントしたものの、エヴェネプールがそれを許さずトップから1分20秒遅れでレースを終えた。
最終盤で遅れたロドリゲス以外の3名(エヴェネプール、マス、ログリッチ)にタイム差はつかず、エヴェネプールは危なげなくマイヨロホ保持に成功。それをマスが28秒差で総合2位、ログリッチが1分1秒差で3位につけている。
「今日の目標はタイムを失わないことだった。またチャンスがあれば逆に奪ってやろうとも思い、それがプリモシュ(ログリッチ)とエンリク(マス)以外には成功したので嬉しいよ。今日はプリモシュの調子が良さそうで嬉しかったね。その方がレースにとっては良いことだからね」とエヴェネプールは、貫禄さえ感じさせるコメントでこの結果を喜んだ。
総合勢の脚色が顕になった山岳2連戦の初日を終え、翌日は長かった第1週目を締めくくる第9ステージ。フィニッシュラインの引かれた最終1級山岳レス・プラエレス(距離3.9km/平均12.9%)は距離こそ短いものの、前半から15%オーバーの勾配が断続的に続く激坂だ。
8月27日(土)第8ステージ
ラ・ポラ・リャビアナ〜コリャウ・ファンクアヤ 154.5km(山岳)
バスクとカンタブリアでの戦いを終えた選手たちはスペイン北部アストゥリアス州での山岳2連戦へ。その初日であるブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージの舞台はラ・ポラ・リャビアナからコリャウ・ファンクアヤに向かう154.5kmだ。
スタート直後から2級山岳アルト・デ・ラ・コラドナ(距離6.4km/平均7%)を登坂し、その後は2級、3級、3級、3級と急勾配ながらも短い山岳を越えていく。154.5kmという比較的短い距離に平坦はほぼ見当たらず、その獲得標高差は3,700mオーバー。最後はブエルタ初登場の1級山岳コリャウ・ファンクアヤ(距離10.1km/平均8.5%)を駆け上がる。
登坂中腹に最大勾配19%を迎えるこの山岳の肝はラスト2kmで、2ヶ所の17%を含む平均約10%の登りがフィニッシュラインまで続く。ここから程近いアングリル峠にも匹敵するこの険しい山岳で、我慢比べとも言える登坂争いが繰り広げられた。
この日のスタートラインに並んだのは、当日の朝にコロナ陽性が発覚したチームDSMのニキアス・アルント(ドイツ)とマーク・ドノヴァン(イギリス)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)らを除く171名の選手たち。スタート直後の2級山岳アルト・デ・ラ・コラドナの登りは始まると、大会4日目にも逃げたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)がファーストアタックを決めた。
この動きをきっかけに形成されたのは10名の逃げ。グルパマFDJがティボー・ピノ(フランス)含む3名を乗せ、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)やレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)など過去ブエルタで区間勝利を挙げた6名が入る強力な逃げグループが出来上がった。
逃げグループを形成した10名
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナカザフスタン)
ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
セバスティアン・レイシェンバック(スイス、グルパマFDJ)
レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
最も総合タイムの良いランダでも6分33秒遅れ(総合32位)のため、クイックステップ・アルファヴィニルはタイム差を4分前後でメイン集団をコントロールした。最終山岳までに登場するカテゴリー山岳でヴァインが全てトップ通過して山岳賞を射止める一方で、マイヨモンターニャを着るヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)は落車に見舞われレースを去った。
またこの日はポイント賞ジャージの着用者も代わることに。グルパマFDJの3名を中心に快調に飛ばす逃げグループが最後から2番目の3級山岳を越えると、ポイント賞争いで2位につけるピーダスンがトップで中間スプリントポイント(残り26km地点)を通過。連続する山岳を耐え切ったピーダスンがサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)からマイヨプントスを奪い取ることに成功している。
3分30秒のアドバンテージで最終1級山岳コリャウ・ファンクアヤ(距離10.1km/平均8.5%)の登坂に入った逃げ集団。この時点で勝負は、目的を果たし遅れていくピーダスンを除く先頭集団に絞られた。そしてこの日逃げのきっかけを作ったルツェンコの加速に追従したヴァインが飛び出し、残り6kmから単独独走モードに持ち込んだ。
「25分程で終わる(得意な距離の)登りだと思い踏み続けた」とレース後に語るズイフトアカデミー出身のヴァインは、ピノとタラマエを引き離し一定のリズムを刻む。そして一度集団から遅れ、ペース走法で迫るソレルの追走も振り払ったヴァイン。霧に覆われた2日前のフィニッシュシーンと同じく信じられないと頭を抱えた26歳が、ブエルタ初登場のコリャウ・ファンクアヤにその名を刻んだ。
「最初は山岳賞を目指し逃げに乗ったものの、その後FDJが3名で合流したので”力を使わずKOMを取ることができれば勝利も可能だ”と思った。最後はルツェンコの加速に付き合い、彼が2度目のアタックを仕掛ける素振りを見せなかったので自分で行ったんだ。勝てたのは1勝目で肩の荷が下り、自然体で走ることができたおかげだろう」とヴァイン。プロ初勝利を挙げたその2日後に2勝目を掴み、一気に名をあげたヴァインは翌日から山岳賞ジャージを着用して走ることとなる。
イネオス・グレナディアーズから再びクイックステップ・アルファヴィニルに牽引が移ったメイン集団では、リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が早々に脱落する。そしてクイックステップのハイペースによりメイン集団は徐々に絞られ、残り4kmでレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が加速した。
エヴェネプールのじわりじわりと速度を上げる独特な登坂に追従できたのは、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とエンリク・マス(スペイン、モビスター)、そして21歳のスペイン王者カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)の3名のみ。フィニッシュ手前でマスが秒差を狙いスプリントしたものの、エヴェネプールがそれを許さずトップから1分20秒遅れでレースを終えた。
最終盤で遅れたロドリゲス以外の3名(エヴェネプール、マス、ログリッチ)にタイム差はつかず、エヴェネプールは危なげなくマイヨロホ保持に成功。それをマスが28秒差で総合2位、ログリッチが1分1秒差で3位につけている。
「今日の目標はタイムを失わないことだった。またチャンスがあれば逆に奪ってやろうとも思い、それがプリモシュ(ログリッチ)とエンリク(マス)以外には成功したので嬉しいよ。今日はプリモシュの調子が良さそうで嬉しかったね。その方がレースにとっては良いことだからね」とエヴェネプールは、貫禄さえ感じさせるコメントでこの結果を喜んだ。
総合勢の脚色が顕になった山岳2連戦の初日を終え、翌日は長かった第1週目を締めくくる第9ステージ。フィニッシュラインの引かれた最終1級山岳レス・プラエレス(距離3.9km/平均12.9%)は距離こそ短いものの、前半から15%オーバーの勾配が断続的に続く激坂だ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第8ステージ結果
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 4:05:25 |
2位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +0:43 |
3位 | レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
4位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) | +0:47 |
5位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +1:20 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
7位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
8位 | サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | +1:33 |
9位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
10位 | セバスティアン・レイシェンバック(スイス、グルパマFDJ) | +1:42 |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 29:28:19 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:28 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:01 |
4位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:47 |
5位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:54 |
6位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +2:02 |
7位 | サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | +2:05 |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +2:44 |
9位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:51 |
10位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) | +2:59 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 147pts |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 142pts |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 81pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 40pts |
2位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 16pts |
3位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) | 12pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 29:28:19 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:47 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +2:02 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 87:40:20 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +1:56 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +4:07 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
Amazon.co.jp