2022/08/25(木) - 08:26
中盤からカテゴリー山岳が続くブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージは大グループが逃げ切る展開に。最後の山岳でアタックしたマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)がステージ優勝を挙げ、ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)が2018年に続くマイヨロホ着用に成功した。
8月24日(水)第5ステージ
イルン〜ビルバオ 187.2km(丘陵)
開幕地オランダから母国スペインに戻り、引き続きバスクステージを走る第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。イルンからビスケー湾沿いに西進し、実質的なバスク州都であるビルバオを目指す187.2kmコースは、ステージの前後半でくっきりと性格が分かれるレイアウト。
序盤は海岸線の平坦路を、中盤からは内陸の山岳地帯に分け入り、3級、3級、3級、2級、2級と5つのカテゴリー山岳を通過する。合計2周回するサーキットコースに含まれた2級山岳「アルト・デル・ヴィヴェロ(距離4.6km/平均8%)」がキモであり、最後の頂上を超えてからは下りと平坦路を経てフィニッシュを迎える。
集団スプリントにも、山岳で生まれた少人数の逃げ切りにも、あるいは序盤からの逃げ切りとマイヨロホ獲得も考えられるコースゆえに積極的にアタックがかかり、レース開始後90kmの平均スピードが50.279km/hという超高速ペースで進行。一つ目のカテゴリー山岳「プエルト・デ・ゴンツァガリガナ」の登坂に入たタイミングで、ようやく18名という大きなエスケープが先行した。
逃げグループを形成した18名
ワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)
ジェイク・スチュアート(イギリス、グルパマFDJ)
ユリウス・ヨハンセン(デンマーク、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)
ダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック)
カミル・マウェツキー(ポーランド、ロット・スーダル)
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター)
ファウスト・マスナダ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)
ローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)
ロジャー・アドリア(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
イバイ・アスラメンディ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)
あっという間にレース前半の平坦区間を消化した末に生まれた、カイセドやデマルキ、ミュールベルガー、マスナダ、クラドック、ソレルといったグランツール常連メンバーを含む強力な逃げ。総合成績最上位は58秒遅れの総合20位につけるモラールで、その2秒遅れにライト。マイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマは4分〜5分程度のタイム差でメイン集団をペースメイク。しかしこの日彼らにのマイヨロホをキープする意志はなかった。
初日のチームタイムトライアルでマイヨロホを着たロベルト・ヘーシンク(オランダ)は、リーダージャージを維持することを「多くの余計な義務が生じる」と表現する。「リーダージャージは名誉で光栄だけど、表彰式やメディア対応など余計な時間を取られてしまう。ブエルタは3週間続く。最も大切なのは最終日にマイヨロホを着ることだ」と説明。そのために逃げ切られても(最終的な総合成績に)関係の無い選手だけをエスケープさせるためにレース前半はチェックを厳しくしていたという。
「逃したくない選手のリストを作り、それをもとにアッフィニとテウニッセン、そしてデニスでレースをうまくコントロールした。リスト上の選手が逃げれば誰かをチェックに送る。僕たちのチームワークは油を差した機械のように完璧に仕上がっている」とヘーシンク。残り40kmを切ってもタイム差は4分半と変わらず、逃げ切りの可能性を感じ取った先頭グループ内では積極的なアタック合戦が勃発した。
この日最も山岳ポイント獲得に積極的だったのはブルゴスBHのランゲロッティだった。マイヨモンターニャを保持するジョアン・ボウ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が逃げに乗れず、一躍チャンスを得たランゲロッティは第1山岳首位通過を皮切りにポイントを連取。ステージ優勝を見据えたアタック合戦にも耐え、この日だけで13ポイントを積算してマイヨ獲得に成功している。
合計2回登る2級山岳「アルト・デル・ヴィヴェロ(距離4.6km/平均8%)の1回目ではクラドックがアタックしたものの、決定的な抜け出しには至らない。グッゲンハイム美術館やネルビオン川に架かる世界最古の運搬橋「ビスカヤ橋」を望むビルバオ市街地のフィニッシュラインを一度越えた先で、一度は遅れつつ復帰したスチュアートが独走に持ち込んだ。
チームメイトで、マイヨロホ獲得を狙うモラールの間接的アシスト(ローテーションに回らなくて良い)という意味も持つスチュアートのアタック。一時30秒ほどのアドバンテージを築いたスチュアートだったが、最後のアルト・デル・ヴィヴェロで失速し、タイミングを見計らったソレルのアタックを見送ってしまった。
「最後はずっと全開だった」と言うソレルは15秒リードを得てダウンヒルに突入した。後続グループは平坦路でソレルとの距離を縮め50mほどの距離まで迫ったものの、人数の多さが災いして最後の最後で牽制状態に陥ってしまう。スプリント体制に入った後続グループを尻目に、安全圏にいることを確認したソレルが単独フィニッシュ。2020年大会第2ステージに続く、キャリア2度目のブエルタステージ優勝を挙げてみせた。
2019年大会で総合9位に入るなどモビスターの総合エースの一人として長く在籍したソレルだが、それ以降はトップ10入りにも遠く手が届かない状態が続き、グランツールエースという役割に区切りをつけて今年UAEチームエミレーツに移籍。タデイ・ポガチャル(スロベニア)のアシストとして臨んだツール・ド・フランスでは途中リタイアに終わったが、休息を挟み参加したブエルタでリベンジとなるステージ優勝を挙げることとなった。
ログリッチを含むメイン集団は5分09秒遅れでフィニッシュしたため、マイヨロホはライトとの2秒差を抑えたモラールの手に渡った。32歳の軽量クライマーは2018年大会の第5ステージでも逃げ切りでマイヨロホを着用しており、嬉しい自身2度目のグランツール総合首位浮上。昨年ブエルタで落車負傷でリタイアした悔しさを最良の形で晴らすことに。
「昨年は落車で肺に穴が空き、病院で1週間を過ごしたんだ。9週間を安静に過ごしたので再びトップコンディションに戻れるか不安だったんだ。オフシーズンは努力を重ねたけれど、1月末には重度の新型コロナ感染。3月末にレース復帰したばかりで、今こうしてリーダーになっただなんて信じられない気分だ。本当に嬉しいよ」と喜んでいる。
ただし翌日は1級山岳ラス・アリサス峠に登り詰める今大会最初の山岳ステージかつ山頂フィニッシュが用意される。ユンボ・ヴィスマがわずか1日でマイヨロホ奪還を目指すのか、それとも再び逃げを容認し、自由な立場を続けるのか。その戦略でレース状況は大きく左右されそうだ。
8月24日(水)第5ステージ
イルン〜ビルバオ 187.2km(丘陵)
開幕地オランダから母国スペインに戻り、引き続きバスクステージを走る第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。イルンからビスケー湾沿いに西進し、実質的なバスク州都であるビルバオを目指す187.2kmコースは、ステージの前後半でくっきりと性格が分かれるレイアウト。
序盤は海岸線の平坦路を、中盤からは内陸の山岳地帯に分け入り、3級、3級、3級、2級、2級と5つのカテゴリー山岳を通過する。合計2周回するサーキットコースに含まれた2級山岳「アルト・デル・ヴィヴェロ(距離4.6km/平均8%)」がキモであり、最後の頂上を超えてからは下りと平坦路を経てフィニッシュを迎える。
集団スプリントにも、山岳で生まれた少人数の逃げ切りにも、あるいは序盤からの逃げ切りとマイヨロホ獲得も考えられるコースゆえに積極的にアタックがかかり、レース開始後90kmの平均スピードが50.279km/hという超高速ペースで進行。一つ目のカテゴリー山岳「プエルト・デ・ゴンツァガリガナ」の登坂に入たタイミングで、ようやく18名という大きなエスケープが先行した。
逃げグループを形成した18名
ワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)
ジェイク・スチュアート(イギリス、グルパマFDJ)
ユリウス・ヨハンセン(デンマーク、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)
ダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック)
カミル・マウェツキー(ポーランド、ロット・スーダル)
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター)
ファウスト・マスナダ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)
ローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)
ロジャー・アドリア(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
イバイ・アスラメンディ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)
あっという間にレース前半の平坦区間を消化した末に生まれた、カイセドやデマルキ、ミュールベルガー、マスナダ、クラドック、ソレルといったグランツール常連メンバーを含む強力な逃げ。総合成績最上位は58秒遅れの総合20位につけるモラールで、その2秒遅れにライト。マイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマは4分〜5分程度のタイム差でメイン集団をペースメイク。しかしこの日彼らにのマイヨロホをキープする意志はなかった。
初日のチームタイムトライアルでマイヨロホを着たロベルト・ヘーシンク(オランダ)は、リーダージャージを維持することを「多くの余計な義務が生じる」と表現する。「リーダージャージは名誉で光栄だけど、表彰式やメディア対応など余計な時間を取られてしまう。ブエルタは3週間続く。最も大切なのは最終日にマイヨロホを着ることだ」と説明。そのために逃げ切られても(最終的な総合成績に)関係の無い選手だけをエスケープさせるためにレース前半はチェックを厳しくしていたという。
「逃したくない選手のリストを作り、それをもとにアッフィニとテウニッセン、そしてデニスでレースをうまくコントロールした。リスト上の選手が逃げれば誰かをチェックに送る。僕たちのチームワークは油を差した機械のように完璧に仕上がっている」とヘーシンク。残り40kmを切ってもタイム差は4分半と変わらず、逃げ切りの可能性を感じ取った先頭グループ内では積極的なアタック合戦が勃発した。
この日最も山岳ポイント獲得に積極的だったのはブルゴスBHのランゲロッティだった。マイヨモンターニャを保持するジョアン・ボウ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が逃げに乗れず、一躍チャンスを得たランゲロッティは第1山岳首位通過を皮切りにポイントを連取。ステージ優勝を見据えたアタック合戦にも耐え、この日だけで13ポイントを積算してマイヨ獲得に成功している。
合計2回登る2級山岳「アルト・デル・ヴィヴェロ(距離4.6km/平均8%)の1回目ではクラドックがアタックしたものの、決定的な抜け出しには至らない。グッゲンハイム美術館やネルビオン川に架かる世界最古の運搬橋「ビスカヤ橋」を望むビルバオ市街地のフィニッシュラインを一度越えた先で、一度は遅れつつ復帰したスチュアートが独走に持ち込んだ。
チームメイトで、マイヨロホ獲得を狙うモラールの間接的アシスト(ローテーションに回らなくて良い)という意味も持つスチュアートのアタック。一時30秒ほどのアドバンテージを築いたスチュアートだったが、最後のアルト・デル・ヴィヴェロで失速し、タイミングを見計らったソレルのアタックを見送ってしまった。
「最後はずっと全開だった」と言うソレルは15秒リードを得てダウンヒルに突入した。後続グループは平坦路でソレルとの距離を縮め50mほどの距離まで迫ったものの、人数の多さが災いして最後の最後で牽制状態に陥ってしまう。スプリント体制に入った後続グループを尻目に、安全圏にいることを確認したソレルが単独フィニッシュ。2020年大会第2ステージに続く、キャリア2度目のブエルタステージ優勝を挙げてみせた。
2019年大会で総合9位に入るなどモビスターの総合エースの一人として長く在籍したソレルだが、それ以降はトップ10入りにも遠く手が届かない状態が続き、グランツールエースという役割に区切りをつけて今年UAEチームエミレーツに移籍。タデイ・ポガチャル(スロベニア)のアシストとして臨んだツール・ド・フランスでは途中リタイアに終わったが、休息を挟み参加したブエルタでリベンジとなるステージ優勝を挙げることとなった。
ログリッチを含むメイン集団は5分09秒遅れでフィニッシュしたため、マイヨロホはライトとの2秒差を抑えたモラールの手に渡った。32歳の軽量クライマーは2018年大会の第5ステージでも逃げ切りでマイヨロホを着用しており、嬉しい自身2度目のグランツール総合首位浮上。昨年ブエルタで落車負傷でリタイアした悔しさを最良の形で晴らすことに。
「昨年は落車で肺に穴が空き、病院で1週間を過ごしたんだ。9週間を安静に過ごしたので再びトップコンディションに戻れるか不安だったんだ。オフシーズンは努力を重ねたけれど、1月末には重度の新型コロナ感染。3月末にレース復帰したばかりで、今こうしてリーダーになっただなんて信じられない気分だ。本当に嬉しいよ」と喜んでいる。
ただし翌日は1級山岳ラス・アリサス峠に登り詰める今大会最初の山岳ステージかつ山頂フィニッシュが用意される。ユンボ・ヴィスマがわずか1日でマイヨロホ奪還を目指すのか、それとも再び逃げを容認し、自由な立場を続けるのか。その戦略でレース状況は大きく左右されそうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第5ステージ結果
1位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 4:15:23 |
2位 | ダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック) | +0:04 |
3位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | |
5位 | ローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
6位 | ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM) | |
7位 | ヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH) | |
8位 | ワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン) | |
9位 | グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター) | |
10位 | ロジャー・アドリア(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | 16:07:22 |
2位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:02 |
3位 | ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM) | +1:09 |
4位 | ローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | +2:27 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +4:09 |
6位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +4:22 |
7位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +4:35 |
8位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +4:36 |
10位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | +4:42 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 127pts |
2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 118pts |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 47pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH) | 13pts |
2位 | ロジャー・アドリア(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | 6pts |
3位 | ローソン・クラドック(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | 5pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 16:07:24 |
2位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +4:33 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +4:34 |
チーム総合成績
1位 | グルパマFDJ | 47:40:10 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +1:27 |
3位 | バイクエクスチェンジ・ジェイコ | +1:29 |
text:So Isobe
photo:Unipublic
photo:Unipublic
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