ハンブルグ伝統のスプリンターレースで5名が逃げ切り。マルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)がワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)らとのゴール勝負を制し金星を挙げている。



全日本チャンピオンジャージをアピールする新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)全日本チャンピオンジャージをアピールする新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ツール明けのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が登場ツール明けのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が登場 photo:CorVos欧州選手権を制したばかりのファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)欧州選手権を制したばかりのファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos


ベーメルクラシック2022 コースマップベーメルクラシック2022 コースマップ (c)BEMER Cyclassics Hamburg8月21日(日)にドイツ北部のハンブルグで行われた「ベーメルクラシック(UCIワールドツアー)」は、1996年から2005年までHEWサイクラシックス、2006年から2015年までヴァッテンフォール・サイクラシックス、更に2016年からはユーロアイズ・サイクラシックスとして開催されていたワンデーレース。コロナ禍の中止を経て、3年ぶりの開催となった今年は健康器具メーカーのベーメル社がタイトルスポンサーについたことで名称変更を果たしている。

ハンブルグを発着する204.7kmコースはスプリンター向きで、歴代の優勝者リストにはスプリンターたちの名前が並ぶ。勝負の鍵を握るのは合計3周する『ヴァーゼベルグ(長さ700m/平均9.7%)』を含む周回コースで、最大勾配が15%に達する急坂の頂上からハンブルグ市内のフィニッシュラインまでは15.6kmある。

記念すべき25回目の2022年大会には、同時開催で山岳が厳しいブエルタ・ア・エスパーニャを回避した豪華なスプリンターがずらり揃い踏み。かつて3連覇したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)をはじめ、欧州選手権を制したばかりのファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、さらにはワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)といったツール参戦組がこのハンブルグで再集結を果たしている。

ドイツ北部のハンブルグを発着するスプリンターレースドイツ北部のハンブルグを発着するスプリンターレース photo:CorVos
集団内で走るカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)集団内で走るカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:CorVos
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も参戦したレースはカザフスタン王者イェフゲニー・ギディッチ(アスタナ・カザフスタン)を含む3名逃げで幕開ける。郊外の平坦路を経由して周回コースに入り、1回目の「ヴァーゼベルグ」が近づくとイーデ・スヘリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)が集団を飛び出して先頭グループに合流。残り30kmを切り、各チームが隊列を整え始める中、メイン集団先頭付近で大きな落車が発生した。

ユンボ・ヴィスマとバーレーン・ヴィクトリアスの列車が交錯し、フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)たちが巻き込まれ(のちに復帰)、前転したヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は鎖骨を骨折。この混乱によってユアンやヤコブセンが遅れ、そして3度目のヴァーゼベルグではファンアールトがアタックを繰り出した。

ライバル勢を振り落とすべく踏み込んだファンアールトに対し、食らいついたのはシクロクロスでファンアールトと共にベルギーナショナルチームを構成するクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)やヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、そしてボーラ・ハンスグローエのマルコ・ハラーとパトリック・コンラッド(共にオーストリア)という4名だった。

追撃を試みる大グループを振り切って、足並み揃った先頭5名がハンブルグ市街地にひかれたフィニッシュラインを目指して全速力。20〜30秒で推移していたタイム差は最終盤に入って急速に縮まったものの、コンラッドの献身的なアシストの効果もあって逃げ切りが決定。勝負は大多数の予想を覆す逃げグループ内のスプリントに委ねられた。

ファンアールトとヘルマンスの追撃を交わしたマルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)ファンアールトとヘルマンスの追撃を交わしたマルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
4名のスプリント勝負を制したマルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)4名のスプリント勝負を制したマルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
マルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)がポリッツやコンラッドと勝利を喜ぶマルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)がポリッツやコンラッドと勝利を喜ぶ photo:CorVos
先頭コンラッド、2番手ファンアールト、3番手ハラー。ハラーは一瞬左側に出てファンアールトの注意を向け、すぐさま右サイドに切り替えてスプリントを開始する。出遅れたファンアールトを尻目にハラーが加速体制に入り、スリップストリームを飛び出したヘルマンスとファンアールトを従えたままフィニッシュラインへ。ファンアールトとヘルマンスを出し抜く技アリのスプリントでハラーが金星を挙げた。

「間違いなく展開を作ったファンアールトは強かったけれど、抜け出した後にパトリックと"このまま行こう。後ろに捕まったら表彰台の保証はできないけれど、逃げ切れれば最悪でも4位と5位だから"と話していたんだ。同じドイツ語圏のこのレースで勝てたことは本当に嬉しい」と、キャリア最大の勝利を飾ったハラーは話している。

ベーメルクラシック2022表彰台ベーメルクラシック2022表彰台 photo:CorVos
一方、敗れたファンアールトは「マルコの早いアタックには驚かされた。間違った方向にばかり目を向けていて、彼のパワフルな加速力に対応できなかったんだ。最高速は悪くなかったけれど遅すぎた」と悔やみつつ、「ツール直後に軽い風邪を引いてしまったけれど、トレーニングをうまく重ねられている。2位という結果にはフラストレーションが溜まるけど、自分の体調が良い兆候でもある」と話している。ファンアールトはブルターニュ・クラシックとカナダ2連戦を経て世界選手権に挑む予定だ。
ベーメルクラシック2022結果
1位 マルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 4:37:23
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
3位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
4位 ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
5位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:04
6位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:09
7位 フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック)
9位 マックス・カンター(ドイツ、モビスター)
10位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
text:So Isobe
photo:CorVos

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