2022/09/30(金) - 15:04
定番ロードコンポーネンツ"シマノ105"がフルモデルチェンジをし、12速化、DI2ワイヤレス変速、油圧ディスクブレーキを採用した。あらゆる進化を遂げたシマノ105をファーストインプレッションを担当した編集部の高木がより深くセカンドインプレッションを行う。
シマノはハイエンドモデル"DURA-ACE"やセカンドグレード"ULTEGRA"、定番の"105"、"TIAGRA"、"SORA"と、レース向けのモデルからエントリーモデルまで、様々なロードバイク用コンポーネントをラインアップしている。
今回、新たにミドルグレードにあたるシマノ105がアップデートされ、新型のR7100シリーズがリリースされた。これまで機械式のコンポーネントのみラインアップされていたが、R7100シリーズは上位グレードに採用されている12速化と無線DI2化という2つの進化を遂げている。
デュアルコントロールレバーは上位グレードのDURA-ACEやULTEGRAの設計を受け継ぎ、ワイヤレス接続を採用。機械式のR7000系シマノ105とは比べるまでもないばかりか、以前の有線接続のDI2デュアルコントロールレバーに比べても、コンパクトな形状になっている。さらに、上方に伸びたグリップ部によりエアロポジションが取りやすくなっている。
DURA-ACEやULTEGRAのデュアルコントロールレバーはCR1632のバッテリーを1個を搭載できる仕様で、バッテリー寿命が1年半~2年となっているのに対して、シマノ105はCR1632のバッテリーを2個搭載できる仕様により、バッテリー寿命が3年半~4年に延びている点がメリットだ。
コンポーネントの顔ともいえるクランクについては、パワー伝達に優れる4アームデザインは前世代と同様だが、更に設計を煮詰めることで性能を向上させている。50-34Tと52-36Tの2種類のギアオプションと、160mm、165mm、170mm、 172.5mm、175mmの5種類のクランク長が用意された。
リアディレイラーはワイヤレスユニットや充電端子、バッテリー残量インジケーターなど、DI2の核となる機能が集約されている。最大36Tまでのスプロケットに対応しており、オールロード等より軽いギアを求めるバイクや走り方も受け入れる懐の深いコンポーネントに仕上げられた。
フロントディレイラーは、ガイドプレートの位置を自動的に調整するオートトリム機能を搭載。さらに、リア変速と連動し、自動的にフロント側も最も効率的なギアを選択する機能であるシンクロナイズドシフトが搭載されている。
油圧ディスクブレーキキャリパーはパッドクリアランスを10%広げることで、ブレーキローターとブレーキパッドの干渉によるブレーキノイズを低減。整備性も向上しており、より扱いやすいシステムへと進化した。
これまでの機械式11速から、無線電動12速化と、長足の進化を果たした105。とはいえ、その大きな変化のみならず、細やかな部分も最新世代コンポーネントとしてブラッシュアップされている。それでは、インプレッションに移ろう。
―編集部インプレッション
今回インプレッションを担当するのはDURA-ACEやULTEGRAなど12速化された最新シマノコンポーネントをテストしてきた編集部の高木。新型シマノ105の発表会にも参加した際には、限られた時間でテストし、ファーストインプレッションを行っていたが、今回はセカンドインプレとして、より長期間、しっかりと乗り込む機会を得た。
改めて、まずは外観から。これはファーストインプレッションの時にも感じたのだが、光沢のあるグロス仕上げはこれまでのシマノ105というコンポーネントへのイメージを覆すような高級感がある。最上位モデルのDURA-ACEに通ずるグラフィックで、走っていればDURA-ACEと区別がつかない人もいるだろう。
少し冗談めかして書いたが、実のところルックスよりも使用感のほうが上位モデルとの差は小さいようにも感じた。ロードコンポーネントの評価に最も大きな影響を与えるのは、直接身体に触れるデュアルコントロールレバーだと個人的には考えているのだが、新型シマノ105はDURA-ACEとULTEGRAと同様のコンパクトなレバー設計によって、上位モデルのライドフィールをほぼ再現している。
もちろん、ワイヤレス電動変速や12速化といった大文字の進化点もあろうが、シマノ105というコンポーネントを実使用する際に、最も大きな進化として体感できるのはこのブラケットデザインと言ってもいい。
コンパクトでありながら、無理することなくブレーキレバー内側を3本指で握れる空間を確保した新世代のDI2ブラケットは、一度味わってしまえば後戻りはできない。ブラケットポジションでも手がズレる心配も少なく、安心感のあるバイクコントロールが可能となるため、一段上手くなったような気にすらなれるアイテムだ。
とはいえ、新型10のデュアルコントロールレバーが、少し重いだけのDURA-ACE/ULTEGRAなのかと言われれば答えは否。ブラケット上部、ツノのような部分にあったスイッチは省かれているし、DI2ならではの恩恵ともいえるスプリンタースイッチをはじめとした拡張性にも欠けているのはシマノ105と上位2グレードの差別化要素である。
実際、ある程度のレベルでレースを戦うのであれば、そして既にDI2のそれらの機能を使いこなしているのであれば、新型シマノ105は選択肢から外れてしまうだろう。一方、そうではないサイクリスト、つまり大多数の方々の目には、不要なオプションを省くことで最新世代DI2システムの性能を身近に体験できる新型は魅力的に映るだろう。
皆さんが気になるであろう変速性能は先代のR9100系DURA-ACEやR8000系ULTEGRAに匹敵する速さで、実用上不満に感じることは無い。ただ、現行の上位2モデルに比べるとやはり一歩及ばない印象だ。変速速度という定量的な尺度だけでなく、操作時の滑らかさやチェーンが掛け替わった瞬間の衝撃の少なさ、音の大きさといった感性的な領域においても、僅かであるが差をつけられているように感じる。
ただ、これはディレイラーではなくスプロケットの性能に依る所が大きいのではないだろうか。11速時代と同様のハイパーグライドテクノロジーが引き続き採用されたシマノ105だが、DURA-ACE/ULTEGRAのハイパーグライド+採用モデルを組み合わせれば、ライドフィールは向上するはずだ。
今回のインプレッションではフロントに50-34T、リアに11-34Tという組み合わせでのテストとなった。最大1:1のギア比を実現するこの組み合わせは、激坂においては強い味方となる。なんとなれば、最大36Tのスプロケットも使用できるのは心強い。舗装路で想定されるような斜度であればほぼ全てをカバーできるワイドレンジなギア比であり、登りが苦手な方や大量の荷物を積載したツーリストにとっても有力な選択肢となるだろう。
一方で、DURA-ACEのデザインエッセンスを汲むクランクは、完全にレーシングスペックの剛性感。もちろん上位モデルのほうが数値的には優れているのだろうが、実際に踏み込んでみて不満に感じる瞬間は皆無だ。1000Wを越えるようなスプリントでも、大きなトルクを掛ける登り坂でのアタックでも、クランクやチェーンリングによってスポイルされるような感覚はなく、打てば響く反応性を示してくれた。レースで使うことになったとしても、文句のつけようがない一品だ。
ブレーキに関しては、パッドクリアランスの拡大はやはり大きい。制動力に関していえば、前世代においても不満を感じることは無かったが、ホイールを交換した際のわずかな位置ずれによるローターの擦れやすさなどは気になるポイントであった。
ある程度慣れている人であれば、多少ローターが擦っていたとしても「そういうもの」だと受け入れることも出来るだろうが、初心者にとっては「大丈夫かな、壊れてるのかな」と心配な気持ちにさせてしまうこともあるだろう。新設計のシマノキャリパーはそういったストレスを軽減してくれ、ライドに集中できるようになったのは、非常にありがたい。
そういった、僅かなデメリットをしっかりと解消しつつ、油圧ディスクブレーキの美点である力の要らなさや疲れづらさ、コントローラブルなフィーリングなどを純粋に享受できるモデルとして、手の届きやすいシマノ105グレードにも新設計キャリパーが実装されたことは、ロードライドの間口を広げることにも繋がるだろう。
今回、新型105を長期テストしてみて、シリーズ初のワイヤレス電動12速化による恩恵は非常に大きいものに感じた。年間を通してレースに参戦しているシリアスなレーサーであれば、DURA-ACEやULTEGRAの持つ優位性が重みを増すかもしれない。だが、平日は通勤程度、週末にはサイクリングを楽しみ、時々ヒルクライムやエンデューロといったイベントに参加する、といったサイクリストにとって新型シマノ105の持つ基本性能の高さは非常に魅力的なはず。
特に、これまで機械式コンポーネントを使用してきたサイクリストであれば、世界が一変するような体験が出来るだろう。It's a New Day.新型シマノ105はきっと新たな日常の扉を開く鍵になるはずだ。
シマノはハイエンドモデル"DURA-ACE"やセカンドグレード"ULTEGRA"、定番の"105"、"TIAGRA"、"SORA"と、レース向けのモデルからエントリーモデルまで、様々なロードバイク用コンポーネントをラインアップしている。
今回、新たにミドルグレードにあたるシマノ105がアップデートされ、新型のR7100シリーズがリリースされた。これまで機械式のコンポーネントのみラインアップされていたが、R7100シリーズは上位グレードに採用されている12速化と無線DI2化という2つの進化を遂げている。
デュアルコントロールレバーは上位グレードのDURA-ACEやULTEGRAの設計を受け継ぎ、ワイヤレス接続を採用。機械式のR7000系シマノ105とは比べるまでもないばかりか、以前の有線接続のDI2デュアルコントロールレバーに比べても、コンパクトな形状になっている。さらに、上方に伸びたグリップ部によりエアロポジションが取りやすくなっている。
DURA-ACEやULTEGRAのデュアルコントロールレバーはCR1632のバッテリーを1個を搭載できる仕様で、バッテリー寿命が1年半~2年となっているのに対して、シマノ105はCR1632のバッテリーを2個搭載できる仕様により、バッテリー寿命が3年半~4年に延びている点がメリットだ。
コンポーネントの顔ともいえるクランクについては、パワー伝達に優れる4アームデザインは前世代と同様だが、更に設計を煮詰めることで性能を向上させている。50-34Tと52-36Tの2種類のギアオプションと、160mm、165mm、170mm、 172.5mm、175mmの5種類のクランク長が用意された。
リアディレイラーはワイヤレスユニットや充電端子、バッテリー残量インジケーターなど、DI2の核となる機能が集約されている。最大36Tまでのスプロケットに対応しており、オールロード等より軽いギアを求めるバイクや走り方も受け入れる懐の深いコンポーネントに仕上げられた。
フロントディレイラーは、ガイドプレートの位置を自動的に調整するオートトリム機能を搭載。さらに、リア変速と連動し、自動的にフロント側も最も効率的なギアを選択する機能であるシンクロナイズドシフトが搭載されている。
油圧ディスクブレーキキャリパーはパッドクリアランスを10%広げることで、ブレーキローターとブレーキパッドの干渉によるブレーキノイズを低減。整備性も向上しており、より扱いやすいシステムへと進化した。
これまでの機械式11速から、無線電動12速化と、長足の進化を果たした105。とはいえ、その大きな変化のみならず、細やかな部分も最新世代コンポーネントとしてブラッシュアップされている。それでは、インプレッションに移ろう。
―編集部インプレッション
今回インプレッションを担当するのはDURA-ACEやULTEGRAなど12速化された最新シマノコンポーネントをテストしてきた編集部の高木。新型シマノ105の発表会にも参加した際には、限られた時間でテストし、ファーストインプレッションを行っていたが、今回はセカンドインプレとして、より長期間、しっかりと乗り込む機会を得た。
改めて、まずは外観から。これはファーストインプレッションの時にも感じたのだが、光沢のあるグロス仕上げはこれまでのシマノ105というコンポーネントへのイメージを覆すような高級感がある。最上位モデルのDURA-ACEに通ずるグラフィックで、走っていればDURA-ACEと区別がつかない人もいるだろう。
少し冗談めかして書いたが、実のところルックスよりも使用感のほうが上位モデルとの差は小さいようにも感じた。ロードコンポーネントの評価に最も大きな影響を与えるのは、直接身体に触れるデュアルコントロールレバーだと個人的には考えているのだが、新型シマノ105はDURA-ACEとULTEGRAと同様のコンパクトなレバー設計によって、上位モデルのライドフィールをほぼ再現している。
もちろん、ワイヤレス電動変速や12速化といった大文字の進化点もあろうが、シマノ105というコンポーネントを実使用する際に、最も大きな進化として体感できるのはこのブラケットデザインと言ってもいい。
コンパクトでありながら、無理することなくブレーキレバー内側を3本指で握れる空間を確保した新世代のDI2ブラケットは、一度味わってしまえば後戻りはできない。ブラケットポジションでも手がズレる心配も少なく、安心感のあるバイクコントロールが可能となるため、一段上手くなったような気にすらなれるアイテムだ。
とはいえ、新型10のデュアルコントロールレバーが、少し重いだけのDURA-ACE/ULTEGRAなのかと言われれば答えは否。ブラケット上部、ツノのような部分にあったスイッチは省かれているし、DI2ならではの恩恵ともいえるスプリンタースイッチをはじめとした拡張性にも欠けているのはシマノ105と上位2グレードの差別化要素である。
実際、ある程度のレベルでレースを戦うのであれば、そして既にDI2のそれらの機能を使いこなしているのであれば、新型シマノ105は選択肢から外れてしまうだろう。一方、そうではないサイクリスト、つまり大多数の方々の目には、不要なオプションを省くことで最新世代DI2システムの性能を身近に体験できる新型は魅力的に映るだろう。
皆さんが気になるであろう変速性能は先代のR9100系DURA-ACEやR8000系ULTEGRAに匹敵する速さで、実用上不満に感じることは無い。ただ、現行の上位2モデルに比べるとやはり一歩及ばない印象だ。変速速度という定量的な尺度だけでなく、操作時の滑らかさやチェーンが掛け替わった瞬間の衝撃の少なさ、音の大きさといった感性的な領域においても、僅かであるが差をつけられているように感じる。
ただ、これはディレイラーではなくスプロケットの性能に依る所が大きいのではないだろうか。11速時代と同様のハイパーグライドテクノロジーが引き続き採用されたシマノ105だが、DURA-ACE/ULTEGRAのハイパーグライド+採用モデルを組み合わせれば、ライドフィールは向上するはずだ。
今回のインプレッションではフロントに50-34T、リアに11-34Tという組み合わせでのテストとなった。最大1:1のギア比を実現するこの組み合わせは、激坂においては強い味方となる。なんとなれば、最大36Tのスプロケットも使用できるのは心強い。舗装路で想定されるような斜度であればほぼ全てをカバーできるワイドレンジなギア比であり、登りが苦手な方や大量の荷物を積載したツーリストにとっても有力な選択肢となるだろう。
一方で、DURA-ACEのデザインエッセンスを汲むクランクは、完全にレーシングスペックの剛性感。もちろん上位モデルのほうが数値的には優れているのだろうが、実際に踏み込んでみて不満に感じる瞬間は皆無だ。1000Wを越えるようなスプリントでも、大きなトルクを掛ける登り坂でのアタックでも、クランクやチェーンリングによってスポイルされるような感覚はなく、打てば響く反応性を示してくれた。レースで使うことになったとしても、文句のつけようがない一品だ。
ブレーキに関しては、パッドクリアランスの拡大はやはり大きい。制動力に関していえば、前世代においても不満を感じることは無かったが、ホイールを交換した際のわずかな位置ずれによるローターの擦れやすさなどは気になるポイントであった。
ある程度慣れている人であれば、多少ローターが擦っていたとしても「そういうもの」だと受け入れることも出来るだろうが、初心者にとっては「大丈夫かな、壊れてるのかな」と心配な気持ちにさせてしまうこともあるだろう。新設計のシマノキャリパーはそういったストレスを軽減してくれ、ライドに集中できるようになったのは、非常にありがたい。
そういった、僅かなデメリットをしっかりと解消しつつ、油圧ディスクブレーキの美点である力の要らなさや疲れづらさ、コントローラブルなフィーリングなどを純粋に享受できるモデルとして、手の届きやすいシマノ105グレードにも新設計キャリパーが実装されたことは、ロードライドの間口を広げることにも繋がるだろう。
今回、新型105を長期テストしてみて、シリーズ初のワイヤレス電動12速化による恩恵は非常に大きいものに感じた。年間を通してレースに参戦しているシリアスなレーサーであれば、DURA-ACEやULTEGRAの持つ優位性が重みを増すかもしれない。だが、平日は通勤程度、週末にはサイクリングを楽しみ、時々ヒルクライムやエンデューロといったイベントに参加する、といったサイクリストにとって新型シマノ105の持つ基本性能の高さは非常に魅力的なはず。
特に、これまで機械式コンポーネントを使用してきたサイクリストであれば、世界が一変するような体験が出来るだろう。It's a New Day.新型シマノ105はきっと新たな日常の扉を開く鍵になるはずだ。
新型シマノ105重量
R7170 | 重量(g) |
---|---|
リアディレイラー | 302 |
フロントディレイラー | 142 |
デュアルコントロールレバー | 423 |
ブレーキ | 282 |
ローター | 242 |
クランクセット | 754 |
ボトムブラケット | 77 |
カセットスプロケット | 361 |
チェーン | 252 |
バッテリー | 53 |
合計 | 2,888 |
新型シマノ105 価格
R7170 | 税込価格 |
---|---|
リアディレイラー | 33,000 |
フロントディレイラー | 17,820 |
デュアルコントロールレバー | 60,500 |
ブレーキ | 16,830 |
ローター | 8,170 |
クランクセット | 21,010 |
ボトムブラケット | 2,772 |
カセットスプロケット | 7,700 |
チェーン | 4,005 |
バッテリー | 22,220 |
BT CG | 5,763 |
BT ケーブル | 6,469 |
合計 | 206,259 |
impression:Michinari Takagi
edit:Naoki Yasuoka
edit:Naoki Yasuoka
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