2022/08/09(火) - 11:53
日本最大のMTBイベント、シマノバイカーズフェスティバルが3年ぶりに帰ってきた。XCレーサーからDHライダー、更に今年はグラベル/CXライダー向けのクラスも登場。ツーリング種目も含めれば、これ以上なく幅広いサイクリストたちが集い、盛り上がった様子をお伝えしよう。
日本のMTBライダーの聖地、富士見パノラマ。幾度も全日本MTB選手権の舞台となり、何人ものXC/DH王者を生み出してきた。そんな日本最高レベルのロケーションで開催される、日本最大規模のMTBイベントがシマノバイカーズフェスティバルだ。
登り系のクロスカントリー種目、下り系のダウンヒル種目、そして富士見パノラマの周辺に広がるトレイルを活かしたオフロードツーリングや、八ヶ岳に抱かれたロケーションを満喫できるオンロードツーリングなど、競技志向のレーサーからファンライド志向のサイクリスト、そして車種を問わず楽しめる総合イベントとして、2日間に渡って幅広い種目を取りそろえている。
そんなシマノバイカーズフェスティバルだが、過去2年はコロナ禍によって開催中止の憂き目に。年に一度、仲間たちと共に走る機会として楽しみにしてきたライダーたちにとっては、寂しい2年間となったはずだ。ついにこの2022年、そんなファンの期待に応えるべくシマノバイカーズフェスティバルは3年ぶりの開催に漕ぎつけた。
空が白み始めるころからだんだんと参加者が集まりはじめ、日が昇るころには駐車場も満杯に。そして、久しぶりの開催を祝うかのように、大会当日は快晴に。暑さももちろん心配だけれども、それよりなにより抜けるような青空のもと、笑顔の皆さんが富士見パノラマに集まれた喜びに優るものはない。
朝7時半からは大会最初の種目となる60分XCマラソンの参加者たちがセンターハウス前のXCコーススタート地点へ集合。2日間のお祭りの始まりを告げる開会式を終えたら、3年間の鬱憤を晴らすような号砲とともに、MTBerたちがコースへと解き放たれた。
60分XCはその名の通り、60分間でコースを何周できるかを競うもの。通常のクラスの他にも、ファットバイクやシングルスピードの部という車種別クラスも用意されている。あえて重量面やギア比で不利になるバイクとともに1時間を走る奇特な(失礼!)方々のためのクラスも、バイカーズでは既にお馴染み。
XC系種目は他にも子供たちがしのぎを削るキッズXCや、仲間と共に走る4時間/2時間エンデュランスなど、多くの種目が用意されている。中でも今回の目玉となったのが、グラベルバイクやシクロクロスバイクでのみ参加可能な「ドロップハンドル90分エンデュランス」。
昨今流行の、ドロップハンドルオフロードバイクでのレースを早速取り入れたこの種目、ル・マン方式でのスタートや、くじ引きでショートカットが可能というユニークな取り組みも導入し、ただのシクロクロスレースとは一味異なるユニークなレースに。ただ脚力だけでは勝ちきれない、リアルラックが必要な種目となっていた。
一方、XCコースの上側から凄まじい勢いで下ってくるのはダウンヒル種目の参加者たち。第4リフトを登った先がスタート地点となり、2日に渡り様々な下り系種目が開催された。最初に行われたDHエンデューロは、純粋な下りコースではなく、途中には漕ぎの必要な登りセクションも登場する総合力が問われるコース設定の種目。
仲間の応援のもと、そしてMCの実況で盛り上がるフィニッシュ地点に向けて全力で走り抜けるDHライダー達は見ているだけでも大迫力。そして、そんな彼らが協力して走ることになるのがシマノバイカーズフェスティバル名物のチームDH。2~3人のチームで出走し、2人目のタイムが記録となるこのレース、ただ1人だけが上手くても良い記録は出ない。いかに、後ろが惑わないコース取りをするか、そしていかに前の仲間から遅れないか。チームの絆が問われていた。
そんなレースを制した優勝者たちを待つ表彰台も、今年は非常に特別な仕様に。表彰台にには土台を貫くような巨大な丸太が設置され、そこからV字の角のようなものが生えている。そう、今年は7年に1度しか行われない「御柱祭」の年。今年のシマノバイカーズフェスティバルの表彰台には富士見地区の練習用御柱が用いられ、上位入賞者は氏子ならずとも御柱の上に乗ることができるという貴重な体験も出来たのだ。
また、今年は第30回大会ということで、各種目30位の方に記念特別賞を贈呈。上位に入る脚力がなくとも、表彰されるチャンスが広がるとあって、多くの方々が喜ばれていたようだ。
一方、レースだけがバイカーズの魅力ではない。例えば、これからMTBを始めたい、MTBを最近始めたけども、もっと上手くなりたい、という方に向けたスクーリングなども充実。
今年は、従来のライディングスクールだけでなく、よりダウンヒルに特化したスクールとして、シマノサポートライダーの井手川直樹選手と清水一輝選手が講師を務める「シマノサポートライダー直伝!安全に速く走るためのコース攻略ガイド」という新たな取り組みも実施していた。
また、富士見や八ヶ岳エリアの名産品を集めたバイカーズマルシェは今年も継続。キャンプエリアも拡大されたこともあり、夕食の食材としてトウモロコシやセロリといった地元の高原野菜、ベーコンやハムなどは大人気。また、人気ベーカリーのパンもズラリ並び、ランチにも好評を博していたようだ。
更に、PRブースには多くの協賛社が出展。国内最大規模のオフロードの祭典ということもあり、普段あまり実物を手に取る機会が少ないMTB/グラベル系パーツの実物の展示や販売等、そして試乗も行われ多くの来場者が足を運んでいた。
3年ぶりのシマノバイカーズフェスティバルの運営・企画をメインで担ったのが、シマノの文化推進課の久保氏。久しぶりとなる大会に込めた思いについて、語っていただいた。
「2年の開催中止を経て、今年はウィズコロナを前提に感染対策を徹底していくことで地元の方々の了解を得て、開催に漕ぎつけました。例えばスタッフについても、全員が参加直前に抗原検査を義務付けて、ワクチンも三回接種している人のみとしています。これまでも、安心安全という部分は大切にしていましたが、さらに感染症対策という面も加わったことになりますね。
安心・安全という面では、井出川選手や清水選手らによるダウンヒルスクールの開催も一つの取り組みです。速く走るというのも大切ですが、それは上手く安全に走れるようになるということの一側面でもあります。
今回は新たな試みとして、ドロップハンドル90分XCや新たなツーリング種目も新設しました。新しい自転車遊びのトレンドや、地域の魅力を伝えていくというのは、この大会の使命でもあります。地域の特色という意味では、この表彰台も楽しんでもらえたと思います。
ちょうどこの会場に富士見地区の練習用御柱が設置されていて、パノラマの方はどけますよ、と言ってくださっていたんですが、せっかくの機会じゃないですか。もし、可能であれば表彰台を上に設営できないか?とダメモトで聞いてみたらまさかのOKが出まして。それでこのような形で実現できたんです。
マルシェもそうですし、やはりここでやるからには富士見の魅力というものも知ってもらいたい。来年以降、また色々と新しい取り組みを続けていきますので、楽しみにしていてください!鈴鹿でも皆さんお待ちしています!」
コロナ対策もあり、以前の大会での人気の企画が行えなかった部分もある。それでも、新たな取り組みを試み、コロナ禍以前の大会を超えんとする気概を見せた第30回シマノバイカーズフェスティバル。その結果は、参加者の皆さんの笑顔が証明しているはずだ。
text&photo:NaokiYasuoka
日本のMTBライダーの聖地、富士見パノラマ。幾度も全日本MTB選手権の舞台となり、何人ものXC/DH王者を生み出してきた。そんな日本最高レベルのロケーションで開催される、日本最大規模のMTBイベントがシマノバイカーズフェスティバルだ。
登り系のクロスカントリー種目、下り系のダウンヒル種目、そして富士見パノラマの周辺に広がるトレイルを活かしたオフロードツーリングや、八ヶ岳に抱かれたロケーションを満喫できるオンロードツーリングなど、競技志向のレーサーからファンライド志向のサイクリスト、そして車種を問わず楽しめる総合イベントとして、2日間に渡って幅広い種目を取りそろえている。
そんなシマノバイカーズフェスティバルだが、過去2年はコロナ禍によって開催中止の憂き目に。年に一度、仲間たちと共に走る機会として楽しみにしてきたライダーたちにとっては、寂しい2年間となったはずだ。ついにこの2022年、そんなファンの期待に応えるべくシマノバイカーズフェスティバルは3年ぶりの開催に漕ぎつけた。
空が白み始めるころからだんだんと参加者が集まりはじめ、日が昇るころには駐車場も満杯に。そして、久しぶりの開催を祝うかのように、大会当日は快晴に。暑さももちろん心配だけれども、それよりなにより抜けるような青空のもと、笑顔の皆さんが富士見パノラマに集まれた喜びに優るものはない。
朝7時半からは大会最初の種目となる60分XCマラソンの参加者たちがセンターハウス前のXCコーススタート地点へ集合。2日間のお祭りの始まりを告げる開会式を終えたら、3年間の鬱憤を晴らすような号砲とともに、MTBerたちがコースへと解き放たれた。
60分XCはその名の通り、60分間でコースを何周できるかを競うもの。通常のクラスの他にも、ファットバイクやシングルスピードの部という車種別クラスも用意されている。あえて重量面やギア比で不利になるバイクとともに1時間を走る奇特な(失礼!)方々のためのクラスも、バイカーズでは既にお馴染み。
XC系種目は他にも子供たちがしのぎを削るキッズXCや、仲間と共に走る4時間/2時間エンデュランスなど、多くの種目が用意されている。中でも今回の目玉となったのが、グラベルバイクやシクロクロスバイクでのみ参加可能な「ドロップハンドル90分エンデュランス」。
昨今流行の、ドロップハンドルオフロードバイクでのレースを早速取り入れたこの種目、ル・マン方式でのスタートや、くじ引きでショートカットが可能というユニークな取り組みも導入し、ただのシクロクロスレースとは一味異なるユニークなレースに。ただ脚力だけでは勝ちきれない、リアルラックが必要な種目となっていた。
一方、XCコースの上側から凄まじい勢いで下ってくるのはダウンヒル種目の参加者たち。第4リフトを登った先がスタート地点となり、2日に渡り様々な下り系種目が開催された。最初に行われたDHエンデューロは、純粋な下りコースではなく、途中には漕ぎの必要な登りセクションも登場する総合力が問われるコース設定の種目。
仲間の応援のもと、そしてMCの実況で盛り上がるフィニッシュ地点に向けて全力で走り抜けるDHライダー達は見ているだけでも大迫力。そして、そんな彼らが協力して走ることになるのがシマノバイカーズフェスティバル名物のチームDH。2~3人のチームで出走し、2人目のタイムが記録となるこのレース、ただ1人だけが上手くても良い記録は出ない。いかに、後ろが惑わないコース取りをするか、そしていかに前の仲間から遅れないか。チームの絆が問われていた。
そんなレースを制した優勝者たちを待つ表彰台も、今年は非常に特別な仕様に。表彰台にには土台を貫くような巨大な丸太が設置され、そこからV字の角のようなものが生えている。そう、今年は7年に1度しか行われない「御柱祭」の年。今年のシマノバイカーズフェスティバルの表彰台には富士見地区の練習用御柱が用いられ、上位入賞者は氏子ならずとも御柱の上に乗ることができるという貴重な体験も出来たのだ。
また、今年は第30回大会ということで、各種目30位の方に記念特別賞を贈呈。上位に入る脚力がなくとも、表彰されるチャンスが広がるとあって、多くの方々が喜ばれていたようだ。
一方、レースだけがバイカーズの魅力ではない。例えば、これからMTBを始めたい、MTBを最近始めたけども、もっと上手くなりたい、という方に向けたスクーリングなども充実。
今年は、従来のライディングスクールだけでなく、よりダウンヒルに特化したスクールとして、シマノサポートライダーの井手川直樹選手と清水一輝選手が講師を務める「シマノサポートライダー直伝!安全に速く走るためのコース攻略ガイド」という新たな取り組みも実施していた。
また、富士見や八ヶ岳エリアの名産品を集めたバイカーズマルシェは今年も継続。キャンプエリアも拡大されたこともあり、夕食の食材としてトウモロコシやセロリといった地元の高原野菜、ベーコンやハムなどは大人気。また、人気ベーカリーのパンもズラリ並び、ランチにも好評を博していたようだ。
更に、PRブースには多くの協賛社が出展。国内最大規模のオフロードの祭典ということもあり、普段あまり実物を手に取る機会が少ないMTB/グラベル系パーツの実物の展示や販売等、そして試乗も行われ多くの来場者が足を運んでいた。
3年ぶりのシマノバイカーズフェスティバルの運営・企画をメインで担ったのが、シマノの文化推進課の久保氏。久しぶりとなる大会に込めた思いについて、語っていただいた。
「2年の開催中止を経て、今年はウィズコロナを前提に感染対策を徹底していくことで地元の方々の了解を得て、開催に漕ぎつけました。例えばスタッフについても、全員が参加直前に抗原検査を義務付けて、ワクチンも三回接種している人のみとしています。これまでも、安心安全という部分は大切にしていましたが、さらに感染症対策という面も加わったことになりますね。
安心・安全という面では、井出川選手や清水選手らによるダウンヒルスクールの開催も一つの取り組みです。速く走るというのも大切ですが、それは上手く安全に走れるようになるということの一側面でもあります。
今回は新たな試みとして、ドロップハンドル90分XCや新たなツーリング種目も新設しました。新しい自転車遊びのトレンドや、地域の魅力を伝えていくというのは、この大会の使命でもあります。地域の特色という意味では、この表彰台も楽しんでもらえたと思います。
ちょうどこの会場に富士見地区の練習用御柱が設置されていて、パノラマの方はどけますよ、と言ってくださっていたんですが、せっかくの機会じゃないですか。もし、可能であれば表彰台を上に設営できないか?とダメモトで聞いてみたらまさかのOKが出まして。それでこのような形で実現できたんです。
マルシェもそうですし、やはりここでやるからには富士見の魅力というものも知ってもらいたい。来年以降、また色々と新しい取り組みを続けていきますので、楽しみにしていてください!鈴鹿でも皆さんお待ちしています!」
コロナ対策もあり、以前の大会での人気の企画が行えなかった部分もある。それでも、新たな取り組みを試み、コロナ禍以前の大会を超えんとする気概を見せた第30回シマノバイカーズフェスティバル。その結果は、参加者の皆さんの笑顔が証明しているはずだ。
text&photo:NaokiYasuoka
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