突然の開催見送りとなり、波紋を呼んでいる全日本ロード女子(エリート+U23)レース。選手の申立代理人を務める弁護士側はこの決定取り消しを求め再度日本スポーツ仲裁機構に申し立てた。選手側のコメント、電話取材に応じたJCF側の意見も含めてお伝えします。



ワインディングが続く広島中央森林公園のコース(画像は今年のJプロツアー第2戦)ワインディングが続く広島中央森林公園のコース(画像は今年のJプロツアー第2戦) photo:Saotru Kato
チームカーの有無に関して選手と全日本選手権主催者のJCF(日本自転車競技連盟)が対立して日本スポーツ仲裁機構(JSAA)での仲裁に発展、選手側の意見が認められたものの、安全性担保の観点からJCFが全日本ロード女子(エリート+U23)レースのみを開催見送りとした問題。

選手側はUCIルールに明記されている国内選手権開催の必要性と、女子レースのみを中止した不平等を主理由に「合理的な理由なく本件レースの開催を見送ることはできない」として、21日昼過ぎに再度日本スポーツ仲裁機構に開催見送り決定取り消しを求めて仲裁を申し立てた。

「単純な話であり、(JCFは)UCI規則を守ってくださいということ」と言うのは、選手側で申立代理人を務める弁護士の湯尻淳也氏。「チームカー随行を男女とも認めない決定が先日の仲裁で取り消された。これは男女ともチームカーなしはUCI規則違反ということだが、男子は(さらに追加要項を出して)チームカーなしで開催、女子は開催見送り。公平性がないし、判断趣旨を曲げて解釈していると取れる」とJCFの判断について疑問を呈した。

一方のJCF側も、シクロワイアードの電話取材に応じ、事務局次長の齋藤晃一郎氏が開催地選定の難しさを訴えた。「コロナ禍もあり開催地立候補する自治体がなく、群馬や修善寺、広島といったクローズコースが候補になる。しかし群馬は(UCIレギュレーションにおいて)コース長が足りず、修善寺は競輪学校との兼ね合いもあって使えない。そうして広島に決まった」。

また、「JCFとしても当然チームカー有りの普通のレースを開催したかったが、広島はコミッセールの車を走らせるだけでも危険で、特に女子レースはその状況に慣れていない実情をもとに見送り判断に繋がった」と、女子レースだけを開催見送りにした判断についても説明する。

一方、JCFはチームカーを認めない代わりに、ニュートラルサービスを普段以上に充実させるという策を取り、6月10日にHP上で公開。「万全とは言わないながらもできる限り対応するように決めた。開催見送りという判断は、我々としても非常に悔しい」と齋藤氏は話した。

UCIレギュレーションでは、南半球の国(オーストラリアなどは毎年1月に開催されている)やコロナ禍など「重大な状況下」の場合を除き、各国のロードナショナル選手権は6月の最終週に行うべきと記されている。JCFは女子レースのリスケジュールを現在検討中だが見通しは立っていないと説明しているが、6月30日までに開催されない場合ここでもルールに抵触することになりそうだ。

昨年の全日本選手権。ニュートラルサポートカーが隊列後方を走る昨年の全日本選手権。ニュートラルサポートカーが隊列後方を走る photo:Makoto AYANO
今回の争点となっている「ナショナルレースはUCIレギュレーションに準拠すべき」という選手側の訴えと、「過去に事故が発生した会場であり、安全を鑑みた上で特列措置は必須」というJCF側の言い分。

どちらも理解できるものではあるものの、特にコロナ禍においてコース選定が難しい状況だったことを鑑みても、そもそも選手側はUCIルールでチームカーを走らせることが認められている以上、チームカーを走らせることができないコースを全日本選手権の会場として選定したJCF側の責任が問われる可能性も否定できない。

判断理由の事前説明不足や、レース4日前というタイミングでの決定、軽視と見られかねない女子レース(エリート+U23)のみの中止、公式発表の内容が十分納得を得るに足る説明に至らなかったといった要因が重なったことも事態の悪化に拍車をかけた。

湯尻氏によれば申し立ては即日受理されており、早ければ今日には審問が行われる見通し。仲裁判断の結果開催となることは不可能ではないとしており、レース開催判断は覆る可能性もあるという。

ただし仲裁判断にある、全チームがサポートカーを随行させることは広島のコースでは危険が伴うため現実的ではないと思える。世界選手権などランクが付くレースでもコースが危険なときはチームカーの台数を減らす工夫がされることや、UCIレースにおいてもチームカー随行が無く、ニュートラルサービスのみでレースが開催される前例などがあることから、双方が現実的な妥協点を見つけることを望みたい。

text:So Isobe

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