“南仏の巨人”を2度登頂するモンヴァントゥー・チャレンジが開催。男子はルーベン・ゲレイロ(ポルトガル)が制し、初開催の女子レースはマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)が初代王者に輝いた。



序盤からイスラエル・プレミアテックが牽引したプロトン序盤からイスラエル・プレミアテックが牽引したプロトン photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
今年で第4回目を迎えたモンヴァントゥー・チャレンジ (UCI1.1)は、“南仏の巨人”あるいは”魔の山”と呼ばれる名峰モンヴァントゥーを舞台にしたワンデーレース。開催4年目ながらツール・ド・フランスを控えたクライマーたちの前哨戦として強豪選手が集い、近年着実に注目度を高めている。

昨年と同じくヴァントゥー北西の街ヴェゾン=ラ=ロメーヌを出発する154kmのコースは、モンヴァントゥー(15.7km/平均8.8%)の山頂を2度に渡って登坂するレイアウト。1度目は南側のシャレー・レイナール(標高1421m)を通過し、2度目は麓を半周後に勾配の厳しい反対側(西側)からアプローチしてフィニッシュする。

獲得標高差4,521mの山岳レースには、ツールに総合エースとして出場するマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)や、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、エスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)などが揃った。

集団内でアタックのチャンスを窺うエスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)集団内でアタックのチャンスを窺うエスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
アレクサンドル・リアブシェンコ(ベラルーシ、アスタナカザフスタン)以外は全てフランス人という5名が逃げ集団を形成すると、最大3分半のタイム差でイスラエル・プレミアテックがメイン集団をコントロールした。そのまま1度目のモンヴァントゥーの登坂を終えると、2度目の直前でリアブシェンコが逃げグループから飛び出した。

これを50秒差で追うプロトンはEFエデュケーション・イージーポストに牽引が代わると一気にペースアップ。ライバルたちを振り落としながら頂上まで11kmを残し、2020年ジロ・デ・イタリアの山岳賞ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト)が早くもアタックした。これを追いかけるマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)などはチャベスが執拗にマーク。ゲレイロはリアブシェンコを抜き去ると、一定のリズムで踏み続け後続に1分以上の差をつける、圧巻の勝利を挙げた。

頭を抱えて勝利を喜ぶルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト)頭を抱えて勝利を喜ぶルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
チームメイトの勝利を喜ぶエスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)チームメイトの勝利を喜ぶエスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
そして53秒差の2位でフィニッシュしたのは、追走するライバルたちの背後で脚を溜めていたチャベス。これによってEFエデュケーション・イージーポストがツールを前に、弾みをつけるワンツーフィニッシュでクライミングレースを席巻した。

「ここでの勝利は美しい。(2020年の)ジロ・デ・イタリアでの勝利以降は不運の連続だった。ドーフィネを終えた僕たちに監督が”ツールに臨むチームの状況は決して良くない”と伝えてきたんだ。この良い結果で状況を好転させたい」と、ツールに臨むゲレイロは自身2年振りの勝利を喜んだ。

ワンツーフィニッシュでツール・ド・フランスに向けて弾みをつけたEFエデュケーション・イージーポストワンツーフィニッシュでツール・ド・フランスに向けて弾みをつけたEFエデュケーション・イージーポスト photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges


女子レースはカヴァッリが初代王者に輝く

初代王者に輝いたマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)初代王者に輝いたマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
男子レースに先立ち、今年初開催となったモンヴァントゥー・チャレンジ(UCI1.2)女子レース。男子と同じヴェゾン=ラ=ロメーヌを出発し、100kmの行程でモンヴァントゥー山頂にフィニッシュするシンプルな山岳レースだ。

そして初代王者の栄冠に輝いたのは、今年アムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌで優勝するなどキャリアハイの活躍を見せるマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)。残り2.5km地点で先鋭集団から飛び出すと、クララ・コペンベルク(ドイツ、コフィディス・ウィメンチーム)の追随を許さない登坂でフィニッシュラインに到着した。

「先週から試走を重ね、ここモンヴァントゥーでのレースに照準を定めていた。チームとして良いレース運びができ、登りでも展開をコントロールできた。調子が良かったのでアタックし、チームにまた勝利をもたらすことができて本当に嬉しいよ」とカヴァッリ。今シーズン3勝目を挙げ、出場を予定しているジロ・デ・イタリア ドンネ(6月30日〜)に向けて弾みをつけた。

今季3勝目を挙げたマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)今季3勝目を挙げたマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Mont Ventoux Dénivelé Challenges
モンヴァントゥー・チャレンジ2022男子レース結果
1位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト) 4:32:35
2位 エスデバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) 0:53
3位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマ・エフデジ) 1:28
4位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム) 2:00
5位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) 2:15
37位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) 13:15
モンヴァントゥー・チャレンジ2022女子レース結果
1位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) 3:19:01
2位 クララ・コペンベルク(ドイツ、コフィディス・ウィメンチーム) 0:41
3位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) 0:53
4位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム) 1:17
5位 キム・カゾウ(ニュージーランド、トレッリ・ケイマンアイランド・シミター) 1:32
text:Sotaro.Arakawa