2022/05/30(月) - 15:13
iRCのグラベルタイヤ、BOKENシリーズに追加されたDOUBLECROSSをインプレッション。レースタイヤでありアグレッシブなオールコンディションタイヤでもある「グラベルライドの真打ち」とも言えるオフロードタイヤをオフロードで乗り込んでみた。
マウンテンバイクやシクロクロスのタイヤにとくに定評のあるiRC。日本のメーカーながら2018年には北米で盛り上がりを見せるグラベルライドにフィットするモデルとしてBOKENをいち早くリリース。トレンドをキャッチアップしたBOKENは、1日で250km以上を走るグラベルレースでもトラブル無く完走するなど、順調に実績を積んできた。
加熱するグラベルシーンはマウンテンバイクのようなハードコンディションも登場するようになり、タイヤにもコンディションに合わせたパフォーマンスが求められるように。その要望に応えるべく開発されたBOKEN DOUBLECROSSは、舗装・未舗装路が適度にミックスしたグラベル向けのオールラウンドモデルだ。
ハードパック向けのBOKEN初代モデル、舗装路に特化したBOKEN PLUS、マッド&ルーズ路面向けのBOKEN SLOPCHOP、ロードバイクにも使える細いグラベルタイヤのMARBELLAと、状況に応じて対応するBOKENのラインアップは完成したかに見える。
シクロクロスとグラベルどちらでも使えるように開発されたのが"BOKEN DOUBLECROSS"であり、そのモデル名には2種類の遊び方ができるという意味が込められている(アメリカではシクロクロス用の33Cが販売されるが、日本ではSERACシリーズを主力とするため販売がない)。そしてもうひとつの意味として、対応路面で言えば舗装路や未舗装路どちらでもパフォーマンスを発揮できるようなノブ設計が行われていることが特徴だ。
センター部分は繋がるようなデザインで転がりの良さを確保。ミドルからサイドにはBOKENベーシックモデルよりアグレッシブなノブを備えることで、ガレ場や砂利道での走破性を向上させている。グラベルが60-70%、残りが舗装路という標準的な海外グラベルレースのハイスピードな展開で活きてくるトレッドデザインだ。
BOKENシリーズはタイヤのサイド部分に補強材を加えていることが特徴だ。IRCのテクノロジーの1つであるX-GUARDはビードからビードまでに補強材が配されるが、BOKENシリーズの場合はトレッド下には補強が施されていない。これはトレッド部分のしなやかさを残しつつ、サイドカットやタイヤの変形を抑えようという狙いがある。サポートライダーからもタイヤが滑った際に対応できるように、サイド剛性を求められたという。
トップグラベルライダーのピーター・ステティナやジェイク・ウェルズ、そして野辺山シクロクロスやシクロクロス東京で日本のファンにおなじみの存在となったアンソニー・クラークらがIRCサポートライダーとして開発に協力。本場アメリカのグラベルエッセンスを盛り込んだモデルとなった。
インプレッション
「冒険」からネーミングされたBOKENは、すでに本場アメリカのグラベルライダーに受け入れられた存在であり、トップレーサーも使うほど定評あるタイヤだ。今まで筆者もシクロクロスレースでSERAC CXを使い、そこから派生するように生まれたBOKENシリーズを順に使ってきた。
SERAC CXをそのまま太くしたベーシックモデルのBOKENは扱いやすく転がり抵抗も少ないながらも、センターのダイヤ目が土や砂利、泥に対してはグリップ力が低く、スリップしてトラクションが抜けることが気になっていた。
ノブがトレッド全面に備わったDOUBLECROSSは当然そうしたシチュエーションでグリップが抜けず、トラクションが保たれている。急勾配の砂利道の登りでも後輪がスリップせず、ロス無く登っていける。とはいっても転がり抵抗が低い設計であり、舗装路でも軽く進み、ノブの存在や引っ掛かりによる抵抗は気にならない。
ピレリのグラベルタイヤMシリーズなど似たパターンのタイヤも他にあるが、それらと比べてもIRCの独特なフィーリングは、そのしなやかさに由来する。柔らかいコンパウンドと高密度ケーシングによるしなやかな乗り心地は、マイクロサスペンションのように振動を吸収し、ギャップをいなしてくれる。パターンが似ていてもそのフィーリングは他に類を見ないほど快適なものだ。
柔らかな土のトレイルや草地でもグリップは良く、ベーシックモデルでスリップしていた激坂登りも可能になる。湿った土ではグリップは少し物足りないが、砂利のグラベルをメインにするならDOUBLECROSSは「どストライク」。柔らかい土系トレイルならSLOPCHOPの出番だが、アグレッシブなグリップ力を求めなければDOUBLECROSSでもだいたいどんな路面でも走りきれるだろう。
柔らかいコンパウンドで舗装路でのノイズも少なく、不快感がない。BOKENシリーズに共通して受け継がれる快適性はDOUBLECROSSでも健在で、タイヤが弾むように軽く転がってくれるため、乗っていてとても楽しくなるフィーリングだ。それがIRCのファンとなってしまう要因だ。
コンパウンドが柔らかいぶんやや摩耗は早いと思われるので、舗装路メインで走る通勤ライドなどには使うのがもったいない。しかしそのぶんを補って余りあるほど価格は安く、「アンダー6千円」はとてもユーザーフレンドリーな値付けだ。
太さは38Cと42Cの2種があり、少し軽く・速く走りたいレース志向がある筆者は、前輪に42C、後輪に38Cを装着して漕ぎを軽くする使い方がお気に入りだ。
マヴィックのALLROAD SLホイールにセットした際は適合性が高く、手だけで嵌められ、ポンプだけでビードがスムーズに上がった。タイヤ内部のコーティングが効いているのか、エア漏れも少ないようで、シーラントを入れずに放置してもエアはほとんど抜けなかった。そうした扱い易さもIRCのオフロード用チューブレスレディタイヤならではだ。(インプレッション:綾野 真/CW編集部)
iRC BOKEN DOUBLECROSS TLR
サイズ(重量):700×38C(465g)、42C(530g)
参考価格:¥6,820(税込)
text&photo:Makoto AYANO
マウンテンバイクやシクロクロスのタイヤにとくに定評のあるiRC。日本のメーカーながら2018年には北米で盛り上がりを見せるグラベルライドにフィットするモデルとしてBOKENをいち早くリリース。トレンドをキャッチアップしたBOKENは、1日で250km以上を走るグラベルレースでもトラブル無く完走するなど、順調に実績を積んできた。
加熱するグラベルシーンはマウンテンバイクのようなハードコンディションも登場するようになり、タイヤにもコンディションに合わせたパフォーマンスが求められるように。その要望に応えるべく開発されたBOKEN DOUBLECROSSは、舗装・未舗装路が適度にミックスしたグラベル向けのオールラウンドモデルだ。
ハードパック向けのBOKEN初代モデル、舗装路に特化したBOKEN PLUS、マッド&ルーズ路面向けのBOKEN SLOPCHOP、ロードバイクにも使える細いグラベルタイヤのMARBELLAと、状況に応じて対応するBOKENのラインアップは完成したかに見える。
シクロクロスとグラベルどちらでも使えるように開発されたのが"BOKEN DOUBLECROSS"であり、そのモデル名には2種類の遊び方ができるという意味が込められている(アメリカではシクロクロス用の33Cが販売されるが、日本ではSERACシリーズを主力とするため販売がない)。そしてもうひとつの意味として、対応路面で言えば舗装路や未舗装路どちらでもパフォーマンスを発揮できるようなノブ設計が行われていることが特徴だ。
センター部分は繋がるようなデザインで転がりの良さを確保。ミドルからサイドにはBOKENベーシックモデルよりアグレッシブなノブを備えることで、ガレ場や砂利道での走破性を向上させている。グラベルが60-70%、残りが舗装路という標準的な海外グラベルレースのハイスピードな展開で活きてくるトレッドデザインだ。
BOKENシリーズはタイヤのサイド部分に補強材を加えていることが特徴だ。IRCのテクノロジーの1つであるX-GUARDはビードからビードまでに補強材が配されるが、BOKENシリーズの場合はトレッド下には補強が施されていない。これはトレッド部分のしなやかさを残しつつ、サイドカットやタイヤの変形を抑えようという狙いがある。サポートライダーからもタイヤが滑った際に対応できるように、サイド剛性を求められたという。
トップグラベルライダーのピーター・ステティナやジェイク・ウェルズ、そして野辺山シクロクロスやシクロクロス東京で日本のファンにおなじみの存在となったアンソニー・クラークらがIRCサポートライダーとして開発に協力。本場アメリカのグラベルエッセンスを盛り込んだモデルとなった。
インプレッション
「冒険」からネーミングされたBOKENは、すでに本場アメリカのグラベルライダーに受け入れられた存在であり、トップレーサーも使うほど定評あるタイヤだ。今まで筆者もシクロクロスレースでSERAC CXを使い、そこから派生するように生まれたBOKENシリーズを順に使ってきた。
SERAC CXをそのまま太くしたベーシックモデルのBOKENは扱いやすく転がり抵抗も少ないながらも、センターのダイヤ目が土や砂利、泥に対してはグリップ力が低く、スリップしてトラクションが抜けることが気になっていた。
ノブがトレッド全面に備わったDOUBLECROSSは当然そうしたシチュエーションでグリップが抜けず、トラクションが保たれている。急勾配の砂利道の登りでも後輪がスリップせず、ロス無く登っていける。とはいっても転がり抵抗が低い設計であり、舗装路でも軽く進み、ノブの存在や引っ掛かりによる抵抗は気にならない。
ピレリのグラベルタイヤMシリーズなど似たパターンのタイヤも他にあるが、それらと比べてもIRCの独特なフィーリングは、そのしなやかさに由来する。柔らかいコンパウンドと高密度ケーシングによるしなやかな乗り心地は、マイクロサスペンションのように振動を吸収し、ギャップをいなしてくれる。パターンが似ていてもそのフィーリングは他に類を見ないほど快適なものだ。
柔らかな土のトレイルや草地でもグリップは良く、ベーシックモデルでスリップしていた激坂登りも可能になる。湿った土ではグリップは少し物足りないが、砂利のグラベルをメインにするならDOUBLECROSSは「どストライク」。柔らかい土系トレイルならSLOPCHOPの出番だが、アグレッシブなグリップ力を求めなければDOUBLECROSSでもだいたいどんな路面でも走りきれるだろう。
柔らかいコンパウンドで舗装路でのノイズも少なく、不快感がない。BOKENシリーズに共通して受け継がれる快適性はDOUBLECROSSでも健在で、タイヤが弾むように軽く転がってくれるため、乗っていてとても楽しくなるフィーリングだ。それがIRCのファンとなってしまう要因だ。
コンパウンドが柔らかいぶんやや摩耗は早いと思われるので、舗装路メインで走る通勤ライドなどには使うのがもったいない。しかしそのぶんを補って余りあるほど価格は安く、「アンダー6千円」はとてもユーザーフレンドリーな値付けだ。
太さは38Cと42Cの2種があり、少し軽く・速く走りたいレース志向がある筆者は、前輪に42C、後輪に38Cを装着して漕ぎを軽くする使い方がお気に入りだ。
マヴィックのALLROAD SLホイールにセットした際は適合性が高く、手だけで嵌められ、ポンプだけでビードがスムーズに上がった。タイヤ内部のコーティングが効いているのか、エア漏れも少ないようで、シーラントを入れずに放置してもエアはほとんど抜けなかった。そうした扱い易さもIRCのオフロード用チューブレスレディタイヤならではだ。(インプレッション:綾野 真/CW編集部)
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サイズ(重量):700×38C(465g)、42C(530g)
参考価格:¥6,820(税込)
text&photo:Makoto AYANO
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