2022/05/25(水) - 08:27
獲得標高5,250mのクイーンステージでヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が逃げ切り達成。総合上位陣の登坂バトルは回避され、ボーナスタイムで詰め寄られながらもリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がマリアローザを守った。
大会最後の休息日を終え、いよいよ総合成績が動くであろうジロ・デ・イタリア第3週目がスタート。これまで数々の名勝負が繰り広げられてきたイタリアンアルプスに戦いの場所を移し、難関山岳ステージ連発の過酷なラストウィークが動き出した。
当地で「キアヴェンナスカ」と呼ばれる辛口赤ワイン、スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナの産地を巡ることから「ワインステージ」と主催者が呼ぶこの日だが、3つの1級山岳が登場するこの日獲得標高差は今大会最大の5,250mで、難易度も最高ランクの5つ星。過酷極まりない「タッポーネ(クイーンステージ)」は、ガルダ湖のほとりに位置するサローの街から動き出した。
ローリングスタートではなく、0km発進からのアタック合戦ではシクロクロス世界王者マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が動く。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)も乗った6名逃げが1分リードで先行したものの、すぐに始まる1級山岳ゴレット・ディ・カディ-ノ(距離19km/平均6.2%/最大12%)手前の緩斜面区間でメイン集団が一気に差を縮めにかかった。
区間2勝目を目指すジュリオ・チッコーネ(イタリア)を先行させたいトレック・セガフレードの思惑によって先頭グループを捉え、今度は30名ほどの大グループが先行を開始する。トレックは狙い通りチッコーネとダリオ・カタルド(イタリア)を入れることに成功し、ボーラ・ハンスグローエはウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とレナード・ケムナ(ドイツ)を、バイクエクスチェンジ・ジェイコはサイモン・イェーツ(イギリス)を、ユンボ・ヴィスマはマリアアッズーラ(山岳賞)のクーン・ボウマン(オランダ)を、モビスターはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)を入れる。
逃げ屋や、総合成績から遅れたクライマーなどを含む大グループが、まだ遥か先のフィニッシュを目指して先行を開始した。
森林限界を超えたゴレット・ディ・カディ-ノ山頂ではボウマンを抑えたチッコーネが先頭通過。マリアアッズーラ争いに加わるかに思えたものの、テクニカルな下りで脱落してしまう。息をつく間もなく続く1級山岳モルティローロ(距離12.6km/平均7.6%)の麓では人数の多さが原因となって先頭グループが分裂。バルベルデやケムナ、ボウマン、ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)といった8名が先行を開始した。
逃げグループから抜け出した8名
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM)
テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM)
ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
ダリオ・カタルド(イタリア、トレック・セガフレード)
ただしカタルドはチッコーネのアシストをするために先頭グループを離脱。代わって7.6%勾配を刻むモルティローロの登坂ではヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が合流。牧草地が広がるモルティローロ頂上は狙い通りボウマンが先頭通過して山岳ポイント40点を積み重ねることに成功した。
その5分後方を追うメイン集団では、コントロールを担っていたイネオス・グレナディアーズに取って代わってアスタナ・カザフスタンがペースアップを図った。集団を絞り込むと同時にヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)の頂上アタックをお膳立て。ニバリが得意のダウンヒルアタックで抜け出し、緊張感が高まる中では総合5位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が落車するシーンも(幸い大きな怪我なし)。
モルティローロのテクニカルダウンヒルを終えた時点で、レース展開は先頭7名、1分半差で追う追走7名、そしてメイン集団は5分遅れて9名(カラパス、シヴァコフ、ニバリ、ランダ、ビルバオ、ブッフマン、ヒンドレー、アルメイダ、フォルモロ)。山岳ポイントではなくスプリントポイントが設定された5.6kmの登坂(平均8.6%、最大16%)を前にメイン集団が一度平穏を取り戻し、落車したポッツォヴィーヴォも含めて次々と遅れていた選手が復帰する。再度イネオス・グレナディアーズがコントロールを担ったものの、続いてランダ擁するバーレーン・ヴィクトリアスがペースアップを開始した。
先頭グループの中、「スプリントポイントの下り」で抜け出し、最終1級山岳のサンタ・クリスティーナ(距離13.5km/平均8%/最大13%)を単独で登りはじめたのはケムナ。「今日は調子が良かったし可能な限り全ての攻撃を試みた」と言うケムナが逃げ、4名(カーシー、ヒルト、バルベルデ、アレンスマン)に減った追走グループが追走。ケムナのリードは一時50秒まで広がったものの、コンスタントに10%超勾配を刻むサンタ・クリスティーナ後半区間に入ると徐々に失速してしまった。
アレンスマンがバルベルデたちを振り落としてケムナを追い抜いたものの、一時遅れていたヒルトは粘り強い走りでアレンスマンに食らいつき、頂上に近づくほど勾配が増す最終区間で単独先頭に立つ。「モルティローロを越える2019年のクイーンステージで2位だったので、もう一度あの走りを繰り返したいと思っていた」と言うヒルトが15秒リードで先頭通過。突如雨が降り出して滑りやすくなったテクニカルダウンヒルに入った。
あわや落車というスリップシーンを何度か見せつつ、限界まで下りを攻めたヒルトが、必死に追いかけるアレンスマンとの差を維持しながら残り1km地点を通過する。2~3%の緩斜面勾配でも勢いは衰えず、力強いダンシングで踏み続けたヒルトがフィニッシュラインに戻ってきた。
うなだれるアレンスマンを尻目に「身体じゅうが悲鳴を上げていたけれど、それでも勝利への欲望が強かった」と振り返るヒルトが勝利。キャリア初のグランツール区間優勝を叶えると共に総合成績を12位から9位に上げ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオにとってはギルマイの第10ステージに続くステージ2勝目となった。
先頭から3分遅れで1級山岳サンタ・クリスティーナを登るメイン集団はすぐさま10名以下まで絞り込まれた。人数を揃えていたバーレーン・ヴィクトリアスがペースメイクするも、ランダと接触してペリョ・ビルバオ(スペイン)が落車する不運も。やがてランダがペースを上げるとカラパスとヒンドレーだけが追従。前から遅れてきたバルベルデを飲み込み、4名のまま下りをこなしてフィニッシュラインへ。ステージ3位のボーナスタイム争いではヒンドレーがカラパスを下した。
カラパスはマリアローザを守ったものの、総合2位ヒンドレーとの差は7秒から3秒に。対して登りで遅れた総合3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)との差は30秒から44秒まで拡大。総合4位ランダは同タイムフィニッシュしたためタイム差は59秒から変わらなかった。
最終盤が下り~平坦フィニッシュだったため、カラパスとヒンドレーの本格的な登坂勝負は次回へと持ち越しに。翌日も獲得標高差3,730mの難関山岳フィニッシュだが、1級山岳を登り終えた後のラスト8kmは下り基調のアップダウン。カラパスとヒンドレーの一騎討ちとなるかはやや微妙なところだ。
大会最後の休息日を終え、いよいよ総合成績が動くであろうジロ・デ・イタリア第3週目がスタート。これまで数々の名勝負が繰り広げられてきたイタリアンアルプスに戦いの場所を移し、難関山岳ステージ連発の過酷なラストウィークが動き出した。
当地で「キアヴェンナスカ」と呼ばれる辛口赤ワイン、スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナの産地を巡ることから「ワインステージ」と主催者が呼ぶこの日だが、3つの1級山岳が登場するこの日獲得標高差は今大会最大の5,250mで、難易度も最高ランクの5つ星。過酷極まりない「タッポーネ(クイーンステージ)」は、ガルダ湖のほとりに位置するサローの街から動き出した。
ローリングスタートではなく、0km発進からのアタック合戦ではシクロクロス世界王者マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が動く。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)も乗った6名逃げが1分リードで先行したものの、すぐに始まる1級山岳ゴレット・ディ・カディ-ノ(距離19km/平均6.2%/最大12%)手前の緩斜面区間でメイン集団が一気に差を縮めにかかった。
区間2勝目を目指すジュリオ・チッコーネ(イタリア)を先行させたいトレック・セガフレードの思惑によって先頭グループを捉え、今度は30名ほどの大グループが先行を開始する。トレックは狙い通りチッコーネとダリオ・カタルド(イタリア)を入れることに成功し、ボーラ・ハンスグローエはウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とレナード・ケムナ(ドイツ)を、バイクエクスチェンジ・ジェイコはサイモン・イェーツ(イギリス)を、ユンボ・ヴィスマはマリアアッズーラ(山岳賞)のクーン・ボウマン(オランダ)を、モビスターはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)を入れる。
逃げ屋や、総合成績から遅れたクライマーなどを含む大グループが、まだ遥か先のフィニッシュを目指して先行を開始した。
森林限界を超えたゴレット・ディ・カディ-ノ山頂ではボウマンを抑えたチッコーネが先頭通過。マリアアッズーラ争いに加わるかに思えたものの、テクニカルな下りで脱落してしまう。息をつく間もなく続く1級山岳モルティローロ(距離12.6km/平均7.6%)の麓では人数の多さが原因となって先頭グループが分裂。バルベルデやケムナ、ボウマン、ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)といった8名が先行を開始した。
逃げグループから抜け出した8名
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM)
テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM)
ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
ダリオ・カタルド(イタリア、トレック・セガフレード)
ただしカタルドはチッコーネのアシストをするために先頭グループを離脱。代わって7.6%勾配を刻むモルティローロの登坂ではヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が合流。牧草地が広がるモルティローロ頂上は狙い通りボウマンが先頭通過して山岳ポイント40点を積み重ねることに成功した。
その5分後方を追うメイン集団では、コントロールを担っていたイネオス・グレナディアーズに取って代わってアスタナ・カザフスタンがペースアップを図った。集団を絞り込むと同時にヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)の頂上アタックをお膳立て。ニバリが得意のダウンヒルアタックで抜け出し、緊張感が高まる中では総合5位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が落車するシーンも(幸い大きな怪我なし)。
モルティローロのテクニカルダウンヒルを終えた時点で、レース展開は先頭7名、1分半差で追う追走7名、そしてメイン集団は5分遅れて9名(カラパス、シヴァコフ、ニバリ、ランダ、ビルバオ、ブッフマン、ヒンドレー、アルメイダ、フォルモロ)。山岳ポイントではなくスプリントポイントが設定された5.6kmの登坂(平均8.6%、最大16%)を前にメイン集団が一度平穏を取り戻し、落車したポッツォヴィーヴォも含めて次々と遅れていた選手が復帰する。再度イネオス・グレナディアーズがコントロールを担ったものの、続いてランダ擁するバーレーン・ヴィクトリアスがペースアップを開始した。
先頭グループの中、「スプリントポイントの下り」で抜け出し、最終1級山岳のサンタ・クリスティーナ(距離13.5km/平均8%/最大13%)を単独で登りはじめたのはケムナ。「今日は調子が良かったし可能な限り全ての攻撃を試みた」と言うケムナが逃げ、4名(カーシー、ヒルト、バルベルデ、アレンスマン)に減った追走グループが追走。ケムナのリードは一時50秒まで広がったものの、コンスタントに10%超勾配を刻むサンタ・クリスティーナ後半区間に入ると徐々に失速してしまった。
アレンスマンがバルベルデたちを振り落としてケムナを追い抜いたものの、一時遅れていたヒルトは粘り強い走りでアレンスマンに食らいつき、頂上に近づくほど勾配が増す最終区間で単独先頭に立つ。「モルティローロを越える2019年のクイーンステージで2位だったので、もう一度あの走りを繰り返したいと思っていた」と言うヒルトが15秒リードで先頭通過。突如雨が降り出して滑りやすくなったテクニカルダウンヒルに入った。
あわや落車というスリップシーンを何度か見せつつ、限界まで下りを攻めたヒルトが、必死に追いかけるアレンスマンとの差を維持しながら残り1km地点を通過する。2~3%の緩斜面勾配でも勢いは衰えず、力強いダンシングで踏み続けたヒルトがフィニッシュラインに戻ってきた。
うなだれるアレンスマンを尻目に「身体じゅうが悲鳴を上げていたけれど、それでも勝利への欲望が強かった」と振り返るヒルトが勝利。キャリア初のグランツール区間優勝を叶えると共に総合成績を12位から9位に上げ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオにとってはギルマイの第10ステージに続くステージ2勝目となった。
先頭から3分遅れで1級山岳サンタ・クリスティーナを登るメイン集団はすぐさま10名以下まで絞り込まれた。人数を揃えていたバーレーン・ヴィクトリアスがペースメイクするも、ランダと接触してペリョ・ビルバオ(スペイン)が落車する不運も。やがてランダがペースを上げるとカラパスとヒンドレーだけが追従。前から遅れてきたバルベルデを飲み込み、4名のまま下りをこなしてフィニッシュラインへ。ステージ3位のボーナスタイム争いではヒンドレーがカラパスを下した。
カラパスはマリアローザを守ったものの、総合2位ヒンドレーとの差は7秒から3秒に。対して登りで遅れた総合3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)との差は30秒から44秒まで拡大。総合4位ランダは同タイムフィニッシュしたためタイム差は59秒から変わらなかった。
最終盤が下り~平坦フィニッシュだったため、カラパスとヒンドレーの本格的な登坂勝負は次回へと持ち越しに。翌日も獲得標高差3,730mの難関山岳フィニッシュだが、1級山岳を登り終えた後のラスト8kmは下り基調のアップダウン。カラパスとヒンドレーの一騎討ちとなるかはやや微妙なところだ。
ジロ・デ・イタリア2022第16ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 238pts |
2位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル) | 121pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 117pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 167pts |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 99pts |
3位 | ディエゴ・ローザ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 92pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 68:49:50 |
2位 | フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) | +9:11 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +9:39 |
チーム総合成績
1位 | ボーラ・ハンスグローエ | 206:33:39 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +6:58 |
3位 | アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ | +32:14 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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