2022/05/07(土) - 07:16
ハンガリーの首都ブダペストで第105回ジロ・デ・イタリアが開幕。勝負は予想通り登坂スプリントに持ち込まれ、ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)を下したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が勝利。初出場ジロでいきなりマリアローザを手に入れた。
ハンガリーの首都、ブダペストで華々しく第105回ジロ・デ・イタリアがグランパルテンツァ(開幕)を迎えた。マリアローザの最初の着用者を決めるのは恒例の個人タイムトライアルではなく、ブダペストから反時計回りにヴィシェグラードを目指す195kmのラインレースだ。
ハンガリーからイタリアへの長距離移動日を挟むため、1日前倒しした金曜日開幕。そしてブダペスト市内の交通制限が難しいことによる通常ステージ開幕(個人タイムトライアルは2日目)。当初2020年大会で予定されていたハンガリー開幕はコロナ禍によって2年越しの今年、ついに開催を迎えることとなった。
第105回ジロ・デ・イタリア初日のコースはざっくり説明すれば「ずっと平坦、最後だけ登り」。ラスト5kmは平均勾配4%の登りが続き、序盤区間には8%勾配が含まれているため重量級ピュアスプリンターにはやや厳しいレイアウトだ。大方の予想通り、この日はクラシックハンターや、総合系の選手が入り乱れてのマリアローザ獲得争いが繰り広げられた。
大観衆が詰めかけ、赤城緑のハンガリー国旗が翻るパレードランを終え、ディレクターカーからジロ開幕を告げる旗が振られる。すると最前列で待機していたマッティア・バイスとフィリッポ・タリアーニ(共にイタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)が一目散に飛び出した。
3週間・3,455.6kmに及ぶ戦いを見据えてか、それともこの第1ステージで逃げ切りチャンスが限りなくゼロに近いからか。その真意は分からないものの、集団からこの2人を追いかけようとする動きは一切生まれない。とにかくこの日のエスケープは、スタート後僅か数秒であっさりと決まることになった。
名将ジャンニ・サヴィオ監督が指揮をとるドローンホッパー・アンドローニジョカトリのコンビが、追い風に乗って一気にリードを奪った。メイン集団は一時的に10分以上のタイム差を許したものの、レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とセンネ・レイゼン(べルギー、アルペシン・フェニックス)が牽引役を担ったことで一桁分台に抑え込まれた。
75.3km地点に設定された中間スプリントポイントでは、逃げの5分後方を走るメイン集団内でマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)争いが繰り広げられた。ポイント手前のコーナーで有利に進め、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)を抑えたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)が全体の3位通過で6ポイントを掴んでいる。
距離が進むにつれて先頭2人とメイン集団の間隔は詰まり、リードは残り50kmで2分、残り30kmで1分にまで短縮。スプリントポイントではなくボーナスタイムが懸けられた167.5km地点のスプリントポイントでは特に争うことなくトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が集団内で先頭通過した。
終盤の登坂区間に向けて活性化するメイン集団は残り14kmを切って2人を飲み込み、各チームが縦一列にトレインを組んで一気にペースアップする後方ではヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む落車が発生。激しい位置取り争いを経て突入した登坂区間では、まず登坂能力を強化するカレブ・ユアン(オーストラリア)擁するロット・スーダルや、スポンサーアピールのためにオリーブグリーンの特別ジャージを着るアルペシン・フェニックスが主導権を握る。
一人飛び出したローレンス・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)を見送り、一時的に落ち着いた集団からはカウンターでレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が飛び出してナーセンをパス。ジロ前哨戦のツアー・オブ・ジ・アルプスで区間優勝を挙げたケムナは勢い良くリードを稼いだものの、メイン集団もみすみすマリアローザ獲得チャンスをケムナに譲る道理はなかった。
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)の加速によってラスト1kmアーチを過ぎてからケムナをキャッチ。集団後方でデマールらピュアスプリンターが脱落していく一方、ユアンやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)、ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった有力候補は集団前方をキッチリとキープ。ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)の踏み込みで登坂スプリントの幕が切って落とされた。
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)たちの後ろからギルマイが加速し、左側からファンデルプールが、右側からユアンが追い上げる。ギルマイに追突する形でユアンが自爆落車するのを尻目に、最後まで踏み抜いたファンデルプールが先着。手を上げることもままらない、体力を絞り尽くす登坂スプリントの末にMVDPが2022年ジロ開幕ステージを制した。
昨年のツール・ド・フランスに続く2度目のグランツール、そして自身初となったジロ・デ・イタリアの初日にファンデルプールがマリアローザを獲得。シクロクロスから飛び出し、プロトンを席巻し続ける27歳が、そのキャリアにまた新たな経歴を書き込むことになった。
「今日は位置取りが重要になるだろうと思っていた。最後は前の選手たちを捕まえることにエネルギーを使い、最後は脚に乳酸がたっぷり溜まった状態でスプリントしたんだ。去年のツールでマイヨジョーヌを、このジロでマリアローザを着るなんてインクレディブルだ」と優勝インタビューで答えたファンデルプール。難しいレースになるだろうが、翌日のタイムトライアルではマリアローザを守るためにトライする、とも。
フィニッシュ地点は4級山岳に設定されていたことで、ファンデルプールはマリアローザ(個人総合)、マリアチクラミーノ(ポイント賞)、そしてマリアアッズーラ(山岳賞)と3賞ジャージ独占に成功している。
フィニッシュ地点で激しく落車したユアンに幸い骨折はなく、肩や脚に擦過傷を負った程度。「まだ見えていない怪我の影響が出るかもしれないけれど感触はとても良かった。最終盤でも前をキープし、全ての動きに対処できてたんだ。チームも、僕もとても強さを感じていた」と話しており、翌日以降も再びチャンスを狙っていく構えだ。
ハンガリーの首都、ブダペストで華々しく第105回ジロ・デ・イタリアがグランパルテンツァ(開幕)を迎えた。マリアローザの最初の着用者を決めるのは恒例の個人タイムトライアルではなく、ブダペストから反時計回りにヴィシェグラードを目指す195kmのラインレースだ。
ハンガリーからイタリアへの長距離移動日を挟むため、1日前倒しした金曜日開幕。そしてブダペスト市内の交通制限が難しいことによる通常ステージ開幕(個人タイムトライアルは2日目)。当初2020年大会で予定されていたハンガリー開幕はコロナ禍によって2年越しの今年、ついに開催を迎えることとなった。
第105回ジロ・デ・イタリア初日のコースはざっくり説明すれば「ずっと平坦、最後だけ登り」。ラスト5kmは平均勾配4%の登りが続き、序盤区間には8%勾配が含まれているため重量級ピュアスプリンターにはやや厳しいレイアウトだ。大方の予想通り、この日はクラシックハンターや、総合系の選手が入り乱れてのマリアローザ獲得争いが繰り広げられた。
大観衆が詰めかけ、赤城緑のハンガリー国旗が翻るパレードランを終え、ディレクターカーからジロ開幕を告げる旗が振られる。すると最前列で待機していたマッティア・バイスとフィリッポ・タリアーニ(共にイタリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)が一目散に飛び出した。
3週間・3,455.6kmに及ぶ戦いを見据えてか、それともこの第1ステージで逃げ切りチャンスが限りなくゼロに近いからか。その真意は分からないものの、集団からこの2人を追いかけようとする動きは一切生まれない。とにかくこの日のエスケープは、スタート後僅か数秒であっさりと決まることになった。
名将ジャンニ・サヴィオ監督が指揮をとるドローンホッパー・アンドローニジョカトリのコンビが、追い風に乗って一気にリードを奪った。メイン集団は一時的に10分以上のタイム差を許したものの、レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とセンネ・レイゼン(べルギー、アルペシン・フェニックス)が牽引役を担ったことで一桁分台に抑え込まれた。
75.3km地点に設定された中間スプリントポイントでは、逃げの5分後方を走るメイン集団内でマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)争いが繰り広げられた。ポイント手前のコーナーで有利に進め、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)を抑えたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)が全体の3位通過で6ポイントを掴んでいる。
距離が進むにつれて先頭2人とメイン集団の間隔は詰まり、リードは残り50kmで2分、残り30kmで1分にまで短縮。スプリントポイントではなくボーナスタイムが懸けられた167.5km地点のスプリントポイントでは特に争うことなくトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が集団内で先頭通過した。
終盤の登坂区間に向けて活性化するメイン集団は残り14kmを切って2人を飲み込み、各チームが縦一列にトレインを組んで一気にペースアップする後方ではヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む落車が発生。激しい位置取り争いを経て突入した登坂区間では、まず登坂能力を強化するカレブ・ユアン(オーストラリア)擁するロット・スーダルや、スポンサーアピールのためにオリーブグリーンの特別ジャージを着るアルペシン・フェニックスが主導権を握る。
一人飛び出したローレンス・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)を見送り、一時的に落ち着いた集団からはカウンターでレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が飛び出してナーセンをパス。ジロ前哨戦のツアー・オブ・ジ・アルプスで区間優勝を挙げたケムナは勢い良くリードを稼いだものの、メイン集団もみすみすマリアローザ獲得チャンスをケムナに譲る道理はなかった。
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)の加速によってラスト1kmアーチを過ぎてからケムナをキャッチ。集団後方でデマールらピュアスプリンターが脱落していく一方、ユアンやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)、ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった有力候補は集団前方をキッチリとキープ。ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)の踏み込みで登坂スプリントの幕が切って落とされた。
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)たちの後ろからギルマイが加速し、左側からファンデルプールが、右側からユアンが追い上げる。ギルマイに追突する形でユアンが自爆落車するのを尻目に、最後まで踏み抜いたファンデルプールが先着。手を上げることもままらない、体力を絞り尽くす登坂スプリントの末にMVDPが2022年ジロ開幕ステージを制した。
昨年のツール・ド・フランスに続く2度目のグランツール、そして自身初となったジロ・デ・イタリアの初日にファンデルプールがマリアローザを獲得。シクロクロスから飛び出し、プロトンを席巻し続ける27歳が、そのキャリアにまた新たな経歴を書き込むことになった。
「今日は位置取りが重要になるだろうと思っていた。最後は前の選手たちを捕まえることにエネルギーを使い、最後は脚に乳酸がたっぷり溜まった状態でスプリントしたんだ。去年のツールでマイヨジョーヌを、このジロでマリアローザを着るなんてインクレディブルだ」と優勝インタビューで答えたファンデルプール。難しいレースになるだろうが、翌日のタイムトライアルではマリアローザを守るためにトライする、とも。
フィニッシュ地点は4級山岳に設定されていたことで、ファンデルプールはマリアローザ(個人総合)、マリアチクラミーノ(ポイント賞)、そしてマリアアッズーラ(山岳賞)と3賞ジャージ独占に成功している。
フィニッシュ地点で激しく落車したユアンに幸い骨折はなく、肩や脚に擦過傷を負った程度。「まだ見えていない怪我の影響が出るかもしれないけれど感触はとても良かった。最終盤でも前をキープし、全ての動きに対処できてたんだ。チームも、僕もとても強さを感じていた」と話しており、翌日以降も再びチャンスを狙っていく構えだ。
ジロ・デ・イタリア2022第1ステージ結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 4:35:28 |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
5位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
8位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | アンドレア・ヴェンドラメ(イタリア、AG2Rシトロエン) | |
10位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 4:35:18 |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +0:04 |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:06 |
4位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:10 |
5位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
8位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | アンドレア・ヴェンドラメ(イタリア、AG2Rシトロエン) | |
10位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 50pts |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 35pts |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 25pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | pts3 |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 2pts |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 1pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 4:35:22 |
2位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) | +0:10 |
3位 | ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 13:46:32 |
2位 | UAEチームエミレーツ | |
3位 | トレック・セガフレード |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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