2級山岳でアタックを成功させた3名が逃げ切ったツアー・オブ・ターキー第7ステージ。自ら仕掛け、リード拡大に力を使ったパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)が勝利を挙げ、最終日を前に総合でもトップに躍り出た。



スタート前のチームプレゼンテーションを待つアルペシン・フェニックスの選手たちスタート前のチームプレゼンテーションを待つアルペシン・フェニックスの選手たち photo:CorVos
最終日を翌日に控えたツアー・オブ・ターキー第7ステージは、前日のフィニッシュ地点ガリボリから地中海沿いを進み、西にあるテキルダーを目指す131.3km。レース中盤から2つの2級山岳を越えるものの、その後はフィニッシュまで平坦が続くため大会6度目となる集団スプリントが予想された。しかし、その予想をイスラエル・プレミアテックが覆した。

スタートから15km地点で形成されたのは、第5ステージでも逃げに乗ったアブラム・ストックマン(ベルギー、サリスルーヴィー・ザウアーラントチーム)を含む4名の逃げ。それを追うプロトンは、この日もアイルランド王者ジャージを着るライアン・ミューレン(ボーラ・ハンスグローエ)が先頭で牽引を担当し、典型的なスプリンターステージのように逃げとのタイム差を縮めていった。

フィニッシュまで30km地点にある最終2級山岳(距離7km/平均4.2%)に突入したメイン集団は、先頭で隊列を組むイスラエル・プレミアテックのハイスピードな牽引を開始。プロトンの人数が徐々に減っていく中、最も勾配が厳しい区間でパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)が飛び出した。

ガリボリから西のテキルダーを目指すターキー7日目ガリボリから西のテキルダーを目指すターキー7日目 photo:CorVos
序盤から逃げグループを形成した4名序盤から逃げグループを形成した4名 photo:Tour of Türkiye
この予想外の動きに追従できたのはジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)とニコラ・エデ(フランス、アルケア・サムシック)の2人のみ。完全に崩壊したメイン集団を尻目に、ベヴィンたちは軽快な足取りで山頂を通過。バイクエクスチェンジ・ジェイコやリーダージャージのエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)が追走集団を整える頃に、その差は30秒まで広がっていた。

元ニュージーランド個人TT王者のベヴィンとヴァインの2人がローテーションを組みながら平坦区間を突き進む。集団スプリントに持ち込むため先頭交代を拒むエデの思惑と反対に、追走と差は縮まるどころが広がっていく。残り10km地点で45秒、残り5km地点で1分差まで拡大したタイム差に、しびれを切らしたヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が単独で飛び出すものの合流には至らず。勝負は先頭3名に絞られた。

最初に仕掛けたのは2人の背後で脚を溜めていたエデ。しかし、スプリント力で上回るベヴィンが追従すると、そのままロングスプリントを開始。身体を縮め、シッティングのままヴァインとエデを突き放したベヴィンが、自身3年振りの勝利を手に入れた。

3年振りの勝利を挙げたパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)3年振りの勝利を挙げたパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) photo:Tour of Türkiye
「僕たちの作戦は最終山岳にハイペースで突入することだった。集団から飛び出す時に力を使い、タイム差を稼ぐためにも僕は積極的に前に出た。もちろんヴァインは力を貸してくれたが、エデは協力を拒んだ。そして掴んだ勝利。本当に嬉しいよ。リーダージャージを守るためには明日を乗り切る必要があるものの、今日の結果で既に成功の大会と言えるだろう」。区間優勝とともに、リーダージャージにも袖を通したベヴィンはレースをそう振り返った。

翌日の最終日は大都市イスタンブールを巡る137.8km。コース終盤に1.3km/平均勾配6%(最大勾配11%)の登坂を含む10kmの周回コースを4周する。

共に逃げ、表彰台に上がったパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)たち3人共に逃げ、表彰台に上がったパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)たち3人 photo:Tour of Türkiye
ツアー・オブ・ターキー2022第7ステージ結果
1位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) 3:21:02
2位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス) 0:02
3位 ニコラ・エデ(フランス、アルケア・サムシック) 0:04
4位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 0:41
5位 ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)
個人総合成績
1位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) 27:33:10
2位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス) 0:20
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ) 0:40
4位 ニコラ・エデ(フランス、アルケア・サムシック) 0:52
5位 ハルム・ファンハウケ(ベルギー、ロット・スーダル) 1:17
その他の特別賞
ポイント賞 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
山岳賞 ノア・グラニガン(アメリカ、ワイルドファイヤージェネレーション・プロサイクリング)
チーム総合成績 エキポ・ケルンファルマ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos