2009/02/01(日) - 21:25
フランスきっての名門ブランド、MBKのエントリーモデルRD550は、なんと小サイズを日本で設計しスモールライダーに嬉しい操縦性を実現したという。価格的にも"超ストライクゾーン"。さてその実力をテスターはどう評価する?
スチールフレームの時代から、MBKはフレームの設計に徹底的にこだわってきた。コロンブスやレイノルズのチューブをそのまま使用するのではなく、オリジナルの楕円加工を施すことで有名だったのだ。これは「HPF加工」と呼ばれ、理想的な剛性バランスを生み出すマジックのような加工であった。
また、一目見てMBKとわかるスタイルを与え、フランスのエスプリを感じさせるものでもあった。
その「機能を追求しつつオリジナリティを重視する」という伝統的な姿勢は、カーボンフレームになってもしっかりと生きている。現代では、フレームの設計は3Dによるコンピューターグラフィックシステムを駆使し、応力計算を徹底的に施したものとなった。しかし、その中で「MBKオリジナルデザイン」を追求し、どこのメーカーにも似ていない魅力的なフレームを作り上げている。その艶めかしいスタイリングは、まさにフレンチテイストそのものと言えるだろう。
トレカのカーボン繊維を用いたフレームは、モノコック製法で製造され、一枚岩のような剛性感の高さを誇るのである。上位モデルのRD750やRD850、RD1200ほどではないものの、デザインは十分に個性的だと言えよう。ゆるやかに湾曲したトップチューブや、そこから滑らかにつながるシートステーなど、ため息が出るほど美しい造形美を見せる。
また驚くべきは、そのサイズ展開だ。XS、XXSといった小さいサイズまで用意されているのである。実はその2つのサイズに関しては、日本の代理店であるサイクルラインズ側で図面を引き、フランス側をリードして製作されたものだという。
要するに「フレンチメーカーによる日本人のためのフレーム」なのである。女性や小柄なライダーにとって、まさしく福音とも言える製品だ。
三上和志(サイクルハウスMIKAMI) 「小サイズバイクで例外的な操縦性の良さが光る」
とてもしっかりとした印象のフレームだ。ハンドリングは、小さいサイズのバイクとは思えない安定感の高さをみせる。このサイズのバイクとしては、トップレベルのハンドリングだろう。フレーム設計の良さが現れている部分だ。ブレーキング性能も良い。
コーナリングや加速感もまずまず。ホイールを上級モデルに交換したらさらに良くなるだろう。フレームの資質が良いだけに、ぜひともホイールはグレードアップしたいところ。価格的にはしかたのない部分もあるのだが…。
振動吸収性も素晴らしい。しっかりとしたフレームだけに衝撃はそれなりに伝わってくるものの、微振動は見事に吸収してくれる。まさに「シルキー」と呼ぶに相応しい乗り味だ。
それにしても光るのはハンドリング性能に表れる設計の良さだ。小サイズのバイクはハンドリングが悪いというのが当たり前だが、このバイクは例外中の例外。ロードレーサーらしい操縦感は、初心者も上級者も満足させるものだ。かつ安全性も高い。
シューズのクリート位置によってつま先が前輪にこすれる場合があるだろうが、それは欠点というワケでなく、その操縦性確保ゆえのことだということを理解しておきたい。単にそれを避けた設計では、この乗り味は得られないだろう。
105仕様完成車がお買い得だろうが、個人的にはフレーム素性の良さからアルテグラ仕様をイチ押ししたい。そしてホイールをグレードアップしたら思う存分レースにロングライドにチャレンジして欲しい。充分にその価値があるバイクだ。
佐藤正一(なるしまフレンド) 「ナチュラルでカッチリしたフレーム。グレードアップにも対応できる」
剛性感がとても高く、設計者の意図がすぐ伝わるフレームだ。「カッチリ!」というのが第一印象。それゆえブレーキング性能が高く、急ブレーキでもフレームやフォークが負けることなく、グイッと止まってくれる。
試乗車のサイズが小さいということもあり、ハンドリングは少々クイックな印象だったが、十分慣れられるレベル。というか、この小さいサイズでこのハンドリングの良さを実現しているところに驚く。設計が良い証拠だ。
コーナリングもナチュラルで良い感じである。フレームがしっかりとしているので、たとえ体重のあるライダーでも鋭く曲がれるだろう。加速感も良いフィーリングで、スーッとスピードに乗ることができる。
完成車に標準装備のホイール、マヴィック・アクシウムでも悪くないのだが、さらに良いホイールを履かせたくなるところだ。
振動吸収性に関しては路面の微振動を多少拾う傾向があるが、それを打ち消すだけのメリットがこのフレームにはあると思う。
とくかく、お手頃な価格の割には、しっかりとしたフレームだ。そういった意味で、小柄なライダーがホビーレースやロングライドなどで使用するのにうってつけ。パーツのグレードアップをするベース車両としても良いだろう。
※試乗車(写真)のスペックは市販車のものとは一部異なります。
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
伝統のフレンチブランド
MBKはフランス北部のサンカンタンに本拠を持つブランドだ。古くからツール・ド・フランスをはじめプロロードレース界をサポートしてきた実績を持っており、ADR、ファゴール、ロット、コフィディス、ショコラードジャック、アグリチュベルなどの一流チームがツール・ド・フランスやパリ~ルーベなどでMBKのバイクとともに戦い、輝かしい実績を収めてきた。スチールフレームの時代から、MBKはフレームの設計に徹底的にこだわってきた。コロンブスやレイノルズのチューブをそのまま使用するのではなく、オリジナルの楕円加工を施すことで有名だったのだ。これは「HPF加工」と呼ばれ、理想的な剛性バランスを生み出すマジックのような加工であった。
また、一目見てMBKとわかるスタイルを与え、フランスのエスプリを感じさせるものでもあった。
その「機能を追求しつつオリジナリティを重視する」という伝統的な姿勢は、カーボンフレームになってもしっかりと生きている。現代では、フレームの設計は3Dによるコンピューターグラフィックシステムを駆使し、応力計算を徹底的に施したものとなった。しかし、その中で「MBKオリジナルデザイン」を追求し、どこのメーカーにも似ていない魅力的なフレームを作り上げている。その艶めかしいスタイリングは、まさにフレンチテイストそのものと言えるだろう。
贅沢極まりないエントリーモデル
前置きが長くなったが、このRD550は105・シルバー仕様完成車で345,000円 (税込み価格)と、MBKのカーボンバイクの中では、最も求めやすい価格の製品である。しかし、その内容は「エントリーモデル」と呼ぶにはあまりにもゼイタクだ。トレカのカーボン繊維を用いたフレームは、モノコック製法で製造され、一枚岩のような剛性感の高さを誇るのである。上位モデルのRD750やRD850、RD1200ほどではないものの、デザインは十分に個性的だと言えよう。ゆるやかに湾曲したトップチューブや、そこから滑らかにつながるシートステーなど、ため息が出るほど美しい造形美を見せる。
また驚くべきは、そのサイズ展開だ。XS、XXSといった小さいサイズまで用意されているのである。実はその2つのサイズに関しては、日本の代理店であるサイクルラインズ側で図面を引き、フランス側をリードして製作されたものだという。
要するに「フレンチメーカーによる日本人のためのフレーム」なのである。女性や小柄なライダーにとって、まさしく福音とも言える製品だ。
インプレッション
三上和志(サイクルハウスMIKAMI) 「小サイズバイクで例外的な操縦性の良さが光る」
とてもしっかりとした印象のフレームだ。ハンドリングは、小さいサイズのバイクとは思えない安定感の高さをみせる。このサイズのバイクとしては、トップレベルのハンドリングだろう。フレーム設計の良さが現れている部分だ。ブレーキング性能も良い。
コーナリングや加速感もまずまず。ホイールを上級モデルに交換したらさらに良くなるだろう。フレームの資質が良いだけに、ぜひともホイールはグレードアップしたいところ。価格的にはしかたのない部分もあるのだが…。
振動吸収性も素晴らしい。しっかりとしたフレームだけに衝撃はそれなりに伝わってくるものの、微振動は見事に吸収してくれる。まさに「シルキー」と呼ぶに相応しい乗り味だ。
それにしても光るのはハンドリング性能に表れる設計の良さだ。小サイズのバイクはハンドリングが悪いというのが当たり前だが、このバイクは例外中の例外。ロードレーサーらしい操縦感は、初心者も上級者も満足させるものだ。かつ安全性も高い。
シューズのクリート位置によってつま先が前輪にこすれる場合があるだろうが、それは欠点というワケでなく、その操縦性確保ゆえのことだということを理解しておきたい。単にそれを避けた設計では、この乗り味は得られないだろう。
105仕様完成車がお買い得だろうが、個人的にはフレーム素性の良さからアルテグラ仕様をイチ押ししたい。そしてホイールをグレードアップしたら思う存分レースにロングライドにチャレンジして欲しい。充分にその価値があるバイクだ。
佐藤正一(なるしまフレンド) 「ナチュラルでカッチリしたフレーム。グレードアップにも対応できる」
剛性感がとても高く、設計者の意図がすぐ伝わるフレームだ。「カッチリ!」というのが第一印象。それゆえブレーキング性能が高く、急ブレーキでもフレームやフォークが負けることなく、グイッと止まってくれる。
試乗車のサイズが小さいということもあり、ハンドリングは少々クイックな印象だったが、十分慣れられるレベル。というか、この小さいサイズでこのハンドリングの良さを実現しているところに驚く。設計が良い証拠だ。
コーナリングもナチュラルで良い感じである。フレームがしっかりとしているので、たとえ体重のあるライダーでも鋭く曲がれるだろう。加速感も良いフィーリングで、スーッとスピードに乗ることができる。
完成車に標準装備のホイール、マヴィック・アクシウムでも悪くないのだが、さらに良いホイールを履かせたくなるところだ。
振動吸収性に関しては路面の微振動を多少拾う傾向があるが、それを打ち消すだけのメリットがこのフレームにはあると思う。
とくかく、お手頃な価格の割には、しっかりとしたフレームだ。そういった意味で、小柄なライダーがホビーレースやロングライドなどで使用するのにうってつけ。パーツのグレードアップをするベース車両としても良いだろう。
MBK RD550 スペック
フレーム | オリジナル・トレカ製カーボンモノコック R-FORCE |
フォーク | オリジナル・カーボン R-FORCE |
コンポーネント | 1. シマノ・アルテグラSL コンパクトクランク リアカセット12/25 2. シマノ・105 シルバー コンパクトクランク リアカセット12/25 |
ホイール | マヴィック・アクシウム ブラック |
タイヤ | ミシュラン・リチオン グレー/黒 |
サドル | セライタリア・XO GEL 白 |
ハンドルバー | PZレーシング・MBKオリジナル 黒 6061軽量アルミ400mm |
ステム | PZレーシング・MBKオリジナル 黒 6061軽量アルミ 90mm 31.8φ |
シートポスト | PZレーシング・MBKオリジナル 黒 2014軽量アルミ 31.6φ 300mm長 |
バーテープ | オリジナル 白 |
サイズ | XXS / XS / S / M |
その他 | ステム長は100mmも選択可 |
希望小売価格(税込み) | アルテグラSL仕様完成車 385,000円 105シルバー仕様完成車 345,000円 フレームセット 250,000円 |
インプレライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
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