2022/03/20(日) - 16:13
「冬に身体をいじめ、バイクを煮詰めた努力が実った」とは、ダウンヒルから勝利を掴んだマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)。悔しさを語るテュルジスやファンデルプール、ファンアールトなどミラノ〜サンレモを終えた選手たちのコメントを紹介します。
優勝 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
冬の間ずっとミラノ〜サンレモのことを考えていた。このレースはフィニッシュ手前に下りのある、僕に向いているレースだからね。またドロッパーシートポストはチームからの提案だった。
冬のトレーニングを積み、強い選手たちにチプレッサとポッジオでついていく事ができれば、下りでチャンスが巡ってくると思っていた。ドロッパーポストを使う計画はかなり前からあり、最初はそこまで(ノーマルポストと)変わらないと思っていた。だが初めて練習で使ってみてその性能に驚いたよ。安全性とコントロール性が上がり、全力で踏んだ時のミスをカバーしてくれるんだ。
2月に体調を崩し、そのまま臨んだストラーデビアンケでは落車して膝を負傷した。3、4日バイクに乗れなかったものの、そこからコンディションを上げ、完璧に近い状態でこのレースに臨むことができた。疑心暗鬼になった時期もあったが、冬に毎朝、毎晩取り組んだ筋力強化やベーストレーニングを思い出しながら自分を鼓舞した。そして今日を迎え、ベストコンディションとは言えないものの、なんとかポッジオで先頭に食らいつくことができた。そこからは全力だった。本当に信じられないよ。
1度目はスーパータック(トップチューブに座ること)で、そして今度はドロッパーポストで自転車界に波乱を巻き起こしたみたいだね。これから皆がドロッパーポストを付けてレースを走るようになるのじゃないかな。ブレーキとアクセルペダルしかなかったF1カーに無数のボタンがついたように、自転車にもこういった技術が応用されていくと思うんだ。
UCIによる規制があったため、市場に出回っているMTBのシートポストを使った。はじめは(トラベル量が)12cmのものを試したが、ペダリングの効率性を阻害していると感じて6cmを選んだ。ポッジオの下りでは何度かハンドルバーにつけたボタンでシフトしたんだ。技術力の向上によりノーマルなシートポストと重量はさほど変わらない。道路やトレーニングでの安全性を高め、ブレーキの効きも良くなる。レースでも高いアドバンテージがあるので、来年には全てのバイクがドロッパー対応になっているのじゃないかな。
最後は脚が限界に達していたが、勝利により全ての努力が報われた。チームの一人ひとりに感謝すると共に、一緒にバイクセッティングを行ってくれたメカニックや機材のサプライヤー、そしてFSAに感謝を伝えたい。感動で言葉がないよ。僕たちは信じられないことをやり遂げたんだ。
2位 アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
ペテル(サガン)のメカトラで戦術変更を強いられ、彼の集団復帰を待つのではなく、このまま行こうという判断になった。あと一歩のところで勝利を逃し、少し自分に憤りを感じている。だがとても良いレースだったし、未来に向けて良い兆しとなった。
モホリッチが下りで飛び出し、他の選手たちがその差を縮めてくれると思っていた。だが下りが終わっても距離は縮まらなかった。自分に勝てる脚があることが分かり、あとはその時が来るのを待つだけ。それとレースを読む力が必要だ。
3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
集団スプリントで優勝候補たちを抑え3位に入ったものの、優勝できず本当に残念だ。でもこれがミラノ〜サンレモ。あまり前例のないレース展開になり、本当に難しいレースなのだと実感したよ。モホリッチが下りで飛び出し、引き戻すのには十分な人数が揃っていると思っていた。だがその差をフィニッシュラインまで維持したモホリッチが強さを証明した。
牽制状態になった追走集団で、本気で追う意思があったのは僕とピーダスン、そしてファンアールトの3人だけだった。僕たちに力を貸してくれるチームメイトが1、2人いれば状況は変わっていたと思うが、これがレースだ。
もちろんまたここに戻ってきたいと思っているが、僕はもう若くはない。今日せっかくのチャンスを逃してしまった事実は変わらない。
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
モホリッチが下りに入ったところで、その後ろにつけていた選手が遅れ、モーターバイクが風よけになってしまったのだろう。過去最速とさえ思えるスピードでUAEチームエミレーツがチプレッサで牽引し、ポッジオでポガチャルがアタックを繰り返したが、風の影響もあり決まらなかった。そして先行するモホリッチを追走する選手は現れなかった。近年の自転車レースは選手の動きが予想できなくなっている。誰も本気で追走しなかったことも、その傾向を表していると言えるだろう。
5位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
チームが力を見せ、積極的な走りができて満足している。良い走りをしたチームメイトとマテイ・モホリッチを祝福したい。レース前、彼に「ダウンヒルで僕がアタックしてもついてくるな」と言われたんだ。僕は「仕掛けると分かっていても、君についていくのは難しいよ」と答えた。昔から彼は頭のおかしいスピードで下るからね。それに彼がドロッパーシートポストを使っていることも知っていた。そして宣言通り彼は下りでアタックをしたものの、僕は落車のリスクを考えついていくの止めたんだ。
今日のレースで見せたチームとしての走りは、次のレース、そして来年以降のミラノ〜サンレモに繋がっていく。とても楽しいクラシックだったよ。この後は3日ほど休養を取り、また次のレースに向けて準備を進めたい。
6位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
良い1日だったと思う。今週はずっと家でトレーニングしており、急遽出場したこのレースで何ができるかは未知数だった。勝利を目指し走ったものの、強い選手たちに阻まれてしまった。チームの協力もあり、6位という結果には満足している。彼らに感謝を伝えたい。僕に適したレイアウトだと思うので、来年また戻ってきたい。イタリアの荒れたアスファルトを駆ける良いレースだったよ。
7位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM)
正直、この結果にとても満足している。もちろん勝利を目指していたが、世界トップの選手たちと渡り合うことができた。チプレッサでの位置取りが最も重要だと思っており、そこでチームが驚くほど素晴らしい働きをしてくれた。そのおかげでポッジオに理想的なポジションで入ることができたんだ。
8位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
ポガチャルのアタックを潰すのに力を使いすぎてしまった。そのためモホリッチのアタックについていくことができなかった。彼が危険な選手であることも、僅か10mでも与えればそのまま差を広げてしまうことも分かっていた。勝利を目指し彼を追ったのだが、他の選手たちは目標を表彰台に切り替えたようだ。もちろんそれは彼らの勝手だが、僕は優勝しか望んでいなかった。どうせ負けるなら戦って負ける方がいい。この考えの違いが、最後の動きに現れた。
12位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
12位という結果が信じられない。とても嬉しいよ。力の全てを出し尽くして位置取りをし、補給し、スプリントに挑んだ。ポッジオの下りで既に脚は空っぽだった。素晴らしい体験になったよ。
111位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
おめでとうモホリッチ。最高のチームメイト、スタッフと一緒に達成出来た事に感謝。
現役最後のミラノ〜サンレモを終えたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)
パリ〜ニースを走った他の選手たち同様、僕も気管支炎にかかり、今日は呼吸が苦しいなか走っていた。今日のようなハイスピードのレースには100%の状態じゃないと勝負には絡むことができない。残念ながら僕にできることは多くなく、ただただ悔しいよ。なんたってモニュメント制覇が僕を厳しいトレーニングをする大きなモチベーションだったからね。
text:Sotaro.Arakawa
優勝 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
冬の間ずっとミラノ〜サンレモのことを考えていた。このレースはフィニッシュ手前に下りのある、僕に向いているレースだからね。またドロッパーシートポストはチームからの提案だった。
冬のトレーニングを積み、強い選手たちにチプレッサとポッジオでついていく事ができれば、下りでチャンスが巡ってくると思っていた。ドロッパーポストを使う計画はかなり前からあり、最初はそこまで(ノーマルポストと)変わらないと思っていた。だが初めて練習で使ってみてその性能に驚いたよ。安全性とコントロール性が上がり、全力で踏んだ時のミスをカバーしてくれるんだ。
2月に体調を崩し、そのまま臨んだストラーデビアンケでは落車して膝を負傷した。3、4日バイクに乗れなかったものの、そこからコンディションを上げ、完璧に近い状態でこのレースに臨むことができた。疑心暗鬼になった時期もあったが、冬に毎朝、毎晩取り組んだ筋力強化やベーストレーニングを思い出しながら自分を鼓舞した。そして今日を迎え、ベストコンディションとは言えないものの、なんとかポッジオで先頭に食らいつくことができた。そこからは全力だった。本当に信じられないよ。
1度目はスーパータック(トップチューブに座ること)で、そして今度はドロッパーポストで自転車界に波乱を巻き起こしたみたいだね。これから皆がドロッパーポストを付けてレースを走るようになるのじゃないかな。ブレーキとアクセルペダルしかなかったF1カーに無数のボタンがついたように、自転車にもこういった技術が応用されていくと思うんだ。
UCIによる規制があったため、市場に出回っているMTBのシートポストを使った。はじめは(トラベル量が)12cmのものを試したが、ペダリングの効率性を阻害していると感じて6cmを選んだ。ポッジオの下りでは何度かハンドルバーにつけたボタンでシフトしたんだ。技術力の向上によりノーマルなシートポストと重量はさほど変わらない。道路やトレーニングでの安全性を高め、ブレーキの効きも良くなる。レースでも高いアドバンテージがあるので、来年には全てのバイクがドロッパー対応になっているのじゃないかな。
最後は脚が限界に達していたが、勝利により全ての努力が報われた。チームの一人ひとりに感謝すると共に、一緒にバイクセッティングを行ってくれたメカニックや機材のサプライヤー、そしてFSAに感謝を伝えたい。感動で言葉がないよ。僕たちは信じられないことをやり遂げたんだ。
2位 アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
ペテル(サガン)のメカトラで戦術変更を強いられ、彼の集団復帰を待つのではなく、このまま行こうという判断になった。あと一歩のところで勝利を逃し、少し自分に憤りを感じている。だがとても良いレースだったし、未来に向けて良い兆しとなった。
モホリッチが下りで飛び出し、他の選手たちがその差を縮めてくれると思っていた。だが下りが終わっても距離は縮まらなかった。自分に勝てる脚があることが分かり、あとはその時が来るのを待つだけ。それとレースを読む力が必要だ。
3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
集団スプリントで優勝候補たちを抑え3位に入ったものの、優勝できず本当に残念だ。でもこれがミラノ〜サンレモ。あまり前例のないレース展開になり、本当に難しいレースなのだと実感したよ。モホリッチが下りで飛び出し、引き戻すのには十分な人数が揃っていると思っていた。だがその差をフィニッシュラインまで維持したモホリッチが強さを証明した。
牽制状態になった追走集団で、本気で追う意思があったのは僕とピーダスン、そしてファンアールトの3人だけだった。僕たちに力を貸してくれるチームメイトが1、2人いれば状況は変わっていたと思うが、これがレースだ。
もちろんまたここに戻ってきたいと思っているが、僕はもう若くはない。今日せっかくのチャンスを逃してしまった事実は変わらない。
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
モホリッチが下りに入ったところで、その後ろにつけていた選手が遅れ、モーターバイクが風よけになってしまったのだろう。過去最速とさえ思えるスピードでUAEチームエミレーツがチプレッサで牽引し、ポッジオでポガチャルがアタックを繰り返したが、風の影響もあり決まらなかった。そして先行するモホリッチを追走する選手は現れなかった。近年の自転車レースは選手の動きが予想できなくなっている。誰も本気で追走しなかったことも、その傾向を表していると言えるだろう。
5位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
チームが力を見せ、積極的な走りができて満足している。良い走りをしたチームメイトとマテイ・モホリッチを祝福したい。レース前、彼に「ダウンヒルで僕がアタックしてもついてくるな」と言われたんだ。僕は「仕掛けると分かっていても、君についていくのは難しいよ」と答えた。昔から彼は頭のおかしいスピードで下るからね。それに彼がドロッパーシートポストを使っていることも知っていた。そして宣言通り彼は下りでアタックをしたものの、僕は落車のリスクを考えついていくの止めたんだ。
今日のレースで見せたチームとしての走りは、次のレース、そして来年以降のミラノ〜サンレモに繋がっていく。とても楽しいクラシックだったよ。この後は3日ほど休養を取り、また次のレースに向けて準備を進めたい。
6位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
良い1日だったと思う。今週はずっと家でトレーニングしており、急遽出場したこのレースで何ができるかは未知数だった。勝利を目指し走ったものの、強い選手たちに阻まれてしまった。チームの協力もあり、6位という結果には満足している。彼らに感謝を伝えたい。僕に適したレイアウトだと思うので、来年また戻ってきたい。イタリアの荒れたアスファルトを駆ける良いレースだったよ。
7位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM)
正直、この結果にとても満足している。もちろん勝利を目指していたが、世界トップの選手たちと渡り合うことができた。チプレッサでの位置取りが最も重要だと思っており、そこでチームが驚くほど素晴らしい働きをしてくれた。そのおかげでポッジオに理想的なポジションで入ることができたんだ。
8位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
ポガチャルのアタックを潰すのに力を使いすぎてしまった。そのためモホリッチのアタックについていくことができなかった。彼が危険な選手であることも、僅か10mでも与えればそのまま差を広げてしまうことも分かっていた。勝利を目指し彼を追ったのだが、他の選手たちは目標を表彰台に切り替えたようだ。もちろんそれは彼らの勝手だが、僕は優勝しか望んでいなかった。どうせ負けるなら戦って負ける方がいい。この考えの違いが、最後の動きに現れた。
12位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
12位という結果が信じられない。とても嬉しいよ。力の全てを出し尽くして位置取りをし、補給し、スプリントに挑んだ。ポッジオの下りで既に脚は空っぽだった。素晴らしい体験になったよ。
111位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
おめでとうモホリッチ。最高のチームメイト、スタッフと一緒に達成出来た事に感謝。
現役最後のミラノ〜サンレモを終えたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)
パリ〜ニースを走った他の選手たち同様、僕も気管支炎にかかり、今日は呼吸が苦しいなか走っていた。今日のようなハイスピードのレースには100%の状態じゃないと勝負には絡むことができない。残念ながら僕にできることは多くなく、ただただ悔しいよ。なんたってモニュメント制覇が僕を厳しいトレーニングをする大きなモチベーションだったからね。
text:Sotaro.Arakawa
Amazon.co.jp