2022/03/06(日) - 08:53
その走りはまさに圧巻。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が残り50km地点の未舗装区間で抜け出し、1分リードで逃げ続けて勝利。ツール覇者がまた新たな栄誉を自身の戦績に刻み込んだ。
まだ開催16回目ながら、UCIワールドツアーカレンダーの中において特別な存在感を醸し出すワンデーレース、ストラーデビアンケがイタリア・トスカーナ州で開催された。
シエナ南部に広がるトスカーナの丘陵地帯の、ワイン畑を縫うように据え付けられた「白い道」。このレースを象徴する未舗装区間の合計は11ヶ所、通算63kmに及ぶ。絶え間なくアップダウンを繰り返し、時に15%を超える激坂も用意されているため、獲得標高の合計は3,200mにも及ぶ。登坂力、独走力、未舗装路の下りを攻めるテクニック、そして戦略と、あらゆる力が試されるレースに、クラシックレーサーはもちろんのこと、登坂力に秀でるグランツールレーサーも多数集結した。
シエナをスタートしてしばらくすると、先頭ではリリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)やダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、アスタナカザフスタン)、タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった9名が独走を開始。しかしメイン集団側では比較的平穏に未舗装区間を越えていったものの、残り100km地点の第5セクターで、レースを揺るがす大落車が発生した。
土煙が真横に流れる吹きさらしの爆風区間で選手たちが足元をすくわれ、集団前方を走っていたジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)が、ふらついた他選手に前輪を払われて激しく前転。後続選手たちも次々と路面に投げ出される大集団落車へと発展した。
幸いアラフィリップに大きな怪我はなく、ミッケル・ホノレ(デンマーク)とマウロ・シュミット(スイス)のアシストを受けて復帰を目指したものの、ウルフパックはロンド覇者カスパー・アスグリーン(デンマーク)が落車を避けて先行したため、アシスト全員を下げる選択はしなかった。
2分以上のビハインドは、"狼"2頭の力を持ってしても簡単に縮まるものではなく、たっぷり25km弱にわたる追走の末に合流。セクター7の未舗装路突入前にことなきを得ている。
アラフィリップが辛くも復活した一方、この落車で2018年覇者のティシュ・べノート(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、さらにはマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)がリタイアを喫している。
11.5kmにわたって未舗装路を走る例年の勝負どころ、モンテ・サンテマリアのセクター8(通称カンチェラーラセクター)序盤で最後まで逃げていたファンデルホールンたちを捕まえると、先ほどまで追走を強いられていたアラフィリップや、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がペースを作る。次々と選手たちが千切れていく状況の中、テクニカルな下りをきっかけにタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が抜け出しを図った。
レース前に「たくさんのビッグネームが揃っているので楽しいレースになる」と笑顔を見せていたポガチャルが、ぐいぐいと後続グループを引き離して独走する。背後ではカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が単独追走に出たものの、上りも、そしてテクニカルな下りもパワフルかつスムーズにこなすポガチャルとの差は縮まることがなかった。
先の集団落車に巻き込まれ、左半身に落車跡を残しながらもハイペースを刻むポガチャル。残り40km以上を残してメイン集団との差は1分を超え、残り30km地点では1分30秒台に到達。セクター9(残り24km地点)でメイン集団からアスグリーンがアタックし、エースの座を託したアラフィリップは脱落。続くセクター10でもう一度アタックしたアスグリーンは独走に持ち込み、残り11km地点で最年長アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が合流したが、1分前をひた走るポガチャルとの差はそれ以上縮まらなかった。
「残り5km地点でようやく勝利を確信した」と言うポガチャルが、幾多もの名勝負を生んできたシエナ旧市街の石畳坂に到達。15%の勾配を刻み、スロベニア国旗が翻るサンタカテリーナ通りの登坂を悠々とこなし、目抜き通りも通過。そして「世界一美しい」と称されるカンポ広場に現れたポガチャル。両手を振り上げてフィニッシュラインを通過し、第15回王者に輝いた。
その37秒後には、アスグリーンを千切ったバルベルデが笑顔で2位フィニッシュ。アスグリーンは3位だった。
Velonによれば、ポガチャルは独走に持ち込んでからの残り50kmを平均37.4km/h(1時間20分13秒)で駆け抜け、平均パワーは350ワット、最大スピードは79.3km/hに及んでいる。登坂力とテクニカルな下りでの安定感が光った、2年連続のツール・ド・フランス覇者が自身の戦績に大きな1勝を刻み込んだ。
上位勢のコメントは別記事で紹介します。
まだ開催16回目ながら、UCIワールドツアーカレンダーの中において特別な存在感を醸し出すワンデーレース、ストラーデビアンケがイタリア・トスカーナ州で開催された。
シエナ南部に広がるトスカーナの丘陵地帯の、ワイン畑を縫うように据え付けられた「白い道」。このレースを象徴する未舗装区間の合計は11ヶ所、通算63kmに及ぶ。絶え間なくアップダウンを繰り返し、時に15%を超える激坂も用意されているため、獲得標高の合計は3,200mにも及ぶ。登坂力、独走力、未舗装路の下りを攻めるテクニック、そして戦略と、あらゆる力が試されるレースに、クラシックレーサーはもちろんのこと、登坂力に秀でるグランツールレーサーも多数集結した。
シエナをスタートしてしばらくすると、先頭ではリリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)やダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、アスタナカザフスタン)、タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)といった9名が独走を開始。しかしメイン集団側では比較的平穏に未舗装区間を越えていったものの、残り100km地点の第5セクターで、レースを揺るがす大落車が発生した。
土煙が真横に流れる吹きさらしの爆風区間で選手たちが足元をすくわれ、集団前方を走っていたジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)が、ふらついた他選手に前輪を払われて激しく前転。後続選手たちも次々と路面に投げ出される大集団落車へと発展した。
幸いアラフィリップに大きな怪我はなく、ミッケル・ホノレ(デンマーク)とマウロ・シュミット(スイス)のアシストを受けて復帰を目指したものの、ウルフパックはロンド覇者カスパー・アスグリーン(デンマーク)が落車を避けて先行したため、アシスト全員を下げる選択はしなかった。
2分以上のビハインドは、"狼"2頭の力を持ってしても簡単に縮まるものではなく、たっぷり25km弱にわたる追走の末に合流。セクター7の未舗装路突入前にことなきを得ている。
アラフィリップが辛くも復活した一方、この落車で2018年覇者のティシュ・べノート(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、さらにはマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)がリタイアを喫している。
11.5kmにわたって未舗装路を走る例年の勝負どころ、モンテ・サンテマリアのセクター8(通称カンチェラーラセクター)序盤で最後まで逃げていたファンデルホールンたちを捕まえると、先ほどまで追走を強いられていたアラフィリップや、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がペースを作る。次々と選手たちが千切れていく状況の中、テクニカルな下りをきっかけにタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が抜け出しを図った。
レース前に「たくさんのビッグネームが揃っているので楽しいレースになる」と笑顔を見せていたポガチャルが、ぐいぐいと後続グループを引き離して独走する。背後ではカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が単独追走に出たものの、上りも、そしてテクニカルな下りもパワフルかつスムーズにこなすポガチャルとの差は縮まることがなかった。
先の集団落車に巻き込まれ、左半身に落車跡を残しながらもハイペースを刻むポガチャル。残り40km以上を残してメイン集団との差は1分を超え、残り30km地点では1分30秒台に到達。セクター9(残り24km地点)でメイン集団からアスグリーンがアタックし、エースの座を託したアラフィリップは脱落。続くセクター10でもう一度アタックしたアスグリーンは独走に持ち込み、残り11km地点で最年長アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が合流したが、1分前をひた走るポガチャルとの差はそれ以上縮まらなかった。
「残り5km地点でようやく勝利を確信した」と言うポガチャルが、幾多もの名勝負を生んできたシエナ旧市街の石畳坂に到達。15%の勾配を刻み、スロベニア国旗が翻るサンタカテリーナ通りの登坂を悠々とこなし、目抜き通りも通過。そして「世界一美しい」と称されるカンポ広場に現れたポガチャル。両手を振り上げてフィニッシュラインを通過し、第15回王者に輝いた。
その37秒後には、アスグリーンを千切ったバルベルデが笑顔で2位フィニッシュ。アスグリーンは3位だった。
Velonによれば、ポガチャルは独走に持ち込んでからの残り50kmを平均37.4km/h(1時間20分13秒)で駆け抜け、平均パワーは350ワット、最大スピードは79.3km/hに及んでいる。登坂力とテクニカルな下りでの安定感が光った、2年連続のツール・ド・フランス覇者が自身の戦績に大きな1勝を刻み込んだ。
上位勢のコメントは別記事で紹介します。
ストラーデビアンケ2022結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 4:47:49 |
2位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | +0:37 |
3位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル) | +0:46 |
4位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) | +1:07 |
5位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:09 |
6位 | ヨナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) | +1:21 |
8位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | +1:25 |
9位 | シモーネ・ぺティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +1:35 |
10位 | セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:53 |
text:So Isobe
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