激しいサバイバルレースの末、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)との一騎打ちを制したソンニ・コルブレッリ(イタリア)がヨーロッパチャンピオンに輝いた。女子レースでは独走力を見せつけたエレン・ファンダイク(オランダ)が初のタイトルを手にしている。
観客が詰めかけたポーヴォ(登坂距離3.6km/平均勾配4.7%)を登る photo:CorVos
今年のロードヨーロッパチャンピオンを決める舞台は、背後に急峻な山々を抱えるトレンティーノ=アルト・アディジェ州の州都、トレント。男子エリートレースは3箇所のカテゴリー山岳を含む73kmを走ったのち、「ポーヴォ(登坂距離3.6km/平均勾配4.7%)」を組み込んだ13.2kmの周回コースを8周回する「選手権」らしい難コースが用意された。
直前のベネルクスツアーで総合ワンツーを演じたソンニ・コルブレッリ(イタリア)とマテイ・モホリッチ(スロベニア)は今回ライバルとして出場。タイムトライアルで3位に入ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)、東京オリンピック後に短い休息を経て世界選手権を目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア)、マルク・ヒルシ(スイス)といった白地に青のチャンピオンジャージを目指して集結。レース序盤戦から激しいアタック合戦が繰り広げられた。
この日序盤はフランスとスペインがアグレッシブにアタックを繰り返して逃げ、一方でイタリアやベルギーがメイン集団をコントロールした。状況が落ち着くかと思いきや、ポルトガルのスピードアップによって逃げを視界に捉え、エースやサブエース級の選手たちが次々と先行する展開になる。この中でペテル・サガン(スロバキア)は早々に脱落し、世界選手権への黄色信号を灯すことに。
ベルギーがメイン集団をコントロール photo:CorVos
ポーヴォでメイン集団を絞り込むタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:CorVos
ラスト2回目の「ポーヴォ」でアタックするレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
乱打戦のままトレントの周回コースを回り、残り80km弱を残してレースを繰り広げたのは僅か40名。マッテオ・トレンティン(イタリア)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)たちが抜け出しを図るものの、決定的なリードを得ることはできずに距離を消化していく。すると60kmを残してポガチャルがアタック。大観衆が集う「ポーヴォ」で、ついにエース級ばかりが揃った逃げグループが生まれた。
ポガチャル、トレンティン、コルブレッリ、エヴェネプール、ヒルシ、ベン・ヘルマンス(ベルギー)、マルクス・フールゴー(ノルウェー)、ブノワ・コスヌフロワ(フランス)、そしてパヴェル・シヴァコフ(ロシア)。バウケ・モレマ(オランダ)やジョアン・アルメイダ(ポルトガル)らの追走グループは最後まで追いつくことがなかった。
逃げグループを形成するエヴェネプール、コスヌフロワ、トレンティン photo:CorVos
最後のポーヴォでレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が踏むが、コルブレッリは離れない photo:CorVos
追走グループを2分以上引き離した先行グループで、最もアグレッシブに踏んだのはエヴェネプールだった。ラスト2回目の「ポーヴォ」で踏み込んだエヴェネプールはコルブレッリとコスヌフロワ以外の6名を脱落させ、最後のポーヴォではコスヌフロワもドロップ。「コルブレッリが苦しんでいることに気づいてもう一段ペースを上げた(エヴェネプール)」ものの、母国ファンの応援を一身に受けるイタリアチャンピオンは千切れなかった。
サバイバルレースを生き残った2人によるマッチスプリント。爆発力に長けるコルブレッリはエヴェネプールの背後に食いつき、タイトな最終コーナー手前で先頭を奪い取る。エヴェネプールに合わせてスプリントを開始すると、伸びやかな加速でリードを広げ続け、そのままフィニッシュ。絶好調のイタリアチャンピオンが、母国開催のヨーロッパ選手権で勝利した。
エヴェネプールとの一騎打ちを制したソンニ・コルブレッリ(イタリア) photo:CorVos
好調ソンニ・コルブレッリ(イタリア)が初タイトルを手にした photo:CorVos
「アメージングだ。ファンタスティックな勝利だよ。レース序盤では好調とは言えず、僕向きのレースコースゆえに大きなプレッシャーを背負っていた。しかしイタリアチームは完璧な働きを見せ、特に終盤のトレンティンは素晴らしかった。最後の坂ではとても苦しめられたけれど、素晴らしい結果に結びつけることができて本当に嬉しい」と言う新ヨーロッパチャンピオン。2017年のロンド・ファン・フラーンデレンでは10位に入っており、フランドルを舞台にした世界選手権でも優勝候補の一角に名乗りを上げることとなった。
女子エリート:元TT世界王者ファンダイクが独走
土曜日に開催された女子エリートレースは、同じく「ポーヴォ(登坂距離3.6km/平均勾配4.7%)」を組み込んだ13.2kmの周回コースを8周回する107.2km。現世界王者アンナ・ファンデルブレッヘンこそ不在ではあるものの、オランダはアネミエク・ファンフルーテンやデミ・フォレリング、マリアンヌ・フォスといった屈強なメンバーを招集。イタリアやベルギー、ドイツも最大8名ずつを揃えてチャンピオンジャージを争った。
晴れ渡るトレント郊外のアップダウンコースを走る photo:CorVos
レース序盤戦を積極的に攻めたのはフランスだった。エウジェニー・デュヴァルが、続いて前フランスチャンピオンのオードリー・コルドンラゴが先行して主導権を握り、背後のメイン集団は登坂を越えるたびに人数を少なくしていく。60kmを残したタイミングでオード・ビアニック(フランス)とロミー・カスパー(ドイツ)、ソラヤ・パラディン(イタリア)、そしてエレン・ファンダイク(オランダ)が先行したことで、この日初めての複数逃げが決まった。
先頭グループからビアニックが、そしてメイン集団からはフォスが脱落。先日のタイムトライアル選手権で3位に入った好調ファンダイクはハイペースを刻み、次なる登りでカスパーが脱落。これを受けたドイツチームがメイン集団のコントロールに加わったものの、やがてパラディンを振り落とし単独になったファンダイクとの40秒差は思うように縮まらなかった。
ソラヤ・パラディン(イタリア)を率いて逃げるエレン・ファンダイク(オランダ) photo:CorVos
得意の独走に持ち込んだエレン・ファンダイク(オランダ)がフィニッシュを目指す photo:CorVos
登りで絞られた追走グループだが、リズムを維持できなかった photo:CorVos
リアヌ・リッパート(ドイツ)のアタックによってエース級選手のみに絞り込まれたメイン集団だったが、牽引役不在が災いしてペースを上げられない。唯一安定したペースを刻んだのは、一人淡々をペダルを回したファンダイクだけだった。
「今朝の段階で私の考えは、個人TT世界選手権を見据えてレースを厳しくすることだった。何も失うものはなかったので、コーチに言われていた通りプレッシャーを感じることなく走れた。力を感じでいたし、過剰に考えすぎることなく正しく駒を進めることができた。いいフローの中にいた」と言うファンダイクがフィニッシュラインに到達し、勝利。類い稀な独走力を武器に重要アシストとして活躍するファンダイクが初のロードタイトルを獲得した。
1分18秒ものリードで逃げ切ったエレン・ファンダイク(オランダ) photo:CorVos
エレン・ファンダイク(オランダ)とアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)が勝利を喜ぶ photo:CorVos
ロードレースで自身初のタイトルを獲得したエレン・ファンダイク(オランダ) photo:CorVos
「特にコロナ禍の初めの頃は難しい時期を過ごした。ハードワークが報われない時期を過ごしたけれど、今日はその苦しみを価値のあるものにするlことができたと思う。残り10kmからはたくさんのことが頭に浮かんだ。でもチームはいつも私を信じてくれた。チームとコーチにこの勝利を感謝したい」と、個人TTでは2013年にアルカンシエルを獲得し、2016年に始まったヨーロッパ選手権では4度勝利しているファンダイクは語っている。

今年のロードヨーロッパチャンピオンを決める舞台は、背後に急峻な山々を抱えるトレンティーノ=アルト・アディジェ州の州都、トレント。男子エリートレースは3箇所のカテゴリー山岳を含む73kmを走ったのち、「ポーヴォ(登坂距離3.6km/平均勾配4.7%)」を組み込んだ13.2kmの周回コースを8周回する「選手権」らしい難コースが用意された。
直前のベネルクスツアーで総合ワンツーを演じたソンニ・コルブレッリ(イタリア)とマテイ・モホリッチ(スロベニア)は今回ライバルとして出場。タイムトライアルで3位に入ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)、東京オリンピック後に短い休息を経て世界選手権を目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア)、マルク・ヒルシ(スイス)といった白地に青のチャンピオンジャージを目指して集結。レース序盤戦から激しいアタック合戦が繰り広げられた。
この日序盤はフランスとスペインがアグレッシブにアタックを繰り返して逃げ、一方でイタリアやベルギーがメイン集団をコントロールした。状況が落ち着くかと思いきや、ポルトガルのスピードアップによって逃げを視界に捉え、エースやサブエース級の選手たちが次々と先行する展開になる。この中でペテル・サガン(スロバキア)は早々に脱落し、世界選手権への黄色信号を灯すことに。



乱打戦のままトレントの周回コースを回り、残り80km弱を残してレースを繰り広げたのは僅か40名。マッテオ・トレンティン(イタリア)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)たちが抜け出しを図るものの、決定的なリードを得ることはできずに距離を消化していく。すると60kmを残してポガチャルがアタック。大観衆が集う「ポーヴォ」で、ついにエース級ばかりが揃った逃げグループが生まれた。
ポガチャル、トレンティン、コルブレッリ、エヴェネプール、ヒルシ、ベン・ヘルマンス(ベルギー)、マルクス・フールゴー(ノルウェー)、ブノワ・コスヌフロワ(フランス)、そしてパヴェル・シヴァコフ(ロシア)。バウケ・モレマ(オランダ)やジョアン・アルメイダ(ポルトガル)らの追走グループは最後まで追いつくことがなかった。


追走グループを2分以上引き離した先行グループで、最もアグレッシブに踏んだのはエヴェネプールだった。ラスト2回目の「ポーヴォ」で踏み込んだエヴェネプールはコルブレッリとコスヌフロワ以外の6名を脱落させ、最後のポーヴォではコスヌフロワもドロップ。「コルブレッリが苦しんでいることに気づいてもう一段ペースを上げた(エヴェネプール)」ものの、母国ファンの応援を一身に受けるイタリアチャンピオンは千切れなかった。
サバイバルレースを生き残った2人によるマッチスプリント。爆発力に長けるコルブレッリはエヴェネプールの背後に食いつき、タイトな最終コーナー手前で先頭を奪い取る。エヴェネプールに合わせてスプリントを開始すると、伸びやかな加速でリードを広げ続け、そのままフィニッシュ。絶好調のイタリアチャンピオンが、母国開催のヨーロッパ選手権で勝利した。


「アメージングだ。ファンタスティックな勝利だよ。レース序盤では好調とは言えず、僕向きのレースコースゆえに大きなプレッシャーを背負っていた。しかしイタリアチームは完璧な働きを見せ、特に終盤のトレンティンは素晴らしかった。最後の坂ではとても苦しめられたけれど、素晴らしい結果に結びつけることができて本当に嬉しい」と言う新ヨーロッパチャンピオン。2017年のロンド・ファン・フラーンデレンでは10位に入っており、フランドルを舞台にした世界選手権でも優勝候補の一角に名乗りを上げることとなった。
女子エリート:元TT世界王者ファンダイクが独走
土曜日に開催された女子エリートレースは、同じく「ポーヴォ(登坂距離3.6km/平均勾配4.7%)」を組み込んだ13.2kmの周回コースを8周回する107.2km。現世界王者アンナ・ファンデルブレッヘンこそ不在ではあるものの、オランダはアネミエク・ファンフルーテンやデミ・フォレリング、マリアンヌ・フォスといった屈強なメンバーを招集。イタリアやベルギー、ドイツも最大8名ずつを揃えてチャンピオンジャージを争った。

レース序盤戦を積極的に攻めたのはフランスだった。エウジェニー・デュヴァルが、続いて前フランスチャンピオンのオードリー・コルドンラゴが先行して主導権を握り、背後のメイン集団は登坂を越えるたびに人数を少なくしていく。60kmを残したタイミングでオード・ビアニック(フランス)とロミー・カスパー(ドイツ)、ソラヤ・パラディン(イタリア)、そしてエレン・ファンダイク(オランダ)が先行したことで、この日初めての複数逃げが決まった。
先頭グループからビアニックが、そしてメイン集団からはフォスが脱落。先日のタイムトライアル選手権で3位に入った好調ファンダイクはハイペースを刻み、次なる登りでカスパーが脱落。これを受けたドイツチームがメイン集団のコントロールに加わったものの、やがてパラディンを振り落とし単独になったファンダイクとの40秒差は思うように縮まらなかった。



リアヌ・リッパート(ドイツ)のアタックによってエース級選手のみに絞り込まれたメイン集団だったが、牽引役不在が災いしてペースを上げられない。唯一安定したペースを刻んだのは、一人淡々をペダルを回したファンダイクだけだった。
「今朝の段階で私の考えは、個人TT世界選手権を見据えてレースを厳しくすることだった。何も失うものはなかったので、コーチに言われていた通りプレッシャーを感じることなく走れた。力を感じでいたし、過剰に考えすぎることなく正しく駒を進めることができた。いいフローの中にいた」と言うファンダイクがフィニッシュラインに到達し、勝利。類い稀な独走力を武器に重要アシストとして活躍するファンダイクが初のロードタイトルを獲得した。



「特にコロナ禍の初めの頃は難しい時期を過ごした。ハードワークが報われない時期を過ごしたけれど、今日はその苦しみを価値のあるものにするlことができたと思う。残り10kmからはたくさんのことが頭に浮かんだ。でもチームはいつも私を信じてくれた。チームとコーチにこの勝利を感謝したい」と、個人TTでは2013年にアルカンシエルを獲得し、2016年に始まったヨーロッパ選手権では4度勝利しているファンダイクは語っている。
ヨーロッパ選手権2021 男子エリートロードレース結果
1位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア) | 4:19:45 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | |
3位 | ブノワ・コスヌフロワ(フランス) | 1:30 |
4位 | マッテオ・トレンティン(イタリア) | 1:44 |
5位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) | |
6位 | マルク・ヒルシ(スイス) | |
7位 | マルクス・フールゴー(ノルウェー) | |
8位 | ベン・ヘルマンス(ベルギー) | 1:46 |
9位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア) | 1:49 |
10位 | ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー) | 5:41 |
ヨーロッパ選手権2021 女子エリートロードレース結果
1位 | エレン・ファンダイク(オランダ) | 2:50:35 |
2位 | リアヌ・リッパート(ドイツ) | 1:18 |
3位 | ラサ・レレイヴィテ(リトアニア) | |
4位 | カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド) | |
5位 | デミ・フォレリング(オランダ) | |
6位 | マルタ・カヴァッリ(イタリア) | |
7位 | マーレン・ローセル(スイス) | |
8位 | アレーナ・アミアリウシク(ベラルーシ) | |
9位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ) | 1:21 |
10位 | エリザ・バルサモ(イタリア) | 2:29 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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