2021/09/03(金) - 07:51
2021年ブエルタ最後の超級山岳バトルで、総合3位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)が不運続きのモビスターに価値ある勝利をプレゼント。プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は強いレース運びでマイヨロホを堅守している。
9月2日(木)第18ステージ
サラス〜アルトゥ・デル・ガモニテイル 162.6km
前日に超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを終えてもまだ「クイーンステージ2連続」と言えるブエルタらしい怒涛の難関山岳ステージが選手たちを苦しめる。今ブエルタ最後の山岳ステージとして、カテゴリー1級、1級、2級、そして超級という、前日よりも1,000m増しの獲得標高4,516mという過酷なコースが用意された。
コース中盤までに10〜13%の急勾配が連発する1級山岳プエルトゥ・デ・サンリャウリエンス(全長9.9km・平均8.6%)と1級山岳アルトゥ・デ・コベルトリア(全長7.9km・平均8.6%)を越え、ボーナスタイム付き2級山岳アルトゥ・ラ・セガを経て、この日の、そして今大会のメインディッシュ、初登場の超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイル(全長14.6km・平均9.8%)へと挑む。
今大会の最難関峠と言えるガモニテイルは残り6km付近の緩斜面区間を除いてずっと11%前後の勾配が続く文字通りの急勾配登坂。チーマ・アルベルト・フェルナンデス賞(今大会最も標高が高く、優勝者に山岳ポイント20点が与えられる)が懸けられた、深い霧に包まれたこの峠で、総合順位変動を狙う選手たちが激しい攻撃を加えた。
この日は落車ダメージを抱えながら走っていたディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)とカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)という、2チームの重要アシストが未出走。前日のコバドンガでは総合上位陣による戦いとなったため、この日は逃げ切りにチャンスがあると踏んだ選手たちが、リアルスタートが切られると共に続々と集団を飛び立った。
ユンボ・ヴィスマに逃げメンバーを選別する意思はなく、この日はスタートから10kmを要さず32名という大集団が逃げグループを形成。今大会2勝を挙げているマイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)やクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、ラファル・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツ)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)、ファビオ・アル(イタリア、クベカ・ネクストハッシュ)といった豪華メンバーたちがローテーションを組み、メイン集団から5分程度のリードを稼ぎ出した。
32名という大集団ゆえ、逃げではありつつも脚力をセーブできる、金星を目指す選手にとってはこれ以上ない展開。1つ目の1級山岳プエルトゥ・デ・サンリャウリエンスではストーラーが飛び出して先着。リード5分台と逃げ切りの可能性を有していたものの、メリダの新型バイクに乗った新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)がハイペースでメイン集団先頭を牽いたことでタイム差は3分台まで減少した。
続く1級山岳アルトゥ・デ・コベルトリア(全長7.9km・平均8.6%)では先頭グループから再びストーラーが飛び出し、山岳ランキングでチームメイトのバルデを交わして首位に浮上。そのままアタックを継続したストーラーは下りでリードを積み重ね、追走のリズムが噛み合わない30名を置き去りにしてまだ見ぬフィニッシュ目指していく。超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイルの前座として用意された2級山岳アルトゥ・ラ・セガではメイン集団とほぼ同じペースを刻んでリードを維持した。
こうしてストーラーが最後の超級ガモニテイルに入り、2分後方ではモビスターとバーレーン・ヴィクトリアス率いるメイン集団が淡々と、しかしそれでいてハイペースを刻んでいく。10km以上を残して総合13位ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が単独追走に立った。
総合トップ10入りを目指すデラクルスは、常に10%勾配を刻む峠道の序盤区間で最も速いペースを刻んだ。今大会2勝を上げている好調ストーラーを持ってしても、勢いづくデラクルス、そして総合12位ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)のジャンプアップのためにヤン・ヒルト(チェコ)が献身的に牽引するメイン集団を抑えきることはできなかった。
主催者想定の最も高速ペースで進行するメイン集団からこぼれ落ちたのは総合5位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)と、総合9位フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)の2人。10名弱に絞られたメイン集団内からは残り5kmを切って総合6位エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が加速した。
連日果敢な走りを披露するベルナルの背中をログリッチががっちりと抑え、エンリク・マス(スペイン、モビスター)とミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)という総合1、2、3、6、8位が先行。すると深い霧に包まれた峠道で総合3位ロペスがライバル勢を置き去りにした。
ログリッチに見送られたロペスは単独逃げ続けていたデラクルスをパスし、荒涼とした岩山風景が続くガモニテイル後半区間でリードを築き上げる。その後方ではログリッチとベルナルがアタックを繰り返してマスと共に3名グループが形成されたものの、ハイペースを刻み続けたロペスの背中を捉えるには至らなかった。
ロペスは暗く深い雲に包まれたフィニッシュラインに単独登頂を果たし、「僕たちは今カルロスとアレハンドロ、そしてヤコブスを失って5人しかいないけれど、残った全員が彼らぶんを埋める働きをしてくれた。本当に待ち望んでいた勝利だ」と、このブエルタで不運続きだったモビスターにクイーンステージのステージ優勝をプレゼント。自身にとってもブエルタでのステージ優勝は2017年第15ステージ以来4年ぶりだ。
ロペスから14秒遅れでマイヨロホのログリッチが入り、マスは6秒遅れで、ベルナルは8秒遅れでフィニッシュ。最後の最後で踏み込んだログリッチは2分半という大きなリードを得てブエルタの最終難関山岳ステージを乗り切ることに。「昨日全力を出したぶんキツいステージだったけれど、最後まで脚が残っていたのでよかった。モビスターのハイペースのおかげで予想していたアタック合戦にはならなかったんだ。難関山岳を無事に終えて嬉しいけれど、まだいくつか、特に土曜日のような気を抜けないステージが待っている。集中を切らさないようにしていきたい」とログリッチは話している。
マルタンとグロスチャートナーが大きく遅れ、ベルナルやイェーツたちが総合成績を一つずつジャンプアップさせ、メインチェスは狙い通り総合10位浮上。力を尽くした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は133位でクイーンステージを乗り切った一方、49分近く遅れたマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)はタイムアウト失格という審判判断が下されている。
9月2日(木)第18ステージ
サラス〜アルトゥ・デル・ガモニテイル 162.6km
前日に超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを終えてもまだ「クイーンステージ2連続」と言えるブエルタらしい怒涛の難関山岳ステージが選手たちを苦しめる。今ブエルタ最後の山岳ステージとして、カテゴリー1級、1級、2級、そして超級という、前日よりも1,000m増しの獲得標高4,516mという過酷なコースが用意された。
コース中盤までに10〜13%の急勾配が連発する1級山岳プエルトゥ・デ・サンリャウリエンス(全長9.9km・平均8.6%)と1級山岳アルトゥ・デ・コベルトリア(全長7.9km・平均8.6%)を越え、ボーナスタイム付き2級山岳アルトゥ・ラ・セガを経て、この日の、そして今大会のメインディッシュ、初登場の超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイル(全長14.6km・平均9.8%)へと挑む。
今大会の最難関峠と言えるガモニテイルは残り6km付近の緩斜面区間を除いてずっと11%前後の勾配が続く文字通りの急勾配登坂。チーマ・アルベルト・フェルナンデス賞(今大会最も標高が高く、優勝者に山岳ポイント20点が与えられる)が懸けられた、深い霧に包まれたこの峠で、総合順位変動を狙う選手たちが激しい攻撃を加えた。
この日は落車ダメージを抱えながら走っていたディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)とカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)という、2チームの重要アシストが未出走。前日のコバドンガでは総合上位陣による戦いとなったため、この日は逃げ切りにチャンスがあると踏んだ選手たちが、リアルスタートが切られると共に続々と集団を飛び立った。
ユンボ・ヴィスマに逃げメンバーを選別する意思はなく、この日はスタートから10kmを要さず32名という大集団が逃げグループを形成。今大会2勝を挙げているマイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)やクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、ラファル・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツ)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)、ファビオ・アル(イタリア、クベカ・ネクストハッシュ)といった豪華メンバーたちがローテーションを組み、メイン集団から5分程度のリードを稼ぎ出した。
32名という大集団ゆえ、逃げではありつつも脚力をセーブできる、金星を目指す選手にとってはこれ以上ない展開。1つ目の1級山岳プエルトゥ・デ・サンリャウリエンスではストーラーが飛び出して先着。リード5分台と逃げ切りの可能性を有していたものの、メリダの新型バイクに乗った新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)がハイペースでメイン集団先頭を牽いたことでタイム差は3分台まで減少した。
続く1級山岳アルトゥ・デ・コベルトリア(全長7.9km・平均8.6%)では先頭グループから再びストーラーが飛び出し、山岳ランキングでチームメイトのバルデを交わして首位に浮上。そのままアタックを継続したストーラーは下りでリードを積み重ね、追走のリズムが噛み合わない30名を置き去りにしてまだ見ぬフィニッシュ目指していく。超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイルの前座として用意された2級山岳アルトゥ・ラ・セガではメイン集団とほぼ同じペースを刻んでリードを維持した。
こうしてストーラーが最後の超級ガモニテイルに入り、2分後方ではモビスターとバーレーン・ヴィクトリアス率いるメイン集団が淡々と、しかしそれでいてハイペースを刻んでいく。10km以上を残して総合13位ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が単独追走に立った。
総合トップ10入りを目指すデラクルスは、常に10%勾配を刻む峠道の序盤区間で最も速いペースを刻んだ。今大会2勝を上げている好調ストーラーを持ってしても、勢いづくデラクルス、そして総合12位ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)のジャンプアップのためにヤン・ヒルト(チェコ)が献身的に牽引するメイン集団を抑えきることはできなかった。
主催者想定の最も高速ペースで進行するメイン集団からこぼれ落ちたのは総合5位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)と、総合9位フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)の2人。10名弱に絞られたメイン集団内からは残り5kmを切って総合6位エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が加速した。
連日果敢な走りを披露するベルナルの背中をログリッチががっちりと抑え、エンリク・マス(スペイン、モビスター)とミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)という総合1、2、3、6、8位が先行。すると深い霧に包まれた峠道で総合3位ロペスがライバル勢を置き去りにした。
ログリッチに見送られたロペスは単独逃げ続けていたデラクルスをパスし、荒涼とした岩山風景が続くガモニテイル後半区間でリードを築き上げる。その後方ではログリッチとベルナルがアタックを繰り返してマスと共に3名グループが形成されたものの、ハイペースを刻み続けたロペスの背中を捉えるには至らなかった。
ロペスは暗く深い雲に包まれたフィニッシュラインに単独登頂を果たし、「僕たちは今カルロスとアレハンドロ、そしてヤコブスを失って5人しかいないけれど、残った全員が彼らぶんを埋める働きをしてくれた。本当に待ち望んでいた勝利だ」と、このブエルタで不運続きだったモビスターにクイーンステージのステージ優勝をプレゼント。自身にとってもブエルタでのステージ優勝は2017年第15ステージ以来4年ぶりだ。
ロペスから14秒遅れでマイヨロホのログリッチが入り、マスは6秒遅れで、ベルナルは8秒遅れでフィニッシュ。最後の最後で踏み込んだログリッチは2分半という大きなリードを得てブエルタの最終難関山岳ステージを乗り切ることに。「昨日全力を出したぶんキツいステージだったけれど、最後まで脚が残っていたのでよかった。モビスターのハイペースのおかげで予想していたアタック合戦にはならなかったんだ。難関山岳を無事に終えて嬉しいけれど、まだいくつか、特に土曜日のような気を抜けないステージが待っている。集中を切らさないようにしていきたい」とログリッチは話している。
マルタンとグロスチャートナーが大きく遅れ、ベルナルやイェーツたちが総合成績を一つずつジャンプアップさせ、メインチェスは狙い通り総合10位浮上。力を尽くした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は133位でクイーンステージを乗り切った一方、49分近く遅れたマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)はタイムアウト失格という審判判断が下されている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第18ステージ結果
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) | 4:41:21 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:14 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:20 |
4位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:22 |
5位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:58 |
6位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
7位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオ) | |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 1:06 |
10位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 1:07 |
18位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 4:23 |
27位 | フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 6:49 |
133位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | 39:28 |
OTL | マシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル) | 48:54 |
DNF | ディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH) | |
DNF | ヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | |
DNS | カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター) | |
DNS | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 73:24:25 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 2:30 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) | 2:53 |
4位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:36 |
5位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 4:43 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 5:54 |
7位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 6:02 |
8位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 7:48 |
9位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 8:31 |
10位 | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオ) | 9:02 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 250pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 162pts |
3位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 123pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM) | 59pts |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 54pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 48pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 73:29:08 |
2位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 3:05 |
3位 | フアン・ロペス(スペイン 、トレック・セガフレード) | 13:20 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 220:29:28 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 4:01 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 15:22 |
text:So Isobe
photo:Unipublic
photo:Unipublic
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