2021/07/02(金) - 16:29
ツールの初勝利を挙げた思い出のシャトールーでのハットトリック達成はまた「同じポーズ」で。2008年と2011年にも勝っているこの地で挙げたカヴェンディッシュの今大会2勝目で、エディ・メルクスの最多勝記録にあと2つと迫った。
スタートに向かうマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
ブルターニュでの開幕は北らしい鉛色の空だった。そしてここまで肌寒い天気が続いていた。しかしこの日はようやく朝から陽光が降り注ぎ、ようやくジャケットを脱げる気温に。ツールにフランスの夏らしさが戻ってきた。
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・KTM)の家族が応援にやってきた photo:Makoto AYANO
選手たちも陽光を浴びてリラックス。ピエール・ロラン(B&BホテルズKTM)は家族たちとの時間を楽しんでいる。「レースバブル」が敷かれるツールでは選手や関係者はソーシャルディスタンス以上に距離をとるためバリアの外での対応だが、昨年よりその距離は近くなっている。
昨日の個人TTで驚きの走りを披露したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto AYANO
ファンサービスに務めるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
ジュリアン・アラフィリップも沿道のファンサービスに務める。マスクをしているが、バリア越しにグータッチを交わし、その距離は近くなっているようだ。
ドゥクーニンクのスタッフと話すフィリップ・ジルベール(ベルギ、ロット・スーダル) photo:Makoto AYANO
フランスは屋外でのマスク着用義務がなくなったが、依然としてツールの沿道エリアはマスクが必須になる。手の消毒ジェルを施すサニタリー隊も盛んに巡回している。係員による人流のコントロールも手慣れたものだ。
感染拡大防止の消毒ジェルは会場のあちこちで施される photo:Makoto AYANO
ヴィラージュのB&Bホテルズのブース photo:Makoto AYANO
本来選手とスポンサーや招待客がレース前の時間に交流できたはずのヴィラージュエリアには選手の立ち入りは依然として禁止のままだ。
ユンボ・ヴィスマのバス前には青いフロントタイヤをセットしたサーヴェロのバイクが並ぶ。プレゼンテーションでお披露目した際に目を引いたこのタイヤ。swapfiets(スワップ・フィッツ)という、放置自転車など中古の自転車をリサイクルしてレンタルすることをビジネスとしているオランダの会社のシンボル的アイコンで、ヨーロッパじゅうで展開が始まっている。もちろんコロナ禍で通勤通学に、生活の足にと自転車の利用が拡大し、業績は順調。ユンボ・ヴィスマのスポンサーになっているのだ。
ロット・ユンボは全員がブルータイヤを装着して走る photo:Makoto AYANO
カラータイヤは見た目に不安になるが、タイヤ自体はグラフェンが配合されたヴィットリアの高性能レースタイヤ「コルサ」であって性能も変わらないとお墨付きのあるもの。このタイヤを履いたユンボの選手たちもどこか楽しげにアピールしながら出走サインに向かうのが面白い。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の背中にはありったけのジェルや補給食 photo:Makoto AYANO
今日もまたスプリント勝利に期待のかかるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はエアロワンピースのきつい背中のポケットにジェルを詰めらるだけ詰め込んで登場した。距離が短めで高速レースが予測されるフラットステージで、路上スタッフからサコッシュを受け取るのが難しい展開になる状況はじゅうぶん考えられる。
ドゥクーニンク・クイックステップのチームカーにはカヴェンディッシュのスペアバイクが、従来アラフィリップのバイクが設置されてきた後部・右端に設置された。そこがメカニックが一番に降ろしやすいポジション、つまりエースとしての扱いだ。
第1ステージで大規模落車を引き起こした女性 (c)TV image
昨夜から話題はOPI・OMIの看板を持っていた女性が逮捕されたというニュース。大規模落車を引き起こすきっかけとなった愚かな行為のあと雲隠れしていたが、司法による捜査に発展し、警察が行方を探していた。ランデルノー近郊に住む30歳の女性で、「がんばれお祖父ちゃんおばあちゃん」を意味する看板を掲げたのは家でTVを見ている祖父母に向けたメッセージで、自分の「愚かさ」を恥じ、事故に対する世間の大きな関心を心配していると供述した。
地元メディアではインタビューも流され、スポーツ関係でない世界の一般メディアも大きく取り上げる事件となったが、ツール主催者A.S.O.はすぐに訴えを取り下げた。追求のアクションは観客への注意喚起が目的であったという一面もある。もっともこうした事故が起きたときの安全上の責任を問われるべきはレース主催者であり、観客の行為に落ち度があるとはいえ、それが故意ではなかったなら、その責任を問うことができるかは微妙な問題だ。
この先は、怪我を負ったマルク・ソレル(モビスター)など選手が被害者として訴えるかどうか。その行方は見守りたい。
包帯が減ってきたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto AYANO
オリヴェル・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)は「彼女の名前がメディアやSNSなどオンラインで公開されないことを望む。そんなことになったら人生を変えてしまう。あれは事故で、彼女もわざとやったんじゃない。僕は彼女が見つからないほうがいいと思っていたぐらい」と心配するコメント。SNS上では厳しく追求するべきという声がいまだ溢れているが、リンチにかけるべきものではなく、ただ観客たちが今後、この事故を教訓にして安全に配慮して観戦するようになればいい。
アンボワーズ城を通過するプロトン photo:Makoto AYANO
ロワール川に沿ってアンボワーズ城、シュノンソー城など有名な古城のある街が続く。しかし50km以上のスピードに乗ったプロトンは美しい城に目をくれるまもなく通り過ぎる。
アンボワーズ城の前を走り抜けるマイヨヴェールのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
平原を行くステージ後半にかけて強風が吹けば総合争いも加熱すると見られたが、この日の風は軽く吹いたのみ。高速のアタック合戦の末の8人の逃げも許されなかった。逃げグループのなかからのアタックも繰り返され、最終的に独走に持ち込んだグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)にロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル)が追いつく形で2人の逃げが始まった。
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)とロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル)が逃げ続ける photo:Makoto AYANO
集団コントロールはまた「トラクターことティム・デクレルク(ベルギー)が担い、ドゥクーニンク・クイックステップが今日もカヴェンディッシュで狙う意思表示。3位以降の中間スプリントポイントも取りに行ったカヴだが7番手通過に甘んじてしまった。
ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が集団牽引を続ける photo:Makoto AYANO
金色のヘルメットのオリンピックチャンピオンの逃げ。そして世界チャンピオンのアラフィリップの牽引、そしてマイヨジョーヌの牽引と、豪華役者の強力なスピードアップでシャトールーの直線路へと進入していくプロトン。
麦畑のなかを逃げるロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル)とグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン) photo:ASO Charly Lopez
フランスの心、シトロエン2CVを並べて応援する photo:Makoto AYANO
前輪にブルータイヤを履いたユンボ・ヴィスマ photo:Makoto AYANO
残り30km地点からフィニッシュラインまでの平均スピードは55.3km/h、残り10kmは平均スピード58.1km/hという高速レースは3時間17分でクライマックスを迎えた。
ジャスパー・フィリプセンに最後の勝負を託したアルペシン・フェニックス。その「本日の」エーススプリンターをリードアウトに活用してカヴェンディッシュが加速した。2008年はチームコロンビアで出場、このシャトールーでツール1勝目を挙げた。そして2011年にはHTCハイロードのジャージを着てこの地での2勝目、そしてウルフパックに支えられた10年後の2021年、同じ地シャトールーでの3勝目を挙げた。
シャトールーでの3勝目めがけてスプリントしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
ツール通算32勝。初勝利から数えて13年目のツールにおいていまだスピードは衰えず。ツール・ド・フランス公式プログラムはシャトールーの紹介にカヴェンディッシュの勝利の写真を掲載してそのストーリーを紹介しているが、カヴは直前までツールに出場する予定はなかった。それがシャトールーでのハットトリック達成。
2008、2011年と同じヘルメットをかかえるウィニングポーズでフィニッシュしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
カヴが「3つの勝利とも違うように感じた」とするフィニッシュラインは多少の前後はするが広いストレートでほぼ同じ。大集団でハイスピードでフィニッシュラインに向けて突進していくのも「ボルドーやパリと同じ、オールドスクールなツールのスプリント」(カヴ)。テクニカルに攻めようもない大通りでの広々した一直線のスピード勝負で、36歳の「マン島のミサイル」は若いスプリンターのスピードに負けない、いまだに世界最速スプリンターのひとりであることを証明した。
2008、2011年と同じヘルメットをかかえるウィニングポーズでフィニッシュしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
2008年、2011年と同じ、両手で頭を抱える「信じられない」のポーズ。混沌のスプリントに挑むこの大仕事のなかで、フォトジェニックなそのウィニングポーズを決めることまでやり遂げてしまう余裕。2日目の勝利が歓喜のカムバックなら、この勝利は3年の空白を置いてカヴが通常運行に戻ったかのような勝利だ。
一日中牽引した「トラクター」ことティム・デクレルク(ベルギー)と抱き合って喜ぶマーク・カヴェンディッシュ photo:Makoto AYANO
エディ・メルクスのツール最多ステージ優勝記録の34勝まであと2つ。つい半年前には所属チームが無かった男が、ツールの歴史的な記録の更新のチャンスを間近にしている。レース直後の勝利者インタビューでは「ついに32勝。さぁ、これから私が訊く質問がわかるよね?」とインタビュアーに訊かれると、「その名前を言わないで! その名前を言わないで!」と照れるように声を上げた。その名前とはもちろんメルクスのこと。
「何も考えていないんだ。ただツールのステージに勝つことだけを考えているんだ」と、歴史的記録の更新には自分からは一切触れようとしない。
シュコダの狼のマスコットを抱えたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
「ツール・ド・フランスでのステージ優勝だ。初勝利だろうが、32回目だろうがツールのステージ優勝に変わりはしない。人々が一生をかけて望む舞台での勝利だ。とても嬉しいよ」「グランツールで50勝目なんだ。それで十分じゃないかな?」「1人でベラベラ喋りすぎかな?ごめんね、興奮しているんだ」。
シャトールーのプレスセンターでのカヴェンディッシュのオンライン記者会見 photo:Makoto.AYANO
赤らめた顔でエモーショナルに、饒舌に喋り続けるカヴ。幸い今年のツールにはスプリントのチャンスがあと5つある。そして着ているマイヨヴェールもパリまで持ち越し、シャンゼリゼのポディウムに立ちたい。
前回出場の2018年ツールは山岳ステージでタイムアウトで失格となり、パリまでたどり着かなかった。今年のツールでもっとも完走が危ぶまれるのが第11ステージの「魔の山」モン・ヴァントゥーを2回も登るステージだ。カヴにとって最大の難関は早めに現れるのがやっかいだ。
text&photo:Makoto.AYANO in FRANCE
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ブルターニュでの開幕は北らしい鉛色の空だった。そしてここまで肌寒い天気が続いていた。しかしこの日はようやく朝から陽光が降り注ぎ、ようやくジャケットを脱げる気温に。ツールにフランスの夏らしさが戻ってきた。
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ジュリアン・アラフィリップも沿道のファンサービスに務める。マスクをしているが、バリア越しにグータッチを交わし、その距離は近くなっているようだ。
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ユンボ・ヴィスマのバス前には青いフロントタイヤをセットしたサーヴェロのバイクが並ぶ。プレゼンテーションでお披露目した際に目を引いたこのタイヤ。swapfiets(スワップ・フィッツ)という、放置自転車など中古の自転車をリサイクルしてレンタルすることをビジネスとしているオランダの会社のシンボル的アイコンで、ヨーロッパじゅうで展開が始まっている。もちろんコロナ禍で通勤通学に、生活の足にと自転車の利用が拡大し、業績は順調。ユンボ・ヴィスマのスポンサーになっているのだ。
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ドゥクーニンク・クイックステップのチームカーにはカヴェンディッシュのスペアバイクが、従来アラフィリップのバイクが設置されてきた後部・右端に設置された。そこがメカニックが一番に降ろしやすいポジション、つまりエースとしての扱いだ。
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地元メディアではインタビューも流され、スポーツ関係でない世界の一般メディアも大きく取り上げる事件となったが、ツール主催者A.S.O.はすぐに訴えを取り下げた。追求のアクションは観客への注意喚起が目的であったという一面もある。もっともこうした事故が起きたときの安全上の責任を問われるべきはレース主催者であり、観客の行為に落ち度があるとはいえ、それが故意ではなかったなら、その責任を問うことができるかは微妙な問題だ。
この先は、怪我を負ったマルク・ソレル(モビスター)など選手が被害者として訴えるかどうか。その行方は見守りたい。
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オリヴェル・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)は「彼女の名前がメディアやSNSなどオンラインで公開されないことを望む。そんなことになったら人生を変えてしまう。あれは事故で、彼女もわざとやったんじゃない。僕は彼女が見つからないほうがいいと思っていたぐらい」と心配するコメント。SNS上では厳しく追求するべきという声がいまだ溢れているが、リンチにかけるべきものではなく、ただ観客たちが今後、この事故を教訓にして安全に配慮して観戦するようになればいい。
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エディ・メルクスのツール最多ステージ優勝記録の34勝まであと2つ。つい半年前には所属チームが無かった男が、ツールの歴史的な記録の更新のチャンスを間近にしている。レース直後の勝利者インタビューでは「ついに32勝。さぁ、これから私が訊く質問がわかるよね?」とインタビュアーに訊かれると、「その名前を言わないで! その名前を言わないで!」と照れるように声を上げた。その名前とはもちろんメルクスのこと。
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赤らめた顔でエモーショナルに、饒舌に喋り続けるカヴ。幸い今年のツールにはスプリントのチャンスがあと5つある。そして着ているマイヨヴェールもパリまで持ち越し、シャンゼリゼのポディウムに立ちたい。
前回出場の2018年ツールは山岳ステージでタイムアウトで失格となり、パリまでたどり着かなかった。今年のツールでもっとも完走が危ぶまれるのが第11ステージの「魔の山」モン・ヴァントゥーを2回も登るステージだ。カヴにとって最大の難関は早めに現れるのがやっかいだ。
text&photo:Makoto.AYANO in FRANCE
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