トップMTB選手へのインタビュー、そしてメッセージを紹介する連載企画の第2弾は、2018年に世界選手権を制したケイト・コートニー(スコット・スラム)。「高校のMTBチームで初めてレースの世界があることを知った」という彼女の言葉に注目したい。



2018年の世界選手権を23歳の若さで制したケイト・コートニー(アメリカ)2018年の世界選手権を23歳の若さで制したケイト・コートニー(アメリカ) photo:UCI
オリンピックや世界選手権のメダルを獲得してきたトップアスリートがどのようにMTBに出会い、どんな気持ちを大切にしてプロ選手になったのか。

東京オリンピックでのレース観戦を楽しみにする方々、これから世界に挑戦するキッズ・ジュニアのアスリート、そして彼等をサポートするご家族の方々へのメッセージになればと、オリンピックMTBアスリートに協力を頂き、インタビューを行った。

これからチャレンジをするみんなに大事にして欲しいことを含め、アスリートからのメッセージをお届けする。インタビュアー:鈴木禄徳 (PAXPROJECT所属)



ケイト・コートニー プロフィール

ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラム)ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラム) (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team2018年に世界選手権を優勝、2019年にはワールドカップ総合優勝といった素晴らしい実績を誇るケイト。レース会場ではいつも笑顔でチームメートやファンとの時間を過ごす一方で、トレーニング中やレースの準備を行うシーンでは一変して集中した表情で誰よりも真剣にレースに向かう姿が印象的なライダーだ。華々しいMTBでのプロ選手生活の一方で、アメリカ・スタンフォード大学で人間生物学を学び、卒業した勉強家でもある。

勉学でも成果を挙げ、全力でレースに向かうケイト。彼女の考え方、日本の若いライダーのみんなに大事にして欲しい事など、レーサーとしてだけではなく、人生のお手本ともしたい彼女からのメッセージをお届けしよう。

アメリカ出身、1995年生まれ25歳
スコット・スラムMTBレーシングチーム所属
東京オリンピックアメリカ代表
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UCIワールドカップ、アルブシュタッド大会。テクニカルなコースを攻め続けたUCIワールドカップ、アルブシュタッド大会。テクニカルなコースを攻め続けた (c)SCOTT-SRAM MTB Racing TeamQ1: どのようにしてMTBと出会いましたか?

私はカリフォルニア州のマウントタマルパスの山のふもとで生まれ育ちました。小学生の頃にお父さんと家の近くのトレイルや inファイヤーロード(未舗装の山林管理道路)でMTBに乗り始めたことから始まりました。最初はお父さんとの山遊びでしたね。

高校生の頃に学校のMTBのチームに加入したとき、MTBにはレースの世界があることを知りました。それでマリン群のジュニアの育成チームにも入り、北カリフォルニアで行われていたMTBのシリーズ戦に参戦し始めました。

Q2: 子供の頃憧れた選手は?

実は子供の頃にはMTBのレースは見る事がなく、毎年ツールドフランスをお父さんと一緒にテレビで観ていました。高校生になるまでMTBのワールドカップすら知らなかったけれど、MTBのレースと出会ってからは、こんな魅力的な世界があるなんて!と感じたのを覚えています。

Q3:ジュニアや子供の時を思い返して、どんな気持ちでトレーニングに取組んで欲しいですか?

みんなに覚えておいて欲しいことは、「MTBレースを何歳から始めたかよりも、今日からどういう風に努力して目標に向かって成長していくかの方が大事」ということ。

私からのアドバイスは、ジュニア選手は今週やるべきことに集中して取組んで、それを毎週繰り返していくこと。コーチと一緒にやるべきことをリストにして計画を立て、毎週、毎月、毎シーズンと継続してトレーニングとレースを繰り返すことで、少しずつ成長を積み重ねていく。そうやって地道に取り組み続けると、ある時振り返ると、いつの間にか大きな成長や成果が得られていることを実感できると思う。「継続は力なり」。目標に向かってプランを立て、一つずつトレーニングを積み重ねていくの。

日々の計画的なトレーニングが彼女の走りを支えている日々の計画的なトレーニングが彼女の走りを支えている (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team
Q4:どのようにMTBのテクニックを学んだのですか? 何かオススメのトレーニング方法はありますか?

テクニックについては、アメリカで専門のコーチとも一緒にジャンプなどのトレーニングを行っています。スコット・スラムに加入してからは、チームマネージャーのトーマス・フリシュクネヒトと一緒にトレーニングやレースでの試走を行っており、彼からとても沢山の事を学んでいます。

実績やテクニックのある選手と一緒に走ることで、より上手に、より自信を持って難しいコースを走れるようになると信じています。

コーチと一緒にコーストレーニングを行うコーチと一緒にコーストレーニングを行う (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team
Q5:ジュニア時代はどのように練習したのでしょうか?

トレーニングはジュニア時代から毎年少しづつ変化させてきて、今は昔とは大分違います。主な変更点は、1週間のトレーニング総量と練習の回数を少しづつ増やしてきたといった点です。

若い選手はトレーニングのやり過ぎにならない様に、コーチと相談しながらトレーニング総量を丁寧にコントロールする必要があると強く感じています。若い選手は成長する時間とチャンスが十分にあるのだから、落ち着いて一歩づつ着実に努力を積み重ねていくことが大事。

あまりにレースや練習をハードに詰め込み過ぎて、若い内に疲れて燃え尽きてしまうのもよくないでしょ。だから、コーチと一緒に計画を立てて、楽しむ事を忘れずにトレーニングを積み重ねるのをオススメします。

集中した表情でウォーミングアップを行う集中した表情でウォーミングアップを行う (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team
Q6:レースで勝つ為に大事だと思うことを3つ教えてください。

Preparation (準備をしっかりと行う)
Focus(集中して取り組む)
Fight(闘う気持ちを忘れずに)

Q7:どの様にプロ選手への道が開けたのでしょうか?

U23のワールドカップでレースをしようと心を決めたタイミングで、大学一年生の時に初めてプロ選手契約にサインしました。

Q8:今現在プロ選手としてどのように生活を楽しんでいますか?

MTBに乗って色々な場所を走れること、色々なレースを走れることは、私が世界で一番楽しくて素晴らしい事だと心から思っています。

レース参戦やトレーニングで世界中の色々な場所をMTBと一緒に訪れるのは本当に幸せです。もちろんレースでレベルの高いライバルと競えるのも、すごく刺激的で楽しいことですね。

イタリアのレースを走るケイト。世界中のトレイルを走る事が彼女の喜びだというイタリアのレースを走るケイト。世界中のトレイルを走る事が彼女の喜びだという (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team
Q9: 最後に今乗っているバイクについて教えてください。お気に入りのポイントはどこですか?

今シーズンはSCOTTのニューバイクであるContessa SPARK RCでこれからのレースを闘います。このバイクは今までのMTBとは全く違う次元の”Next Level”の素晴らしいバイクです。

もともととても操作しやすく多くのライダーから評判を得ていたSPARK。これにもっと優れたハンドリングと120mmのロングストロークを持たせるため、バックの設計とジオメトリーの見直しを全面的に行ったんです。シュッとしたヘッドまわりのデザインと、フレームの中に内装されたリアショックのルックスは、すごくクールでしょ。

お気に入りのポイントはジオメトリーです。今まで乗ってきたどのバイクよりも私のライディングスタイルと身体にフィットしていて、より快適に、よりアグレッシブなポジションでコースを攻められるの。

新型のスコットSpark、そして人気者の専属メカニックと新型のスコットSpark、そして人気者の専属メカニックと (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team


多くのトップライダーが幼少期からMTBレースに本格的に参戦する一方で、専門的なMTBのトレーニングを高校生になってから始め、2018年に23歳で世界チャンピオンを獲得するまでに至ったケイト。

「これをやる」と心に決めたことに対して、正しい努力を積み重ね続けることの重要性。これを日本の若いみんなに伝えようと、このプロジェクトに協力してくれた。

ケイトも若い選手に向けて、自身の経験に基づくメッセージを届ける事にとても力を注いでいる。興味を持った人はチームのYoutubeチャンネルで彼女の努力する姿勢をチェックしてみよう。大好きなMTBを通じて、毎日を英語を聞き続ける事も、英語を身に着けるのに有効な方法だ。

たとえ他のみんなとスタート地点が違っても、自分の夢・目標に向かって、着実に真っ直ぐに。ケイトの次の目標は東京オリンピックでの金メダルだ。ところで、君の目標はなに?



筆者プロフィール:鈴木禄徳(PAXPROJECT)

鈴木禄徳(PAXPROJECT)鈴木禄徳(PAXPROJECT) オフロードが特に大好きな雑食系アマチュアサイクリスト。幼少期からMTBを中心に、アニメ聖地巡礼から海外レース遠征まで幅広い自転車の楽しみ方を経験。

現在はアマチュアMTB/CXチーム「PAXPROJECT」のキャプテンとして、「明るく、楽しく、でも競技はガチで」をモットーにレース参戦と仲間と一緒にレベルアップすることに没頭。誰も観ていないジャンプで、数少ない観客(ほぼ友人のみ)を魅了する走りが信条。

PAXPROJECT
Notes

Special Thanks Koichiro Nakamura