6kmサーキット逆周回で行われたJプロツアー第7戦の「群馬CSCロードレース6月大会」。序盤に形成された16名の先頭集団が逃げ切り、残り2周を独走に持ち込んだ小林海(マトリックスパワータグ)がJプロツアー初優勝を決めた。



心臓破りの坂を下っていく集団心臓破りの坂を下っていく集団 photo:Satoru Kato
4月に行われた第5戦「東日本ロードクラシック」以降、Jプロツアーは3戦連続で群馬サイクルスポーツセンター(以下群馬CSC)での開催。今回は、JBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)の大会としては初となる6kmサーキットを逆周回で行われた。

修善寺の日本サイクルスポーツセンターの5kmサーキットや、シマノ鈴鹿の鈴鹿サーキットなど、正周りにした場合フィニッシュ地点が下りになることを避けるため、逆回りでレースを行う例はこれまでにもあった。群馬CSCはその必要が無かったが、JBCFでは以前から逆回りのレース開催について検討されてきたという。

昨年以降のコロナ禍もあって群馬CSCでのレース開催が増えたこともあり、今年に入ってJBCF安原理事長を筆頭に逆周回レース開催の検討が行われ、今回の導入に至った。逆周回とするにあたり、スタート・フィニッシュ地点は登りとなるバックストレートに設定。最初の約1周半をニュートラル走行したのちローリングスタートするなど、安全面対策が施された。

バックストレートを逆方向にスタートバックストレートを逆方向にスタート photo:Satoru Kato
また、今回大会は「セレクションレース制度」による出場が可能となる最初のレースでもあった。この制度は、本来チーム単位でJBCFに加盟登録することで出場できるJプロツアーに、個人での出場を許可するというもの。JCF又はUCIに選手登録し、Jプロツアーの選手資格に合致する選手であれば、最大3レースに出場可能となる。レース出場機会の減った選手への救済策として設定された制度で、今回はジャパンサイクルリーグ(JCL)チームの選手や、出場停止処分を終えた岡篤志、さらに東京五輪MTB代表の山本幸平ら20名がエントリーした。

序盤に形成された先頭集団 前を引くのは東京五輪MTB代表の山本幸平序盤に形成された先頭集団 前を引くのは東京五輪MTB代表の山本幸平 photo:Satoru Kato
27周162kmのレースは、リアルスタート直後から始まったアタック合戦を経て16名の先頭集団が形成される。この中には、リーダージャージのホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)をはじめ、小林海(マトリックスパワータグ)、渡邉歩(愛三工業レーシングチーム)、徳田優、沢田時(チームブリヂストンサイクリング)、井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)、石橋学、冨尾大地(シエルブルー鹿屋)、山本幸平(セレクションチーム・オープン参加)らが含まれた。

橋本英也を先頭にチームブリヂストンサイクリングがコントロールするメイン集団橋本英也を先頭にチームブリヂストンサイクリングがコントロールするメイン集団 photo:Satoru Kato
主要チームが先頭集団にメンバーを送り込み、強力なメンバーが揃ったことから、メイン集団との差は4分以上まで開く。レース中盤に入ると、チームブリヂストンサイクリングがコントロールを開始。東京五輪トラック種目代表の橋本英也も加わり、先頭集団との差を2分台まで縮める。しかしレース終盤にかけて再び差が広がり、先頭集団の逃げ切りが濃厚となる。

残り6周、先頭集団から冨尾大地(シエルブルー鹿屋)がアタック残り6周、先頭集団から冨尾大地(シエルブルー鹿屋)がアタック photo:Satoru Kato
先行する冨尾大地を追う4名先行する冨尾大地を追う4名 photo:Satoru Kato残り3周 冨尾大地に追いついた勢いで前に出る小林海(マトリックスパワータグ)残り3周 冨尾大地に追いついた勢いで前に出る小林海(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato

残り10周を切ると、先頭集団ではアタックと牽制が始まって足並みが乱れはじめる。残り6周、冨尾が単独で飛び出し、後続に1分近い差をつける。このまま逃げ切りかと思われたが、小林、井上、沢田、渡邉の4名が追走集団を形成して残り3周で冨尾に追いつく。すると今度は小林が単独先行を開始。沢田が追いすがるが差は縮まらず、残り2周を逃げ切った小林がJプロツアー初勝利を決めた。

独走する小林海(マトリックスパワータグ)独走する小林海(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato
2周を逃げ切った小林海(マトリックスパワータグ)がJプロツアー初優勝2周を逃げ切った小林海(マトリックスパワータグ)がJプロツアー初優勝 photo:Satoru Kato
「(冨尾に追いついた)次の周に行こうかと思っていたが、後ろが離れたので今が行くタイミングだと思った」と、独走に入った瞬間を振り返る小林。

「冨尾選手が1人で先行した時は、あのくらいの差ならすぐに追いつけると思っていた。4人の追走になったのは誰が動いたというのではなく、気がついたら後ろが離れていたので、そこから回し始めた。どの動きが最後になるのかわからないので、ミスをしないように1周1周集中し、小さな集団でも前に前に行くことを心がけた」

「安原監督のおかげ」と小林海(マトリックスパワータグ)「安原監督のおかげ」と小林海(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato表彰式表彰式 photo:Satoru Kato

「チームとしては僕をふくめ4名を先頭集団に乗せたので、そのまま行っても良かったし、捕まったとしても吉田(隼人)さんが後ろにいたので、選択肢はあった。メイン集団との差がもう少し縮まるようならアタックしようかとも考えていたが、差が2分台になったあと縮まらなくなったので、ホセとも話してこのまま集団で行くことにした。勝ったのもあるけれど、逆周回の方が登りが長いので好み」と、レースを振り返る。

「ツアー・オブ・ジャパンの東京ステージの走りで、今年はどこかで勝てるだろうという感触を掴めていた。あの時は逃げ切るつもりはなく、総合順位を上げることを選択したので2位だったが、今日はミスさえしなければ勝てるという自信もあった。これでいつもからかわれているマンセボに『勝ったよ』と報告できる。次の広島はまた別のレースなので、切り替えて臨みたい」と、語った。

レース終盤に逃げた冨尾大地が敢闘賞を獲得レース終盤に逃げた冨尾大地が敢闘賞を獲得 photo:Satoru Katoレース後半 先頭集団からアタックするう石橋学(シエルブルー鹿屋)レース後半 先頭集団からアタックするう石橋学(シエルブルー鹿屋) photo:Satoru Kato

一方、残り3周で追いつかれたものの敢闘賞を獲得した冨尾は「結果的には飛び出しが早かったかなと。でも、どこからでも勝負できる力をつけないといけないなとも思った」と、アタックのタイミングを反省する。

「石橋さんが中盤以降先頭でガンガン行ってるのを見て、脚いっぱいだったけれど、そろそろ休んでもらいたいなと思っていたところ、アタック合戦がひと段落したところで飛び出した。この後あるはずだった全日本に向けてやってきたことが、方向性として間違っていなかったとも感じている。チームとしても1戦1戦存在感を示せるようになってきているので、もっと数的優位を作れるように強化していければと思う」と、語った。



1号橋の下を通過していく集団1号橋の下を通過していく集団 photo:Satoru Kato多くの選手にとって初となった逆周回のレースは、おおむね好評だったという。従来なら休める区間があったが、逆周回では休める間が無いという声もあり、早い段階で力のない選手を振り落とせるという効果もあったようだ。

また、初めての逆周回で慎重に走った選手が多かったためか、Jプロツアーでは大きな事故なくレースを終えた。 Eクラスタの最終周回で落車事故が起きてしまったのは残念だが、状況から逆周回が原因ではないという。

今後、群馬CSCでの開催方法のひとつとして、逆周回のレースが定期的に開催されるようになるか?
Jプロツアー第7戦 群馬CSCロードレース6月大会 結果(162km)
1位 小林 海(マトリックスパワータグ) 4時間2分43秒
2位 沢田 時(チームブリヂストンサイクリング) +1分19秒
3位 井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム) +2分1秒
4位 冨尾大地(シエルブルー鹿屋) +2分13秒
5位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) +2分23秒
6位 西村大輝(セレクションチーム※オープン参加) +2分23秒
敢闘賞 冨尾大地(シエルブルー鹿屋)

中間スプリント賞
1回目 安原大貴(マトリックスパワータグ)
2回目 石橋 学(CIEL BLEU KANOYA)
3回目 安原大貴(マトリックスパワータグ)
4回目 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

Jプロツアーリーダー ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
U23リーダー 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)



女子・Eクラスタ 結果

女子 5周目からは植竹海貴(Y's Road)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)のマッチレースに女子 5周目からは植竹海貴(Y's Road)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)のマッチレースに photo:Satoru Kato女子 表彰式女子 表彰式 photo:Satoru Kato

女子 結果(84km)
1位 植竹海貴(Y's Road) 2時間24分26秒
2位 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) +53秒
3位 金子尚代(弱虫ペダルサイクリングチーム) +5分40秒
中間スプリント賞
1回目 植竹海貴(Y's Road)
2回目 植竹海貴(Y's Road)
3回目 植竹海貴(Y's Road)

Jフェミニンリーダー 植竹海貴(Y's Road)



Eクラスタ 渡邉翔悟(日本体育大学)が4名でのスプリントを制するEクラスタ 渡邉翔悟(日本体育大学)が4名でのスプリントを制する photo:Satoru KatoEクラスタ 表彰式Eクラスタ 表彰式 photo:Satoru Kato
Eクラスタ 結果(E1+E2+E3 120km)
1位 渡邉翔悟(日本体育大学) 3時間3分35秒
2位 比嘉祐貴(日本体育大学) +0秒
3位 池川辰哉(VC VELOCE) +0秒
4位 川勝敦嗣(MiNERVA-asahi) +1秒
5位 雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド) +26秒
6位 増子雄士(Astama Cycling Team) +28秒
中間スプリント賞
1回目 池川辰哉(VC VELOCE)
2回目 池川辰哉(VC VELOCE)
3回目 池川辰哉(VC VELOCE)

Jエリートツアーリーダー 松木健治(VC VELOCE)
U19リーダー 川田翔太(ボンシャンスACA)

text&photo:Satoru Kato

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