2021/05/27(木) - 08:49
休息日明けの1級山岳フィニッシュでエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) が遅れた。ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が逃げ切りに成功し、サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が総合成績を挽回している。
5月26日(水)第17ステージ
カナツェーイ〜セーガ・ディ・アーラ 193km ★★★★
大会最後の休息日を終え、ジロ・デ・イタリアはドロミテの山々を横目にトレンティーノ=アルト・アディジェ州を南へと移動する。ステージ中盤にかけてアディジェ川が作り出したアディジェ渓谷を走り、2つのスプリントポイントを通過してから再び山岳地帯へと向かうと、残り50kmから1級山岳2連発に挑む。
1級山岳サンヴァレンティーノ峠(登坂距離14.8km・平均勾配7.8%)を越え、超高速ダウンヒルを経て、渓谷を挟んで向かい側にそびえるジロ初登場の1級山岳セーガ・ディ・アーラ(登坂距離11.2km・平均勾配9.8%)へ。実質的な平均勾配は10%オーバーで、特に残り4kmを切ってからは15%前後の勾配を刻む(最大勾配は17%)セーガ・ディ・アーラでの登坂バトルに注目が集まった。
雪を頂いたドロミテ山塊に見送られながら、足を痛めたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)不在のプロトンが標高1,300mオーバーの街カナツェーイを出発。これまで8ステージで逃げ切りが決まってきたことから、この日も金星を狙う選手たちが次々とアタックを繰り出していく。渓谷沿いの緩斜面下り(つまり逃げが決まりにくい)で1時間に及ぶ飛び出しと吸収が繰り返された結果、54.7km地点の3級山岳ズヴェゼリ手前で19名という大きな逃げグループが先行することとなった。
逃げグループを形成した選手たち
ジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
ジョフリー・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)
ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
マッテオ・バディラッティ(スイス、グルパマFDJ)
ヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)
マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ここまで鉄壁の走りを見せてきたマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア)擁するイネオス・グレナディアーズは、ジャンニ・モスコン(イタリア)を逃げに乗せてメイン集団をコントロール。やがてサイモン・イェーツ(イギリス)の総合ジャンプを狙うバイクエクスチェンジもメンバー3名を牽引役に送り、足の揃った逃げグループとの差を4分前後でキープした。
平穏に下りと平坦を終え、139km地点から始まる1級山岳サンヴァレンティーノ峠に入ると逃げグループ、3分後方のメイン集団共にふるいに掛けられていく。先頭グループでは中盤までクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が、後半区間はダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が牽引してペースを維持。マーティン、モスコン、アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)、ジョフリー・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)の4名に絞り込まれた中、マリアアッズーラのブシャールが狙い通り1位通過で山岳ポイントを加算している。
サンヴァレンティーノ峠からの高速ダウンヒルでは、先頭のマーティングループから2分半遅れのメイン集団内にて落車が起きた。総合6位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が巻き込まれたこのクラッシュでは、行き場を無くしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がコーナー外側のガードレールに衝突してしまった。エヴェネプールは痛みをこらえながら再乗車し36分遅れでフィニッシュしたものの、各部裂傷や挫傷を負ったため、チームはこの日終了後にエヴェネプールのリタイアを発表。大会序盤に総合2位を走った21歳のグランツール初挑戦は、遅れとクラッシュで幕を閉じることとなった。
10%勾配が延々と続く1級山岳セーガ・ディ・アーラ突入時点で、シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)が追いついた逃げグループとメイン集団の差は1分強。すると、序盤区間でステージ優勝を狙うマーティンがライバルたちを一気に振り落とした。
マーティンはメイン集団との1分半リードを維持しながらジロ初登場の峠道を駆け上がる。落車の影響を感じさせるチッコーネや総合4位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)はイネオス・グレナディアーズが淡々と刻むハイペースに付いていくことができず、峠の序盤区間で遅れを喫してしまった。
イネオストレインからは総合3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・NIPPO)、そして総合7位ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)も脱落。イネオスは前から降ってきたモスコンを牽引役に加えて、遅れた選手たちにダメージを与え続けていく。すると10分1秒遅れのジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がメイン集団を飛び立った。
最大勾配17%に達する激坂区間をきっかけに総合5位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が抜け出し、メイン集団だったものはイェーツ、ベルナル、ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)、そしてアルメイダという4人だけになる。するとTVカメラは、快調にペースを刻むイェーツとアルメイダの後方で、力なく遅れていくベルナルの姿を捉えた。
ペダルに込める力を完全に失い、ペースを落としたベルナルを見てイェーツとアルメイダは攻勢に打って出た。先頭を逃げ続けるマーティンとの距離を縮めながら、そしてマルティネスに付き添われながらフラフラ状態で登るベルナルを突き放しながらセーガ・ディ・アーラを突き進む。総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)に追いつかれたベルナルは緩斜面区間に入ってリズムを少し取り戻したものの、完全に復調することは最後までなかった。
水を得た魚のように登るイェーツを振り切って、苦しい表情で登り続けたマーティンがフィニッシュ地点にやってくる。ここまでツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を挙げてきたマーティンが、自身初となるジロ区間勝利。その13秒後にアルメイダが、そしてそこから17秒遅れてイェーツがフィニッシュ。カルーゾやベルナルたちはイェーツから約50秒遅れてフィニッシュにたどり着いた。
休息日明けの難易度4つ星ステージで総合成績は大きく動いた。総合1位ベルナルと総合2位カルーゾはほぼ同時にフィニッシュため3秒縮まっただけに留まったものの、イェーツは4分20秒遅れの総合5位から3分23秒遅れの総合3位へと巻き返した。カーシーは表彰台圏内から脱落して6分9秒遅れの総合5位に転落している。
マリアローザこそ守ったものの、ベルナルは勢いづくイェーツを明日以降の山岳ステージで抑えきれるのか。大きな疑問符を残してジロ第3週初日が終了した。
5月26日(水)第17ステージ
カナツェーイ〜セーガ・ディ・アーラ 193km ★★★★
大会最後の休息日を終え、ジロ・デ・イタリアはドロミテの山々を横目にトレンティーノ=アルト・アディジェ州を南へと移動する。ステージ中盤にかけてアディジェ川が作り出したアディジェ渓谷を走り、2つのスプリントポイントを通過してから再び山岳地帯へと向かうと、残り50kmから1級山岳2連発に挑む。
1級山岳サンヴァレンティーノ峠(登坂距離14.8km・平均勾配7.8%)を越え、超高速ダウンヒルを経て、渓谷を挟んで向かい側にそびえるジロ初登場の1級山岳セーガ・ディ・アーラ(登坂距離11.2km・平均勾配9.8%)へ。実質的な平均勾配は10%オーバーで、特に残り4kmを切ってからは15%前後の勾配を刻む(最大勾配は17%)セーガ・ディ・アーラでの登坂バトルに注目が集まった。
雪を頂いたドロミテ山塊に見送られながら、足を痛めたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)不在のプロトンが標高1,300mオーバーの街カナツェーイを出発。これまで8ステージで逃げ切りが決まってきたことから、この日も金星を狙う選手たちが次々とアタックを繰り出していく。渓谷沿いの緩斜面下り(つまり逃げが決まりにくい)で1時間に及ぶ飛び出しと吸収が繰り返された結果、54.7km地点の3級山岳ズヴェゼリ手前で19名という大きな逃げグループが先行することとなった。
逃げグループを形成した選手たち
ジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
ジョフリー・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)
ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
マッテオ・バディラッティ(スイス、グルパマFDJ)
ヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)
マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ここまで鉄壁の走りを見せてきたマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア)擁するイネオス・グレナディアーズは、ジャンニ・モスコン(イタリア)を逃げに乗せてメイン集団をコントロール。やがてサイモン・イェーツ(イギリス)の総合ジャンプを狙うバイクエクスチェンジもメンバー3名を牽引役に送り、足の揃った逃げグループとの差を4分前後でキープした。
平穏に下りと平坦を終え、139km地点から始まる1級山岳サンヴァレンティーノ峠に入ると逃げグループ、3分後方のメイン集団共にふるいに掛けられていく。先頭グループでは中盤までクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が、後半区間はダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が牽引してペースを維持。マーティン、モスコン、アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)、ジョフリー・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)の4名に絞り込まれた中、マリアアッズーラのブシャールが狙い通り1位通過で山岳ポイントを加算している。
サンヴァレンティーノ峠からの高速ダウンヒルでは、先頭のマーティングループから2分半遅れのメイン集団内にて落車が起きた。総合6位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が巻き込まれたこのクラッシュでは、行き場を無くしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がコーナー外側のガードレールに衝突してしまった。エヴェネプールは痛みをこらえながら再乗車し36分遅れでフィニッシュしたものの、各部裂傷や挫傷を負ったため、チームはこの日終了後にエヴェネプールのリタイアを発表。大会序盤に総合2位を走った21歳のグランツール初挑戦は、遅れとクラッシュで幕を閉じることとなった。
10%勾配が延々と続く1級山岳セーガ・ディ・アーラ突入時点で、シモーネ・ラヴァネッリ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)が追いついた逃げグループとメイン集団の差は1分強。すると、序盤区間でステージ優勝を狙うマーティンがライバルたちを一気に振り落とした。
マーティンはメイン集団との1分半リードを維持しながらジロ初登場の峠道を駆け上がる。落車の影響を感じさせるチッコーネや総合4位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)はイネオス・グレナディアーズが淡々と刻むハイペースに付いていくことができず、峠の序盤区間で遅れを喫してしまった。
イネオストレインからは総合3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・NIPPO)、そして総合7位ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)も脱落。イネオスは前から降ってきたモスコンを牽引役に加えて、遅れた選手たちにダメージを与え続けていく。すると10分1秒遅れのジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がメイン集団を飛び立った。
最大勾配17%に達する激坂区間をきっかけに総合5位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が抜け出し、メイン集団だったものはイェーツ、ベルナル、ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)、そしてアルメイダという4人だけになる。するとTVカメラは、快調にペースを刻むイェーツとアルメイダの後方で、力なく遅れていくベルナルの姿を捉えた。
ペダルに込める力を完全に失い、ペースを落としたベルナルを見てイェーツとアルメイダは攻勢に打って出た。先頭を逃げ続けるマーティンとの距離を縮めながら、そしてマルティネスに付き添われながらフラフラ状態で登るベルナルを突き放しながらセーガ・ディ・アーラを突き進む。総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)に追いつかれたベルナルは緩斜面区間に入ってリズムを少し取り戻したものの、完全に復調することは最後までなかった。
水を得た魚のように登るイェーツを振り切って、苦しい表情で登り続けたマーティンがフィニッシュ地点にやってくる。ここまでツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を挙げてきたマーティンが、自身初となるジロ区間勝利。その13秒後にアルメイダが、そしてそこから17秒遅れてイェーツがフィニッシュ。カルーゾやベルナルたちはイェーツから約50秒遅れてフィニッシュにたどり着いた。
休息日明けの難易度4つ星ステージで総合成績は大きく動いた。総合1位ベルナルと総合2位カルーゾはほぼ同時にフィニッシュため3秒縮まっただけに留まったものの、イェーツは4分20秒遅れの総合5位から3分23秒遅れの総合3位へと巻き返した。カーシーは表彰台圏内から脱落して6分9秒遅れの総合5位に転落している。
マリアローザこそ守ったものの、ベルナルは勢いづくイェーツを明日以降の山岳ステージで抑えきれるのか。大きな疑問符を残してジロ第3週初日が終了した。
ジロ・デ・イタリア2021第17ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 180pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 109pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 79pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 215:04:48 |
2位 | ユンボ・ヴィズマ | 26:40 |
3位 | トレック・セガフレード | 30:29 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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