2021/05/20(木) - 11:09
35.2kmもの白い未舗装路を駆け抜けたジロ第11ステージ。グランツール初出場でステージ初勝利を掴んだ21歳のマウロ・シュミット(スイス、クベカ・アソス)や、積極的な走りでタイム差を奪ったベルナル、逆に大きく遅れたエヴェネプールなどのコメントを紹介します。
ステージ1位 マウロ・シュミット(スイス、クベカ・アソス)
ただただ信じられない。ジロの出場を知らされたのは開幕の2週間前だった。良い準備で挑むことはできたのだが、まさか自分がグランツールに出場するとは思ってもいなかった。だが今日は素晴らしいレースとなり、この勝利が意味するものは大きい。正直、この10日間はとても苦しく集団についていくのがやっとだった。しかしストラーデ・ビアンケとグラベルが好きだったので、今日はどうしても逃げに乗りたかった。逃げ集団に入った時から自分の調子の良さと、昨日の休息日に回復できたことがわかった。
集団を選別するため何度か仕掛けたのだが上手くいかず、しかし最後の登りでみんなが苦しんでいるのが見えた。コーヴィがとても強い選手だとわかっていて、登りで遅れそうになったがなんとか食らいついた。後ろの選手たちのことは距離など含め何も把握していなかったので、二人になってからは多少のリスクは覚悟の上で先頭交代するのを止めた。
残り1kmで監督から「フィニッシュまでの直線が短いから、最終コーナーで先頭に出ろ」という指示を受け実行した。しかし彼が迫ってきたので、精神的に追い込むため残り100mからもう一度踏んだんだ。そして残り50mで勝利を確信し、フィニッシュラインを越えた瞬間は脚の感覚も忘れるほどだった。
僕はマウンテンバイクで自転車を始め、シクロクロス、そしていまはトラック競技をやっている。今年のオリンピックにも出場を予定していて、技術はシクロクロスから、そしてパワーはトラックで得ることができたんだ。
ステージ2位 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
逃げに乗り自分の調子の良さに気がついた。シーズン序盤は怪我もあり不運が続いたが、このレースのおかげで良い感覚が戻ってきたことが何よりも嬉しい。勝つ時もあれば負ける時もあるのがレースだ。今日は負けたが、ベストを尽くしたので後悔はない。ジロはまだまだ続いていくので、また機会があれば勝利を狙いたい。
ステージ3位 ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
信じられないほど悔しい。今日の逃げ集団で自分が最も強い選手だと思っていた。しかし、残り10kmで落車しバイク交換をしなければならず、勝利が手からすり抜けていった。猛烈な追い上げで何人かは捉えたものの、勝利には30秒ほど届かなかった。残念ながら(選手ではなく)バイク交換にステージ優勝を阻まれてしまった。
マリアローザ&ヤングライダー賞 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
スタート前、第1セクターの未舗装路区間を集団先頭で入りたいとチームに伝えていた。もし先頭で入って下りで加速できれば、後続の選手たちが難しくなるからね。第1セクターを抜けた時、優勝候補の1人であるレムコ(エヴェネプール)が集団後方にいたので、僕らはそのまま引き続けた。しかし彼が集団復帰を果たすと僕らは引くのを止め、その代わりにアスタナが牽引を始めた。
未舗装路は好きだしとても楽しめたのだが、精神的にはとても難しかった。少しでも間違った動きをすれば落車やパンクをしてしまうため、バランスがすべてだった。しかし、そういったリスクを覚悟しなければ集団先頭を走ることはできない。
ライバルは(エヴェネプール)1人だけではない。イエーツやカーシー、ウラソフにカルーゾといった選手たちにもリスペクトの気持ちを持っている。もちろんランダもその1人だった。今日は数秒のリードを得ることができたが、最後の10ステージがどれほど厳しいものなのか、選手全員が理解している。地に足をつけ、ライバルたちへの敬意を忘れずレースを走っていきたい。
総合2位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)
最後の登りでベルナルのアタックについていこうと思ったのだが、難しかった。それでも自分の走りには満足しているし、僕もチームもベストを尽くした。このようなステージをトラブルなく終えることができて満足している。この後にやってくる厳しいステージに向けて集中したい。
総合3位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
ジロで鍵となるステージを無事走り切ることができ、とても嬉しいよ。非常にタフで複雑なステージだった。調子は良かったのだが、マリアローザのアタックにはついていけなかった。しかし良いレースができたのでチームメイトとスタッフに感謝したい。いまは心を落ち着かせ、回復に励みたい。
総合5位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)
(未舗装路は)ほとんど経験がなく好みの地形でもなかったが、今年始めに出場したストラーデ・ビアンケが貴重な経験になった。今日はその時の経験とレース前の試走に助けられたよ。無事走り終えることができ、素直に嬉しい。
総合順位という観点から見れば、今日は良い日になったと言えるだろう。これで総合5位に浮上し、今後はさらに上を目指す。今日は決して楽しみにしていたステージではないが、良い走りができたと思うし脚も悪くなかった。明日以降のレースが楽しみだよ。
総合7位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
残念ながら2分も失ってしまった。最高の日からは程遠く、第2セクターで苦しみ、第3セクターで集団がスピードを上げた時は脚に何も残っていなかった。だからついていくことすらできなかったんだ。
これが11日間レースをした身体の反応ということだろう。スタートからフィニッシュまで僕のアシストをしてくれたチームとジョアン(アルメイダ)には感謝している。良い結果ではなかったが、まだ総合7位にいるし自信もある。ミラノまでの道のりはまだ長い。
ステージ65位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
今日はあっさりと逃げも決まり、総合争いのセクター(未舗装路区間)まで待ちな展開となった。第1セクターを30番手以内で入る事が自分の役目だったのだが、予想を裏切る、20km手前からスローペースで集団がセクターまで進んで、集団先頭は蓋をされてしまい、前に上がるスペースがなくて、先頭で入る事が出来なかった。
それでもダミアーノ(カルーゾ)とペイヨ(ビルバオ)はダート区間で前まで上がって、先頭集団復帰を果たした。自分は第1セクターで遅れた総合争いの選手と一緒だったが、一番長い第2セクターでそこからも遅れて、グルペットでゴールを目指すこととなった。
ダミアーノとペイヨは2人で頑張ってくれて、総合脱落者が多いなか、見事に暫定3位となってくれた。終盤はサポート出来ずに終わってしまったが、調子は良かったので力をセーブしたと切り替えて、明日からも引き続きダミアーノの為に頑張りたい。
今日はルームメイトのジーノが突っ込まれて落車してしまい、とても痛そう。明日からのパフォーマンスに影響ありそうだが、何とか回復して欲しい。
体調不良のため休息日にレースを去ったティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ジロを去らなくてはならず、とても残念だ。しかしこれが最も懸命な判断だと思っている。キャリアで初めて10日間連続でレースを走り、この数日間の疲れが溜まっている。いまの身体の状態ではスプリント勝利を目指すことはできず、この決断が今シーズンを引き続き戦うための妥協点だと思っている。
グランツールのデビュー戦をこのジロで迎えることができ、誇りと名誉に思っている。このジロは僕とアルペシン・フェニックスにとって忘れられない冒険になった。マリアチクラミーノを5日間も着ることができ、とても誇りに思うし、今後のモチベーションにも繋がった。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
ステージ1位 マウロ・シュミット(スイス、クベカ・アソス)
ただただ信じられない。ジロの出場を知らされたのは開幕の2週間前だった。良い準備で挑むことはできたのだが、まさか自分がグランツールに出場するとは思ってもいなかった。だが今日は素晴らしいレースとなり、この勝利が意味するものは大きい。正直、この10日間はとても苦しく集団についていくのがやっとだった。しかしストラーデ・ビアンケとグラベルが好きだったので、今日はどうしても逃げに乗りたかった。逃げ集団に入った時から自分の調子の良さと、昨日の休息日に回復できたことがわかった。
集団を選別するため何度か仕掛けたのだが上手くいかず、しかし最後の登りでみんなが苦しんでいるのが見えた。コーヴィがとても強い選手だとわかっていて、登りで遅れそうになったがなんとか食らいついた。後ろの選手たちのことは距離など含め何も把握していなかったので、二人になってからは多少のリスクは覚悟の上で先頭交代するのを止めた。
残り1kmで監督から「フィニッシュまでの直線が短いから、最終コーナーで先頭に出ろ」という指示を受け実行した。しかし彼が迫ってきたので、精神的に追い込むため残り100mからもう一度踏んだんだ。そして残り50mで勝利を確信し、フィニッシュラインを越えた瞬間は脚の感覚も忘れるほどだった。
僕はマウンテンバイクで自転車を始め、シクロクロス、そしていまはトラック競技をやっている。今年のオリンピックにも出場を予定していて、技術はシクロクロスから、そしてパワーはトラックで得ることができたんだ。
ステージ2位 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
逃げに乗り自分の調子の良さに気がついた。シーズン序盤は怪我もあり不運が続いたが、このレースのおかげで良い感覚が戻ってきたことが何よりも嬉しい。勝つ時もあれば負ける時もあるのがレースだ。今日は負けたが、ベストを尽くしたので後悔はない。ジロはまだまだ続いていくので、また機会があれば勝利を狙いたい。
ステージ3位 ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
信じられないほど悔しい。今日の逃げ集団で自分が最も強い選手だと思っていた。しかし、残り10kmで落車しバイク交換をしなければならず、勝利が手からすり抜けていった。猛烈な追い上げで何人かは捉えたものの、勝利には30秒ほど届かなかった。残念ながら(選手ではなく)バイク交換にステージ優勝を阻まれてしまった。
マリアローザ&ヤングライダー賞 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
スタート前、第1セクターの未舗装路区間を集団先頭で入りたいとチームに伝えていた。もし先頭で入って下りで加速できれば、後続の選手たちが難しくなるからね。第1セクターを抜けた時、優勝候補の1人であるレムコ(エヴェネプール)が集団後方にいたので、僕らはそのまま引き続けた。しかし彼が集団復帰を果たすと僕らは引くのを止め、その代わりにアスタナが牽引を始めた。
未舗装路は好きだしとても楽しめたのだが、精神的にはとても難しかった。少しでも間違った動きをすれば落車やパンクをしてしまうため、バランスがすべてだった。しかし、そういったリスクを覚悟しなければ集団先頭を走ることはできない。
ライバルは(エヴェネプール)1人だけではない。イエーツやカーシー、ウラソフにカルーゾといった選手たちにもリスペクトの気持ちを持っている。もちろんランダもその1人だった。今日は数秒のリードを得ることができたが、最後の10ステージがどれほど厳しいものなのか、選手全員が理解している。地に足をつけ、ライバルたちへの敬意を忘れずレースを走っていきたい。
総合2位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)
最後の登りでベルナルのアタックについていこうと思ったのだが、難しかった。それでも自分の走りには満足しているし、僕もチームもベストを尽くした。このようなステージをトラブルなく終えることができて満足している。この後にやってくる厳しいステージに向けて集中したい。
総合3位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
ジロで鍵となるステージを無事走り切ることができ、とても嬉しいよ。非常にタフで複雑なステージだった。調子は良かったのだが、マリアローザのアタックにはついていけなかった。しかし良いレースができたのでチームメイトとスタッフに感謝したい。いまは心を落ち着かせ、回復に励みたい。
総合5位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)
(未舗装路は)ほとんど経験がなく好みの地形でもなかったが、今年始めに出場したストラーデ・ビアンケが貴重な経験になった。今日はその時の経験とレース前の試走に助けられたよ。無事走り終えることができ、素直に嬉しい。
総合順位という観点から見れば、今日は良い日になったと言えるだろう。これで総合5位に浮上し、今後はさらに上を目指す。今日は決して楽しみにしていたステージではないが、良い走りができたと思うし脚も悪くなかった。明日以降のレースが楽しみだよ。
総合7位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
残念ながら2分も失ってしまった。最高の日からは程遠く、第2セクターで苦しみ、第3セクターで集団がスピードを上げた時は脚に何も残っていなかった。だからついていくことすらできなかったんだ。
これが11日間レースをした身体の反応ということだろう。スタートからフィニッシュまで僕のアシストをしてくれたチームとジョアン(アルメイダ)には感謝している。良い結果ではなかったが、まだ総合7位にいるし自信もある。ミラノまでの道のりはまだ長い。
ステージ65位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
今日はあっさりと逃げも決まり、総合争いのセクター(未舗装路区間)まで待ちな展開となった。第1セクターを30番手以内で入る事が自分の役目だったのだが、予想を裏切る、20km手前からスローペースで集団がセクターまで進んで、集団先頭は蓋をされてしまい、前に上がるスペースがなくて、先頭で入る事が出来なかった。
それでもダミアーノ(カルーゾ)とペイヨ(ビルバオ)はダート区間で前まで上がって、先頭集団復帰を果たした。自分は第1セクターで遅れた総合争いの選手と一緒だったが、一番長い第2セクターでそこからも遅れて、グルペットでゴールを目指すこととなった。
ダミアーノとペイヨは2人で頑張ってくれて、総合脱落者が多いなか、見事に暫定3位となってくれた。終盤はサポート出来ずに終わってしまったが、調子は良かったので力をセーブしたと切り替えて、明日からも引き続きダミアーノの為に頑張りたい。
今日はルームメイトのジーノが突っ込まれて落車してしまい、とても痛そう。明日からのパフォーマンスに影響ありそうだが、何とか回復して欲しい。
体調不良のため休息日にレースを去ったティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ジロを去らなくてはならず、とても残念だ。しかしこれが最も懸命な判断だと思っている。キャリアで初めて10日間連続でレースを走り、この数日間の疲れが溜まっている。いまの身体の状態ではスプリント勝利を目指すことはできず、この決断が今シーズンを引き続き戦うための妥協点だと思っている。
グランツールのデビュー戦をこのジロで迎えることができ、誇りと名誉に思っている。このジロは僕とアルペシン・フェニックスにとって忘れられない冒険になった。マリアチクラミーノを5日間も着ることができ、とても誇りに思うし、今後のモチベーションにも繋がった。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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