第10ステージまでを終えて1回目の休息日を迎えたジロ・デ・イタリア。休息日にオンライン記者会見に応えてくれた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)に聞く、これまでのステージと第2週め以降の展望。(共同インタビューより)



第7ステージ チーム総合成績でポディウムに上がった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)第7ステージ チーム総合成績でポディウムに上がった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
オンラインで行われた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)の記者会見オンラインで行われた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)の記者会見 連日、ステージ後半になるとチームメイトたちを牽引して集団の先頭に出てくる姿が目立つ新城幸也。

バーレーン・ヴィクトリアスとしては、第5ステージでチームのエース、ミケル・ランダ(スペイン)が落車・リタイアを喫してしまう。失意のチームを救ったのは翌第6ステージでステージ優勝を飾った新城のルームメイトでもあるジーノ・マーダー(スイス)。しかし続くステージでマティ・モホリッチが落車し、リタイア。ランダとモホリッチというチームの2本柱を失い、6人で戦うことに。

現在チーム内で最上位は、トップのエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアース)から46秒遅れで総合7位につけるダミアーノ・カルーゾ(イタリア)。ステージ1勝を飾ったジーノ・マーダーも山岳賞ポイントで3位につける。

新城自身はアシストに徹しつつ、10日目を終えて個人総合はトップから1時間52秒遅れの89位につけている。カルーゾが6位でフィニッシュした第9ステージのグラベルの上りフィニッシュでも新城は5分14秒遅れの60位に留め、好調ぶりを伺わせる。ジロの開幕時、「これからの3週間で調子を上げていく」と話した新城。今の調子は良いと言う。

新城「いつもと違って10日走っての休息日。今年のジロは毎日全力というよりも、一日頑張って、一日休んでという走りのリズムがあったので、あっという間に半分来たかな、という感じです」。

「まだこれから調子が上がっていくかはわかりませんが、落ちてはいない。疲れていないのはアドバンテージかな、と思っています。後はこれから暑くなればいいと思っています。ここまでずっと雨が多くて、寒くて、濡れて、ナーバスだったのと、日によって天気が大きく変わることが多かった。暑くなるほど僕は調子が良くなっていくので、これから暑くなることを祈るばかりです」。

もともとチームはミケル・ランダの総合優勝争いを最大の目標としてジロに臨んでいた。しかし「交通島」が原因の落車事故で好調のエースを突然失った。道路中央の分離帯のような障害物の前に立つ警備員に接触した選手に巻き込まれ、ランダは負傷してジロを去ってしまった。

第4ステージ、アタックしたミケル・ランダは好調そのものだったが...第4ステージ、アタックしたミケル・ランダは好調そのものだったが... photo:LaPresse
「皆がショックでしたね。2日前には山でチームが働いてタイム差を稼げたし、いいチームプレイができていた。ランダ自身が調子が良く、アシストも強かった。他のチームがアシストを失う中、バーレーンは多くの選手が残っていた。ランダの総合優勝だけがチームの目標でした。

事故については、どうしようもないというか、チームメイトとも「どうすれば良かった」「こうしなきゃいけなかった」とか、いろんな話をしました。主催者やUCI(国際自転車競技連合)含め、いろいろな対策が必要なんじゃないか、と思いました。

落車したランダを待ち続けた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが遅れてフィニッシュ落車したランダを待ち続けた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが遅れてフィニッシュ photo:CorVos
マテイ・モホリッチ(スロベニア)も第7ステージで落車し、リタイアを喫したマテイ・モホリッチ(スロベニア)も第7ステージで落車し、リタイアを喫した photo:CorVosあの事故のとき、ランダの直ぐそばに居たんです。僕らがランダを連れて4人で走っていたときでした。僕らは避けれたんですが、でもあればかりはどうしようもない。でも主催者がやらなきゃならないことはあると思います。道路事情など、レースが昔とは違ってきていることはあるから、20年前の道路と比べても造りが変わってきているし、グランツールでは3km以内、3秒ルール(救済措置)とかも考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います」。

エースを失ったチームは総合上位とステージ優勝狙いに戦略を変えた。第9ステージで6位フィニッシュしたダミアーノ・カルーゾは46秒遅れの総合7位に。ランダに代わったエースはこの先、総合順位をどこまで上げられるだろうか?

ベルナルに先行を許したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)。同グループにダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らが続くばベルナルに先行を許したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)。同グループにダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らが続くば photo:CorVos
「ダミアーノがミラノで表彰台に上れる可能性は十分あると思います。これまでの彼の走り、登りでの今の好調ぶり、最終日が得意なタイムトライアルであることなど、かなり表彰台の可能性は高いと思います。やはり彼には経験があるので、それが強み。今、若い選手が上位に多くいるじゃないですか。彼らがどこかでミスをすれば順位を落とします。グランツールの経験が豊富なダミアーノならうまくやれる。この先ゾンコランも待っている。初めてグランツールに出る選手と、何度も経験している選手の差が出るときが必ずあると思っているので、そういう意味で彼は強いと思います」。

カルーゾのために集団内で位置取りする新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)カルーゾのために集団内で位置取りする新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
現状、ベルナルがマリアローザ。2位エヴェネプールが14秒差、3位のウラソフが22秒差。いずれも若者で、新世代のジロになると言われている。このジロでは誰が優勝すると思っている?

「もちろんダミアーノ(カルーゾ)です! (笑)。ある選手はこのジロが復帰戦だったり、ミスしている面も感じます。バーレーンはミスをしていない。2人減ったけど、経験ある選手が6人居るので、それをダミアーノに託すので、いい結果を出して欲しいですね」。

若い世代がリードするジロ。何かいつもと違う雰囲気はあるのだろうか?

「まだ違いというほどのものは感じないですね。まだ上位陣も皆がタイム差が少なくて、近い位置に居る。まだ1週目だから集団の中で自分たちの居場所は決まっていなくて、リーダーチームが引いて、総合上位チームが続く。それが日替わりで順番が変わっているので、もうちょっとタイム差がついて位置が固定されてくれば雰囲気も違ってくるでしょう。まだガチャガチャしていることがあるし。僕にとっては今のところいつもどおりのジロかな、と感じています」。

現在山岳賞3位につけるジーノ・マーダーの山岳ジャージ獲得は狙うのだろうか? マーダーは44pt、首位のジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン)は51ptで、その差は7ptだ。

第6ステージ  独走でフィニッシュするジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)第6ステージ  独走でフィニッシュするジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:LaPresse
「あくまで狙うのはカルーゾの総合と(誰かチームメイトの)ステージ優勝なので、山岳賞は位置づけとしては重要ではないですね。山岳ジャージは1日逃げれば穫れるので、そこで動いた人が獲るんです。7ポイント差は2級山岳ひとつでひっくり返る。山岳ポイントが多い日に動けばいいんです」。

新城自身が自分のステージ勝利に向けて動くチャンスや意思はあるのだろうか?

「無いですね!」と新城は笑って一言。「もともとの役割はランダを守る役割だったんです。今はチームにも『逃げに乗りたいステージはあるか?』とも聞かれているけど、4級山岳で逃げが決まった日も、『逃げていい』とは言われていたけど、僕が逃げても最後に勝負ができるかというとできなかったので、逃げなかった。勝てるチャンスが少ないのなら、カルーゾのアシストについていたほうがいい。100%ゴールスプリントになるステージなら集団内でカルーゾのために働くのがいい。

ランダが集団に居たときは100%リーダーのために働いていた。今はその日によるけど、80%はリーダーの側に居るというのが僕の仕事です。自分のリザルトのために走る可能性は無いです。20人の逃げならチームから誰かが入らなくてはいけないので、僕が入ることもある。でも登りで行かれると僕は入れない。であればリーダー(カルーゾ)の周辺で仕事をするのがいいです」。

第2ステージ  和やかに平坦ステージの前半をこなす新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)第2ステージ 和やかに平坦ステージの前半をこなす新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
「チームとしては山岳ポイントが多くあるステージで動く。平坦ステージはタイムを失わないこと、そして頂上フィニッシュで遅れないことが重要で、トラブル無くやり過ごせるように走る。ジロ2週目はタイムを失わない走り、3週目は山岳がとてつもなくキツいので、そこでどうなるか。タイムを多少失っても最終日の30kmのTTがあるので、そこではカルーゾは強いですから」。

アシストに徹する意思が固い新城。第11ステージからは未舗装路、そして本格的な山岳や難しいステージが続々と待っている。

「明日のステージのグラベルの試走だけはしてきました。クリンチャーやチューブレス、マテリアルを選ぶ必要もあるから。未舗装路は正直好きじゃないけど、2010年のジロでも走っているんです。そのときは雨降っていたし、最初のセクターで遅れています。でも今回はダミアーノのためにできるかぎり集団に残らなければいけない。できることをするまでです」。

「ジロはこれから始まります。平坦はあと1ステージしか無い。山岳で誰かが遅れるかもしれないし、かっ飛んでいくかもしれない。アグレッシブに動くし、僕も暑くなれば調子も上がってくる。引き続き応援よろしくお願いします」。

出走サインに現れた新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス)出走サインに現れた新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
最後に、東京五輪について。日本のワクチン接種の遅れや検査体制の無さ、アラフィリップの不参加宣言。開催中止を求める世論も。選手たちはどう考えている?

「もちろん日本人だから選手たちから聞かれることは多くあります。でも話せることはとくに無いですね。6月にIOCが決めることと聞いているから、それしか言えない。そこは誰もが知ってる情報と同じなので、聞かれても『6月に決まるよ』としか言えないですね。

edit:Makoto AYANO(共同インタビューより)


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