カウベルグのアタックで遅れるも、フィニッシュ前で先行する二人を捉えてスプリント勝利。得意の勝ちパターンに持ち込んだマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がアムステルゴールドレースを初めて制した。



UCIウィメンズワールドツアーリーダーのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)UCIウィメンズワールドツアーリーダーのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) (c)CorVosスタートを待つマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)スタートを待つマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos

レース前半から激しくアタックが掛かり続けたレース前半から激しくアタックが掛かり続けた (c)CorVos
男子レースに先駆けて、まだ冷え込む午前中にスタートしたアムステルゴールド女子レース。3日後水曜日のフレーシュ・ワロンヌと、1週間後日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに先駆けて開催さえれるアルデンヌクラシックのオープニングレースだ。

コロナ禍による地域制限を受けつつ、2年ぶりの開催にこぎつけたレースの走行距離は116.3km。合計3箇所=グールヘンメルベルグ(全長1.4km/平均勾配4.6%)とベメレルベルグ(全長800m/平均勾配5.2%)、カウベルグ(全長800m/平均勾配7.4%)を含む14.9kmを1周回、そして16.9kmを6周回するため、登坂区間の合計は21箇所に及ぶ。男子レースとは異なり、最後はカウベルグを登り、2kmの平坦区間を走ってフィニッシュを目指すレイアウトだ。

UCIウィメンズワールドツアーリーダーのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)を筆頭とするトップ選手や、レースコースのすぐ付近に拠点を構える與那嶺恵理(チームティブコSVB)も揃ったアムステルゴールド女子レース。序盤から積極的に優勝候補たちがアタックを掛けるという、超活発な展開が繰り広げられた。

90km以上を残してシクロクロス世界王者のルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)を含む20名が先行90km以上を残してシクロクロス世界王者のルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)を含む20名が先行 (c)CorVos
早々に攻撃を加えるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス)早々に攻撃を加えるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス) (c)CorVos
不調に苦しんだ與那嶺恵理(チームティブコSVB)は途中リタイアに不調に苦しんだ與那嶺恵理(チームティブコSVB)は途中リタイアに (c)CorVos
フィニッシュまで90km以上を残したタイミングで、シクロクロス世界王者のルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)を含む20名が集団から飛び出し、序盤から逃げていた2名と合流。続いてメイン集団では2017年勝者であり、世界王者のアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス)が早くも集団を絞り込む。スタート前インタビューでコリン・リヴェラ(アメリカ、チームDSM)が予想した通りの「ダイナミックで、非常に厳しい展開」となっていった。

フランス王者オードリー・コルドンラゴ(トレック・セガフレード)が、ロンド・ファン・フラーンデレン覇者アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)が次々とアタックをかけて集団を絞り込んでいく。約20名が先行する中からグレース・ブラウン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)とパウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、リブレーシング)が抜け出したことで、一時的にレースは沈静化することとなった。

カウベルグの麓区間からアタックするアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)カウベルグの麓区間からアタックするアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) (c)CorVos
カウベルグ中腹でファンフルーテンを抜き去り先行するカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)カウベルグ中腹でファンフルーテンを抜き去り先行するカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) (c)CorVos
カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)とエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)が抜け出すも、ペースを落としてしまうカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)とエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)が抜け出すも、ペースを落としてしまう (c)CorVos
オセアニアTT選手権で勝利経験を持つブラウンはローイヤッカースを切り離して独走に持ち込んだが、優勝候補ばかりが揃った追走グループは呼吸を整え、残り2.5kmから始まる最終登坂カウベルグの麓でブラウンを視界に捉える。すると欧州チャンピオンジャージを着るファンフルーテンが渾身のロングスパートを繰り出した。

下ハンドルを握って駆け上がるファンフルーテンだったが、2019年覇者のカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)が追い抜き、唯一追従したロンゴボルギーニと共に頂上を通過する。間髪入れずに「調子は良かったし、カウベルグでは私が一番強かった」と言うロンゴボルギーニがニエウィアドマを突き放しにかかった。

しかし粘るニエウィアドマはロンゴボルギーニを捉えて合流。逃げ切りに十分なリードを得た二人だったが、ロンゴボルギーニが先頭交代を拒んだことでペースが落ち、残り400mを切って後続8名の合流をを許してしまう。こうして3時間のレースは10名によるスプリント勝負に持ち込まれた。

真っ先に加速したロンゴボルギーニは伸びず、その背後でスピードを乗せたフォスが右側から追い抜いていく。デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)の追い込みも届かず、得意の勝ちパターンに持ち込んだフォスが力強く両手を振り上げた。

小集団スプリントを制したマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)小集団スプリントを制したマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
初のアムステルゴールドレース制覇を遂げたマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)初のアムステルゴールドレース制覇を遂げたマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
フレーシュ・ワロンヌで過去5度勝利しながらも、アムステルとリエージュで勝てていなかったフォスが勝利。追い込んだフォレリングが2位、レースを動かしたファンフルーテンが3位。チャンスを活かしきれなかったロンゴボルギーニとニエウィアドマはそれぞれ8位と10位に沈んでいる。

「このホームレースがカレンダーに加わってから、ずっと勝ちたいと思っていた。過去に良い走りをできていたけれど、今年は本当に最高。ファンのいないレースは不思議な気持ちだったけれど、家で観戦してくれた人たちをハッピーにできたのならとても嬉しい。本当に楽しむことができたけれど、同時にとても厳しいレースだった」と言うフォス。ロードとMTB、シクロクロスで世界王者に輝き、ジロローザで通算3度の総合優勝と28回のステージ優勝に輝いている稀代の名選手が、また新たな戦績をキャリアに刻んでいる。

アムステルゴールドレース2021女子表彰台:3位ファンフルーテン、1位フォス、2位フォレリングアムステルゴールドレース2021女子表彰台:3位ファンフルーテン、1位フォス、2位フォレリング (c)CorVos
また、コンディションが上がらず苦しんでいた與那嶺は、今季初の途中リタイアに。「興奮してホームレースに臨みましたが、脚と身体が応えてくれませんでした。脚以上に心苦しい」と苦しい心境を語っている。次戦のフレーシュ・ワロンヌにも連続出場予定であり、全日本王者の復調に期待したい。
アムステルゴールドレース2021女子結果
1位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 3:00:20
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
3位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
4位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
5位 ソラヤ・パラディン(イタリア、リブレーシング)
6位 マビ・ガルシア(スペイン、アレBTCリュブリャナ)
7位 セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) 0:01
8位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)
9位 アシュリー・ムールマン(南アフリカ、SDワークス)
10位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 0:02
DNF 與那嶺恵理(チームティブコSVB)
text:So Isobe
photo:CorVos

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