トレックを代表するエンデュランスロードバイク「Domane(ドマーネ)」がフルモデルチェンジを果たした。パリ〜ルーベの覇者たちを支え続けてきた名門プラットフォームの久々の刷新であり、「ロードライドの根源」に回帰する高性能エンデュランスバイクに生まれ変わった。

デビューした新型Domane。IsoSpeedを廃し、現代の要求を満たしたエンデュランスロードとして生まれ変わった (c)トレック・ジャパン
「ロードライドよ、永遠に」をテーマに生まれ変わった新型Domane。そのサプライズと言えるのが、初代から10年以上にわたってDomaneのアイデンティティであり続けた振動吸収機構「IsoSpeed(アイソスピード)」の廃止だ。看板技術を惜しげもなく手放してまでトレックが目指したものとは何なのか。トレックが公開したホワイトペーパーをもとに、レースバイクでも、グラベルバイクでもなく、エンデュランスロードバイクたらんとする新型ドマーネの開発思想と技術的な中身を詳しくレポートする。
IsoSpeedはなぜ「過去のもの」になったのか

Trekパフォーマンス・リサーチラボで行われた「振動パワー」の計測 (c)トレック・ジャパン
初代Domaneが生まれたのは、700×25Cタイヤとナローリムが主流だった時代。当時のロードバイクは高い空気圧での運用が前提であり、路面からの突き上げをいかに殺すかが大きな課題だった。その解決策として開発されたのが、シートチューブとトップチューブを分離し、シートマストをしならせることで振動を吸収するIsoSpeed。IsoSpeedを搭載したDomaneはファビアン・カンチェラーラやリジー・ダイグナンによってパリ〜ルーベを制し、さらにエアロロードである当時のMadoneにも波及するなど、トレックのアイデンティティとして普及したテクノロジーだった。
しかし、2012年以降の油圧ディスクブレーキ化とワイドタイヤ化によって、ロードバイクを取り巻く前提条件は大きく変わった。トレックいわく、IsoSpeedは「25mmタイヤでパリ~ルーベを勝つための"解決策"」であり、40mmタイヤまで選べるようになった現在においては「余分な重量」でしかなくなったという。事実、顧客調査でユーザーが求めていたのは「より軽いバイク」「より手頃な価格帯」「よりアップライトなポジション」であり、IsoSpeedそのものへの関心は薄かったとトレックは明かしている。

IsoSpeedではなくシートポスト、フレーム、タイヤの3要素で衝撃を吸収し、さらにロードバイクにも止められる性能をも両立するよう研究が重ねられた (c)トレック・ジャパン
Gen5開発チームが掲げた目標は大きく3つ。「荒れた路面でライダーに伝わる振動パワーを抑えること」、「ペダリング時のフレーム剛性を高めること」、「車体重量を削減すること」。IsoSpeedという単一の可動機構に頼るのではなく、フレーム全体のカーボン積層設計とシートポスト形状の見直しによってこれらを同時に成立させたのが、Gen5の核心だ。
新採用の27.2mm丸型シートポストは、外形こそオーソドックスな丸断面ながら、内部の断面形状を最適化することで前後方向にショックを吸収し、横方向には高い剛性を保つという相反する特性を両立させている。フレーム本体、垂直方向の振動吸収性とペダリング剛性を同時に引き上げるレイアップに刷新。ボトムブラケット周辺の剛性チューニングは、レーシングバイク「Madone Gen8」と先代ドマーネのちょうど中間に位置づけられるという。
剛性+6%、重量-305gという実測データ

ボトムブラケットおよびサドル〜仙骨変位の3Dモーションキャプチャー・ラップアンサンブル平均 (c)トレック・ジャパン
机上の理屈だけでなく、トレックは自社パフォーマンス・リサーチラボでの実測データを公開している。
ドイツ「Tour Magazine」の剛性テストでは、Gen5のペダリング剛性はGen4比で6%向上。Madoneほどではないものの、歴代ドマーネの中では明確に高い数値を記録した。一方、振動吸収性については、力を感知するセンサー内蔵のサドルとハンドルバーを実車に装着し、加速度計とあわせて時速7~20マイル(約11〜32km/h)の速度域でライダーに伝わる「振動パワー」を測定。25mmタイヤ・高圧設定という条件下ではIsoSpeed搭載のGen4に対しGen5(IsoSpeedなし)の振動伝達が19%高くなったものの、Gen5本来の使用条件である35mmタイヤ・低圧設定であれば、その差は「5%以内」に収まることが確認されたという。
さらに赤外線モーションキャプチャーカメラを使い、ボトムブラケット周辺とサドル〜仙骨間の動きを解析したところ、IsoSpeedの有無による挙動の差はほとんど検出されなかったとしている。市販前には量産型のGen5で400時間/約9,700kmにおよぶ実走テストも積み重ねられた。

フレーム+フォーク合計でGen4比305gの軽量化。軽やかな走りを実現する (c)トレック・ジャパン
重量面の成果もわかりやすい。SLRフレーム(サイズML、無塗装)は835g、フォークは367gに収まり、フレーム+フォーク合計でGen4比305gの軽量化。IsoSpeedユニットという可動部品を排したことが軽量化に直結した格好だ。最上位完成車「SLR 9 AXS 1x」は完成車重量6.63kgとエンデュランスバイクとしては驚異的な数値を叩き出すに至った。
もうひとつの大きな変更点がタイヤ対応幅の拡大だ。SLR 9 AXS 1xを除く全グレードでBontrager「Kwaremont」35mmタイヤを標準装備(エントリーのSL4のみ32mm)。フレームは最大40mmタイヤまで許容する設計となり、先代の38mmからさらに拡大。32mmから35mmへのサイズアップに伴い、トレックはタイヤ内部の容積が約10%増える一方、ケーシングにかかる張力を一定に保つために推奨空気圧を約10%引き下げることを推奨。ウルフトゥースの空気圧計算機をベースにした指針も示されている。なお35mm化による空力面のペナルティは時速20マイルあたり0.9W増とごくわずかで、転がり抵抗の低減による1.5Wのゲインがそれを上回るとトレックは説明しており、「快適性のためにスピードを犠牲にしていない」というのが同社の主張だ。

ハンドルはレバー位置を従来比で20mm引き上げ、ドロップ部分には40mmのフレアを追加 (c)トレック・ジャパン
Gen4で目玉機能のひとつだったフレーム内蔵ストレージ「IsoSpeed」ならぬダウンチューブ内収納スペースも、Gen5では思い切って廃止された。代わりにトップチューブバッグ、フレームバッグ、フェンダー(泥除け)といった外付けマウント類を充実させ、荷物の積み方をライダーの選択に委ねる方向へと舵を切っている。
コックピット周りも変更が大きい。新採用のボントレガー製ライザーハンドルはレバー位置を従来比で20mm引き上げ、ドロップ部分には40mmのフレアを追加。バックスウィープ形状も相まって、よりリラックスしたポジションを取りやすくなっている。クランク長もサイズ別に最適化され、XS/Sは160mm、M/MLは165mm、L/XLは170mmを採用。近年のショートクランク志向にも対応。規格面では、ボトムブラケットにT47、リアディレイラーにSRAM UDHダイレクトマウントを採用し、フロントディレイラー台座は着脱式で1x化にも対応する。
グレード展開/価格
Gen5は最上位「SLR」(900シリーズOCLVカーボン)と、よりコストパフォーマンスに優れる「SL」(500シリーズOCLVカーボン)の2グレード構成。XS~XLをカバーするサイズ展開となる。

シマノ Tiagra組みの完成車、Domane SL4(339,000円) (c)トレック・ジャパン 
SLグレードの最上級完成車である「Domane SL7 AXS 1x(880,000円)」 (c)トレック・ジャパン

SLRグレードのボトム完成車である「Domane SLR7(1,100,000円)」 (c)トレック・ジャパン
SLグレードの中で最も安価なプライスタグを付けるのはシマノ Tiagra組みの「SL4(339,000円)」。続いてシマノ メカニカル105組の「SL5(379,000円)」、スラム Rival AXS組みの「SL6 AXS(630,000円)」、さらにスラム Force XPLR AXS E1組みのワンバイ完成車「SL7 AXS 1x(880,000円)」という設定。
SLRグレードはシマノUltegra組みの「SLR7(1,100,000円)」とスラムForce AXS組の「SLR7 AXS(1,450,000円)」、シマノDura-Ace組みの「SLR9(1,700,000円)」、スラム RED AXS E1組みの「SLR9 AXS(1,850,000円)」、さらにスラム RED AXS E1 XPLR組みのワンバイ完成車「SLR9 AXS 1×13(1,780,000円)」と豊富なバリエーションが揃う。エントリー層からベテラン、軽さを求める方まで幅広いユーザーにマッチするはずだ。

Dura-Ace組みの完成車「Domane SLR9(1,700,000円)」 (c)トレック・ジャパン
トレック Domane SLR
スラム Red AXS 2x12:1,850,000円(税込)
スラム Red AXS XPLR 1x13:1,780,000円(税込)
スラム Force AXS 2x12:1,450,000円(税込)
シマノ Dura-Ace 2x12:1,700,000円(税込)
シマノ Ultegra 2x12:1,100,000円(税込)
トレック Domane SL
スラム Force AXS XPLR 1x13:880,000円(税込)
スラム Rival AXS 2x12:630,000円(税込)
シマノ 105機械式 2x12:379,000円(税込)
シマノ Tiagra 2x11:339,000円(税込)

「ロードライドよ、永遠に」をテーマに生まれ変わった新型Domane。そのサプライズと言えるのが、初代から10年以上にわたってDomaneのアイデンティティであり続けた振動吸収機構「IsoSpeed(アイソスピード)」の廃止だ。看板技術を惜しげもなく手放してまでトレックが目指したものとは何なのか。トレックが公開したホワイトペーパーをもとに、レースバイクでも、グラベルバイクでもなく、エンデュランスロードバイクたらんとする新型ドマーネの開発思想と技術的な中身を詳しくレポートする。
IsoSpeedはなぜ「過去のもの」になったのか

初代Domaneが生まれたのは、700×25Cタイヤとナローリムが主流だった時代。当時のロードバイクは高い空気圧での運用が前提であり、路面からの突き上げをいかに殺すかが大きな課題だった。その解決策として開発されたのが、シートチューブとトップチューブを分離し、シートマストをしならせることで振動を吸収するIsoSpeed。IsoSpeedを搭載したDomaneはファビアン・カンチェラーラやリジー・ダイグナンによってパリ〜ルーベを制し、さらにエアロロードである当時のMadoneにも波及するなど、トレックのアイデンティティとして普及したテクノロジーだった。
しかし、2012年以降の油圧ディスクブレーキ化とワイドタイヤ化によって、ロードバイクを取り巻く前提条件は大きく変わった。トレックいわく、IsoSpeedは「25mmタイヤでパリ~ルーベを勝つための"解決策"」であり、40mmタイヤまで選べるようになった現在においては「余分な重量」でしかなくなったという。事実、顧客調査でユーザーが求めていたのは「より軽いバイク」「より手頃な価格帯」「よりアップライトなポジション」であり、IsoSpeedそのものへの関心は薄かったとトレックは明かしている。

Gen5開発チームが掲げた目標は大きく3つ。「荒れた路面でライダーに伝わる振動パワーを抑えること」、「ペダリング時のフレーム剛性を高めること」、「車体重量を削減すること」。IsoSpeedという単一の可動機構に頼るのではなく、フレーム全体のカーボン積層設計とシートポスト形状の見直しによってこれらを同時に成立させたのが、Gen5の核心だ。
新採用の27.2mm丸型シートポストは、外形こそオーソドックスな丸断面ながら、内部の断面形状を最適化することで前後方向にショックを吸収し、横方向には高い剛性を保つという相反する特性を両立させている。フレーム本体、垂直方向の振動吸収性とペダリング剛性を同時に引き上げるレイアップに刷新。ボトムブラケット周辺の剛性チューニングは、レーシングバイク「Madone Gen8」と先代ドマーネのちょうど中間に位置づけられるという。
剛性+6%、重量-305gという実測データ

机上の理屈だけでなく、トレックは自社パフォーマンス・リサーチラボでの実測データを公開している。
ドイツ「Tour Magazine」の剛性テストでは、Gen5のペダリング剛性はGen4比で6%向上。Madoneほどではないものの、歴代ドマーネの中では明確に高い数値を記録した。一方、振動吸収性については、力を感知するセンサー内蔵のサドルとハンドルバーを実車に装着し、加速度計とあわせて時速7~20マイル(約11〜32km/h)の速度域でライダーに伝わる「振動パワー」を測定。25mmタイヤ・高圧設定という条件下ではIsoSpeed搭載のGen4に対しGen5(IsoSpeedなし)の振動伝達が19%高くなったものの、Gen5本来の使用条件である35mmタイヤ・低圧設定であれば、その差は「5%以内」に収まることが確認されたという。
さらに赤外線モーションキャプチャーカメラを使い、ボトムブラケット周辺とサドル〜仙骨間の動きを解析したところ、IsoSpeedの有無による挙動の差はほとんど検出されなかったとしている。市販前には量産型のGen5で400時間/約9,700kmにおよぶ実走テストも積み重ねられた。

重量面の成果もわかりやすい。SLRフレーム(サイズML、無塗装)は835g、フォークは367gに収まり、フレーム+フォーク合計でGen4比305gの軽量化。IsoSpeedユニットという可動部品を排したことが軽量化に直結した格好だ。最上位完成車「SLR 9 AXS 1x」は完成車重量6.63kgとエンデュランスバイクとしては驚異的な数値を叩き出すに至った。
もうひとつの大きな変更点がタイヤ対応幅の拡大だ。SLR 9 AXS 1xを除く全グレードでBontrager「Kwaremont」35mmタイヤを標準装備(エントリーのSL4のみ32mm)。フレームは最大40mmタイヤまで許容する設計となり、先代の38mmからさらに拡大。32mmから35mmへのサイズアップに伴い、トレックはタイヤ内部の容積が約10%増える一方、ケーシングにかかる張力を一定に保つために推奨空気圧を約10%引き下げることを推奨。ウルフトゥースの空気圧計算機をベースにした指針も示されている。なお35mm化による空力面のペナルティは時速20マイルあたり0.9W増とごくわずかで、転がり抵抗の低減による1.5Wのゲインがそれを上回るとトレックは説明しており、「快適性のためにスピードを犠牲にしていない」というのが同社の主張だ。

Gen4で目玉機能のひとつだったフレーム内蔵ストレージ「IsoSpeed」ならぬダウンチューブ内収納スペースも、Gen5では思い切って廃止された。代わりにトップチューブバッグ、フレームバッグ、フェンダー(泥除け)といった外付けマウント類を充実させ、荷物の積み方をライダーの選択に委ねる方向へと舵を切っている。
コックピット周りも変更が大きい。新採用のボントレガー製ライザーハンドルはレバー位置を従来比で20mm引き上げ、ドロップ部分には40mmのフレアを追加。バックスウィープ形状も相まって、よりリラックスしたポジションを取りやすくなっている。クランク長もサイズ別に最適化され、XS/Sは160mm、M/MLは165mm、L/XLは170mmを採用。近年のショートクランク志向にも対応。規格面では、ボトムブラケットにT47、リアディレイラーにSRAM UDHダイレクトマウントを採用し、フロントディレイラー台座は着脱式で1x化にも対応する。
グレード展開/価格
Gen5は最上位「SLR」(900シリーズOCLVカーボン)と、よりコストパフォーマンスに優れる「SL」(500シリーズOCLVカーボン)の2グレード構成。XS~XLをカバーするサイズ展開となる。



SLグレードの中で最も安価なプライスタグを付けるのはシマノ Tiagra組みの「SL4(339,000円)」。続いてシマノ メカニカル105組の「SL5(379,000円)」、スラム Rival AXS組みの「SL6 AXS(630,000円)」、さらにスラム Force XPLR AXS E1組みのワンバイ完成車「SL7 AXS 1x(880,000円)」という設定。
SLRグレードはシマノUltegra組みの「SLR7(1,100,000円)」とスラムForce AXS組の「SLR7 AXS(1,450,000円)」、シマノDura-Ace組みの「SLR9(1,700,000円)」、スラム RED AXS E1組みの「SLR9 AXS(1,850,000円)」、さらにスラム RED AXS E1 XPLR組みのワンバイ完成車「SLR9 AXS 1×13(1,780,000円)」と豊富なバリエーションが揃う。エントリー層からベテラン、軽さを求める方まで幅広いユーザーにマッチするはずだ。

トレック Domane SLR
スラム Red AXS 2x12:1,850,000円(税込)
スラム Red AXS XPLR 1x13:1,780,000円(税込)
スラム Force AXS 2x12:1,450,000円(税込)
シマノ Dura-Ace 2x12:1,700,000円(税込)
シマノ Ultegra 2x12:1,100,000円(税込)
トレック Domane SL
スラム Force AXS XPLR 1x13:880,000円(税込)
スラム Rival AXS 2x12:630,000円(税込)
シマノ 105機械式 2x12:379,000円(税込)
シマノ Tiagra 2x11:339,000円(税込)
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