2010/06/08(火) - 07:19
ツール・ド・シンカラ最終第6ステージは美しいシンカラ湖の周りをぐるっと巡るコース。最後のステージまで勝利を諦めなかった愛三レーシングの選手たちが漏らした言葉とは。そして発展途上のアジアのレースに感じたことは?
ツール・ド・シンカラ最終日である第6ステージは、レース名にもなっている風光明媚な“シンカラ湖”を1周半する大会最長となる140kmのフラットステージ。
「なんとしてでも逃げたい!」という愛三工業レーシングチームは積極的にアタックを試みるも、この日も決定的なものとならず、最後はスプリントで、UCIアジアツアーのポイントリーダーであるソハラビ・メディ(イラン・タブリーズ・ペトロケミカル)が大会最後のゴール勝負を制した。
愛三チームの総合最高順位は、エースである鈴木謙一の12位。UCIポイント圏内である総合8位までに入ることができなかった。アジアツアーに参戦する意義として、世界選手権などの出場選手数を左右させる“UCIポイント獲得すること”を目標の1つにしているチームにとっては惜しい結果となった。しかし、レース内容については「悪くなかった」と選手たちは口を揃える。
表彰台は逃したものの、各ステージでチームの誰かがステージ上位に入賞し、綾部勇成の山岳賞2位など、チームの存在をアジアに大きくアピールすることができた。イランの徹底マークに悩まされたことも、チームの力が認められている証拠とも言える。
レース後、日々汗だくになってチームを追いかけた私に「勝てなくてすみません」という言葉を選手からもらった。プロであるからには、勝ちを貪欲に目指すべきだと私は感じている。だから、どんなに相手が強くても、目指すものは勝利のみ。
しかし、彼らが毎日炎天下の中で精一杯走っていたのを近くで見てきたため、勝てなかったことに対してマイナスな感情をもっていなかった。しかし、レース内容はよかったと評価しながらも、勝てなかったことを申し訳ないと感じる選手たちの姿が気持ちよかった。この悔しさが次に繋がれば、ここでの経験は“勝ち”にも勝るものだ。
「日本のレースだけ走っていても、その先には何もないんです」。大会中に話した別府の言葉が心に響いた。自転車ロードレースの本場はヨーロッパであることに間違いはない。ただ、日本のチームが突然ヨーロッパに行ってもプロとして戦うことは厳しい。資金的にも大きな問題があるだろう。そのため愛三チームは、自分たちの力で挑戦できるUCIアジアツアーという選択をし、その先には世界を見据えて挑戦を続けている。
アジアといえど、UCIレースには国内チームよりも確実に強い海外チームが参戦するため、高いレベルでのレースができる。そこで目立った動きをすれば、本場ヨーロッパのレースやチームから招待される可能性もある。まだ歴史の浅いアジアのレースとはいえ、UCIレースである以上、確実に世界に繋がっているのだ。
選手たちの高い意志と、地元の人たちの質素ながら温かいもてなしが共存するツール・ド・シンカラをとても魅力的に感じた。街の観光を兼ねて、街から次の街までラインレースをするというスタイルは、ヨーロッパのレースの本質に通じるものがある。
まだ発展途上なレースであるが、アジアの多くのチームもまだヨーロッパのチームと比較すれば発展途上といえるだろう。お互いが上を目指そうとする向上心が、レースの強烈なパワーを生んでいるように感じる。
そして愛三チームはスマトラ沖地震復興のためにチームは賞金の一部を寄付した。最後の表彰式が終わったあと壇上に上り、チームキャプテンの綾部がインドネシア語で挨拶をし、最後にチームみんなで大きな声で叫ぶ。
「Sumatra barat rancabana(西スマトラ、最高)!!!」
日に焼けた肌に笑顔が最高に似合っていた。
現地に残るスマトラ沖地震の爪痕
text&photo:Sonoko Tanaka
ツール・ド・シンカラ最終日である第6ステージは、レース名にもなっている風光明媚な“シンカラ湖”を1周半する大会最長となる140kmのフラットステージ。
「なんとしてでも逃げたい!」という愛三工業レーシングチームは積極的にアタックを試みるも、この日も決定的なものとならず、最後はスプリントで、UCIアジアツアーのポイントリーダーであるソハラビ・メディ(イラン・タブリーズ・ペトロケミカル)が大会最後のゴール勝負を制した。
愛三チームの総合最高順位は、エースである鈴木謙一の12位。UCIポイント圏内である総合8位までに入ることができなかった。アジアツアーに参戦する意義として、世界選手権などの出場選手数を左右させる“UCIポイント獲得すること”を目標の1つにしているチームにとっては惜しい結果となった。しかし、レース内容については「悪くなかった」と選手たちは口を揃える。
表彰台は逃したものの、各ステージでチームの誰かがステージ上位に入賞し、綾部勇成の山岳賞2位など、チームの存在をアジアに大きくアピールすることができた。イランの徹底マークに悩まされたことも、チームの力が認められている証拠とも言える。
レース後、日々汗だくになってチームを追いかけた私に「勝てなくてすみません」という言葉を選手からもらった。プロであるからには、勝ちを貪欲に目指すべきだと私は感じている。だから、どんなに相手が強くても、目指すものは勝利のみ。
しかし、彼らが毎日炎天下の中で精一杯走っていたのを近くで見てきたため、勝てなかったことに対してマイナスな感情をもっていなかった。しかし、レース内容はよかったと評価しながらも、勝てなかったことを申し訳ないと感じる選手たちの姿が気持ちよかった。この悔しさが次に繋がれば、ここでの経験は“勝ち”にも勝るものだ。
「日本のレースだけ走っていても、その先には何もないんです」。大会中に話した別府の言葉が心に響いた。自転車ロードレースの本場はヨーロッパであることに間違いはない。ただ、日本のチームが突然ヨーロッパに行ってもプロとして戦うことは厳しい。資金的にも大きな問題があるだろう。そのため愛三チームは、自分たちの力で挑戦できるUCIアジアツアーという選択をし、その先には世界を見据えて挑戦を続けている。
アジアといえど、UCIレースには国内チームよりも確実に強い海外チームが参戦するため、高いレベルでのレースができる。そこで目立った動きをすれば、本場ヨーロッパのレースやチームから招待される可能性もある。まだ歴史の浅いアジアのレースとはいえ、UCIレースである以上、確実に世界に繋がっているのだ。
選手たちの高い意志と、地元の人たちの質素ながら温かいもてなしが共存するツール・ド・シンカラをとても魅力的に感じた。街の観光を兼ねて、街から次の街までラインレースをするというスタイルは、ヨーロッパのレースの本質に通じるものがある。
まだ発展途上なレースであるが、アジアの多くのチームもまだヨーロッパのチームと比較すれば発展途上といえるだろう。お互いが上を目指そうとする向上心が、レースの強烈なパワーを生んでいるように感じる。
そして愛三チームはスマトラ沖地震復興のためにチームは賞金の一部を寄付した。最後の表彰式が終わったあと壇上に上り、チームキャプテンの綾部がインドネシア語で挨拶をし、最後にチームみんなで大きな声で叫ぶ。
「Sumatra barat rancabana(西スマトラ、最高)!!!」
日に焼けた肌に笑顔が最高に似合っていた。
現地に残るスマトラ沖地震の爪痕
text&photo:Sonoko Tanaka
フォトギャラリー