2021/03/21(日) - 13:25
2021シーズンから愛三工業レーシングをサポートするバイクブランドのフジから、軽量オールラウンドレーサーのフラッグシップであるSL1.1 Discをピックアップ。オーソドックスなフレームのレーシングバイクをインプレッションする。
1899年に日本で創業し、電灯の輸入販売を手掛けていた日米商会という会社にルーツを持つ、バイクブランドのフジ。自転車のプロデュースに軸足を移した後はアメリカでの高い人気を誇り、ロードバイクシーンを牽引するブランドへと成長した。
フジは1980年代後半からレースに積極的に参加し、様々なチームをサポートし続けてきた。近年ではフットオン・セルベット、ネットアップ・エンデューラ、カハルーラルなどがフジのバイクを使用していたのは記憶に新しい。日本国内では2018と2019年シーズンにチーム右京、2021年シーズンから愛三工業レーシングがフジのバイクでレースに臨む。
現在のレーシングバイクラインアップの中心的な存在が"SL"シリーズだ。「並外れた剛性、優れたライドフィールとハンドリング性能を備えた世界最軽量バイクを作る」というコンセプトを基に開発され、グランツールで活躍したオールラウンドバイク"ALTAMIRA"。その名車を超えた軽量性を求めて研究開発された1台だ。2016年にデビューした初代はフレーム重量695gを実現し、軽量バイクと呼ぶのにふさわしいマシンが生み出された。
SLシリーズの軽量性に貢献しているのは、C15 ハイモジュラスカーボンという軽量・高剛性マテリアルと、High Compaction Molding(HC)と名付けられたフレーム製法である。HC製法とは、カーボン成形時にフレーム内部から高い圧力を掛ける技術のことであり、余分な樹脂を取り除けることに加え、チューブ内部にシワやヒダを作らず滑らかに成形を可能とするもの。樹脂やヒダなどを無くすことで、軽量かつ強いフレームを作り上げられるという。
SLの前身であるALTAMIRAから採用されている製法だが、SLシリーズでは使用箇所を増やすことで、ALTAMIRAを超える軽量性を実現している。加えて、フレームの各部位を繋ぐジョイント部分を削減も軽量化に貢献。8箇所のジョイント部分が存在していたALTAMIRAに対し、SLでは4箇所と半減させている。具体的には、接合箇所をチェーンステーとシートステー部のみに集約することで、高弾性カーボンの性能を最大限引き出すと共に軽量化に繋がる構造となった。
コンセプトの1つである剛性強化については、独自の八角形断面ダウンチューブがポイント。ダウンチューブの平面部分やトップチューブ、シートチューブ、フォークの平らな部分には超高張力カーボンシートを張り合わせることで、各チューブ側面の剛性を最大限に高めている。BBはPF30を採用し、BB周りの造形をビッグボリュームとし剛性を確保し、パワー伝達性を向上させている。
ALTAMIRAから継承されている楕円断面の極細シートステーは軽量なだけでなく、荒れた路面での追従能力にも長けている。その柔軟性による高い振動吸収性もこのSLシリーズの特徴だ。フォークもHC製法を取り入れて高い剛性と軽量性を目指しつつ、フォークブレード内部にリブ(隔壁)を設けて剛性向上を狙う設計が採用されている。
また、2種類のフォークオフセットと3種類のヘッドアングルを組み合わせることで、全てのサイズにおいて最適化されたトレイル値の範囲内となるように設計されている。更に、男性や女性、体格差などの要素による出力の違いをシミュレーションすることで得たデータを基にして、全てのフレームサイズに異なるカーボンレイヤリングとチューブ径を採用することにより、サイズが異なったとしても同じ乗り味となるように調整されていることも特徴だ。
チェーンキャッチャーやチェーンステープロテクターは標準装備され、メカニカルトラブルによるフレームへの傷やダメージを最小限に抑えられる。また、アウター受けやケーブルハンガーなどのスモールパーツにも軽量素材を用いるなど、1gの無駄をも省く徹底的な軽量化が行われている一台だ。
そして、2019年に満を持して、SLシリーズのディスクブレーキ仕様車"SL1.1 DISC"が登場した。ディスクブレーキへのモデルチェンジによるスルーアクスル化に伴い、基本的なフレームの形状はそのまま、フォークやリアエンド周りがディスクブレーキ仕様に変更となっている。
完成車の用意はなく、フレームセット販売のみとなる。価格は23万円(税抜)でフラッグシップ軽量クライミングバイクながら価格は抑えられている。重量はフレームとフォークセットで1.3kg。今回のインプレッションでは、コンポーネントは11速のスラム FORCE eTap、ホイールはオーヴァルの23mmのローハイトアルミニウムホイール「723 DISC」をアセンブルしたバイクを使用した。それではインプレッションをしていこう。
― インプレッション
「ダンシングの軽さが光るヒルクライムバイク」藤野智一(なるしまフレンド)
踏んだ感じがマイルドで硬すぎない、そんなフジ SL1.1 DISCは自分に合っている気がしました。昨今、どのバイクにもエアロ要素が取り入れられ、各チューブのボリュームが増えていく傾向にありますが、このバイクはトラディショナルなシルエットを保っていますよね。このデザインも、素直さや扱いやすさの大きな要因となっているのでしょう。
見た目からも想像できるようにヒルクライムでこそ輝くバイクですが、ダンシングでの振りやすさはピカイチです。ストレートフォークでも先端が少しベントしているおかげで左右に振っていても安定するので、とてもリズムを取りやすくてダンシングがしやすい。また、無理にライダーがリズムを作っていく必要が無いので、ダンシングを続けても上半身へのダメージを減らすことができそうです。
登りでペダルを踏み込んだ時にフレームが撓ってから戻るようなウィップ感があって、その時に後ろから押し返される感じがありました。テストライドのコースにはダンシングをして登るような激坂があるんですが、軽めのギアで踏み込んで行ったら、最後までシッティングで行けました。
SL1.1 DISCのジオメトリーを見るとチェーンステーが短めの410mmですね。ここが短いとペダリングに対してフレームがリニアに反応してくれるので、登りの印象の良さに繋がっているのかもしれません。その代わりですが、あまり太いタイヤを履けるような設計にはされていないですね。完全にレースを想定した一台なのだと思います。
実際のレースでは斜度が緩む場所でこそ踏まないといけない。その想定をしながらテストをしてみたんですけど、登りでシフトアップしながら加速して行く感覚はスムーズでした。登りの軽快感が好印象だったので、体重が軽いライダーにとても合うと思います。今年からサポートを受ける愛三工業レーシングの軽量な選手たちの活躍も期待できますね。
軽量バイクの形状の特徴として、真円に近いチューブ断面を採用したバイクが多いと思います。真円に近ければ近いほど、剛性を保ちながら軽量にできるのですが、エアロに関しては目を瞑らないといけません。SL1.1も例に漏れず、平地の高速巡航は苦手だと思います。
ただ平地の直線で40km/hを超えたところから、アウタートップに近い所でグッと踏んだ時はしっかり加速をしてくれます。また、低速域からの加速がとても好印象でした。また、登りで使用するような軽いギアと高めのケイデンスの組み合わせのスプリントは、重量を活かした加速感があり、軽快に進んでくれました。
エアロロードに比べると、ハンドリングが機敏な感じがします。手放しができなくて怖いとかではなく、どっしりと構える感じがなくて、全体的に軽やかに動くという印象です。また、コーナーリングでは自分が思い描いたラインをオーバーステアやアンダーステアがなく曲がることが出来ました。スラロームも試してみたのですが、小回りが利くのは確かです。テクニカルなコースでは心強い味方となるでしょう。
最近は専用ステムを搭載したバイクが多いですが、SL1.1はノーマルステムなので選手や一般のライダーでもカスタムやポジション変更をしやすくてとても良いと思います。あと、エアロロードではないので内装にしない選択肢はありなのかなと思います。
この性能のフレームが23万円であれば、非常にお買い得だと思います。SL1.1にマッチするホイールを挙げるとしたらマヴィックのキシリウム SLが良いでしょう。シャッキリとした高い反応性を体感出来て、重量もディスクブレーキ用ホイールとしては軽量な方ですから。更に、チューブレスタイヤで運用してあげると良さそうです。
どんな人にお勧め出来るかというと、レースやヒルクライムで頑張りたい人ですね。サイズ展開が豊富で、小柄なライダーも乗れるサイズが用意されているのは良い点です。レースはもちろんですが、エンデュランス系のライドでも使えるので、多くのライダーに合うと思います。
「細身フレームの先入観を覆す高い剛性を備えた1台」福本元(ペダリスト)
一言でSL1.1を表すならば「軽い」です。実は、SL1.1はリムブレーキもディスクブレーキも乗っていた時期のあるバイクなんです。どちらも軽量性が光るバイクというのは間違いないですね。
リムブレーキ版に乗っていた頃は、リアバックの剛性感に物足りなさを感じていましたが、ディスクブレーキとなってスルーアクスル化されたことで、リアの剛性が引き上げられた印象があります。具体的には急勾配の上り坂で力を掛けた時に、リムブレーキ版は反応がワンテンポ遅れるイメージを持っていたのですが、ディスクブレーキ版だと反応がダイレクトになったところに剛性アップを感じます。
他にもパワーを受け止めるBBシェル周りも、硬くないだろうという先入観を覆してくれる踏み心地です。ウィップ感がある訳でもなく、硬すぎるわけでもないんですよね。登りでも強いトルクを掛けて踏んでいくというよりは、ある程度高めのケイデンス、自分のリズムを保つようなペダリングが適しているような印象があります。
ダンシングも小気味良いリズムでしたが、ずっとダンシングしていたいと感じました。ただ、私は既に乗り慣れている背景があるので、それを差し引くと実際には左右に車体を振る時のリズムは早めです。登りでダンシングするときは急勾配になってからの方が、斜度の変化にペダリングを合わせやすいです。
フレームの剛性という面では、見た目だけでは、細身のチュービングなのでパワーを受け止めてくれるか不安に感じるかと思いますが、スプリンターのような方の力に対応できる剛性があり、気持ちよく乗れるのではないかと思っています。
軽量ヒルクライム系自転車というコンセプトで、剛性重視で自転車を選ぶ人は手を出さないジャンルかと思いますが、一度乗ってみるとイメージが変わる1台ではないでしょうか。
ただ剛性が高めということもあり、フロントフォークからの衝撃は伝わりやすいですね。リアはシートステーが内側にベンドする形状のおかげで、衝撃はカバーしてくれていますが、その辺はレーシングバイクということで割り切った方が良さそうです。
ロードレースにおいてはスピードの上げ下げが激しくあると思いますが、そういったシチュエーションは軽量性がアドバンテージになるでしょう。単独走では40km/hを超えると伸びやむ時が訪れますが、30〜35km/hほどでは非常に気持ちよくスピードを維持することができます。エアロを気にするのであれば、TRANSONICなども視野に入れてもいいかもしれませんね。自分一人でペースを刻みたい、登りでのタイムを縮めたい時にSLは活躍してくれると思います。
また、フレーム設計がオーソドックスなだけあり、装着するパーツでの乗り味の変化が反映されやすくなっています。ハンドルやステムでコーナリングでの挙動を好み仕上げても良さそうです。ホイールの性格も素直に走行性能に表れるでしょう。
今シーズンから愛三工業レーシングがSL1.1 DISCに乗るということですが、プロユースも耐えるスペックだと思いますね。そんなフラッグシップのフレームセットが23万円というのは破格です。シンプルでオーソドックスなロードバイクで、今のトレンドとは違う形状ですが、基本性能は網羅しているので、機材として使いたいという方にはオススメですね。機会があればぜひ乗ってもらいたいです。
フジ SL1.1 DISC
サイズ:46、49、52、54、56
カラー:Pearl Blue/Red Orange
BB規格:PF30
重量:1.3kg(フレーム/フォーク)
価格:230,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山)
東京都港区に構えるペダリスト ピナレロショップ青山の店長。中学生からロードバイクを楽しみ、高校に上がるとともに競技生活をスタート。実業団レースでE1まで昇格し、富士ヒルクライムでゴールドを獲得したレーサー。その経験を活かし、ショップではスクールなども担当。接客のモットーは「要望を実現できる方法を考える」こと。
ペダリスト ピナレロショップ青山
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
text:Michinari Takagi、Gakuto Fujiwara
photo:Kenta Onoguchi、Makoto AYANO
1899年に日本で創業し、電灯の輸入販売を手掛けていた日米商会という会社にルーツを持つ、バイクブランドのフジ。自転車のプロデュースに軸足を移した後はアメリカでの高い人気を誇り、ロードバイクシーンを牽引するブランドへと成長した。
フジは1980年代後半からレースに積極的に参加し、様々なチームをサポートし続けてきた。近年ではフットオン・セルベット、ネットアップ・エンデューラ、カハルーラルなどがフジのバイクを使用していたのは記憶に新しい。日本国内では2018と2019年シーズンにチーム右京、2021年シーズンから愛三工業レーシングがフジのバイクでレースに臨む。
現在のレーシングバイクラインアップの中心的な存在が"SL"シリーズだ。「並外れた剛性、優れたライドフィールとハンドリング性能を備えた世界最軽量バイクを作る」というコンセプトを基に開発され、グランツールで活躍したオールラウンドバイク"ALTAMIRA"。その名車を超えた軽量性を求めて研究開発された1台だ。2016年にデビューした初代はフレーム重量695gを実現し、軽量バイクと呼ぶのにふさわしいマシンが生み出された。
SLシリーズの軽量性に貢献しているのは、C15 ハイモジュラスカーボンという軽量・高剛性マテリアルと、High Compaction Molding(HC)と名付けられたフレーム製法である。HC製法とは、カーボン成形時にフレーム内部から高い圧力を掛ける技術のことであり、余分な樹脂を取り除けることに加え、チューブ内部にシワやヒダを作らず滑らかに成形を可能とするもの。樹脂やヒダなどを無くすことで、軽量かつ強いフレームを作り上げられるという。
SLの前身であるALTAMIRAから採用されている製法だが、SLシリーズでは使用箇所を増やすことで、ALTAMIRAを超える軽量性を実現している。加えて、フレームの各部位を繋ぐジョイント部分を削減も軽量化に貢献。8箇所のジョイント部分が存在していたALTAMIRAに対し、SLでは4箇所と半減させている。具体的には、接合箇所をチェーンステーとシートステー部のみに集約することで、高弾性カーボンの性能を最大限引き出すと共に軽量化に繋がる構造となった。
コンセプトの1つである剛性強化については、独自の八角形断面ダウンチューブがポイント。ダウンチューブの平面部分やトップチューブ、シートチューブ、フォークの平らな部分には超高張力カーボンシートを張り合わせることで、各チューブ側面の剛性を最大限に高めている。BBはPF30を採用し、BB周りの造形をビッグボリュームとし剛性を確保し、パワー伝達性を向上させている。
ALTAMIRAから継承されている楕円断面の極細シートステーは軽量なだけでなく、荒れた路面での追従能力にも長けている。その柔軟性による高い振動吸収性もこのSLシリーズの特徴だ。フォークもHC製法を取り入れて高い剛性と軽量性を目指しつつ、フォークブレード内部にリブ(隔壁)を設けて剛性向上を狙う設計が採用されている。
また、2種類のフォークオフセットと3種類のヘッドアングルを組み合わせることで、全てのサイズにおいて最適化されたトレイル値の範囲内となるように設計されている。更に、男性や女性、体格差などの要素による出力の違いをシミュレーションすることで得たデータを基にして、全てのフレームサイズに異なるカーボンレイヤリングとチューブ径を採用することにより、サイズが異なったとしても同じ乗り味となるように調整されていることも特徴だ。
チェーンキャッチャーやチェーンステープロテクターは標準装備され、メカニカルトラブルによるフレームへの傷やダメージを最小限に抑えられる。また、アウター受けやケーブルハンガーなどのスモールパーツにも軽量素材を用いるなど、1gの無駄をも省く徹底的な軽量化が行われている一台だ。
そして、2019年に満を持して、SLシリーズのディスクブレーキ仕様車"SL1.1 DISC"が登場した。ディスクブレーキへのモデルチェンジによるスルーアクスル化に伴い、基本的なフレームの形状はそのまま、フォークやリアエンド周りがディスクブレーキ仕様に変更となっている。
完成車の用意はなく、フレームセット販売のみとなる。価格は23万円(税抜)でフラッグシップ軽量クライミングバイクながら価格は抑えられている。重量はフレームとフォークセットで1.3kg。今回のインプレッションでは、コンポーネントは11速のスラム FORCE eTap、ホイールはオーヴァルの23mmのローハイトアルミニウムホイール「723 DISC」をアセンブルしたバイクを使用した。それではインプレッションをしていこう。
― インプレッション
「ダンシングの軽さが光るヒルクライムバイク」藤野智一(なるしまフレンド)
踏んだ感じがマイルドで硬すぎない、そんなフジ SL1.1 DISCは自分に合っている気がしました。昨今、どのバイクにもエアロ要素が取り入れられ、各チューブのボリュームが増えていく傾向にありますが、このバイクはトラディショナルなシルエットを保っていますよね。このデザインも、素直さや扱いやすさの大きな要因となっているのでしょう。
見た目からも想像できるようにヒルクライムでこそ輝くバイクですが、ダンシングでの振りやすさはピカイチです。ストレートフォークでも先端が少しベントしているおかげで左右に振っていても安定するので、とてもリズムを取りやすくてダンシングがしやすい。また、無理にライダーがリズムを作っていく必要が無いので、ダンシングを続けても上半身へのダメージを減らすことができそうです。
登りでペダルを踏み込んだ時にフレームが撓ってから戻るようなウィップ感があって、その時に後ろから押し返される感じがありました。テストライドのコースにはダンシングをして登るような激坂があるんですが、軽めのギアで踏み込んで行ったら、最後までシッティングで行けました。
SL1.1 DISCのジオメトリーを見るとチェーンステーが短めの410mmですね。ここが短いとペダリングに対してフレームがリニアに反応してくれるので、登りの印象の良さに繋がっているのかもしれません。その代わりですが、あまり太いタイヤを履けるような設計にはされていないですね。完全にレースを想定した一台なのだと思います。
実際のレースでは斜度が緩む場所でこそ踏まないといけない。その想定をしながらテストをしてみたんですけど、登りでシフトアップしながら加速して行く感覚はスムーズでした。登りの軽快感が好印象だったので、体重が軽いライダーにとても合うと思います。今年からサポートを受ける愛三工業レーシングの軽量な選手たちの活躍も期待できますね。
軽量バイクの形状の特徴として、真円に近いチューブ断面を採用したバイクが多いと思います。真円に近ければ近いほど、剛性を保ちながら軽量にできるのですが、エアロに関しては目を瞑らないといけません。SL1.1も例に漏れず、平地の高速巡航は苦手だと思います。
ただ平地の直線で40km/hを超えたところから、アウタートップに近い所でグッと踏んだ時はしっかり加速をしてくれます。また、低速域からの加速がとても好印象でした。また、登りで使用するような軽いギアと高めのケイデンスの組み合わせのスプリントは、重量を活かした加速感があり、軽快に進んでくれました。
エアロロードに比べると、ハンドリングが機敏な感じがします。手放しができなくて怖いとかではなく、どっしりと構える感じがなくて、全体的に軽やかに動くという印象です。また、コーナーリングでは自分が思い描いたラインをオーバーステアやアンダーステアがなく曲がることが出来ました。スラロームも試してみたのですが、小回りが利くのは確かです。テクニカルなコースでは心強い味方となるでしょう。
最近は専用ステムを搭載したバイクが多いですが、SL1.1はノーマルステムなので選手や一般のライダーでもカスタムやポジション変更をしやすくてとても良いと思います。あと、エアロロードではないので内装にしない選択肢はありなのかなと思います。
この性能のフレームが23万円であれば、非常にお買い得だと思います。SL1.1にマッチするホイールを挙げるとしたらマヴィックのキシリウム SLが良いでしょう。シャッキリとした高い反応性を体感出来て、重量もディスクブレーキ用ホイールとしては軽量な方ですから。更に、チューブレスタイヤで運用してあげると良さそうです。
どんな人にお勧め出来るかというと、レースやヒルクライムで頑張りたい人ですね。サイズ展開が豊富で、小柄なライダーも乗れるサイズが用意されているのは良い点です。レースはもちろんですが、エンデュランス系のライドでも使えるので、多くのライダーに合うと思います。
「細身フレームの先入観を覆す高い剛性を備えた1台」福本元(ペダリスト)
一言でSL1.1を表すならば「軽い」です。実は、SL1.1はリムブレーキもディスクブレーキも乗っていた時期のあるバイクなんです。どちらも軽量性が光るバイクというのは間違いないですね。
リムブレーキ版に乗っていた頃は、リアバックの剛性感に物足りなさを感じていましたが、ディスクブレーキとなってスルーアクスル化されたことで、リアの剛性が引き上げられた印象があります。具体的には急勾配の上り坂で力を掛けた時に、リムブレーキ版は反応がワンテンポ遅れるイメージを持っていたのですが、ディスクブレーキ版だと反応がダイレクトになったところに剛性アップを感じます。
他にもパワーを受け止めるBBシェル周りも、硬くないだろうという先入観を覆してくれる踏み心地です。ウィップ感がある訳でもなく、硬すぎるわけでもないんですよね。登りでも強いトルクを掛けて踏んでいくというよりは、ある程度高めのケイデンス、自分のリズムを保つようなペダリングが適しているような印象があります。
ダンシングも小気味良いリズムでしたが、ずっとダンシングしていたいと感じました。ただ、私は既に乗り慣れている背景があるので、それを差し引くと実際には左右に車体を振る時のリズムは早めです。登りでダンシングするときは急勾配になってからの方が、斜度の変化にペダリングを合わせやすいです。
フレームの剛性という面では、見た目だけでは、細身のチュービングなのでパワーを受け止めてくれるか不安に感じるかと思いますが、スプリンターのような方の力に対応できる剛性があり、気持ちよく乗れるのではないかと思っています。
軽量ヒルクライム系自転車というコンセプトで、剛性重視で自転車を選ぶ人は手を出さないジャンルかと思いますが、一度乗ってみるとイメージが変わる1台ではないでしょうか。
ただ剛性が高めということもあり、フロントフォークからの衝撃は伝わりやすいですね。リアはシートステーが内側にベンドする形状のおかげで、衝撃はカバーしてくれていますが、その辺はレーシングバイクということで割り切った方が良さそうです。
ロードレースにおいてはスピードの上げ下げが激しくあると思いますが、そういったシチュエーションは軽量性がアドバンテージになるでしょう。単独走では40km/hを超えると伸びやむ時が訪れますが、30〜35km/hほどでは非常に気持ちよくスピードを維持することができます。エアロを気にするのであれば、TRANSONICなども視野に入れてもいいかもしれませんね。自分一人でペースを刻みたい、登りでのタイムを縮めたい時にSLは活躍してくれると思います。
また、フレーム設計がオーソドックスなだけあり、装着するパーツでの乗り味の変化が反映されやすくなっています。ハンドルやステムでコーナリングでの挙動を好み仕上げても良さそうです。ホイールの性格も素直に走行性能に表れるでしょう。
今シーズンから愛三工業レーシングがSL1.1 DISCに乗るということですが、プロユースも耐えるスペックだと思いますね。そんなフラッグシップのフレームセットが23万円というのは破格です。シンプルでオーソドックスなロードバイクで、今のトレンドとは違う形状ですが、基本性能は網羅しているので、機材として使いたいという方にはオススメですね。機会があればぜひ乗ってもらいたいです。
フジ SL1.1 DISC
サイズ:46、49、52、54、56
カラー:Pearl Blue/Red Orange
BB規格:PF30
重量:1.3kg(フレーム/フォーク)
価格:230,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
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福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山)
東京都港区に構えるペダリスト ピナレロショップ青山の店長。中学生からロードバイクを楽しみ、高校に上がるとともに競技生活をスタート。実業団レースでE1まで昇格し、富士ヒルクライムでゴールドを獲得したレーサー。その経験を活かし、ショップではスクールなども担当。接客のモットーは「要望を実現できる方法を考える」こと。
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ウェア協力:カステリ
text:Michinari Takagi、Gakuto Fujiwara
photo:Kenta Onoguchi、Makoto AYANO
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