2009/03/22(日) - 09:49
開催100回目を迎えたミラノ〜サンレモは劇的なフィナーレが待っていた。上りアタックは決まらず集団スプリントに持ち込まれ、先行したハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)を抜群のスプリントで射落としたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が勝利。初出場にしてビッグタイトルを手にした。
11名が逃げる展開、上りアタック不発
風が強く太陽が路面を照らすコンディションの中、ミラノをスタートしたのは196名の選手たち。気温は14度ほど。レースは序盤から50km/hに迫る超ハイスピードな展開で、102km地点で11名の逃げが決まるとようやくレースを落ち着きを見せた。
逃げを試みたのはユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)やクリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)で、クイックステップやLPRブレークス、ミルラムがコントロールするメイン集団から5分のリード。204km地点に登場するレ・マニエの上りに向けてタイム差は縮まった。
レ・マニエで先頭が7名に絞られる一方で、メイン集団はアスタナがペースアップしてタイム差が1分に。先頭の7名は最後まで諦めずに逃げ続けたが、スプリンターチームが牽引する集団を振り切ることは出来ず、この日の勝負どころチプレッサを上り始めてすぐ吸収された。
チプレッサで集団のペースを急激に上げたのは、直前のティレーノ〜アドリアティコ総合優勝者のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)と、同大会2位のステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)。イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)もペースアップに加わり、先頭集団は30名ほどに絞られてチプレッサ頂上を通過した。
アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)やトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)らは下りで集団復帰したが、そこにランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)の姿は無かった。
例年アタックの応酬となるポッジオ。しかし今年はアタッカーが動きを見せず、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)がペースを刻んで淡々と集団が上る展開。頂上まで1km(ゴールまで7km)を残してダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)が攻撃を仕掛けたが、集団を引き離すことは出来なかった。
レベッリンとフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)の3名が集団から抜け出た状態でポッジオ頂上を通過したが、テクニカルな下りで敢え無く吸収。集団はLPRブレークスやリクイガスが引いてサンレモの街に突入した。
ラスト2kmでルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)がアタックしたが、LPRブレークスがこれを封印。ラスト1kmからジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)が先頭に立ち、最終ストレートでその後方からハウッスラーが飛び出した。
「フースホフトを連れ出すためにペースを上げた」というハウッスラーだが、その後方にフースホフトの姿は無く、そのままスプリントを続けてゴールへ。その後方ではスプリンターが一斉に腰を上げ、カヴェンディッシュが一人飛び出してハウッスラーを猛追。
カヴェンディッシュは異次元の加速でハウッスラーに迫ると、ラスト数メートルで横に並び、バイクを投げ込んでゴール。「298km走って11センチ差」。僅かにカヴェンディッシュが先着した。
初出場のカヴェンディッシュが最強の証明
「これは現実?本当にみんなよりも速かった?」とゴール後に動揺するカヴェンディッシュ。一方僅差で敗退したハウッスラーは頭を抱えて地面に倒れ込んだ。
当初上りで苦戦すると予想されたカヴェンディッシュだが、蓋を開けてみれば、他チームのエーススプリンターと同等、もしくはライバルより優れた登坂力を見せた。チームコロンビアのヴァレリオ・ピーヴァ監督も「マークはいつも『チプレッサとポッジオの上りは問題なくこなせる』と言っていたが、その言葉通りの素晴らしい走りを見せた」と舌を巻く。
表彰台の裏では、チームの顧問を務めるエリック・ツァベル(ドイツ)と涙の抱擁。カヴェンディッシュは「ツァベルの助言が無ければ今日の勝利は無かった。ツァベルと一緒に2回コース試走を行なって、どこでどのポジションにいるべきか、どれぐらい耐えるべきかを学んだ。その教えのおかげで今日の勝利を手にすることが出来たんだ」とコメントしている。
また、チームメイトへの感謝も忘れない。「チームの中には、今日勝利を狙える選手が4〜5人いた。でも彼らはそのチャンスを犠牲にしてまで、僕の勝利に尽くしてくれたんだ。」
「トミー(トーマス)ロヴクヴィストは上りでアタックすることも出来たけど、ずっとチプレッサで僕が脱落しないよう守ってくれた。ポッジオで援護してくれたジョージ・ヒンカピーは、全力でスプリント発射台を務めてくれた。上手く機能すれば勝利を狙えると確信していた通り、チームは勝利を収めたんだ。チームにとってスペシャルな一日だ。」
大きくリードしたハウッスラーを射落としたことも驚きだが、同時にスプリントを開始したライバルに2秒差をつけてゴールしたことも忘れてはならない。昨年ツール・ド・フランスでステージ4勝を飾り、世界トップスプリンターに躍進したカヴェンディッシュ。ミラノ〜サンレモを制した今、その名声は揺るぎの無いものに。
「スプリントで勝てば『偉大なスプリンター』として賞賛されるが、ミラノ〜サンレモのようなビッグレースで勝てば『偉大な選手」としてその名を刻む。今日はそんな『偉大な選手』の一員になりたかった」と、世界最速スプリンターは語った。カヴェンディッシュは今後、トラック世界選手権出場のためにポーランドに向かう。
4位で惜しくも表彰台を逃したアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)は「ラスト数キロからヒンカピーの付き位置を確保していた。でも(仕事を終えて)スローダウンしたヒンカピーをパスするために順位を落としてしまったんだ。スプリントバトルに加わることは出来たけど、表彰台には僅かに届かなかった」と自らの敗因を分析。
しかし同時に「このプリマヴェーラ(サンレモの呼称)はコースレイアウトが完璧に自分向きで好きなレースの一つ。今度こそ勝ちに戻ってくる。でも今回は4位という結果には満足しているよ」と、UCIワールドランキングリーダーは語っている。
同じくクイックステップのトム・ボーネン(ベルギー)は、スプリントで早々に脚を止めて15位フィニッシュ。「チプレッサではコンディションの良さを感じていたけど、そのあと脚が痙攣してしまった。その時点で今日の勝利は無いなと思って、デーヴィスでスプリントを狙ったんだ。僕はクラシックレースへの準備が整っている」。すでにボーネンは石畳のクラシックに気持ちを切り替えている。
選手コメントはガゼッタ紙、ならびにチーム公式サイト(チームコロンビア、クイックステップ)より。
ミラノ〜サンレモ2009結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)6h42'45"
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)+02"
4位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)
6位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
7位 アイトール・ガルドス(スペイン、エウスカルテル)
8位 エンリーコ・ロッシ(イタリア、チェラミカ・フラミニア)
9位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
10位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
11名が逃げる展開、上りアタック不発
風が強く太陽が路面を照らすコンディションの中、ミラノをスタートしたのは196名の選手たち。気温は14度ほど。レースは序盤から50km/hに迫る超ハイスピードな展開で、102km地点で11名の逃げが決まるとようやくレースを落ち着きを見せた。
逃げを試みたのはユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)やクリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)で、クイックステップやLPRブレークス、ミルラムがコントロールするメイン集団から5分のリード。204km地点に登場するレ・マニエの上りに向けてタイム差は縮まった。
レ・マニエで先頭が7名に絞られる一方で、メイン集団はアスタナがペースアップしてタイム差が1分に。先頭の7名は最後まで諦めずに逃げ続けたが、スプリンターチームが牽引する集団を振り切ることは出来ず、この日の勝負どころチプレッサを上り始めてすぐ吸収された。
チプレッサで集団のペースを急激に上げたのは、直前のティレーノ〜アドリアティコ総合優勝者のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)と、同大会2位のステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)。イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)もペースアップに加わり、先頭集団は30名ほどに絞られてチプレッサ頂上を通過した。
アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)やトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)らは下りで集団復帰したが、そこにランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)の姿は無かった。
例年アタックの応酬となるポッジオ。しかし今年はアタッカーが動きを見せず、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)がペースを刻んで淡々と集団が上る展開。頂上まで1km(ゴールまで7km)を残してダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)が攻撃を仕掛けたが、集団を引き離すことは出来なかった。
レベッリンとフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)の3名が集団から抜け出た状態でポッジオ頂上を通過したが、テクニカルな下りで敢え無く吸収。集団はLPRブレークスやリクイガスが引いてサンレモの街に突入した。
ラスト2kmでルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)がアタックしたが、LPRブレークスがこれを封印。ラスト1kmからジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)が先頭に立ち、最終ストレートでその後方からハウッスラーが飛び出した。
「フースホフトを連れ出すためにペースを上げた」というハウッスラーだが、その後方にフースホフトの姿は無く、そのままスプリントを続けてゴールへ。その後方ではスプリンターが一斉に腰を上げ、カヴェンディッシュが一人飛び出してハウッスラーを猛追。
カヴェンディッシュは異次元の加速でハウッスラーに迫ると、ラスト数メートルで横に並び、バイクを投げ込んでゴール。「298km走って11センチ差」。僅かにカヴェンディッシュが先着した。
初出場のカヴェンディッシュが最強の証明
「これは現実?本当にみんなよりも速かった?」とゴール後に動揺するカヴェンディッシュ。一方僅差で敗退したハウッスラーは頭を抱えて地面に倒れ込んだ。
当初上りで苦戦すると予想されたカヴェンディッシュだが、蓋を開けてみれば、他チームのエーススプリンターと同等、もしくはライバルより優れた登坂力を見せた。チームコロンビアのヴァレリオ・ピーヴァ監督も「マークはいつも『チプレッサとポッジオの上りは問題なくこなせる』と言っていたが、その言葉通りの素晴らしい走りを見せた」と舌を巻く。
表彰台の裏では、チームの顧問を務めるエリック・ツァベル(ドイツ)と涙の抱擁。カヴェンディッシュは「ツァベルの助言が無ければ今日の勝利は無かった。ツァベルと一緒に2回コース試走を行なって、どこでどのポジションにいるべきか、どれぐらい耐えるべきかを学んだ。その教えのおかげで今日の勝利を手にすることが出来たんだ」とコメントしている。
また、チームメイトへの感謝も忘れない。「チームの中には、今日勝利を狙える選手が4〜5人いた。でも彼らはそのチャンスを犠牲にしてまで、僕の勝利に尽くしてくれたんだ。」
「トミー(トーマス)ロヴクヴィストは上りでアタックすることも出来たけど、ずっとチプレッサで僕が脱落しないよう守ってくれた。ポッジオで援護してくれたジョージ・ヒンカピーは、全力でスプリント発射台を務めてくれた。上手く機能すれば勝利を狙えると確信していた通り、チームは勝利を収めたんだ。チームにとってスペシャルな一日だ。」
大きくリードしたハウッスラーを射落としたことも驚きだが、同時にスプリントを開始したライバルに2秒差をつけてゴールしたことも忘れてはならない。昨年ツール・ド・フランスでステージ4勝を飾り、世界トップスプリンターに躍進したカヴェンディッシュ。ミラノ〜サンレモを制した今、その名声は揺るぎの無いものに。
「スプリントで勝てば『偉大なスプリンター』として賞賛されるが、ミラノ〜サンレモのようなビッグレースで勝てば『偉大な選手」としてその名を刻む。今日はそんな『偉大な選手』の一員になりたかった」と、世界最速スプリンターは語った。カヴェンディッシュは今後、トラック世界選手権出場のためにポーランドに向かう。
4位で惜しくも表彰台を逃したアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)は「ラスト数キロからヒンカピーの付き位置を確保していた。でも(仕事を終えて)スローダウンしたヒンカピーをパスするために順位を落としてしまったんだ。スプリントバトルに加わることは出来たけど、表彰台には僅かに届かなかった」と自らの敗因を分析。
しかし同時に「このプリマヴェーラ(サンレモの呼称)はコースレイアウトが完璧に自分向きで好きなレースの一つ。今度こそ勝ちに戻ってくる。でも今回は4位という結果には満足しているよ」と、UCIワールドランキングリーダーは語っている。
同じくクイックステップのトム・ボーネン(ベルギー)は、スプリントで早々に脚を止めて15位フィニッシュ。「チプレッサではコンディションの良さを感じていたけど、そのあと脚が痙攣してしまった。その時点で今日の勝利は無いなと思って、デーヴィスでスプリントを狙ったんだ。僕はクラシックレースへの準備が整っている」。すでにボーネンは石畳のクラシックに気持ちを切り替えている。
選手コメントはガゼッタ紙、ならびにチーム公式サイト(チームコロンビア、クイックステップ)より。
ミラノ〜サンレモ2009結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)6h42'45"
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)+02"
4位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)
6位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
7位 アイトール・ガルドス(スペイン、エウスカルテル)
8位 エンリーコ・ロッシ(イタリア、チェラミカ・フラミニア)
9位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
10位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
フォトギャラリー