2021/03/07(日) - 15:37
サーヴェロが提案する新しいロードバイクシリーズの"Caledonia(カレドニア)"。舗装路から石畳、砂利道などを横断的に楽しめるモダンロードとして生み出されたシリーズのハイエンドモデルをインプレッション。クラシックレースも視野に入ると言われるバイクの実力に迫ろう。
サーヴェロ Caledonia-5 Ultegra DI2 R8070 photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロと言えばソロイストから連なるエアロロードや、超軽量のRcaに代表されるようなクライミングバイク、ルールの枠に囚われないトライアスロンバイクなど、常に技術の最先端を走り、エッジーなバイクをフラッグシップとして用意してきたブランドだ。
現在も類を見ないエアロマシンであるS5、P5Xがブランドを象徴するモデルとしてラインアップの頂点に君臨しており、レースのために研ぎ澄まされたバイクが主力というイメージを持っている方も少なくないだろう。
一方で、ロードバイクでグラベルも楽しもうという機運が高まってきた頃、サーヴェロはCシリーズとしてエンデュランス/オールロード系バイクをローンチ。自転車で思う存分遊び倒そうというバイクにも着手したことで、あらゆるサイクリストがその技術力を感じられるブランドとなっていた。
D型断面のシート周りとすることでエアロと快適性を確保した
サーヴェロが得意とするエアロを意識したダウンチューブ形状
S5のエッセンスを落とし込んだヘッド周り
そのエンデュランス/オールロード系のジャンルにサーヴェロが新シリーズCaledoniaを投入。このバイクが実現するのは、ロードバイクとして舗装路からちょっとした未舗装路、登り下り、短距離・長距離すべてのシチュエーションで発揮する優れた走行性能。つまり、現在ブームとなっているグラベルでもなく、最速を極めるピュアなロードレース用でもない、それらの中間に立つことになるバイクとなる。
オールロードというCaledoniaの性格は、その誕生ストーリーから想像することができる。Caledoniaが生み出されたのは、綺麗な舗装路からひび割れた路面まで様々な道が混在するサーヴェロ本社が構えられるトロントの街。モデル名のCaledoniaもその土地の名前であり、本社近くにはCaledonia Roadという道も走っている。
そこでサーヴェロのスタッフたちはサーズデイ・ナイトライドというサイクリングを毎週行っており、彼らはハイスピードでその地を駆けまわるうちに、R5よりワイドなタイヤ、Asperoより俊敏性に優れたバイクを求めたのだった。
Caledonia-5はシートポストとシートチューブ共にD型断面とされている
ヘッド部分にはうっすらとラインがあしらわれている
コンパクトなリア三角形はAsperoを彷彿させるデザイン
最大35mm幅のタイヤを飲み込むクリアランスとされている
いかなる時もスピードを落とさず、かつ安定に走れるバイク、その要請に応えたのがCaledoniaだ。もっともイメージしやすいのは、石畳の上で戦うクラシックレース用マシンだろう。実際にCaledoniaの開発は、2011年のパリ〜ルーベ優勝マシンであるR3 Mudを参考としている上、レース投入も視野に入れたモデルでもある。
R3 Mudから得たノウハウは剛性について。レースの現場では現行R3はパヴェでは過剰な剛性であることがフィードバックされており、R3 Mudの剛性を調査したところグラベルレーシングバイクであるAsperoに近い数値が示され、Caledoniaの開発ではその数値が目標とされたのだという。
そこに加え、エアロロードのSシリーズに用いられる空力をイメージさせるチュービングと、RシリーズとAsperoの造形を融合させることで、速さを求めるオールロードに必要な反応性や衝撃吸収性、耐久性を手に入れた。また、Caledoniaでは衝撃吸収のためにサスペンションやエラストマーなどは用いられていないため、フレーム重量が936g、フォーク重量が370gという標準的な数値に収まっている事も大きなポイントだ。
ケーブル内装式を採用しているため、スッキリとしたルックスとなっている
Reserveというカーボンホイールがアセンブルされている
走行性能に影響を与えるジオメトリーに関しては、近年パリ〜ルーベを走っているR3と比較すると長めのリアセンターとトレイル量、大きめのBBドロップとする事で、安定性にステータスを振り分けた設計となっている。トレイル量は全てのサイズで60mmに統一するべく、3つの異なるオフセット量を持つフォークが用意されており、ハンドリング特性を一貫させようという意識が見て取れる。
細かい部分の設計にも抜かりがないのがサーヴェロだ。タイヤクリアランスは最大35mmと大きめにとっており、Caledoniaで走行するフィールドの幅を広く確保。加えて、電動コンポーネント使用時のケーブルフル内装や、45mmの範囲内でハンドル高を調節できる仕組みが採用されている。
シンプルな造形のリアバック
ビッグボリュームのダウンチューブによってエアロと剛性を確保している
フォークはカムテールのようなデザインとされている
ハイスピード走行が想定されているもののCaledoniaはレーシングユースに割り切ったものではなく、ホビーユースとしての設計も忘れられていない。目立たない位置にフェンダーマウントが配置されており、雨天でも走り込むアグレッシブなライダーの要望に応えられる仕様だ。
今回インプレッションを行うのはCaledoniaシリーズのハイエンドフレームを使用するCaledonia-5。このフレームはサンウェブと共同開発を行ったモデルであり、サーヴェロテクノロジーの結晶とも言えるハイエンドフレームにシマノ ULTEGRA DI2を組み合わせた完成車を二人の店長がインプレッションする。
― インプレッション
「ハイエンドらしい加速感を持つキャパシティの広い1台」藤野智一(なるしまフレンド)
「ハイエンドらしい加速感を持つキャパシティの広い1台」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Kenta Onoguchi
乗ってすぐわかるハイエンドらしい加速感と、Caledonia-5のキャラクターであるハンドリングの操作性や安定感を備えているバイクでした。ロードバイクですけど、多少のグラベルも楽しめるキャパシティの広さはあるようです。
完成車には30Cのチューブレスレディのタイヤが装着されていたので、4気圧まで下げてみたんですけど、低圧による重さを感じることなく問題なく走れますね。砂利が深い広場でも走行しましたが、ハンドルが取られることなく真っ直ぐ進んでくれたので、Caledonia-5は戦闘力が高い遊べるバイクと言う印象が強いです。
「多少の未舗装路でもハンドルを取られない安定感がある」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Kenta Onoguchiこの戦闘力を考えるとUCIワールドツアーの中ではパリ〜ルーベで使われてもおかしくない。アドベンチャー系のグラベルバイクや、長距離エンデュランスバイクでもない、レーシングオールロードですよ。
平地を巡航していても高い速度を維持しやすいですし、低速から加速するために少し力を掛けただけでも高いスピード域に到達するまでがあっという間で、「この自転車、速いな」と感じられるほどです。その後、スプリントを開始した時もスピードがどんどん乗っていく気持ち良さがありました。
登りでもシャキシャキと走ってくれますし、ダンシングも小刻みに振りやすい印象です。エアロロードのような際立ったキャラクターがあるわけではなく、オールラウンドなロードバイクと言われてイメージするような乗りやすさと振りやすさを感じますね。
改めてですが30Cのタイヤを装着している自転車なので、路面が綺麗なサーキットエンデューロとかでレースに出る場合は、25Cタイヤを装着して軽快感を出してあげれば良さそうです。30Cタイヤの良さは衝撃などを緩和してくれることですよね。状況によって使い分けてあげるのがいいですね。
タイヤの影響を考慮してもフレームの剛性は高めです。乗る人を選ぶスパルタンな感じこそありませんが、ハイエンドのフレームに使用されるカーボンという印象です。普段は気楽に遊びつつ、レースにも出たいという方にフィットしそうです。
「安定していて、速い。それがCaledonia」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Kenta Onoguchi
下りやコーナリングでの安定感は抜群に良いです。安定して走れる上、速い。ジオメトリーを見ても、乗り味を考えてもCaledoniaはロードバイクなんですよ。Asperoはもっとホイールベースが長く、未舗装路での安定性に振っています。グラベルバイクでロードレースに出ることはできますが、やっぱりロードのクイックさには敵いません。
ロードとちょっとしたグラベルを両立したく、1台に集約したいという場合にはいい選択肢になると思います。ホイールやタイヤ次第で、ロードで遊べる幅も広いですし。78万円という価格も、フレームセットが50万円でそこに電動変速とカーボンホイールがアセンブルされていることを考えると、コストパフォーマンスは高いと思いますね。
「想像以上の走りの軽さを感じるオールロード」福本元(ペダリスト)
「想像以上の走りの軽さを感じるオールロード」福本元(ペダリスト) photo:Kenta Onoguchi
ハイボリュームな造形から受けるイメージを覆す、走りの軽さを感じられるバイクです。30Cのタイヤがアセンブルされていたのですが、その太さからくる走りの重さはなく、25Cと同じような走行感で走れる自転車に仕上げられていましたね。パリ〜ルーベも想定しているというコンセプトも納得できます。
サーヴェロはリアセンターが詰まっていて、癖がある乗り味のバイクを用意するブランドで、Caledoniaにもその思想が加えられているようです。反応性の良さはサーヴェロのバイクに共通するものを感じられました。
剛性に関しては硬すぎて人を選ぶほどではありませんが、ボトムブラケット周りのしっかりしている造形通りにある程度の硬さはあります。ただ平坦レースのスプリントを狙うための自転車かというとそうではないでしょう。剛性が必要なところと、そうではないところで調整がちゃんとされていて、加速感も鋭いです。
未舗装路でもハイスピードで走れるように作られたCaledonia-5 photo:Kenta Onoguchi
30Cという太いタイヤを履いているというのも見逃せないです。フレーム自体は踏み込んだ時のウィップを感じさせない硬さですが、タイヤのおかげで足へのダメージとなる反発を軽減してくれている気もします。何よりも路面からの衝撃を吸収してくれるため、ギミックを採用せずに快適性を確保しつつ、軽量性を実現しているのはアドバンテージですよね。
フレームには推進力に関わる仕事をさせて、タイヤにはクッション性を期待するという適材適所の設計、そしてそれを実現するサーヴェロの技術力の高さを感じられます。
「サーヴェロの技術力の高さを感じられますね」福本元(ペダリスト) photo:Kenta Onoguchiこのバイクは40km/hを超えるスピードでの巡航でも対応してくれそうですし、その方向性を求めるのであれば25Cなど細めのタイヤを装着してもいいかもしれません。この30Cがセットされた状態だと30〜35km/hくらいの巡航が気持ちいいです。グループライドで自然とスピードが乗っていき、最後はダッシュの掛け合いという場面でもスピードは伸び続けてくれそうです。
以前、R3に乗っていたこともあるんですけど、それに近い印象がありますし、Caledonia自体に登りが苦手ということはありません。もちろんピュアな軽量クライミングバイクの方にアドバンテージはありますが、ある程度のケイデンスを保ち、タイヤが路面を捉えるトラクションを感じつつ回すような丁寧なペダリングだと気持ちよく登っていけますね。
太いタイヤが履けて、未舗装路も物ともしないコンセプトはエンデュランスバイクのように思わせますが、ジオメトリー面でも快適、安定性ばかりにフォーカスしている訳ではないと伝わってきます。実際に走行感としてもスムーズに曲がれますし、危うい感じもなく、扱いやすい自転車だなという実感があります。
Caledoniaは舗装路でのツーリングをメインとして、自宅から離れたグラベルでもちょっと遊びたい時も許容してくれる懐の深さがあります。グラベルに特化している訳ではないので、遊びの幅が非常に広いです。1台でなんでもこなしたいという人にオススメで、特に舗装路でのスピードに妥協したくない方には最適な選択となりそうです。
ハイエンドのレーシングバイクが目の前に迫る価格設定ですが、フレームとパーツアセンブルのパッケージで見るととてもお得です。カリカリのレーシングバイクではなく懐の深さがあるので、レーシングフレームには体がついていかないけど、レーシーな雰囲気を味わいたい方などが選んでも良いでしょう。
サーヴェロ Caledonia-5 Ultegra DI2 R8070 photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ Caledonia-5 Ultegra DI2 R8070 完成車
フォーク:Cervélo All-Carbon, Tapered Caledonia-5 Fork
ホイール:Reserve 35mm DT370, 21mm IW, Tubeless Ready
タイヤ:Vittoria Rubino Pro TLR G 30c
コンポーネント:Shimano Ultegra DI2 8070
ブレーキローター:Shimano SM-RT800, 160mm(F/R)
ハンドルバー:Cervélo AB09 Carbon
ステム:Cervélo ST32 Alloy
シートポスト:Cervélo Carbon SP18
サドル:Prologo Dimension TiRox
アクセサリー:Cervelo Faceplatet FrontComputer/Accessory Mount,Cervelo Rear Accessory Mount, Removeable Fender Mounts
サイズ:48、51、54、56
カラー:レッド/ホワイト
価格:780,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド) 藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山) 福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山)
東京都港区に構えるペダリスト ピナレロショップ青山の店長。中学生からロードバイクを楽しみ、高校に上がるとともに競技生活をスタート。実業団レースでE1まで昇格し、富士ヒルクライムでゴールドを獲得したレーサー。その経験を活かし、ショップではスクールなども担当。接客のモットーは「要望を実現できる方法を考える」こと。
ペダリスト ピナレロショップ青山
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Kenta Onoguchi、Makoto AYANO
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サーヴェロと言えばソロイストから連なるエアロロードや、超軽量のRcaに代表されるようなクライミングバイク、ルールの枠に囚われないトライアスロンバイクなど、常に技術の最先端を走り、エッジーなバイクをフラッグシップとして用意してきたブランドだ。
現在も類を見ないエアロマシンであるS5、P5Xがブランドを象徴するモデルとしてラインアップの頂点に君臨しており、レースのために研ぎ澄まされたバイクが主力というイメージを持っている方も少なくないだろう。
一方で、ロードバイクでグラベルも楽しもうという機運が高まってきた頃、サーヴェロはCシリーズとしてエンデュランス/オールロード系バイクをローンチ。自転車で思う存分遊び倒そうというバイクにも着手したことで、あらゆるサイクリストがその技術力を感じられるブランドとなっていた。
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そのエンデュランス/オールロード系のジャンルにサーヴェロが新シリーズCaledoniaを投入。このバイクが実現するのは、ロードバイクとして舗装路からちょっとした未舗装路、登り下り、短距離・長距離すべてのシチュエーションで発揮する優れた走行性能。つまり、現在ブームとなっているグラベルでもなく、最速を極めるピュアなロードレース用でもない、それらの中間に立つことになるバイクとなる。
オールロードというCaledoniaの性格は、その誕生ストーリーから想像することができる。Caledoniaが生み出されたのは、綺麗な舗装路からひび割れた路面まで様々な道が混在するサーヴェロ本社が構えられるトロントの街。モデル名のCaledoniaもその土地の名前であり、本社近くにはCaledonia Roadという道も走っている。
そこでサーヴェロのスタッフたちはサーズデイ・ナイトライドというサイクリングを毎週行っており、彼らはハイスピードでその地を駆けまわるうちに、R5よりワイドなタイヤ、Asperoより俊敏性に優れたバイクを求めたのだった。
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R3 Mudから得たノウハウは剛性について。レースの現場では現行R3はパヴェでは過剰な剛性であることがフィードバックされており、R3 Mudの剛性を調査したところグラベルレーシングバイクであるAsperoに近い数値が示され、Caledoniaの開発ではその数値が目標とされたのだという。
そこに加え、エアロロードのSシリーズに用いられる空力をイメージさせるチュービングと、RシリーズとAsperoの造形を融合させることで、速さを求めるオールロードに必要な反応性や衝撃吸収性、耐久性を手に入れた。また、Caledoniaでは衝撃吸収のためにサスペンションやエラストマーなどは用いられていないため、フレーム重量が936g、フォーク重量が370gという標準的な数値に収まっている事も大きなポイントだ。
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走行性能に影響を与えるジオメトリーに関しては、近年パリ〜ルーベを走っているR3と比較すると長めのリアセンターとトレイル量、大きめのBBドロップとする事で、安定性にステータスを振り分けた設計となっている。トレイル量は全てのサイズで60mmに統一するべく、3つの異なるオフセット量を持つフォークが用意されており、ハンドリング特性を一貫させようという意識が見て取れる。
細かい部分の設計にも抜かりがないのがサーヴェロだ。タイヤクリアランスは最大35mmと大きめにとっており、Caledoniaで走行するフィールドの幅を広く確保。加えて、電動コンポーネント使用時のケーブルフル内装や、45mmの範囲内でハンドル高を調節できる仕組みが採用されている。
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今回インプレッションを行うのはCaledoniaシリーズのハイエンドフレームを使用するCaledonia-5。このフレームはサンウェブと共同開発を行ったモデルであり、サーヴェロテクノロジーの結晶とも言えるハイエンドフレームにシマノ ULTEGRA DI2を組み合わせた完成車を二人の店長がインプレッションする。
― インプレッション
「ハイエンドらしい加速感を持つキャパシティの広い1台」藤野智一(なるしまフレンド)
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完成車には30Cのチューブレスレディのタイヤが装着されていたので、4気圧まで下げてみたんですけど、低圧による重さを感じることなく問題なく走れますね。砂利が深い広場でも走行しましたが、ハンドルが取られることなく真っ直ぐ進んでくれたので、Caledonia-5は戦闘力が高い遊べるバイクと言う印象が強いです。
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平地を巡航していても高い速度を維持しやすいですし、低速から加速するために少し力を掛けただけでも高いスピード域に到達するまでがあっという間で、「この自転車、速いな」と感じられるほどです。その後、スプリントを開始した時もスピードがどんどん乗っていく気持ち良さがありました。
登りでもシャキシャキと走ってくれますし、ダンシングも小刻みに振りやすい印象です。エアロロードのような際立ったキャラクターがあるわけではなく、オールラウンドなロードバイクと言われてイメージするような乗りやすさと振りやすさを感じますね。
改めてですが30Cのタイヤを装着している自転車なので、路面が綺麗なサーキットエンデューロとかでレースに出る場合は、25Cタイヤを装着して軽快感を出してあげれば良さそうです。30Cタイヤの良さは衝撃などを緩和してくれることですよね。状況によって使い分けてあげるのがいいですね。
タイヤの影響を考慮してもフレームの剛性は高めです。乗る人を選ぶスパルタンな感じこそありませんが、ハイエンドのフレームに使用されるカーボンという印象です。普段は気楽に遊びつつ、レースにも出たいという方にフィットしそうです。
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下りやコーナリングでの安定感は抜群に良いです。安定して走れる上、速い。ジオメトリーを見ても、乗り味を考えてもCaledoniaはロードバイクなんですよ。Asperoはもっとホイールベースが長く、未舗装路での安定性に振っています。グラベルバイクでロードレースに出ることはできますが、やっぱりロードのクイックさには敵いません。
ロードとちょっとしたグラベルを両立したく、1台に集約したいという場合にはいい選択肢になると思います。ホイールやタイヤ次第で、ロードで遊べる幅も広いですし。78万円という価格も、フレームセットが50万円でそこに電動変速とカーボンホイールがアセンブルされていることを考えると、コストパフォーマンスは高いと思いますね。
「想像以上の走りの軽さを感じるオールロード」福本元(ペダリスト)
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ハイボリュームな造形から受けるイメージを覆す、走りの軽さを感じられるバイクです。30Cのタイヤがアセンブルされていたのですが、その太さからくる走りの重さはなく、25Cと同じような走行感で走れる自転車に仕上げられていましたね。パリ〜ルーベも想定しているというコンセプトも納得できます。
サーヴェロはリアセンターが詰まっていて、癖がある乗り味のバイクを用意するブランドで、Caledoniaにもその思想が加えられているようです。反応性の良さはサーヴェロのバイクに共通するものを感じられました。
剛性に関しては硬すぎて人を選ぶほどではありませんが、ボトムブラケット周りのしっかりしている造形通りにある程度の硬さはあります。ただ平坦レースのスプリントを狙うための自転車かというとそうではないでしょう。剛性が必要なところと、そうではないところで調整がちゃんとされていて、加速感も鋭いです。
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30Cという太いタイヤを履いているというのも見逃せないです。フレーム自体は踏み込んだ時のウィップを感じさせない硬さですが、タイヤのおかげで足へのダメージとなる反発を軽減してくれている気もします。何よりも路面からの衝撃を吸収してくれるため、ギミックを採用せずに快適性を確保しつつ、軽量性を実現しているのはアドバンテージですよね。
フレームには推進力に関わる仕事をさせて、タイヤにはクッション性を期待するという適材適所の設計、そしてそれを実現するサーヴェロの技術力の高さを感じられます。
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以前、R3に乗っていたこともあるんですけど、それに近い印象がありますし、Caledonia自体に登りが苦手ということはありません。もちろんピュアな軽量クライミングバイクの方にアドバンテージはありますが、ある程度のケイデンスを保ち、タイヤが路面を捉えるトラクションを感じつつ回すような丁寧なペダリングだと気持ちよく登っていけますね。
太いタイヤが履けて、未舗装路も物ともしないコンセプトはエンデュランスバイクのように思わせますが、ジオメトリー面でも快適、安定性ばかりにフォーカスしている訳ではないと伝わってきます。実際に走行感としてもスムーズに曲がれますし、危うい感じもなく、扱いやすい自転車だなという実感があります。
Caledoniaは舗装路でのツーリングをメインとして、自宅から離れたグラベルでもちょっと遊びたい時も許容してくれる懐の深さがあります。グラベルに特化している訳ではないので、遊びの幅が非常に広いです。1台でなんでもこなしたいという人にオススメで、特に舗装路でのスピードに妥協したくない方には最適な選択となりそうです。
ハイエンドのレーシングバイクが目の前に迫る価格設定ですが、フレームとパーツアセンブルのパッケージで見るととてもお得です。カリカリのレーシングバイクではなく懐の深さがあるので、レーシングフレームには体がついていかないけど、レーシーな雰囲気を味わいたい方などが選んでも良いでしょう。
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サーヴェロ Caledonia-5 Ultegra DI2 R8070 完成車
フォーク:Cervélo All-Carbon, Tapered Caledonia-5 Fork
ホイール:Reserve 35mm DT370, 21mm IW, Tubeless Ready
タイヤ:Vittoria Rubino Pro TLR G 30c
コンポーネント:Shimano Ultegra DI2 8070
ブレーキローター:Shimano SM-RT800, 160mm(F/R)
ハンドルバー:Cervélo AB09 Carbon
ステム:Cervélo ST32 Alloy
シートポスト:Cervélo Carbon SP18
サドル:Prologo Dimension TiRox
アクセサリー:Cervelo Faceplatet FrontComputer/Accessory Mount,Cervelo Rear Accessory Mount, Removeable Fender Mounts
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価格:780,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
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92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
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東京都港区に構えるペダリスト ピナレロショップ青山の店長。中学生からロードバイクを楽しみ、高校に上がるとともに競技生活をスタート。実業団レースでE1まで昇格し、富士ヒルクライムでゴールドを獲得したレーサー。その経験を活かし、ショップではスクールなども担当。接客のモットーは「要望を実現できる方法を考える」こと。
ペダリスト ピナレロショップ青山
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Kenta Onoguchi、Makoto AYANO
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