2020/11/07(土) - 08:13
2つの山岳を越えた40名の小集団スプリントで決したブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージ。バルベルデらを下したマグナス・コルトニールセン(EFプロサイクリング)が自身3勝目を飾り、2位のプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)がボーナスタイム6秒を獲得した。
いよいよマドリードまでカウントダウン開始。第16ステージはサラマンカから獲得標高差2,900mの登りをこなし、162kmかけてシウダード・ロドリゴに向かう。標高1,600m級の山が連なるフランシア山地を駆け抜けるコースに登場するカテゴリー山岳は2級山岳ポルティーリョ峠(全長13.8km・平均4.4%)と1級山岳ロブレド峠(全長11.7km・平均3.8%)の2つ。難関山岳ステージとは呼べない難易度だが、閉幕が2日後に迫っているタイミングだけに、総合逆転を狙うチームの動きに注目が集まった。
スタート直後の吹きっさらし区間で横風分断作戦を敢行するチームが現れると見られたが、この日は穏やかな風が吹くにとどまったため波乱は起こらず。やがて先頭で形成された6名の逃げグループには、まだステージ優勝を掴めていないブルゴスBHが3名を送り込むことに成功した。
逃げグループを形成した6名
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)
フアン・オソリオ(コロンビア、ブルゴスBH)
ヘスス・エスケラ(スペイン、ブルゴスBH)
ステージ優勝を狙うUAEチームエミレーツとボーラ・ハンスグローエが牽引するメイン集団に対し、逃げグループは最大5分のリードを持って2級山岳ポルティーリョ峠(全長13.8km・平均4.4%)の登坂を開始。ここで総合2位リチャル・カラパス(エクアドル)擁するイネオス・グレナディアーズの集団コントロールが始まり、クリストファー・フルーム(イギリス)らの献身的な引きによってメイン集団の人数が絞られていく。
総合タイム差39秒をひっくり返す必要のあるイネオス・グレナディアーズが引き続き集団先頭に立って1級山岳ロブレド峠(全長11.7km・平均3.8%)へ。タイム差1分20秒で始まったこの登りで、イネオス・グレナディアーズのディラン・ファンバーレ(オランダ)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ)がペースメイク。リードを失いつつあった逃げグループからはブルゴストリオが姿を消し、先頭はカヴァニャとスタナードの2人に絞られた。
小雨まじりの1級山岳ロブレド峠を、メイン集団からわずか20秒のリードでクリアしたカヴァニャとスタナード。半分ウェットな下りに差し掛かると、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)をふるい落とすことができなかったイネオス・グレナディアーズに代わってモビスターが集団牽引を開始する。メイン集団はすぐさま先頭2名を視界に捉えたが、タイム差10秒を詰めきれない状況が続く。
フィニッシュまで17kmを切ると「クレルモンフェランのTGV」ことカヴァニャがスタナードを振り切って独走開始。カヴァニャは逆にメイン集団とのタイム差を20秒にまで広げて見せたが、残り11km地点からフィニッシュ地点まで平均スピード59.9km/hで駆け抜けたメイン集団には敵わなかった。
残り2km地点でカヴァニャが引き戻されると、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)を勝たせるためにモビスターが集団先頭に立ってシウダード・ロドリゴの街中に猛進する。残り1kmアーチ手前のブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)のロングスパートが残り500mで封じ込められると、ホセ・ロハス(スペイン)にリードアウトされたバルベルデが残り350mからロングスプリントを仕掛けた。
ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やログリッチ、カラパスまでもが絡むスプリントで、別ラインから大きくまくったコルトニールセンが先頭へ。スプリンターのいない40名の小集団スプリントで、コルトニールセンが右手を突き上げてフィニッシュした。コスタやバルベルデを追い抜いたログリッチがステージ2位に入ってボーナスタイム6秒を獲得している。
「今日はもっと人数が絞られた集団による勝負になると予想していた。でも驚くことに精鋭集団内で1級山岳をクリアすることができて、その時点で自分よりスピードのあるスプリンターは他にいなかった。スプリントを始めるタイミングは完璧だったよ。最終コーナーを抜けた時点で少し番手を下げていたけど、隙間を見つけて残り200mからスプリント。そこからフィニッシュまで全開で踏み続けた」。オリカ・バイクエクスチェンジ所属時代の2016年にブエルタでステージ2勝を飾っているコルトニールセン。前日の第15ステージで7位に入っている「登れるスプリンター」が中級山岳ステージで本領を発揮した。
コルトニールセンはティレーノ〜アドリアティコ出場中の9月13日に新型コロナウイルスへの感染が判明し、最終日の個人タイムトライアルを走ることなくリタイア。数週間の隔離を経てトレーニングを再開していた。「誰もが苦しい思いをした今シーズン、再び勝てる状態にまで戻ることができてよかったよ。ロックダウンが明けてから良い状態でシーズンを再開したものの、その後新型コロナウイルスにかかってしまって、このブエルタ開幕前に3週間しかトレーニングできていなかったんだ」。EFプロサイクリングはこれがステージ3勝目。チームメイトのヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は総合3位の座を守っている。
ボーナスタイム6秒によって総合リード拡大に成功したログリッチは「コンプリートな(完成した)選手になりたいと常々思っている。今日はスプリンターが残っていなかったので、スプリントしない理由がなかった。ポイント賞リーダーとしてスプリントもできるんだ。アングリルで6秒を稼ぐより、今日(ボーナスタイムとして)6秒を稼ぐ方がよっぽど楽だった」と語っている。
ログリッチはカラパスに対して45秒の総合リードで翌日の最終山岳ステージに挑む。第17ステージには超級山岳ラ・コバティーリャ峠の山頂フィニッシュが登場。ログリッチは「明日はビッグデーだ。引き続き集中力を切らさずに、全力を尽くすだけ」と、大会1週目から続く慎重な姿勢を崩していない。
いよいよマドリードまでカウントダウン開始。第16ステージはサラマンカから獲得標高差2,900mの登りをこなし、162kmかけてシウダード・ロドリゴに向かう。標高1,600m級の山が連なるフランシア山地を駆け抜けるコースに登場するカテゴリー山岳は2級山岳ポルティーリョ峠(全長13.8km・平均4.4%)と1級山岳ロブレド峠(全長11.7km・平均3.8%)の2つ。難関山岳ステージとは呼べない難易度だが、閉幕が2日後に迫っているタイミングだけに、総合逆転を狙うチームの動きに注目が集まった。
スタート直後の吹きっさらし区間で横風分断作戦を敢行するチームが現れると見られたが、この日は穏やかな風が吹くにとどまったため波乱は起こらず。やがて先頭で形成された6名の逃げグループには、まだステージ優勝を掴めていないブルゴスBHが3名を送り込むことに成功した。
逃げグループを形成した6名
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
コービー・ホーセンス(ベルギー、ロット・スーダル)
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)
フアン・オソリオ(コロンビア、ブルゴスBH)
ヘスス・エスケラ(スペイン、ブルゴスBH)
ステージ優勝を狙うUAEチームエミレーツとボーラ・ハンスグローエが牽引するメイン集団に対し、逃げグループは最大5分のリードを持って2級山岳ポルティーリョ峠(全長13.8km・平均4.4%)の登坂を開始。ここで総合2位リチャル・カラパス(エクアドル)擁するイネオス・グレナディアーズの集団コントロールが始まり、クリストファー・フルーム(イギリス)らの献身的な引きによってメイン集団の人数が絞られていく。
総合タイム差39秒をひっくり返す必要のあるイネオス・グレナディアーズが引き続き集団先頭に立って1級山岳ロブレド峠(全長11.7km・平均3.8%)へ。タイム差1分20秒で始まったこの登りで、イネオス・グレナディアーズのディラン・ファンバーレ(オランダ)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ)がペースメイク。リードを失いつつあった逃げグループからはブルゴストリオが姿を消し、先頭はカヴァニャとスタナードの2人に絞られた。
小雨まじりの1級山岳ロブレド峠を、メイン集団からわずか20秒のリードでクリアしたカヴァニャとスタナード。半分ウェットな下りに差し掛かると、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)をふるい落とすことができなかったイネオス・グレナディアーズに代わってモビスターが集団牽引を開始する。メイン集団はすぐさま先頭2名を視界に捉えたが、タイム差10秒を詰めきれない状況が続く。
フィニッシュまで17kmを切ると「クレルモンフェランのTGV」ことカヴァニャがスタナードを振り切って独走開始。カヴァニャは逆にメイン集団とのタイム差を20秒にまで広げて見せたが、残り11km地点からフィニッシュ地点まで平均スピード59.9km/hで駆け抜けたメイン集団には敵わなかった。
残り2km地点でカヴァニャが引き戻されると、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)を勝たせるためにモビスターが集団先頭に立ってシウダード・ロドリゴの街中に猛進する。残り1kmアーチ手前のブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)のロングスパートが残り500mで封じ込められると、ホセ・ロハス(スペイン)にリードアウトされたバルベルデが残り350mからロングスプリントを仕掛けた。
ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やログリッチ、カラパスまでもが絡むスプリントで、別ラインから大きくまくったコルトニールセンが先頭へ。スプリンターのいない40名の小集団スプリントで、コルトニールセンが右手を突き上げてフィニッシュした。コスタやバルベルデを追い抜いたログリッチがステージ2位に入ってボーナスタイム6秒を獲得している。
「今日はもっと人数が絞られた集団による勝負になると予想していた。でも驚くことに精鋭集団内で1級山岳をクリアすることができて、その時点で自分よりスピードのあるスプリンターは他にいなかった。スプリントを始めるタイミングは完璧だったよ。最終コーナーを抜けた時点で少し番手を下げていたけど、隙間を見つけて残り200mからスプリント。そこからフィニッシュまで全開で踏み続けた」。オリカ・バイクエクスチェンジ所属時代の2016年にブエルタでステージ2勝を飾っているコルトニールセン。前日の第15ステージで7位に入っている「登れるスプリンター」が中級山岳ステージで本領を発揮した。
コルトニールセンはティレーノ〜アドリアティコ出場中の9月13日に新型コロナウイルスへの感染が判明し、最終日の個人タイムトライアルを走ることなくリタイア。数週間の隔離を経てトレーニングを再開していた。「誰もが苦しい思いをした今シーズン、再び勝てる状態にまで戻ることができてよかったよ。ロックダウンが明けてから良い状態でシーズンを再開したものの、その後新型コロナウイルスにかかってしまって、このブエルタ開幕前に3週間しかトレーニングできていなかったんだ」。EFプロサイクリングはこれがステージ3勝目。チームメイトのヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は総合3位の座を守っている。
ボーナスタイム6秒によって総合リード拡大に成功したログリッチは「コンプリートな(完成した)選手になりたいと常々思っている。今日はスプリンターが残っていなかったので、スプリントしない理由がなかった。ポイント賞リーダーとしてスプリントもできるんだ。アングリルで6秒を稼ぐより、今日(ボーナスタイムとして)6秒を稼ぐ方がよっぽど楽だった」と語っている。
ログリッチはカラパスに対して45秒の総合リードで翌日の最終山岳ステージに挑む。第17ステージには超級山岳ラ・コバティーリャ峠の山頂フィニッシュが登場。ログリッチは「明日はビッグデーだ。引き続き集中力を切らさずに、全力を尽くすだけ」と、大会1週目から続く慎重な姿勢を崩していない。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第16ステージ結果
1位 | マグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング) | 4:04:35 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | ディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット) | |
4位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
5位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
6位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール) | |
8位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、NTTプロサイクリング) | |
9位 | ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、サンウェブ) | |
10位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 64:20:31 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:45 |
3位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:00:53 |
4位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:01:48 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:03:29 |
6位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 0:06:21 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:07:20 |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:08:45 |
9位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 0:08:54 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 0:09:29 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 89pts |
2位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 34pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 30pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 198pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 125pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 111pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 64:24:00 |
2位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 0:05:25 |
3位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:07:22 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 193:19:02 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:07:48 |
3位 | アスタナ | 0:40:17 |
text:Kei Tsuji
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