2020/11/01(日) - 09:11
4つの1級山岳を越える過酷なブエルタ11日目にダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が逃げ切りでグランツール初勝利。総合上位陣の登坂勝負は翌日のアングリル決戦へ持ち越された。
山、山、山、そして山。2020年のブエルタ・ア・エスパーニャはこの第11ステージをもって再び総合争いの場へと変貌する。アストゥリアス州のビリャビシオサをスタートする170kmコースに詰め込まれたのは、カンタブリア山脈が誇る4つの1級山岳たち。
しかも標高850m、標高1,185m、標高1,347mと、そして最後に控える1級山岳ファラポナ峠(全長16.5km・平均6.2%)は標高1,708mと山を一つ越えるたびに山頂標高が上がるという、重量級スプリンターにとっては悪夢仕様。獲得標高が今大会最高の4,684mに達する難関山岳ステージは、結果的にヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)を含む5名をDNFに導いた。
この日はスタート地点において、クリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を中心に前日第10ステージのフィニッシュにおいて「3秒ルール」が適用されず、リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がマイヨロホを失うなど総合状況が変化したことに対する抗議が行われた。
前の選手から3秒以内でフィニッシュすれば同タイムとみなされる「3秒ルール」は、スプリントでの中切れを救済するために平坦ステージで適用されるUCI(国際自転車競技連合)の公式ルール。第10ステージは平坦ステージにカテゴライズされていたものの主催者判断によって3秒ルールが適用されず、マイヨロホ移動という結末になった。ユンボ・ヴィズマも賛同したこの抗議による順位巻き戻しはなく、選手たちは数分の遅れでスタートを切っている。
スタート直後に控える3級山岳アルト・デ・ラ・カンパ(登坂距離6.8m・平均4.4%)で熾烈なアタック合戦が掛かり、第5ステージで勝利したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)先頭で山頂通過。ここまで積極的な走りを続けるウェレンスには第7ステージで勝ったヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)やホセ・ロハス(スペイン、モビスター)、クレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル)といった7名が追いついた。
更に4名の追走グループが生まれたことで落ち着くかと思われたが、ペースダウンしたいユンボ・ヴィズマの蓋をこじ開けてメイン集団を再加速させたのはコフィディスだった。マイヨモンターニャのギヨーム・マルタン(フランス)が逃げに乗り損ねたことを受け、レースを振り出しに戻すべくハイテンポを刻む。サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が早々にグルペットを作る高速進行の末、1つ目の1級山岳アルト・デ・ラ・コラドナ(登坂距離7km・平均勾配6.5%)で逃げグループは引き戻されたが、激しいアタック合戦の末にマルタンは6位通過に留まった。
この動きの中でウェレンスとマルタンを含む8名の逃げグループが生まれ、ようやく落ち着きを取り戻したメイン集団に対して2分差で逃げ始めた。逃げメンバーは以下の通り。
逃げた8名
ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
ニクラス・エイ(デンマーク、トレック・セガフレード)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)
マーク・ドノヴァン(イギリス、サンウェブ)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
95km地点で山頂を迎える2つ目の1級山岳コベルトリア峠(全長9.8km・平均9%)に入ると、メイン集団からは3分52秒遅れ総合10位のマルク・ソレル(スペイン、モビスター)が単独アタックし、ウェレンスが脱落した先頭グループにジャンプ。総合上位のソレルが追いついたことで、モビスターはステージ、あるいは総合5位エンリク・マス(スペイン、モビスター)の前待ちという選択肢を得た。
マルタンは狙い通りコベルトリアと続く3つ目の1級山岳サンロレンソ峠(全長10km・平均8.6%)で先頭通過を果たし、マイヨモンターニャの座を更に固めていく。ユンボ・ヴィズマやUAEチームエミレーツがペースメイクするメイン集団からは特にアタックが生まれるでもなく、比較的穏やかに最後の1級山岳ファラポナ峠を目指した。
ソレルを温存するべくネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)が逃げグループを率いて、3分差を維持した状態で1級山岳ファラポナ峠(全長16.5km・平均6.2%)へ。メンバーを振り落としながら進んだ先、勾配が上がる残り5km地点で「ネルソンのアシストで脚を溜めることができた」と言うソレルがアタックし、追走できたのはダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)ただ一人。2名を残していたサンウェブは数的有利を生かせず遅れていった。
ソレルとゴデュは十分なリードを得たまま距離を減らし、逃げ切りを確定させる。一方のメイン集団はミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)のアタックで絞り込まれたものの、一直線かつほど一定勾配が続く、つまりアタックしにくい峠道で総合勢によるアタック合戦は起こらなかった。
ガードレールの無い、放牧された牛が歩く荒涼とした山岳風景の中、先頭を行く2人は牽制しながらフラムルージュをクリアする。強い向かい風が吹く先行しづらい状況の中、残り150mでゴデュがステージ優勝に向かって加速した。
「向かい風の情報を甘く見て脚を使ってしまった」と悔やむソレルを突き放し、1996年生まれ、24歳のゴデュがグランツール初勝利。ここ3年間ツール・ド・フランスでティボー・ピノ(フランス)の山岳アシストとして活躍したゴデュが、初めて自身のチャンスを掴んだグランツールで勝利。何度も何度も雄叫びを上げ、感情を爆発させた。
1分差まで詰め寄ったメイン集団からはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)が飛び出した状態でフィニッシュし、その5秒後ろで総合1〜3位(ログリッチ、カラパス、マーティン)と5位マスが一緒にゴール。4位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は7秒遅れたが順位を守った。
逃げ切ったソレルが総合6位ジャンプアップを叶えた一方、最終山岳で早々に脱落した総合7位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)は総合上位陣で唯一大きく(先頭から3分15秒)遅れ、総合14位へと転落してしまった。
総合上位勢に激しい戦いなく消化した第11ステージだが、翌日はいよいよもって超難関山岳アングリルが登場する。最大勾配29%を誇る”魔の山”に総合バトルは持ち越された。
山、山、山、そして山。2020年のブエルタ・ア・エスパーニャはこの第11ステージをもって再び総合争いの場へと変貌する。アストゥリアス州のビリャビシオサをスタートする170kmコースに詰め込まれたのは、カンタブリア山脈が誇る4つの1級山岳たち。
しかも標高850m、標高1,185m、標高1,347mと、そして最後に控える1級山岳ファラポナ峠(全長16.5km・平均6.2%)は標高1,708mと山を一つ越えるたびに山頂標高が上がるという、重量級スプリンターにとっては悪夢仕様。獲得標高が今大会最高の4,684mに達する難関山岳ステージは、結果的にヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)を含む5名をDNFに導いた。
この日はスタート地点において、クリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を中心に前日第10ステージのフィニッシュにおいて「3秒ルール」が適用されず、リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がマイヨロホを失うなど総合状況が変化したことに対する抗議が行われた。
前の選手から3秒以内でフィニッシュすれば同タイムとみなされる「3秒ルール」は、スプリントでの中切れを救済するために平坦ステージで適用されるUCI(国際自転車競技連合)の公式ルール。第10ステージは平坦ステージにカテゴライズされていたものの主催者判断によって3秒ルールが適用されず、マイヨロホ移動という結末になった。ユンボ・ヴィズマも賛同したこの抗議による順位巻き戻しはなく、選手たちは数分の遅れでスタートを切っている。
スタート直後に控える3級山岳アルト・デ・ラ・カンパ(登坂距離6.8m・平均4.4%)で熾烈なアタック合戦が掛かり、第5ステージで勝利したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)先頭で山頂通過。ここまで積極的な走りを続けるウェレンスには第7ステージで勝ったヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)やホセ・ロハス(スペイン、モビスター)、クレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル)といった7名が追いついた。
更に4名の追走グループが生まれたことで落ち着くかと思われたが、ペースダウンしたいユンボ・ヴィズマの蓋をこじ開けてメイン集団を再加速させたのはコフィディスだった。マイヨモンターニャのギヨーム・マルタン(フランス)が逃げに乗り損ねたことを受け、レースを振り出しに戻すべくハイテンポを刻む。サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が早々にグルペットを作る高速進行の末、1つ目の1級山岳アルト・デ・ラ・コラドナ(登坂距離7km・平均勾配6.5%)で逃げグループは引き戻されたが、激しいアタック合戦の末にマルタンは6位通過に留まった。
この動きの中でウェレンスとマルタンを含む8名の逃げグループが生まれ、ようやく落ち着きを取り戻したメイン集団に対して2分差で逃げ始めた。逃げメンバーは以下の通り。
逃げた8名
ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
ニクラス・エイ(デンマーク、トレック・セガフレード)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)
マーク・ドノヴァン(イギリス、サンウェブ)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
95km地点で山頂を迎える2つ目の1級山岳コベルトリア峠(全長9.8km・平均9%)に入ると、メイン集団からは3分52秒遅れ総合10位のマルク・ソレル(スペイン、モビスター)が単独アタックし、ウェレンスが脱落した先頭グループにジャンプ。総合上位のソレルが追いついたことで、モビスターはステージ、あるいは総合5位エンリク・マス(スペイン、モビスター)の前待ちという選択肢を得た。
マルタンは狙い通りコベルトリアと続く3つ目の1級山岳サンロレンソ峠(全長10km・平均8.6%)で先頭通過を果たし、マイヨモンターニャの座を更に固めていく。ユンボ・ヴィズマやUAEチームエミレーツがペースメイクするメイン集団からは特にアタックが生まれるでもなく、比較的穏やかに最後の1級山岳ファラポナ峠を目指した。
ソレルを温存するべくネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)が逃げグループを率いて、3分差を維持した状態で1級山岳ファラポナ峠(全長16.5km・平均6.2%)へ。メンバーを振り落としながら進んだ先、勾配が上がる残り5km地点で「ネルソンのアシストで脚を溜めることができた」と言うソレルがアタックし、追走できたのはダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)ただ一人。2名を残していたサンウェブは数的有利を生かせず遅れていった。
ソレルとゴデュは十分なリードを得たまま距離を減らし、逃げ切りを確定させる。一方のメイン集団はミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)のアタックで絞り込まれたものの、一直線かつほど一定勾配が続く、つまりアタックしにくい峠道で総合勢によるアタック合戦は起こらなかった。
ガードレールの無い、放牧された牛が歩く荒涼とした山岳風景の中、先頭を行く2人は牽制しながらフラムルージュをクリアする。強い向かい風が吹く先行しづらい状況の中、残り150mでゴデュがステージ優勝に向かって加速した。
「向かい風の情報を甘く見て脚を使ってしまった」と悔やむソレルを突き放し、1996年生まれ、24歳のゴデュがグランツール初勝利。ここ3年間ツール・ド・フランスでティボー・ピノ(フランス)の山岳アシストとして活躍したゴデュが、初めて自身のチャンスを掴んだグランツールで勝利。何度も何度も雄叫びを上げ、感情を爆発させた。
1分差まで詰め寄ったメイン集団からはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)が飛び出した状態でフィニッシュし、その5秒後ろで総合1〜3位(ログリッチ、カラパス、マーティン)と5位マスが一緒にゴール。4位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は7秒遅れたが順位を守った。
逃げ切ったソレルが総合6位ジャンプアップを叶えた一方、最終山岳で早々に脱落した総合7位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)は総合上位陣で唯一大きく(先頭から3分15秒)遅れ、総合14位へと転落してしまった。
総合上位勢に激しい戦いなく消化した第11ステージだが、翌日はいよいよもって超難関山岳アングリルが登場する。最大勾配29%を誇る”魔の山”に総合バトルは持ち越された。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第11ステージ結果
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 45:20:31 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:25 |
4位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:58 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 1:54 |
6位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 2:44 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:31 |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 3:44 |
9位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 3:54 |
10位 | ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット) | 4:43 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 50pts |
2位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) | 24pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 24pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 135pts |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 91pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 90pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 45:22:25 |
2位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 3:08 |
3位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 4:53 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 136:10:19 |
2位 | UAEチームエミレーツ | 7:37 |
3位 | ユンボ・ヴィズマ | 25:03 |
text:So Isobe
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