36名が逃げたブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージで、休息日前日2位に甘んじたマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)がリベンジ達成。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)たちのマークを振り切り、ブエルタ2度目のステージ優勝を遂げた。
リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が握手 photo:Unipublic
果たしてブエルタ・ア・エスパーニャは首都マドリードにたどり着けるのか。10月22日に1日あたりの新型コロナウイルス感染者数が2万人を超え、10月25日にペドロ・サンチェス首相によって2度目の国家非常事態宣言が出されたスペインだが、1度めの休息日に行われたPCR検査で一人の陽性者も出さなかったブエルタは、ひとまず開催継続にゴーサインが下されている。
10月27日(火)第7ステージ ビトリア=ガステイス〜ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア 159.7km photo:Unipublic
10月27日(火)第7ステージ ビトリア=ガステイス〜ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア 159.7km photo:Unipublic
総合シャッフルが掛かった過酷な第6ステージから文字通りの休息日を挟み、プロトンは再び開幕地バスク州へ。ビトリア=ガステイスからビリャヌエバ・デ・バルデゴビアを目指す159.7kmは、1級山岳オルドゥニャ峠(全長7.8km・平均7.7%・最大14%)を2回通過する、獲得標高1000m以下の丘陵コースだ。
まさに逃げるための逃げステージ。3連続となる逃げ切りを目指すべく、この日はスタート直後から休息日にリフレッシュした選手たちが活発に抜け出しを試みた。
序盤の約30kmを独走したレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
カヴァニャを吸収して尚激しいアタック合戦が続いた photo:Unipublic
ここまで積極的な走りを見せている個人タイムトライアルフランス王者レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が個人TT状態で30kmを逃げたものの、1956年に大会初登場した1度めの1級山岳オルドゥニャ峠を前に捉えられる。カヴァニャの吸収を待っていた逃げ狙いメンバーが次々と加速し、最終的に36名という今大会最大規模の逃げグループができあがった。
出走161名の中から逃げは36名、つまり9人に2人の割合で抜け出した大集団にはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、元世界王者の証を腕に巻くアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、マイヨモンターニャキープを狙うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)たちの姿も。3分00秒遅れの総合10位バルベルデが入ったことから、メイン集団をコントロールするイネオス・グレナディアーズはタイム差を2分台に保ち続けた。
ピナレロのチャリティーバイクに乗るクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
チームメイトのアシストを受けて走るリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
総合2位のヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) photo:CorVos
1級山岳を前に抜け出すドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
36名の中ではクスが1級山岳オルドゥニャ峠を先頭通過して10ポイントを稼ぎ、山岳ランキング2位のマルタンは2位通過で6ポイントを獲得。ランキング首位ウェレンスはポイント獲得ならず、この時点でマイヨモンターニャはクスの元に移った。
ピナレロのチャリティーバイクとオークリーの新型アイウェアで話題を呼ぶクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団先頭に立って牽引する最中、高速走行中に弾き飛ばされたジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)がリタイアに追い込まれてしまう。草地に倒れたまま動けなかったマッカーシーは病院に搬送され、骨折こそなかったものの、膝の歪みと右膝関節の靭帯損傷が心配(チーム発表)されている。
横風が吹く中で先頭、メイン集団ともに分断に備えて緊張感を高めたものの、風を利用した決定的な動きは生まれない。すると先頭集団からドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール)とバルベルデ、スタン・デウルフ(ベルギー、ロット・スーダル)という3名が抜け出したものの、30秒以上のリードを得ることはできずにバルベルデとデウルフは離脱。一人で粘っていたゴドンも2度目の1級山岳オルドゥニャ峠で引き戻された。
岩の断崖をくり抜いた1級山岳オルドゥニャ峠の峠道をよじ登る photo:CorVos
平均7.7%の勾配が選手たちを選り分け、複数のアタックを経てマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)が先頭通過に成功する。山岳賞争いのライバルであるクスやウェレンスが遅れたことを見たマルタンが2位通過に成功したことで、この日終了時点でのマイヨモンターニャ獲得を決めている。
マルタンに続いたバルベルデとナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼル)とオマル・フライレ(スペイン、アスタナ)が頂上通過後にウッズへと合流し、10名ほどの追走グループからリードを得た状態でダウンヒルをこなし、終盤戦の平坦区間へ。先頭5名は激しく牽制しながら進んだものの、後続グループも同じく牽制状態に陥ったことで目の前に見える5名まで届かない。この日、後続集団の数的優位は一切機能しなかった。
残り10kmを切ると、マルタンが、バルベルデが、ピーターズが、そしてフライレが次々とアタックを掛けるものの決まらない。しかしその中で「チャンスがやってきたのを感じた」と言うウッズが残り1kmマークを前に抜け出した。
1級山岳アラモン・フォルミガルにフィニッシュした休息日前の第6ステージでステージ2位に入っていたウッズが、唯一追走したフライレから3秒リードを得て逃げる。残り500mを切って現れる緩斜面を、下ハンドルを握り踏み込んだウッズがリードを守り抜いた。
残り1kmからのアタックを成功させたマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) photo:CorVos
追い上げ叶わなかったオマル・フライレ(スペイン、アスタナ) photo:CorVos
4番手でフィニッシュするナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼル) photo:CorVos
まとまってフィニッシュするリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)たち photo:CorVos
絶妙なタイミングを突いたウッズは、両手を大きく広げてフィニッシュへ。今季ティレーノ〜アドリアティコの難関ステージで勝利を上げている34歳が、5年間所属したチームへの置き土産となる大きな勝利を掴んだ。
「このステージは前からチェックしていたんだ。でもはじめは逃げに乗るのではなく、(総合2位の)ヒュー(カーシー)とをアシストする予定だった。でもレースがクレイジーな展開になり、大きな逃げ集団ができたため、そこにチームから何人か入らなければならなくなったんだ」と振り返るウッズ。東京オリンピックでカナダチームのエースを務めるウッズにとっては、2018年ブエルタの第17ステージに続く大会&グランツール2勝目だ。
ブエルタ通算2勝目を挙げたマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) photo:Unipublic
イネオス勢がコントロールしたメイン集団は2度目の1級山岳オルドゥニャ峠で絞り込まれたものの、総合上位陣の成績に変動はなし。総合争いは1級山岳モンカルビリョ(全長8.3km・平均9.2%)を目指す獲得標高差3,000mの第8ステージに持ち越されている。

果たしてブエルタ・ア・エスパーニャは首都マドリードにたどり着けるのか。10月22日に1日あたりの新型コロナウイルス感染者数が2万人を超え、10月25日にペドロ・サンチェス首相によって2度目の国家非常事態宣言が出されたスペインだが、1度めの休息日に行われたPCR検査で一人の陽性者も出さなかったブエルタは、ひとまず開催継続にゴーサインが下されている。


総合シャッフルが掛かった過酷な第6ステージから文字通りの休息日を挟み、プロトンは再び開幕地バスク州へ。ビトリア=ガステイスからビリャヌエバ・デ・バルデゴビアを目指す159.7kmは、1級山岳オルドゥニャ峠(全長7.8km・平均7.7%・最大14%)を2回通過する、獲得標高1000m以下の丘陵コースだ。
まさに逃げるための逃げステージ。3連続となる逃げ切りを目指すべく、この日はスタート直後から休息日にリフレッシュした選手たちが活発に抜け出しを試みた。


ここまで積極的な走りを見せている個人タイムトライアルフランス王者レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が個人TT状態で30kmを逃げたものの、1956年に大会初登場した1度めの1級山岳オルドゥニャ峠を前に捉えられる。カヴァニャの吸収を待っていた逃げ狙いメンバーが次々と加速し、最終的に36名という今大会最大規模の逃げグループができあがった。
出走161名の中から逃げは36名、つまり9人に2人の割合で抜け出した大集団にはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、元世界王者の証を腕に巻くアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、マイヨモンターニャキープを狙うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)たちの姿も。3分00秒遅れの総合10位バルベルデが入ったことから、メイン集団をコントロールするイネオス・グレナディアーズはタイム差を2分台に保ち続けた。




36名の中ではクスが1級山岳オルドゥニャ峠を先頭通過して10ポイントを稼ぎ、山岳ランキング2位のマルタンは2位通過で6ポイントを獲得。ランキング首位ウェレンスはポイント獲得ならず、この時点でマイヨモンターニャはクスの元に移った。
ピナレロのチャリティーバイクとオークリーの新型アイウェアで話題を呼ぶクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団先頭に立って牽引する最中、高速走行中に弾き飛ばされたジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)がリタイアに追い込まれてしまう。草地に倒れたまま動けなかったマッカーシーは病院に搬送され、骨折こそなかったものの、膝の歪みと右膝関節の靭帯損傷が心配(チーム発表)されている。
横風が吹く中で先頭、メイン集団ともに分断に備えて緊張感を高めたものの、風を利用した決定的な動きは生まれない。すると先頭集団からドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール)とバルベルデ、スタン・デウルフ(ベルギー、ロット・スーダル)という3名が抜け出したものの、30秒以上のリードを得ることはできずにバルベルデとデウルフは離脱。一人で粘っていたゴドンも2度目の1級山岳オルドゥニャ峠で引き戻された。

平均7.7%の勾配が選手たちを選り分け、複数のアタックを経てマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)が先頭通過に成功する。山岳賞争いのライバルであるクスやウェレンスが遅れたことを見たマルタンが2位通過に成功したことで、この日終了時点でのマイヨモンターニャ獲得を決めている。
マルタンに続いたバルベルデとナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼル)とオマル・フライレ(スペイン、アスタナ)が頂上通過後にウッズへと合流し、10名ほどの追走グループからリードを得た状態でダウンヒルをこなし、終盤戦の平坦区間へ。先頭5名は激しく牽制しながら進んだものの、後続グループも同じく牽制状態に陥ったことで目の前に見える5名まで届かない。この日、後続集団の数的優位は一切機能しなかった。
残り10kmを切ると、マルタンが、バルベルデが、ピーターズが、そしてフライレが次々とアタックを掛けるものの決まらない。しかしその中で「チャンスがやってきたのを感じた」と言うウッズが残り1kmマークを前に抜け出した。
1級山岳アラモン・フォルミガルにフィニッシュした休息日前の第6ステージでステージ2位に入っていたウッズが、唯一追走したフライレから3秒リードを得て逃げる。残り500mを切って現れる緩斜面を、下ハンドルを握り踏み込んだウッズがリードを守り抜いた。




絶妙なタイミングを突いたウッズは、両手を大きく広げてフィニッシュへ。今季ティレーノ〜アドリアティコの難関ステージで勝利を上げている34歳が、5年間所属したチームへの置き土産となる大きな勝利を掴んだ。
「このステージは前からチェックしていたんだ。でもはじめは逃げに乗るのではなく、(総合2位の)ヒュー(カーシー)とをアシストする予定だった。でもレースがクレイジーな展開になり、大きな逃げ集団ができたため、そこにチームから何人か入らなければならなくなったんだ」と振り返るウッズ。東京オリンピックでカナダチームのエースを務めるウッズにとっては、2018年ブエルタの第17ステージに続く大会&グランツール2勝目だ。

イネオス勢がコントロールしたメイン集団は2度目の1級山岳オルドゥニャ峠で絞り込まれたものの、総合上位陣の成績に変動はなし。総合争いは1級山岳モンカルビリョ(全長8.3km・平均9.2%)を目指す獲得標高差3,000mの第8ステージに持ち越されている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第7ステージ結果
1位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) | 3:48:16 |
2位 | オマル・フライレ(スペイン、アスタナ) | 0:04 |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
4位 | ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼル) | 0:08 |
5位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | |
6位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 0:13 |
7位 | アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ) | |
8位 | イーデ・シェリング(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | ケニー・エリッソンド(フランス、グルパマFDJ) | |
10位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
OTL | マッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード) | 41:00 |
DNF | ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
DNF | ロマン・シーグル(フランス、グルパマFDJ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 28:23:51 |
2位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:18 |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:20 |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:30 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 1:07 |
6位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 1:30 |
7位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 1:42 |
8位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 2:02 |
9位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 2:03 |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 2:39 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 27pts |
2位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) | 24pts |
3位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 19pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 79pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 61pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 57pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 28:24:58 |
2位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 2:40 |
3位 | ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) | 2:57 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 85:16:40 |
2位 | UAEチームエミレーツ | 3:03 |
3位 | ユンボ・ヴィズマ | 7:43 |
text:So Isobe
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