2020/10/20(火) - 11:10
10月20日にスペインのバスク地方で開幕するブエルタ・ア・エスパーニャ。その総合リーダージャージである真っ赤なマイヨロホを狙ってスタートラインに並ぶプリモシュ・ログリッチやクリストファー・フルーム、リチャル・カラパス、ティボー・ピノら、注目選手を紹介します。
スペインの情熱を表す真っ赤なリーダージャージ
レッドジャージを意味するマイヨロホはブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール・ド・フランス主催者のASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。「ラ・ロハ」とも呼ばれるリーダージャージが採用されてから2020年で11年目。すっかりブエルタの象徴として定着した。
ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日を終えた時点でマイヨロホを着ている選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」。
ボーナスタイムは2020年も健在。ブエルタでは個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げることになる。
ログリッチの大会連覇なるか?フルームやピノ、マルティネスにも注目
変則的なスケジュールが組まれた2020年はツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャの間にジロ・デ・イタリアが割り込む形となったが、ツールとブエルタの間隔は例年とほぼ変わらず4週間。つまり今年もツールを完走した選手がそのままの調子をキープしたままブエルタに挑むことは可能と言える。
調子の良し悪しは置いておいて、まずは過去に2度総合優勝しているクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の存在に注目したい。2011年のブエルタで、総合優勝者のドーピング違反によって繰り上げでグランツール初総合優勝を飾ったフルームは、これまで合計7つのグランツールタイトルを獲得(ジロx1、ツールx4、ブエルタx2)。2017年にはツールとブエルタのダブルツールを達成している。
現役選手の中で最も成功したグランツールレーサーではあるが、2019年6月のクリテリウム・デュ・ドーフィネで負った大腿骨の骨折以後、かつてのような輝きを取り戻すことができていない。2020年は調整不足を理由にツール・ド・フランスのメンバーから外れ、9月のティレーノ〜アドリアティコでは復調を示すことができずにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュもDNF。来季イスラエル・スタートアップネイションに移籍する35歳にとってイネオスジャージで走る最後のグランツールであり、モチベーションはもちろん高いが、トップコンディションでブエルタ開幕を迎えるとは言えないのが実情だ。
2019年にジロを制したリチャル・カラパス(エクアドル)がブエルタでフルームとダブルエースを組むことになる。大会連覇がかかったジロではなくアシストとしてツールに出場し、大会後半にかけて調子を上げたカラパス。来季フルームはチームを離れるが、アダム・イェーツ(イギリス)の加入によって依然としてグランツールレーサー供給過多状態のイネオスの中でエースの座を勝ち取るためには、カラパスはここでタイトルが取っておきたいところだ。
ツールの最終日前日にマイヨジョーヌを失ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は2019年のブエルタ総合優勝者。つまり大会連覇を狙って、背番号1を付けてバスク地方に降り立つ。ユンボ・ヴィスマはツールと同様にトム・デュムラン(オランダ)、セップ・クス(アメリカ)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ)という強力な山岳アシストをずらりと揃えており、チーム力で他を圧倒する。ログリッチと並ぶダブルエースとしてデュムランが控えており、チームとしてツールのリベンジに燃えているはずだ。
ツールでチーム総合成績トップに輝いた地元スペインのモビスターは、今シーズンなんと1勝しか飾ることができていない(2月のチャレンジマヨルカ)。これはもちろんUCIワールドチームの中で最少であり、このブエルタが名誉挽回の最後のチャンスであると言える。それだけにエンリク・マス(スペイン)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、マルク・ソレル(スペイン)と、チームが誇るオールラウンダーを投入する。出場選手の中で最年長40歳のバルベルデは2009年のブエルタで総合優勝。ツール総合12位&ロード世界選手権8位という成績を残すベテランが若手を指揮することになりそうだ。地元スペイン勢としては他にもダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ)やイサギレ兄弟(アスタナ)の名前が挙がる。
ツール初日の落車の影響で総合争いから脱落したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は自身4度目のブエルタ出場。2013年に総合7位、2018年に総合8位の成績を残しているピノは、昨年ツールでステージ優勝を飾ったトゥールマレー峠の山頂フィニッシュで再び輝くことができるか。ツール総合11位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)とともに、山岳の比率の高いブエルタで総合上位を狙う。
山がちなコース設定はコロンビアンクライマーたちに有利に働くか。クリテリウム・デュ・ドーフィネ覇者のダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)は今季グランツール初出場となるマイケル・ウッズ(カナダ)とタッグを組む。来季イスラエル・スタートアップネイション入りが決まっているウッズはラ・フレーシュ・ワロンヌ3位&リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ7位。ブエルタでは2017年に総合7位に入っている。また、2016年に総合3位の成績を残したエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)はミケル・ニエベ(スペイン)とダブルエース体制を組む。
他にもワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)やダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)、フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)らが総合上位候補。活躍が期待されながらも体調不良によりジロを第2ステージでリタイアしたアレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン、アスタナ)もスタートリストに名前を連ねている。クラシックシーズンは終わりを迎えたものの、ジロと開催時期が重複するだけに、各チームは選手のやり繰りに頭を悩ましているはずだ。
スペインの情熱を表す真っ赤なリーダージャージ
レッドジャージを意味するマイヨロホはブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール・ド・フランス主催者のASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。「ラ・ロハ」とも呼ばれるリーダージャージが採用されてから2020年で11年目。すっかりブエルタの象徴として定着した。
ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日を終えた時点でマイヨロホを着ている選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」。
ボーナスタイムは2020年も健在。ブエルタでは個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げることになる。
ログリッチの大会連覇なるか?フルームやピノ、マルティネスにも注目
変則的なスケジュールが組まれた2020年はツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャの間にジロ・デ・イタリアが割り込む形となったが、ツールとブエルタの間隔は例年とほぼ変わらず4週間。つまり今年もツールを完走した選手がそのままの調子をキープしたままブエルタに挑むことは可能と言える。
調子の良し悪しは置いておいて、まずは過去に2度総合優勝しているクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の存在に注目したい。2011年のブエルタで、総合優勝者のドーピング違反によって繰り上げでグランツール初総合優勝を飾ったフルームは、これまで合計7つのグランツールタイトルを獲得(ジロx1、ツールx4、ブエルタx2)。2017年にはツールとブエルタのダブルツールを達成している。
現役選手の中で最も成功したグランツールレーサーではあるが、2019年6月のクリテリウム・デュ・ドーフィネで負った大腿骨の骨折以後、かつてのような輝きを取り戻すことができていない。2020年は調整不足を理由にツール・ド・フランスのメンバーから外れ、9月のティレーノ〜アドリアティコでは復調を示すことができずにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュもDNF。来季イスラエル・スタートアップネイションに移籍する35歳にとってイネオスジャージで走る最後のグランツールであり、モチベーションはもちろん高いが、トップコンディションでブエルタ開幕を迎えるとは言えないのが実情だ。
2019年にジロを制したリチャル・カラパス(エクアドル)がブエルタでフルームとダブルエースを組むことになる。大会連覇がかかったジロではなくアシストとしてツールに出場し、大会後半にかけて調子を上げたカラパス。来季フルームはチームを離れるが、アダム・イェーツ(イギリス)の加入によって依然としてグランツールレーサー供給過多状態のイネオスの中でエースの座を勝ち取るためには、カラパスはここでタイトルが取っておきたいところだ。
ツールの最終日前日にマイヨジョーヌを失ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は2019年のブエルタ総合優勝者。つまり大会連覇を狙って、背番号1を付けてバスク地方に降り立つ。ユンボ・ヴィスマはツールと同様にトム・デュムラン(オランダ)、セップ・クス(アメリカ)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ)という強力な山岳アシストをずらりと揃えており、チーム力で他を圧倒する。ログリッチと並ぶダブルエースとしてデュムランが控えており、チームとしてツールのリベンジに燃えているはずだ。
ツールでチーム総合成績トップに輝いた地元スペインのモビスターは、今シーズンなんと1勝しか飾ることができていない(2月のチャレンジマヨルカ)。これはもちろんUCIワールドチームの中で最少であり、このブエルタが名誉挽回の最後のチャンスであると言える。それだけにエンリク・マス(スペイン)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、マルク・ソレル(スペイン)と、チームが誇るオールラウンダーを投入する。出場選手の中で最年長40歳のバルベルデは2009年のブエルタで総合優勝。ツール総合12位&ロード世界選手権8位という成績を残すベテランが若手を指揮することになりそうだ。地元スペイン勢としては他にもダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ)やイサギレ兄弟(アスタナ)の名前が挙がる。
ツール初日の落車の影響で総合争いから脱落したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は自身4度目のブエルタ出場。2013年に総合7位、2018年に総合8位の成績を残しているピノは、昨年ツールでステージ優勝を飾ったトゥールマレー峠の山頂フィニッシュで再び輝くことができるか。ツール総合11位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)とともに、山岳の比率の高いブエルタで総合上位を狙う。
山がちなコース設定はコロンビアンクライマーたちに有利に働くか。クリテリウム・デュ・ドーフィネ覇者のダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)は今季グランツール初出場となるマイケル・ウッズ(カナダ)とタッグを組む。来季イスラエル・スタートアップネイション入りが決まっているウッズはラ・フレーシュ・ワロンヌ3位&リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ7位。ブエルタでは2017年に総合7位に入っている。また、2016年に総合3位の成績を残したエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)はミケル・ニエベ(スペイン)とダブルエース体制を組む。
他にもワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)やダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)、フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)らが総合上位候補。活躍が期待されながらも体調不良によりジロを第2ステージでリタイアしたアレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン、アスタナ)もスタートリストに名前を連ねている。クラシックシーズンは終わりを迎えたものの、ジロと開催時期が重複するだけに、各チームは選手のやり繰りに頭を悩ましているはずだ。
ブエルタ歴代総合優勝者
2019年 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア) |
2018年 | サイモン・イェーツ(イギリス) |
2017年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2016年 | ナイロ・キンタナ(コロンビア) |
2015年 | ファビオ・アル(イタリア) |
2014年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2013年 | クリストファー・ホーナー(アメリカ) |
2012年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2011年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2010年 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) |
2009年 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン) |
2008年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2007年 | デニス・メンショフ(ロシア) |
2006年 | アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン) |
2005年 | デニス・メンショフ(ロシア) |
2004年 | ロベルト・エラス(スペイン) |
2003年 | ロベルト・エラス(スペイン) |
2002年 | アイトール・ゴンザレス(スペイン) |
2001年 | アンヘル・カセロ(スペイン) |
2000年 | ロベルト・エラス(スペイン) |
1999年 | ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) |
1998年 | アブラハム・オラーノ(スペイン) |
1997年 | アレックス・ツェーレ(スイス) |
1996年 | アレックス・ツェーレ(スイス) |
1995年 | ローラン・ジャラベール(フランス) |
1994年 | トニー・ロミンゲル(スイス) |
1993年 | トニー・ロミンゲル(スイス) |
1992年 | トニー・ロミンゲル(スイス) |
1991年 | メルチョル・マウリ(スペイン) |
1990年 | マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア) |
text:Kei Tsuji
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