種目を越えライバル関係を築いてきた2人による一騎打ちで決した第104回ロンド・ファン・フラーンデレン。僅差のスプリントを制したファンデルプールや、惜しくも敗れたファンアールト、追走集団で先着し3位に入ったクリストフ、盤石な展開もエースを失ったランパールトなどのコメントを紹介します。



優勝 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)

喜びを爆発させるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)喜びを爆発させるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
この勝利が平凡なシーズンを素晴らしいものに変えてくれた。ファンが沿道にいてくれたらもっと素晴らしいものなっていただろう。これは間違いなくキャリア最大の勝利だ。僕たち2人の経歴からしたら、ロンドで優勝を目指してスプリントするなんて信じられない。実は2人でスプリント勝負するのは初めての経験だった。シクロクロスでもあまり起きないことだ。

フィニッシュラインに向かいながら、スプリントを開始する正しいギヤ選びと距離を考えていた。(スプリントまで)彼がなかなかスプリントを始めないということが、彼がもはや100%の状態ではないことを示していて、それが自信に繋がった。

慣れた手つきでシャンパンを振りまくファンアールト、ファンデルプール、クリストフ慣れた手つきでシャンパンを振りまくファンアールト、ファンデルプール、クリストフ photo:CorVos
一日を通して彼の方が強いという感覚があった。(オウデ)クワレモントとパテルベルグで仕掛けないことから彼は限界に来ていて、2人でフィニッシュまで行くことは明らかだった。だから僕は人生を賭けたスプリントをする覚悟を決めたんだ。

(スプリント前の)低速は僕を有利にしてくれた。スプリントにおける僕の切り札は最初5秒の加速だ。小さいギヤにすることで、より簡単にピーク値に達することができる。それに彼がスプリントするほんの数秒前にスプリントし始めることができた。2、3段階ギヤを重くし、最後はバイクを前に投げ出した。

フィニッシュラインは突然目の前にやってきた。いくつもの線があったせいで自分が勝ったかどうか分からなかった。いつもは自分の車輪を見てフィニッシュするけれど、体力が残っていなかったので確認することができなかった。信じられないよ。

この先どうなるか誰にも分からない。本当にハードな年になった。自転車選手だけでなく、誰にとってもだ。個人的にはマウンテンバイクから(ロードに)乗り換えるのが難しかった。東京(五輪)と翌年のツールに向けて綿密なスケジュールを組んでいた。いまやすべてが白紙状態だ。マウンテンバイクのレースにも、もう1年近く出場していない。それが頭の中でぐるぐると回転して気になっている。



2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)

負けを知ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が控え室へ負けを知ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が控え室へ photo:CorVos
自分の好きなようにレースをして、望んでいたようなレースになった。

もっと上手く立ち回れた部分もあったけれど、言い訳をするつもりはない。スプリントではマチューの方が僅かに強かった。今晩はあのスプリントを何度も見ることになるだろう。最後僅差だったことを考えれば、恐らく勝負を待ちすぎたんだと思う。美しいレースだった。テレビ観戦してくれたファンにスペクタクルをもたらすことができた。

パリ〜ルーベがないのは残念だ。正直(中止になり)辛い気持ちでいるし、ルーベを目指して厳しいトレーニングを重ねてきた。しかし今はプライドと共にシーズンを終える時だ。こんなにも長くトップコンディションを維持できるとは思わなかった。ストラーデビアンケからずっと好調を維持できていた。



3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)

オウデ・クワレモントで踏み込むアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)オウデ・クワレモントで踏み込むアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
良い一日だったし、表彰台に上がれて満足している。(カスパー)アスグリーンのアタックによってロングスプリントを強いられた。それでも何とか(アントニー)テュルジスと(イヴ)ランパールトを抑えることができた。前の2人はもう一段上のギヤを持っていて、本当に強かった。このレースは僕のお気に入りで、ここ数年で多くの素晴らしい結果を残してきた。

フランダースで何度か先頭を走ったことがあるが、周りを走るモトバイクのスリップストリームを利用することができる(ので、先頭2人に追いつくことは出来ないと分っていた)。たとえ僕たちが追いついたとしても、彼らはお互いを見て、お互いに攻撃のチャンスを伺っていただろう。事前の予想で最強だと思われていた彼らが、実際のレースでも最強であると証明した。



4位 アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ ディレクトエネルジー)

3位を争う良い集団だった。勝ったのはアレクサンダー・クリストフで、タイヤ半分の差だった。今日の1日には満足している。チームが先頭に出てレースを作ってくれた。



5位 イヴ・ランパールト(ベルギー、エレガント・クイックステップ)

スタート前のイヴ・ランパールト(ベルギー、エレガント・クイックステップ)スタート前のイヴ・ランパールト(ベルギー、エレガント・クイックステップ) photo:CorVos
完璧な展開だった。僕は「チームメイト7名が一緒にいるんだ。このレースはもう決まったな」と思った。でもジュリアン(アラフィリップ)が倒れていて、悲惨な状況へと一変した。そしてすぐにレースは終わった。悲しいよ。(追走)集団は大きすぎ、最適の協力関係は築けなかった。素晴らしいレースをしていただけに残念だよ。



第7位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール・ラモンディアール)

いつも通り素晴らしいレースだった。一時は最も強い3人(ファンデルプール、ファンデルプール、アラフィリップ)が前にいて、僕は4人目だった。しかし前に追いつくことが出来なかった。表彰台を目指して全力を尽くしたが、叶わなかった。3位になれたらどれだけ素晴らしかっただろうか。7位でフィニッシュしたわけだが…。集団に追いつかれたのは残り500mだった。それまでは3位に入れると本気で思っていた。



落車したアラフィリップについて語るトム・スティールス監督(エレガント・クイックステップ)

集団内で息を潜めるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エレガント・クイックステップ)集団内で息を潜めるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エレガント・クイックステップ) photo:CorVos
ジュリアンは今日とても落ち着いていて、印象的な走りを見せてくれていた。1回目のオウデ・クワレモントを登る姿は見事で、イヴ(ランパールト)がレース後に「信じられない走りだった」と言っていたぐらいだ。彼は石畳で何度かアタックし、平坦でも仕掛けた。残り50kmでは差をつけようと常に積極的に動き、それが実った。

しかし、残念ながら残り35km地点でのアクシデントによって優勝を争うことは出来なかった。自転車ロードレースというのは多くのリスクを伴うスポーツだが、あのような事態はレースから取り除かれるべきだ。誰かを名指しで批判するつもりはないが、モトバイクはもう少し気をつけるべきだったし、選手を前に行かせる十分なスペースがあったはずだ。今回のことを教訓とし、今後このような事件が起こらないようにしなければならない。

しかし一方で、ジュリアンがこのような厳しいレースにも対応できることが分かった。今後に期待が持てるだろう。

text:Sotaro.Arakawa

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